
新型コロナウイルスの感染拡大を防止する対策の一環として導入されている「テレワーク」といえば、「在宅勤務」というイメージが定着しつつあります。しかし、テレワークはそもそも、オフィスから離れた場所で働くという意味であり、「モバイルワーク」も「サテライトオフィス」も在宅勤務と同様、テレワークの一つです。そこで、今回は在宅勤務の課題を解決する方法としても注目を集めるサテライトオフィスについて、その概要、メリット・デメリットから導入時のポイントまでをお伝えします。
サテライトオフィスとは?
直訳すれば「衛星事務所」という意味を持つサテライトオフィス。本社のオフィスを拠点とし、衛星のように離れた場所に設置されるオフィスとして、新型コロナウイルス感染拡大以前よりあるオフィス形態の一つです。机、椅子、通信環境などの設備がそろえられていて、社員は自分のパソコンや業務で使う書類などを持ち込んで業務を行います。部署、業務内容にかかわらず、個人もしくは少人数で働ける最低限の設備だけが整えられているのが一般的なサテライトオフィスの特徴です。
サテライトオフィスについて詳しく知りたい方は、『サテライトオフィスと通常勤務・在宅勤務の違いは?安定運用のポイントも紹介』の記事もご覧ください。
サテライトオフィスが注目を集める理由・企業が抱える課題
サテライトオフィスは、もともと、オフィスの東京一極集中の是正、オフィス賃料の高騰などを背景に登場したものです。また、郊外から都心へ通う社員の負担解消、交通費の削減などもサテライトオフィス普及の一因となっています。
その後、働き方改革の取り組みの一環として導入する企業が増えましたが、大きな注目を集めるようになったのは、2020年に世界的な規模で感染が拡大した新型コロナウイルスの影響によるものです。
働き方改革について詳しく知りたい方は、『働き方改革の現状は?その課題について考えてみよう』の記事をご覧ください。
2020年4月7日に発令された緊急事態宣言により、オフィスでの密集を避けるため、テレワークのなかでも在宅勤務を導入する企業が増加しました。しかし、「自宅でのWi-Fi環境が整備されていない」「セキュリティ対策が十分ではない」などいくつかの課題点が発生。緊急事態宣言の終了とともにテレワークを取りやめる企業も少なくありませんでした。そこで、作業環境やセキュリティなど在宅勤務の課題を解消する方法として導入が進んだのがサテライトオフィスです。
実際、株式会社ティーケーピーが2020年12月に実施した「テレワーク社会におけるワークスペース別の生産性や満足度、抱える課題や要望に関する調査」。この結果によると、テレワークを実施している社員の45.8%がサテライトオフィスの活用が在宅勤務の課題解決につながると回答しています。
新型コロナウイルス感染拡大防止策として在宅勤務は効果があるものの、いくつかの課題があることも確かです。サテライトオフィスは、オフィスに出社することで密になってしまうリスクを避けつつ、在宅勤務の課題解消にもつながる施策として注目を集めているのです。
働き方改革後のニューノーマルな働き方について詳しく知りたい方は、『ニューノーマルな働き方へ対応するための考え方や実践のポイント』の記事もご覧ください。
サテライトオフィスと他のオフィス形態の違い
サテライトオフィスは、企業の本社や営業所から離れた場所に設置されるオフィスで、主に従業員の働きやすさの向上を目的として設置されます。
通常のオフィス形態である支社や営業所が、事業活動や業務の展開に重きを置いているのに対し、サテライトオフィスは通勤の利便性や働きやすさを重視して設計されています。
小規模でありながら必要な通信環境や設備が整っていることが特徴で、テレワークに近い感覚で働くことが可能です。
ほかにも、営業職など外回りの多い職種の打ち合わせや接客の場所としての利用も可能で、幅広いシーンでの活用が想定されます。
政府が推進する働き方改革とも関連性が高く、新たな働き方に対応するための拠点として注目されています。
サテライトオフィスの種類
