ハイブリッドワークとは?テレワークの定着を実現させるポイントと注意点

ワークスタイル
ここ数年で一気に導入が加速したテレワーク。しかし、業務によっては対面のほうが効率的に進められる場合もあり、オフィスワークの重要性も見直されつつあります。そこで、今回はテレワークの導入を進め、多様な働き方を実現させる施策のひとつであるハイブリッドワークについて、その概要やメリット・デメリット、ハイブリッドワークを成功させるポイントや適したオフィス環境などの観点で解説します。
ハイブリッドワークとは?
ハイブリッドワークとは、テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方を指します。具体的には、出社、在宅を含め柔軟な働き方を社員が選択できる働き方です。また、企業によっては、次のような形でテレワークとオフィスワークを分けるのもハイブリッドワークと呼びます。
- 状況に応じてテレワークとオフィスワークに分ける
育児や介護などにより毎日の出社が難しい社員以外の社員が状況に応じてオフィスワークとテレワークを行う方法。
- テレワーク希望者のみ、テレワークを導入する
テレワークを希望する人を募り、希望した社員は基本的にテレワークで働き、それ以外の社員は状況に応じてテレワークを行う方法。
つまり、テレワークとオフィスワークどちらか一方だけを選択するのではなく、社員の事情や考え方により、働く場所を自由に選択できるようにしようというのがハイブリッドワークの基本的な考え方です。
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ハイブリッドワークのメリット
ハイブリッドワークを導入することで得られるメリットはさまざまですが、そのなかでも主なものとしては次の点が挙げられます。
- 多様な働き方の実現
ハイブリッドワークでは、テレワーク・オフィスワークどちらかに限定するのではなく、本当の意味で社員の自主性に任せた働き方が可能です。その結果、会社側からの押し付けや決まりごとではなく、本人の意思による多様な働き方が実現します。
- 社員が主体性を持って働けるようになる
会社でテレワークを導入したからそれに従いテレワークを行うのではなく、自身の状況や働き方に合わせ、自身でテレワークにするかオフィスワークにするか、もしくは両方を使い分けるかといった選択をします。そのため、結果として社員が主体性を持って働けるようになるでしょう。
- 生産性が向上する
業務には、オフィスワークに適したもの、テレワークに適したものがあります。例えば、打ち合わせで細かいニュアンスを伝えなければならない業務はオフィスワークが適しています。逆にデータ入力や分析といった個人で行う業務であれば、多くの場合、テレワークでも問題ありません。ハイブリッドワークでは、これらを使い分けられるようになり、結果として生産性向上が期待できます。
- 柔軟なオフィススタイルの構築が可能になる
テレワークを選択する社員がいれば、同時に出社する社員の数が減り、オフィススペースの有効活用が可能になります。これまでは難しかった休憩室の拡張や集中ブースの設置、パーソナルスペースの拡張なども可能です。
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ハイブリッドワークのデメリット
多くのメリットを持つハイブリッドワークですが、デメリットがないわけではありません。特に次に挙げる点に関しては、通常のテレワーク導入以上に注意しなければならないでしょう。
- 社員の勤怠管理が煩雑になる
テレワークは社員の勤怠管理が難しいとよく言われますが、ハイブリッドワークは、テレワークとオフィスワークが組み合わさるため、さらに管理が煩雑になります。「勤怠管理ツールを活用する」「グループウェアや社内SNSを導入する」などの工夫が必要になるでしょう。
- 予定外の業務が入った時の対応が困難になる
緊急の業務が入ったり、トラブルが発生したりしてミーティングが必要になった場合、担当の社員がテレワークでオフィスにいないといったことが起こる可能性があります。前述した勤怠管理に加え、どこにいてもすぐにミーティングが行えるよう、Web会議ツールやチャットツールなどの準備も欠かせません。
- 評価制度で不公平感が生まれる可能性がある
前述したように緊急の業務が発生して対応が必要になった場合、オフィスにいる社員に依頼せざるを得なくなります。そのため、どうしてもテレワークよりオフィスワークを中心に働く社員の評価が高くなってしまう可能性が高まるでしょう。そうした状況が続けば、必然的にテレワークを行う社員が減り、ハイブリッドワークが形骸化してしまいます。
ハイブリッドワークを成功させるポイント
ハイブリッドワークのメリットを生かしつつ、デメリットを解消し、導入を成功させるためには何をすべきなのでしょう。そのポイントとしては次の3点が挙げられます。
- 出社日数のルールを細かくしすぎない
例えば週に2回は必ず出社すると決めてしまうと、かえって業務効率が落ちてしまう場合があります。テレワークを行う社員のオフィス出社に関するルールは、細かい数字を決めず、社員が柔軟な選択をできるようにしましょう。また、全社でルールを統一させるのではなく、部署ごとの業務内容に応じてルールを策定したほうがより効率的です。
