コロナ禍が落ち着きを見せるなか、テレワークを継続するか、あるいはハイブリッドワークへの移行を進めるかどうかで悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。今回、初めてテレワークを導入した企業も多くメリットと同時にさまざまな課題も見えたなか、これからも継続していくにはどのような点に注意すればよいのかをお伝えします。また、テレワーク継続のひとつの形として「ハイブリッドワーク」のメリットについても解説します。
ハイブリッドワークについては、『ハイブリッドワークとは?テレワークの定着を実現させるポイントと注意点』の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
テレワークは継続すべき?
テレワークを「継続する」「廃止する」どちらにしても前提として考えるべきは、感染症対策はひとつのきっかけに過ぎないという点です。元々は新型コロナウイルス感染拡大防止対策として導入したとしても、その結果、「生産性が向上した」「従業員のワークライフバランスが向上した」などメリットが多ければ継続すべきでしょう。
逆に、「コミュニケーションが取れず非効率になった」「労務管理が難しく管理職の手間が増えた」などデメリットのほうが多ければ、廃止するか、もしくは対策を考えたほうがよいでしょう。
どちらにしても感染症に罹患するリスク低下は、継続・廃止どちらかに決めるための判断材料ではないことは理解したうえでテレワーク継続の要否を検討する必要があります。
また、継続・廃止だけではなく、第三の選択肢であるハイブリッドワークの導入もあわせて検討するとよいでしょう。テレワーク、オフォスワークのどちらにもメリット・デメリットがあり、どちらかに限定するよりも双方のメリットを活かしたほうが、快適な労働環境が実現しやすくなります。
テレワークの廃止について考えている方は、『テレワークを廃止・縮小する前に企業が知っておくべきポイントを解説』もご覧ください。
テレワークの有効性と課題
テレワークを継続する場合、現状のメリットとデメリットを洗い出し、検証をしたうえで良かった点は残しつつ課題点は解決していかなくてはなりません。今後もテレワークを継続していくうえで、一般的な有効性と課題としては次の点があげられます。
テレワークの有効性
テレワークの有効性は「生産性やワークライフバランスの向上」などがありますが、それ以外では次のような点が挙げられます。
新規採用や既存社員の確保につながる
テレワークを導入していることが、就活を行っている学生にとって会社選びの重要なポイントになっています。
2021年10月1日、株式会社DYMが、就職活動中の学生を対象に行った就職活動に関するアンケート調査の結果を発表しました。このなかの、「入社する時に重視する項目」への回答を見ると、「テレワーク・リモートワークなど場所にとらわれない働き方」が24%で第3位でした。
そして2位も、「男女に関わらず育児や介護と両立できる業務制度の推進(26%)」と、柔軟な働き方を求める声が大きくなっています。
優秀な社員であるにもかかわらず、育児や介護を理由に退職せざるを得なくなれば、それは会社にとっても大きな損失です。テレワークを継続していれば、育児や介護があっても退職することなく継続して働けるため、既存社員の離職も防止しやすくなるでしょう。
また、2021年10月15日、ソニービズネットワークス株式会社が運営する総務関連情報サイト「somu-lier」が発表した、「テレワーク/健康管理実態調査」の結果を見ると、現状テレワークを行っている従業員に対し、「今後もテレワークを継続したいか」と尋ねたところ、87%が「継続したい」と回答しています。
さらに業種にもよりますが、テレワークであれば場所にこだわる必要がないため、採用の対象を全国に広げることも可能です。その結果、より自社に合った人材の獲得がしやすくなるでしょう。
これらの結果から、新たな人材の獲得、そして優秀な既存従業員の確保を実現するうえで、テレワークを継続する意味は大きいといえるでしょう。
災害時や感染症拡大時の事業継続が可能になる
台風や電車の事故などオフィスワークでは突発的なトラブルにより出社できなくなるケースも少なくありません。また、今回の新型コロナウイルス感染拡大のような危機が二度と起こらないともいえないでしょう。
