導入進むテレワーク、そのメリットと課題を考える

ワークスタイル

最近では在宅勤務や時短労働など、柔軟な働き方を認める企業も増えてきました。「働き方改革はどうして進まない?その課題について考えてみよう」でもみたように、日本の労働人口の減少は大きな問題となっており、どの企業でもワークスタイルの見直しは必須ともいえます。

こうしたなか、近年注目されているのがテレワークという働き方です。一体どのようなものなのか、メリットやデメリットとあわせてご紹介しましょう。

政府も推進を進めるテレワークとは

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した、時間や場所にとらわれない働き方のこと。「テレワーク(telework)」の「テレ(tele)」はギリシャ語で「遠く」を意味します。つまり、オフィスから遠くで離れた場所で働くということです。

社内チャットツールやビデオ会議システムなどを使うことにより、遠隔地にある拠点や自宅で勤務する人とも、同じオフィス内で働いているのと同じように、スムーズにコミュニケーションをとることができます。総務省の分類によると、テレワークには主に「雇用型」「自営型」の2つの種類があります。

雇用型テレワーク

企業に勤務する被雇用者が行うテレワークのこと。自宅を就業場所とする「在宅勤務」、外出中の社員が移動中などに行う「モバイルワーク」、遠隔地のサテライトオフィスやスポットオフィスなどで行う「施設利用型勤務」などの形態があります。

自営型テレワーク

個人事業者や小規模事業者など、企業に所属しない人が行うテレワークのこと。主に専業性が高い仕事を行い、独立自営の度合いが高い「SOHO」や、他の人に変わることが容易で独立自営の度合いが薄い「内職副業型勤務」などの形態があります。

参考:テレワークの意義・効果 | 総務省

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テレワークには企業側、労働者双方にたくさんのメリットが

テレワークは現在、政府も特設サイトを整備するなど、多方面から注目されている新しい働き方のひとつですが、そこまでして推進する理由はどこにあるのでしょうか。総務省のサイトによると、以下のようなメリットがあるとされています。

  • 少子高齢化対策の推進:育児や介護と仕事の両立、労働人口の減少への対応など
  • ワーク・ライフ・バランスの実現:家族と過ごす時間の増加、安心して子育てできる環境の実現など
  • 地域活性化の推進:Uターン、Iターンなどによる地域活性化
  • 環境負荷軽減:交通代替によるCO2の削減など
  • 有能・多様な人材の確保、生産性の向上:柔軟な働き方の実現により、有能・多様な人材を確保する
  • 営業効率の向上・顧客満足度の向上:顧客訪問回数の増加、迅速な顧客対応の実現など
  • コスト削減:オフィスコストや通勤にかかる交通費の削減
  • 非常災害時の事業継続:災害時やインフルエンザ流行時など非常時でも事業の継続性が保たれる

参考:テレワークの意義・効果 | 総務省

このうち、特に企業として注目したいのは「営業効率の向上・顧客満足度の向上」「コスト削減」ではないでしょうか。テレワークにより、さらにきめ細かな顧客対応が実現し、さらにオフィスコストの削減にもつながれば、オフィスを運営するコストパフォーマンスを大きく改善することにつながります。
また、長期的には「少子高齢化対策の推進」や「有能・多様な人材の確保、生産性の向上」といったメリットもあります。労働人口が減少し続けている現在では、優秀な人材の確保はどの企業にとっても避けられない課題です。採用活動の際に優秀な人材の確保がしやすくなるというメリットは、特に人事に携わる人にとっては見逃せないポイントではないでしょうか。

一方、労働者の視点に立ってみると「少子高齢化対策の推進」や「ワーク・ライフ・バランスの実現」が大きなメリットとなるでしょう。育児や介護と仕事を両立することができれば、慣れた職場を無理に離れることもなく、安心してライフイベントを迎えることができるようになります。もちろん、こうした安心感が生活の質や働くモチベーションを向上させることにつながるのはいうまでもないでしょう。

テレワーク導入にはいくつかの課題も

このようにテレワークには数多くのメリットがありますが、実際に導入してみるといくつかの課題があることも明らかになっています。以下、テレワーク導入時に考えられる問題点をご紹介しましょう。

労務管理の問題

サテライトオフィスや自宅など遠隔地で働く社員は、常に仕事の様子が見えるわけではないため労務管理が難しいという問題があります。特に、いつでもどこでも仕事が出来るとなると、公私の区別がつきにくくなり、長時間労働につながりやすいという指摘もあります。