- セキュリティ教育の徹底
テレワークは、在宅勤務以外にモバイルワークやサテライトオフィス、コワーキングスペース、シェアオフィスなどでの業務も含まれます。そのため、ほかの企業の社員が同じ場所で働くことも珍しくありません。そこで、セキュリティソフトやセキュリティ管理ツールを搭載したデバイスの貸与はもちろん、社員に対するセキュリティ教育の徹底も重要です。
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- 属人性に頼らない業務形態の整備
取引先から連絡が来た際、テレワークを行っている社員しかできない業務があると、スピーディーな対応が難しくなります。多様な働き方を実現したものの、業務に滞りができてしまっては意味がありません。
また、そうした状況が続けば業務が滞るだけではなく、競合に乗り換えられてしまうリスクも発生します。そこで、オフィスワーク・テレワークにかかわらず誰もが複数の業務に対応できる態勢を整えておくことが重要です。
ハイブリッドワークに適したオフィス環境
ハイブリッドワーク導入を成功させるには、テレワーク環境の整備だけでなく、オフィスワーク時のオフィス環境の整備も欠かせません。そこで、ハイブリッドワークに適したオフィス環境を整備するポイントを紹介します。
- フリーアドレスの導入
ハイブリッドワークでは出社しない社員が多くいるため、オフィスレイアウトはフリーアドレスが前提です。ただし、職種によっては顔を合わせた密な連携が求められるケースも少なくありません。そのため、一部で固定席や、部署ごとのフリーアドレスを採用するのも有効です。
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- コミュニケーション活性化の仕組みを強化する
テレワークを行う社員が増えると、どうしても対面でのコミュニケーションが減少してしまいます。マグネットスペースやカフェスペース、ハドルルームなど、社員がコミュニケーションを行えるスペースを設置しましょう。
もちろん、テレワークの社員が増えてもチャットやグループウェアなどで業務に欠かせない情報共有は可能です。しかし、オフィスにいるときのようなちょっとした雑談は難しくなります。そこで、上述したようなスペースを設置すれば、テレワークの社員が出社した際にコミュニケーションがスムーズに行えるようになるでしょう。
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- 空いたスペースを効率的に活用する
これまでのオフィススタイルに固執せず、「打ち合わせ用のブースを増やす」「オフィスの一部をショールーム化させる」「セミナールームをつくる」など、空いたスペースを効果的に活用しましょう。それが結果として生産性の向上にもつながります。
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ハイブリッドワークに欠かせない環境
テレワークとオフィスワーク双方を効果的に取り入れ、ハイブリッドワークを成功させるポイントとして、オフィス以外では次のような環境整備も必要です。
- 業務内容に応じたツールの導入
「プロジェクト管理ツール」「社内SNSやグループウェアのようなコミュニケーションツール」「Web会議システム」「勤怠管理ツール」「フリーアドレス導入時の席予約システム」など、テレワークとオフィスワークの社員をつなぐためのツールは必須です。誰がどこで働いているのか、コミュニケーションを取れる状態をつくれるかが重要になるためです。業務内容や企業規模に応じて適切なツールを選択しましょう。
- テレワークが不利にならないような評価制度の策定
社員の主体性を育成するためにも、テレワークをすると評価が下がるといったことのないよう、オフィスワークとテレワークで評価に差が出ないルール策定を行います。また、オフィスワークと変わらない業務ができるよう、在宅勤務の社員用に通信環境の整備やパソコン・スマートフォンの貸与も欠かせません。
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ハイブリッドワークによる多様な働き方の実現により社員の主体性向上も可能に
企業側が社員の都合にかかわらずテレワーク導入を決めてしまうやり方は、確かに多様性を確保できるものの、社員の主体性は育ちません。また、業務内容によってはオフィスワークのほうが適している場合もあり、完全テレワーク制はメリット以上にデメリットが多くなってしまう可能性もあります。
ハイブリッドワークはこれらの課題を解消するために非常に有効な施策で、「多様な働き方」「生産性の向上」に大きく貢献するでしょう。特に、テレワーク、オフィスワークを状況に応じて社員が選択できるようにすれば、自ずと社員の自主性も高まり、さらなる生産性向上も期待できます。
ただし、マネジメント側でオフィスワーク中心の社員を優遇するといったことが起きると、誰もテレワークをしなくなってしまいハイブリッドワークは失敗に終わってしまうでしょう。これを避けるためにも、明確な評価制度を策定したうえで、導入を進めていくことが、成功のポイントとなります。
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