※この記事は、2021年のコロナ禍で執筆された記事です。2023年5月8日の5類感染症移行後の対応とは異なりますが、当時の記録として掲載しています。最新のオフィスづくりをご希望の方は、是非お問い合わせくださいませ。
コロナの影響もあり、フリーアドレスを導入する企業が増えていますが、すでに導入している企業のなかには「失敗」と感じていることもあるようです。フリーアドレスはオフィスの省スペース化やコミュニケーションの活性化など、さまざまなメリットがあります。一方で、事前準備やルールづくりが不十分だったため、仕事がしにくい環境になる場合もあります。今回はコロナ禍でのフリーアドレスがうまくいかない原因を挙げ、成功させるためのポイントをご紹介しましょう。
フリーアドレスとはどういうオフィススタイルなのか
多くの企業で導入が進んでいるフリーアドレス。そもそも、どのようなオフィススタイルなのかご存じでしょうか。
フリーアドレスとは
従来、多くの企業では一人ひとり決まった座席があり、管理者と数人の社員でグループを形成していました。これに対し、フリーアドレスとは、オフィスで決まった座席をつくらず、自由に席を選べるオフィススタイルです。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレスの導入により、企業にはさまざまなメリットが考えられますが、そのなかでも主なメリットは次の3点です。
1. オフィススペースの有効活用
例えば、営業社員が多い企業では、時間帯によってオフィスで仕事に従事する社員数が違うことも珍しくありません。従来であれば外出した社員の席はそのまま空席になるだけですが、フリーアドレスなら固定席ではなくなるため、他の社員が使用できます。無駄な空席を減らせ、オフィススペースの有効活用が実現します。
2. 社員同士のコミュニケーション活性化
従来の固定席では、異なる部署同士や同じ部署内でも遠い席の人とはコミュニケーションが取りづらいことがデメリットでした。しかし、フリーアドレスなら、その日の仕事内容に応じて異なる人と席を隣り合わせることも可能です。
3. 常に整理整頓されたオフィスの実現
フリーアドレスでは、その日によって座る席が異なるため、席に自分の書類や私物を置くことができません。その結果、デスクがいつもきれいに片付けられ整理整頓された状態を保てます。固定席では「自席に書類が山積み」というのはよくある話ですが、フリーアドレスではそのようなことがありません。
フリーアドレスがうまくいかない原因とは?
さまざまなメリットがあるフリーアドレスですが、一方で導入した企業では「失敗」と感じているケースも少なくありません。なぜ、フリーアドレスがうまくいかなかったのでしょうか。それには、いくつかの原因があるようです。
席が同じ人で固定されてしまう
フリーアドレスなのに、毎日同じ人が同じ席を使うという現象が見られることがあります。座席が固定化してしまえば、仕事内容に応じて働く場所を選ぶというフリーアドレスのメリットが得られません。ルールとしては席を自由に選べるが、実態としてはほぼ席が決まっているという形骸化したフリーアドレスはよくある失敗のケースです。
コミュニケーションが苦手な社員が孤立する
社員のなかにはコミュニケーションが苦手な人もいます。これまでであればコミュニケーションが苦手でも、必ず上司や同僚と隣り合って座るため、否応なくコミュニケーションを取らざる得ない状況が発生していました。
しかし、フリーアドレスで自由に席が選べるようになれば、周囲に人がいない場所を選択することも可能です。そうしてコミュニケーションを避けて同僚や上司と物理的な距離をとった結果、孤立してしまうケースもあります。チームとして働くことが重要な企業において、孤立してしまい情報共有ができない社員が増えれば、生産性の低下をもたらすことになり、企業にとって大きなマイナスとなってしまうでしょう。
上司と部下の距離感が保ちにくい
固定席ではグループ内の上下関係がわかりやすいように、上司の席は上座、部下の席は下座に配置されることが一般的です。しかし、フリーアドレスのオフィスでは上司の席も決まっていないため、上司と部下の距離感が保ちにくいというデメリットがあります。
書類を収納するスペースが少ないため不便に感じる
フリーアドレスは、基本的に自席を持たないオフィススタイルです。自席に書類を保管できないため、デスク以外の収納に書類をしまう個人ロッカーが必要になります。ただ、個人ロッカーが必要な大きさよりも小さかったり、共有ロッカーが満杯で使えなかったりなど、書類や持ち物を保管できず不便に感じるケースがあります。
新型コロナウイルスの感染対策が難しい
日によって座る場所が異なるフリーアドレスでは、在席管理が困難になります。そのため、万が一、社内で新型コロナウイルスの感染者が出た場合、濃厚接触者の特定も難しくなり、クラスターが生まれてしまうリスクが高まります。
コロナ禍でのフリーアドレスを成功させるためのポイント
