一般的にデザインというと色、形、機能などが重視されるイメージがあるかもしれません。しかし、実際にはデザインとは、「目的を実現するための計画」そのものを意味します。色や形、機能はその目的を実現させるための手段のひとつに過ぎません。これはオフィスデザインに関しても同様です。そこで、今回はビジネスを行ううえで欠かせないオフィスデザインについて、その考え方や目的を実現させる際に必要なデザインのポイントをお伝えします。
オフィスデザインが重要視される理由
オフィスデザインを重要視する理由はいくつかありますが、そのなかでも主なものとしては次の4点が挙げられます。
社員のモチベーションアップ
「おしゃれ」「シンプル」「機能的」など理由はさまざまですが、多くの社員がそこで働きたいと思わせるデザインを実現できれば、仕事に対するモチベーションがアップします。少し古いアンケートですが、2006年10月、NTTレゾナント株式会社と株式会社三菱総合研究所が行った「オフィスデザインに関する調査」によると、「オフィスデザインに工夫を加えることに対し、社員のモチベーション向上に効果があるか」という問いに対し、71.8%が肯定的な回答をしています。
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生産性の向上
オフィスデザインの目的のひとつには生産性の向上もあります。例えば、「請求書や経費でのやり取りが多い経理部と営業部は近い場所に設置する」ことにより、無駄な移動が減り、「気軽に打ち合わせができるミーティングスペースを複数設置する」ことにより、思い立った際にすぐミーティングができるようになります。このような機能的かつ効率的に働けるデザインが実現すれば、生産性向上も可能になるでしょう。
ブランディング
企業理念や文化は言葉にして伝えるものといったイメージがあるかもしれません。しかし、デザインによって自社の姿勢や、方針、目指すものを示すことも可能です。
例えば、玩具販売の会社であれば、「童心に戻って自由に遊べるフリースペースをつくる」、旅行会社であれば、「部署ごとに世界各国の特徴をモチーフにしたデザインを取り入れる」などが考えられます。デザインが自社のブランディングにつながり、結果として社員の帰属意識向上も期待できるでしょう。
社外への印象が良くなる
デザインセンスにあふれたオフィスは対外的なイメージ向上も実現します。取引先に対するイメージ向上はもちろん、求職者に対し、ここで働きたいと思わせることができれば、人材採用面においても大きなメリットになるでしょう。
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オフィスデザインの考え方
従来、オフィスは社員全員が集まって働く場所というのが当たり前でした。しかし、働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大により、モバイルワークや在宅勤務といったいわゆるテレワークが増加し、オフィスに対する考え方も大きく変わり始めています。そのなかで、これからのオフィスデザインはどう進めていけばよいのでしょう。ここでは、「コンセプト」「カラー・機能・レイアウト」「トレンド」の3つの観点から考えていきます。
コンセプト
冒頭でも説明したように、デザインとは、「目的を実現させるための計画」です。そのため、オフィスデザインを行ううえで、コンセプトづくりは基本中の基本となります。誰に向け、誰のために、何を実現させるためにデザインをするのかを明確にしなければなりません。
カラー、機能、レイアウト
コンセプトが明確になったら、それを実現させるには、どういったカラーが適しているのか、どういった機能が必要なのか、どういったレイアウトにするべきかを考えましょう。カラーで言えば、「コーポレートカラーを基調にする」「集中力が高まる青系統を中心にする」などを決めます。また、機能で言えば、「シンプルな動線」「コピー機の設置場所、数」「各部署の配置」などを決めていきます。そして、レイアウトは、「フリーアドレス」にするか「グループアドレス」にするか、「対面式」と「背面式」のどちらにするかなどを検討しましょう。
トレンド
人材採用の面においては、トレンドを取り入れたオフィスデザインかどうかが求職者にとって選択のひとつのポイントになる場合もあります。具体的には、近年、ダイバーシティの考えが主流になりつつあるため、障害の有無、国籍、性別にとらわれず誰もが快適に働けるユニバーサルデザインがトレンドのひとつです。
また、最近ではコロナ感染対策を考慮したデザインになっているかも重要となっています。例えば、フリーアドレスを導入している場合、仮に感染者が発生したとすると濃厚接触者の確認が難しくなります。そのため、座席管理がしっかりされているか、常に除菌がなされているか、換気のしやすいデザインになっているかまで考え抜かれていなければなりません。それも「目的を実現させるための計画」という意味では重要なデザインです。
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場所別に考えるオフィスデザインのポイント
では、実際に役員室、エントランス、執務室、カフェスペースなど場所別にデザインのポイントを説明します。
役員室のデザイン例
個室タイプの役員室であれば、応接、執務、ミーティング、防音機能などが必要となるでしょう。また、オープンタイプであれば、執務室同様、気軽に出入りできる雰囲気づくりが重要です。そのほか、個室とまではいかなくても、執務室とは区別をつけたい場合は、クリアタイプの間仕切りを執務室との間に設置します。これにより、オープンタイプの気軽さを保ちつつ、個室のメリットも享受できるでしょう。
エントランスのデザイン例
エントランスは来訪者が必ず通る場所であるため、自社のコンセプトを最もしっかりと打ち出す必要があります。コーポレートカラーを大きく取り入れるのが一般的ですが、「小さなお子さん向けの商材」「女性向けの商材」「お菓子メーカー」など業種によっては、親しみを出すため、柔らかい雰囲気を演出する色を使ってもよいでしょう。また、自社商品を置くアピールもエントランスデザインのポイントとなります。
執務室のデザイン例
執務室で最も重要なのは誰もが快適に働けることです。機能を重視しつつ、モチベーションアップにつながるカラーを取り入れたり、観葉植物を設置したりするのも効果的でしょう。また、デスクや椅子も使いやすく疲れにくいものがおすすめです。業務効率化や生産性向上にも大きく影響するでしょう。
会議室
会議室については、従来の会議室のほか、スタンディングミーティング、Web会議、ハドルミーティングなど用途に応じ複数設置するのがおすすめです。また、従来の会議室なら青や水色といった寒色系の集中しやすいカラーにする、ハドルルームなら自由な意見を出しやすくするためにリラックスできる暖色系のカラーにするなど、カラーも用途によって変えていきましょう。
休憩室・カフェスペース
休憩室・カフェスペースには、さまざまな部署の社員がコミュニケーションを取りやすくするためのデザインが必要です。また、コピー機周辺にマグネットスペース(マグネットゾーン)をつくったり、部署と部署の間に立ち飲みの小さなカフェスペースを設置したりするなど、気軽にコミュニケーションを取れるようなデザインがおすすめです。
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見た目と機能を両立させ、目的を果たすためのデザインを
オフィスデザインは、それを施すことで何を実現したいのかを明確にしないとうまくはいきません。単純におしゃれなデスク、椅子、カラーにしても、機能性が悪ければ働きにくくなるだけです。
デザインだからといって見た目だけを重視するのではなく、そもそもデザインによって何を実現したいのか、それをしっかりと検討することが、快適で働きやすいデザインにつながっていくのです。
PLUSでは、オフィスデザインの検討に役立つ構築マニュアルを公開していますので、ぜひ、参考にしてください。
《お役立ち資料》 オフィスデザイン構築マニュアル
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