サテライトオフィスは、1つの企業が専用で利用する専用型、1カ所で複数のオフィスが共有する共有型の2種類です。共有型にはシェアオフィスやレンタルオフィスがありますが、専用型も、自社運営によるもののほかに、シェアオフィスやレンタルオフィスを利用するものがあります。
また、サテライトオフィスは設置する場所によって、「都市型」「郊外型」「地方型」の大きく3つに分けられます。それぞれの概要は次のとおりです。
・都市型サテライトオフィス
本社が地方にある企業が営業所に近い形で都市部に設置するタイプ、もしくは都市部に本社を持つ企業がBCP対策や社員の通勤時間削減を目的として設置するタイプです。
・郊外型サテライトオフィス
都市部に本社を持つ企業が社員の通勤時間削減を主な目的として、郊外に設置するタイプです。郊外に住む社員が多い企業では、このタイプのサテライトオフィスが多く利用されています。
・地方型サテライトオフィス
都市部に本社を持つ企業が、地方へ進出する足掛かりとして設置する、もしくは人材確保のため、地方採用した社員が都市部に移転しなくても地元で働けるように設置するタイプです。また、都市部に住む社員の地方移住を推進し、その拠点として設置する場合もあります。
オフィス分散について詳しく知りたい方は、『オフィス分散とは?注目される背景やメリット・デメリット、導入のポイントを解説』の記事もご覧ください。
オフィス縮小化について詳しく知りたい方は、『進むオフィスの縮小化。その背景と効果的な進め方のポイント』の記事もご覧ください。
サテライトオフィスのメリット
自社運営型、シェアオフィス、レンタルオフィスに共通する、サテライトオフィス導入の主なメリットは次のとおりです。
社員の通勤時間が短縮され交通費の削減、負担軽減が実現する
サテライトオフィスを導入すれば、これまでかかっていた交通費が減る可能性があるなど、固定費を削減できます。また、通勤時間の短縮は企業だけではなく社員側にとってもいくつかのメリットが生まれます。
例えば、通勤時間が片道1時間30分かかるとして、自宅から15分の場所にサテライトオフィスがあれば、往復で2時間30分短縮されます。2時間30分を家族と過ごす時間にしても構いませんし、読書や資格取得のための勉強時間にしても構いません。プライベートの時間がどのくらい生まれるかは人によって異なりますが、いずれにしても自由になる時間が増えるのは大きなメリットです。
また、特に都市部に本社がある場合、多くの社員は満員もしくはそれに近い乗車率の電車で毎日通勤しています。サテライトオフィス導入により、満員電車での通勤がなくなれば、自由時間の増加だけではなく、ストレスや健康被害からの解放にもつながるでしょう。
あわせて、『通勤時間を短縮するには?サテライトオフィス導入でワークライフバランスを実現』の記事もご覧ください。
地方に住む優秀な人材の確保が可能になる
サテライトオフィスの導入は、地方に住む優秀な人材の確保にも大きな効果を発揮します。業種や企業規模にもよりますが、支店や支社を設立するには、それなりの設備や人員の確保が必要です。社員一人を雇用するのにわざわざ支店や支社を設立するのは現実的ではありません。
しかし、サテライトオフィスの場合、1~3人程度で通常業務ができる規模のオフィスがあればすぐに開設可能です。そのため、これまでは本社へ通勤できる圏内のみでしかできなかった採用活動を全国に拡大でき、優秀な人材の確保が可能になります。
既存社員の離職防止につながる
サテライトオフィス導入メリットは既存社員の離職防止にも貢献します。育児や介護などで長時間自宅を離れられない社員にとって在宅勤務は最適ではありますが、小さなお子さんや介護が必要な方がいた場合、業務に集中できない場合もあるでしょう。その点、サテライトオフィスに時短勤務を組み合わせれば、自宅から近い場所で安心して働けるようになります。
また、病気やケガで長時間の電車通勤が難しい社員にとってもサテライトオフィス導入は大きなメリットです。これまでは職場復帰が難しく退職せざるをえなかった社員の離職防止につながり、人材不足解消にも効果を発揮するでしょう。