フリーアドレスのメリットを生かすためには、課題点を解消するためのルールづくりや事前の準備が欠かせません。すでにフリーアドレスを導入している場合でも、さらなる効率化をはかるためには、改めてルールの見直しをすべきケースもあるでしょう。特にコロナ禍においてフリーアドレスを成功させるためには、従来のルールのままでは、感染対策が十分ではありません。そこで、コロナ禍でのフリーアドレスを成功させるうえで欠かせないポイントを説明します。
ルールづくり
コロナ禍でのフリーアドレスを成功させるためには、新しい環境に合わせたルールの策定が必要です。具体的には次のようなルールが考えられます。
電子ファイルの取り扱い
フリーアドレス導入を成功させるポイントとして、ペーパーレス化の徹底は欠かせません。常に席を移動するため、紙のままでは紛失してしまう恐れがあるうえ、不特定多数の人間が触ることで、感染リスクも高まってしまうからです。
そこで、ペーパーレス化を進めた際、これまで紙で保存していた文書を電子データで保存したり、共有が必要なデータは共有フォルダに保存したりするなどの取り組みが必要となるでしょう。
固定席にしない工夫
毎日同じ座席にならないように、座席が流動的になるようなルールづくりも重要です。座席が固定しないように、席を自動的に決めるシステムや、くじ引きを導入する企業もあるようです。
感染対策の徹底
それぞれの席での感染対策も忘れてはなりません。席に座る前と離席する際の消毒・殺菌の徹底は必須です。ポイントは、席に座る社員自らが消毒・殺菌を行うことです。社員自身に感染対策の重要性を認識させることにつながるうえ、ほかの人が行うよりも消毒・殺菌漏れのリスクが低減できます。
オフィスに出勤する際はもちろんのこと、普段はテレワークをしつつ定期的に出社する社員に対しての教育も徹底したうえで感染対策を行っていくようルール化します。
ポイント
ホテリングの導入
固定席にしないための工夫をすると同時に感染リスクを高めないようにするため、誰がどこに座っているかの管理を怠らないようにしなくてはなりません。そこで、おすすめなのがフリーアドレスの派生形ともいわれるオフィス形式、ホテリングの導入です。
ホテリングとは、基本的にはフリーアドレスと同様に固定席を設けず日によって座る場所を自由に選択するものですが、異なる点は席が予約制だという点です。
フリーアドレスは、出社したときに空いた席のなかから自分が働く席を決めますが、ホテリングはあらかじめ自分の座りたい席を予約しなくてはなりません。そのため、社員が一か所に集まってしまうリスクがなくなるうえ、万が一の際には感染経路をたどりやすくなります。
≪一緒に読みたい記事≫ ウィズコロナ時代に社員の健康を守る施策となるホテリングとは?
≪一緒に読みたい記事≫ 座席予約制でオフィスを運用するメリットとは?
レイアウトの変更
フリーアドレスは職種によっては仕事の効率を下げてしまう可能性もあります。例えば、クリエーターや研究職など、長時間自席で仕事をする職種です。一方で、営業や企画のように打ち合わせが多い部門では、フリーアドレスの方が使いやすいこともあるでしょう。すべての社員が使いやすいオフィスにするためには、職種によりフリーアドレスを部分的に導入するグループアドレスという方法もあります。
レイアウトの際のポイントは、フリーアドレス席として通常執務を行うデスクのほかに、個人での仕事に特化した集中席や、立ちながらでも少人数でミーティングができる席など、感染対策を行いつつも仕事内容に応じて必要な機能をバランスよく配置することがおすすめです。
収納スペースの確保
フリーアドレスの導入で課題となるのが収納スペースの確保です。デスクに書類や私物を置けないため、個人用のロッカーや共用ロッカー、可動式ワゴンなどを設置しなければなりません。個人用のロッカーはプライバシーに配慮した鍵つきもので、最低でも書類やノートパソコンなどが一式収納できる大きさは欲しいところです。
共用ロッカーには、複数の社員で共有が必要な書類を収納します。例えばカタログやマニュアルなどで、共有して使うための書類は共用ロッカーがよいでしょう。可動式ワゴンがあれば、書類や備品をまとめて運べて便利です。
フリーアドレス導入に必要なもの・便利グッズ
実際にフリーアドレスを導入する場合、どのようなものが必要なのでしょうか。フリーアドレスを導入してから不便を感じないように、あらかじめ準備しておくことが大切です。
デスク
固定席とは違うタイプを用意する必要があります。作業スペースが広く、電源タップや照明などが使えるタイプがおすすめです。毎日使用する人が変わるので、一般的なオフィスデスクにあるような引き出しや収納庫はあまり必要ありません。
共有の収納庫
フリーアドレスでは、ペーパーレス化を進めていく必要があります。そうはいっても、紙の書類を完全になくすことは難しいのが実情でしょう。そのため、フリーアドレス導入後も、部署やチームごとに共有できる収納庫があると便利です。
個人用ロッカー
固定席がないため、私物や個人で管理する備品、書類などを保管できる場所が必要です。タテヨコA4サイズ以上のスペースがあれば、ファイルボックスも収納できます。パソコンや重要書類を保管する可能性もあるため、セキュリティ性も重視したいポイントです。