こうした事態を防ぐためには、定期的に勤怠報告を受けられるような仕組みを作るとともに、新しい人事評価制度の導入も検討する必要があります。例えば、勤務時間ではなく、業績や目標の達成度合いでその人の働きぶりを評価する「目標管理制度」などはその一例といえるでしょう。

情報通信システム導入によるコストと手間がかかる

いうまでもありませんが、テレワークを始めるためには社内チャットツールやビデオ会議システムなど遠隔地にいる人とコミュニケーションをとるためのシステムを導入する必要があります。コミュニケーションのとりやすさや導入コストを踏まえながら、自社の業務にあったシステムを検討する必要があります。

また、社外からネットワークにアクセスすることを考えると、セキュリティ対策も十分に行っておく必要があります。機密データの社外持ち出しや個人情報の漏えいは、悪意ある第三者だけでなく、社員の不注意により起こるケースもあります。こうした事態を招くことのないよう、情報運用のガイドラインを整備するなどして、しっかりと対策する必要があります。

テレワークのための社内システム構築について詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。

企業・従業員双方にメリットのあるテレワーク、社内システム構築のポイントは?

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テレワークの具体的事例とは

ここまで見てきたように、テレワークには大きなメリットがあるものの、導入のためには解決しなければいけない課題も多いです。そのため、二の足を踏んでいる企業も多いのではないでしょうか。

そこで、すでにテレワークを導入している企業の取り組み内容や効果を事例としてご紹介します。自社で導入する際の参考にしてみてください。

IT機器の活用でシームレスなコミュニケーションを実現:株式会社キャタラー

まずご紹介したいのは、静岡県掛川市に本社を置き、排ガス浄化触媒や活性炭などの開発・製造・販売事業を手掛ける株式会社キャタラーの事例です。同社では週2日を上限に、従業員の必要に応じて在宅勤務もしくはモバイル勤務を認める制度を実施しました。

テレワークの導入においては社外にいる従業員がどうやって業務を遂行するか、その環境整備がポイントとなります。同社では在宅勤務の社員はリモートデスクトップ接続により、自宅から社内のパソコンを操作、またモバイル勤務の社員はVPN接続により社内ウェブシステムを閲覧可能にすることでその問題を解決しました。また、チャットや音声チャット、ウェブ会議システムといったものを併用することでシームレスなコミュニケーションを実現しています。

同社では国内だけでなく海外への販促活動も行っており、国内外への移動が増加していました。テレワーク制度を導入することで、社員のライフイベントに柔軟に対応できることはもちろん、新しいツールやルールを整備するなかで、通常勤務するオフィス以外の場所でも生産性の高い働き方ができることが分かり、大きな成果になったといいます。同社の事例は、製造業でありながらテレワークを実現した珍しい例といえるのではないでしょうか。

【参考】テレワーク導入支援事例集(PDF)| 総務省

入念な事前研修が導入成功の要因に:株式会社ブルックスホールディングス

テレワークは自宅勤務やモバイル勤務だけでなく、サテライトオフィスも対象にしています。その好例としてご紹介したいのが神奈川県横浜市でコーヒーやお茶類の通信販売事業を手掛ける株式会社ブルックスホールディングスの事例です。

同社では、社員の通勤や移動が長時間にわたるため、時間のロスが大きいという課題を抱えていました。この課題を解決するべく、同社ではこれまで自社のサーバールームとして使用していた場所に執務スペースを設置し、サテライトオフィスを開設しました。業務においてはスケジュールやタスクの進捗管理が行えるクラウドサービスを活用、さらにウェブ会議システムやチャットを活用することで、通常のオフィスにいるのと同じようにコミュニケーションが取れるよう、業務環境を整備しました。

現在は多くの社員がこのサテライトオフィスを活用しているものの、導入検討時はサテライトオフィスについて全社的な理解を得られているとは言い難い状況でした。そのため、テレワークに関する啓蒙やトライアルも兼ね、事前研修や入念な打ち合わせを実施。結果として、社内の理解を得られたことはもちろん、開設に向けた具体的なイメージの共有やサテライトオフィス利用時のルール整備につながったのだとか。今後はこの成果をもとに、ホールディングス全体で導入を進め、より幅広い業務が行える場にするための検討を進めたいとしています。

【参考】テレワーク導入支援事例集 (PDF)| 総務省

新しい働き方のひとつとして、導入を検討してみては?

社員のワーク・ライフ・バランス実現だけでなく、優秀な人材の確保やコスト削減など企業側にとっても多くのメリットがあるテレワーク。もちろん、どんな業態・業種にも適していると言い切れるものではありませんが、自社でも導入できる余地がないか、検討を進めてみてもいいのではないでしょうか。