従業員満足度について詳しく知りたい方は、『従業員満足度を向上させることのメリットとその方法』の記事もご覧ください。
在宅勤務での課題が解消される
在宅勤務での課題として、通信環境の整備とセキュリティリスクが挙げられます。自宅では業務以外でもインターネットを利用します。また、社員が家族と同居している場合は、家族もインターネットを利用します。その整備に企業がどこまで負担すべきかは大きな課題です。
セキュリティリスクも同様で、社員によってはセキュリティへの意識が低く、情報漏洩やウイルス感染などのリスクが生まれやすくなります。
サテライトオフィス導入は、会社として管理ができるようになるため、通信環境はもちろん、セキュリティも在宅勤務に比べればリスク低減が可能です。基本的に1人ではなく複数人で業務を行うため、相互監視もでき、情報漏洩やウイルス感染リスクも低減できるようになるでしょう。
在宅勤務について詳しく知りたいかたは、『在宅勤務の問題点とは?生産性を維持するためには何をすべき?』の記事もご覧ください。
また、サテライトオフィスを導入することで、自社運営型、シェアオフィスまたはレンタルオフィスのそれぞれのメリットも期待できます。
サテライトオフィスのデメリット
多くのメリットを持つサテライトオフィスですが、自社運営型、シェアオフィスやレンタルオフィスを利用する場合でそれぞれ次のようなデメリットも考えられます。
サテライトオフィスを設置するためのコストがかかる(自社運営型)
在宅勤務の場合、社員が自宅で業務をするため賃料はかかりません。しかし、サテライトオフィスの場合、オフィスを借りるための賃料(保証金、敷金、礼金、共益費など)のほか、オフィス用品、OA機器などさまざまなコストがかかります。初期費用はもちろん、運営費もかかってしまうのはデメリットの一つです。
他社に情報がもれるリスクがある(シェアオフィスやレンタルオフィスを利用する場合)
オフィス家具やOA機器購入費用を抑える目的でレンタルオフィスを利用する場合、注意しなくてはならないのが情報漏洩リスクです。特に、個室ではなくオープン型のレンタルオフィスの場合、パソコンを開いたまま離席する、周囲に聞こえる声で電話やミーティングをするといった行為は非常に危険です。
本社とのコミュニケーションロスが生じやすい
サテライトオフィスでの勤務が中心となるケースでは、本社との物理的な距離がコミュニケーションの希薄化につながることがあります。
対面でのやり取りが減少すると、従業員同士や管理職との信頼関係が構築しにくくなり、マネジメントが難しくなったり、業務効率の低下を招いたりする可能性があります。
そのためサテライトオフィスにはICT設備を積極的に導入し、定期的なオンラインミーティングや情報共有を行いながら運営する必要があります。
サテライトオフィス導入時のポイント
サテライトオフィスのデメリットを解消しつつ導入を進めるには、コスト低減とセキュリティリスク解消が欠かせません。これらの解決に向けた具体的なポイントは次のとおりです。
サテライトオフィス導入コスト低減のポイント
サテライトオフィス導入費用相場の確認
コスト低減、1つ目のポイントは、サテライトオフィス導入に関するコストの相場を把握することです。「都市型」「郊外型」「地域型」それぞれでかかる費用の内訳や賃貸料相場は異なります。まずは自社がどの形でサテライトオフィスを導入するのかを明確にし、そのうえでおおよその費用相場を確認しましょう。
導入費用については、『サテライトオフィス導入にかかる費用は? 種類別の費用や導入ポイントを解説』もご覧ください。
補助金や支援制度の活用
国や地方自治体ではサテライトオフィスの導入推進を行っているため、導入を進めている企業には補助金や支援制度の提供を行っています。サテライトオフィスの整備や改修、運営、オフィス家具や用品、OA機器の購入などに対して要件を満たせば補助金が出ますので、詳細は各地方自治体で確認してください。