≪一緒に読みたい記事≫ フリーアドレスの必需品!パーソナルロッカーで個人の仕事道具を管理
ノートパソコン
フリーアドレスでは、ノートパソコンが必需品といえます。固定席ではデスクトップ型のパソコンが使われていることも多いのですが、フリーアドレスでは移動する際に不便です。そのため、Wi-Fi接続できるノートパソコンが必要です。営業職には持ち運びしやすいタイプがよいでしょう。
Wi-Fi環境
LANケーブルを接続するのは手間がかかるため、Wi-Fi環境があると便利です。ルーターを設置する場合は、使用する人数やオフィスの広さ、通信規格などを基準に選びます。業務用のWi-Fiルーターなら、同時に数百台を接続できるタイプもあります。
入退室管理システム
フリーアドレスでは、人の流動が多いため、不審者が入ってきても気づかないケースがあるかもしれません。そのため、不審者の入室を防ぐ入退出管理システムが必要です。IDカードやコードによる認証、生体認証などの方法があります。感染対策のためには、非接触型のものがおすすめです。
殺菌、消毒用グッズ
フリーアドレスはオフィスの有効利用に大きな効果を発揮しますが、常に座る席が異なるため、しっかりとした管理をしないと感染リスクが高まってしまいます。そこで、殺菌スプレーや消毒薬などを各テーブルに設置しましょう。衛生管理は清掃担当者に任せるのではなく、一人ひとりが自覚を持って行わなければなりません。
特に、朝や帰宅、外出時には机と椅子の殺菌を徹底するようにします。席予約と合わせ、殺菌・消毒の徹底を実践すれば、感染リスクを大幅に抑えられるようになるでしょう。
フリーアドレスの事例紹介
これからフリーアドレスの導入を検討しているなら、すでに導入している企業の事例が気になるかもしれません。以下に紹介する事例の一部を参考に、ぜひ自社に合ったスタイルを取り入れてみてください。
グローバルセキュリティエキスパート株式会社様の事例
情報セキュリティのコンサルティングを専門に手がける同社では、フリーアドレスの導入によりコミュニケーションの活性化を実現しました。複数人で利用できるデスクのほか、集中しやすいブースやコミュニケーションスペースも設置したことが成功のポイントです。業務内容に合わせて自由に席を選べるようにしたことで、使い勝手のよいオフィスになりました。
株式会社コスモ調剤薬局様の事例
薬局や訪問介護リハビリステーションを運営する同社では、役職や業務内容に関係なく一緒に働ける完全フリーアドレスのオフィスを実現しました。デスクには前面に高いパーティションが設置されているため、業務に集中しやすくなっています。一方で、ふり向けば人と話せるレイアウトで、コミュニケーションがとりやすいことも特徴です。外の景色を眺めながらひと息つけるハイカウンター席もあり、社員にとって快適なオフィス空間を実現しています。
ネットイヤーグループ株式会社様の事例
デジタルマーケティング関連業務を行う同社では、社員が自らアクティブに働けるようにフリーアドレス制を導入しました。オフィスは、落ちついた印象のインテリアが特徴です。仕事でも休憩でも使えるラウンジスペースもあり、気分に合わせて働く場所を選べるようになっています。気軽に集まれる場所ができたことで、社員同士のコミュニケーションが生まれるようになりました。
フリーアドレスに失敗しないために
フリーアドレスの導入が初めてとの企業の声もよく聞きます。導入する前に、導入したけれども失敗してしまった事例も把握しておいたほうがよいでしょう。どのようなところに躓きポイントがあるかがわかり、事前に対策が打ちやすくなります。失敗例については別の記事でまとめていますので、ご興味のある方はこちらもご参照ください。
≪一緒に読みたい記事≫ 失敗例から学ぶフリーアドレスを成功させるポイントとは?
コロナ禍でのフリーアドレス成功にはルールやレイアウトの見直しも必要!
オフィスをフリーアドレス化することは、省スペース化や社員同士のコミュニケーション活性化が期待できます。しかし、フリーアドレスを導入しても、期待されたメリットが得られないこともあるようです。かえって仕事がしづらいと感じる社員もいるでしょう。失敗を防ぐためにも事前のルールづくりやレイアウトの変更、収納スペースの確保などが重要です。
また、感染対策のためのルール見直しも欠かせません。席予約システムや殺菌・消毒の徹底などは、手間が増えるという面ではデメリットに感じるかたもいらっしゃるでしょう。しかし、長期的な視点で見れば、席予約システムは「密」の回避、効率的な活用のためのレイアウト改善に重要な役割を果たします。また、殺菌・消毒を徹底しなければ、仮に感染者が出た場合、クラスター発生につながるリスクが増大します。
これらのリスクを低減する意味でも、感染対策を前提としたフリーアドレスの導入のため、ルールやレウイアウトの見直しを行っていきましょう。
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