また、特に地方でサテライトオフィス導入を検討している企業に対しては、地方自治体がオフィスとなる物件を安く提供もしくはお試し利用を行っています。これらの制度を活用すれば、導入や運営にかかるコストの低減も可能です。
補助金については、『サテライトオフィスのメリットとは? 開設で利用できる補助金申請の方法を解説』の記事もご覧ください。
サテライトオフィスでのセキュリティリスク解消のポイント
もっともセキュリティリスクを抑えられるのは、自社運営型の利用です。ただ、シェアオフィスやレンタルオフィスを利用する場合、共有型であれば、まず実験的に導入し、個人情報や機密情報などを扱わない簡単な業務から始めます。その後、社員に対するセキュリティ教育と対策を徹底し、少しずつ業務の幅を広げていくのがよいでしょう。
また、ある程度、成果が出ることが確認できたら専用型への移行も検討します。そうした形で少しずつ拡大していくことがリスクを減らし、成果を高めるためのポイントといえるでしょう。
セキュリティについて詳しく知りたい方は、『オフィスの安全を守る!セキュリティソリューションまとめ』の記事もご覧ください。
サテライトオフィスの成功事例2選
国のかかげる働き方改革を推進するため、多くの企業でサテライトオフィスの設置が進められています。
ここでは、さまざまな目的で設けられたサテライトオフィスの事例を紹介します。
森村商事株式会社

森村商事株式会社は、国家戦略特区に指定された銀座虎ノ門駅前の新ビルにサテライトオフィスを開設しました。
旧本社跡地に建てられた新たなオフィスビルに設置され、来客対応や海外のビジネスパートナーを迎えることを目的とし、応接室やギャラリースペースを中心に設計されています。
また設置にあたっては社員の意見を反映させており、社員が利用できる多機能なワークスペースも併設されました。
接客の場でありながらも東京本社との使い分けが可能となり、業務の柔軟性向上につながっています。
同社の歴史を伝えるギャラリースペースでは、ディスプレイ用ミラーガラスで森村商事の現在を伝える映像を流すほか、タッチパネルを用いて同社の歴史を紹介するデジタルアーカイブを設置。
応接室にはニューヨーク支社の創業期をイメージした写真や内装が施され、訪問者に同社の伝統を伝えています。
このほかVIP会議室やカフェラウンジ、少人数用ブースなど、多様な機能を備えた空間が用意されており、国内外の顧客や社員のニーズに応える設計となっています。
某人材育成支援会社

某人材育成支援会社は増員および業務拡大に伴い、ビルの地下階から最上階へとオフィスを移転しました。
このサテライトオフィスは約300㎡の広さを誇り、主にWEB企画・製作部門が拠点として使用しています。
特徴的なのは、鋭角なフロア先端にある大きな曲面窓。昼間は光が降り注ぎ、夜には新宿副都心の夜景を楽しめるロケーションを活かし、打合せやサテライト席として全員が利用できるスペースが設計されています。
またエントランスから会議室、執務スペースに至るまで、緑化素材やタペシートを用いた視覚的な工夫が随所に施され、訪問者には落ち着きと洗練さを伝えています。
会議室には大型モニターが設置されており、「SUN」と「MOON」でそれぞれオレンジとブルーを基調としたテーマカラーを採用することで、シーンによって使い分けています。
サテライトオフィス成功のポイントはスモールスタートで始め徐々に拡大していくこと
在宅勤務を基本としたテレワークは、社員のライフワークバランス向上や、休職、退職をせざるをえない社員の仕事復帰を可能にするなどのメリットを生み出しました。しかし、自宅ではさまざまな課題があり、思ったように導入が進められないケースも増えています。そこで、そうした課題を解消できるとして注目を浴びているのがサテライトオフィスです。
ただし、ひと口にサテライトオフィスといってもさまざまな種類があります。自社にはどういったタイプが適しているのか、自宅勤務の課題を本当に解消できるのかなど、十分に検討したうえで、まずはスモールスタートで始めていくことをおすすめします。
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