テレワークを廃止してしまうと、万が一の際にまたすぐに対応するのは簡単ではありません。しかし、テレワークを継続していれば、そうした際にもすぐに対応しやすく、スムーズに事業を継続することも可能になるでしょう。
テレワークのメリットについては、『導入進むテレワーク、そのメリットと課題を考える』もご覧ください。
テレワークの課題
テレワークを継続するためには、解消しておくべき課題として次のものがあげられます。
社内・取引先とのコミュニケーション不足
テレワークの課題として常にあげられるのが、オフィス内で働く社員や取引先とのコミュニケーション不足です。対面でのコミュニケーションが減ることで、「どうしても細かいニュアンスが伝わらない」「日常的な雑談ができない」などの課題が生まれます。
セキュリティ対策
緊急事態宣言が解除されたことで、サテライトオフィスやコワーキングスペースの利用がこれまで以上に増加しました。その結果、別会社の社員と隣同士で働く機会が増えるため、セキュリティリスクが高まります。
労務管理がしにくくなる
テレワークでは通勤がなくなるため、仕事の開始・終了のきりが付きにくくなり、業務時間外にメールチェックや残務作業をしてしまい、結果として長時間労働になりがちです。逆に監視の目が行き届かなくなるため、つい仕事をさぼってしまいがちになる可能性も少なくありません。
また、在席確認がしにくく、いつ働いていていつ休んでいるかがわからない場合もあり、労務管理が困難になります。
モチベーションの維持が難しい
オフィスワークであれば周囲に同じ仕事をする同僚や上司がいるため、困ったことがあってもすぐに相談ができ、モチベーションを維持しやすくなります。これに対し、テレワークは、基本的に一人で仕事をするため、モチベーションを維持するのが難しくなる場合もあるでしょう。
テレワークを継続する場合のポイント
テレワークを継続するためには、前項であげた課題の解決が欠かせません。そこで具体的な解決法として次の2点を紹介します。
ハイブリッドワークの導入
オフィスワークとテレワークを融合させたハイブリッドワークの導入は、テレワークの継続に大きく貢献します。テレワークを行いつつ、週に1~2日はオフィスに出社することで、「コミュニケーション不足の解消」「業務によって最適な環境を選択できることによる生産性の向上」などが実現する可能性が高まります。
特に新卒や中途採用の社員、他部署から異動してきた社員などは、完全テレワークにしてしまうと業務を覚えられない、わからないことがあっても他の人に聞けないといったことが起こりがちです。しかし、ハイブリッドワークであれば、出社日にしっかりと教育を行い、テレワーク時には一人でもできることをやれるため、メリハリもついて仕事もやりやすくなるでしょう。
また、ある程度、働く場所の選択権限を従業員に与えることによって、満足度の向上につながる効果も見込め、モチベーション低下の防止にもつながります。
なお、ハイブリッドワーク導入時には、普段テレワークの社員がオフィスに出社しても違和感なく業務ができるようなオフィスレイアウトが欠かせません。具体的には、コミュニケーションを取れる場と一人で集中して働ける場の両方を用意し、業務内容によって使い分けられるようにするのがおすすめです。
プラスでは、新しいオフィスレイアウトの形として「PEERence」を提案しています。これは、オフィススペースを、部署やチームで連携が取れるゾーン、部署やチームを超えたコラボレーションが行えるゾーン、そして一人で集中して働けるゾーンの3つに分けるアイデアで、ハイブリッドワークに最適なオフィススタイルを実現できます。
セキュリティソフト、ツールの導入
ノートパソコンやスマートフォンなどには、万が一、盗難や置き忘れが起きた際にすぐロックができるよう、セキュリティソフトやツールを導入します。これにより、コワーキングスペースやレンタルオフィスでのセキュリティリスク軽減が可能です。
ITツールの有効活用
テレワークを円滑に進めるにはITツールの導入が必須ですが、導入しただけでは課題の解決にはつながりません。重要なのは、ITツールの使い方を把握して適切に活用することです。具体的には次のような活用方法が考えられます。
- Web会議システムをつなぎっぱなしにする
Web会議システムをつなぎっぱなしにすることで、テレワークを行っている社員が常にオフィスの状況を確認できるようにします。これにより他の社員の状況がわからず声をかけにくい、連絡のタイミングが掴みにくいといったデメリットの解消も可能です。 - チャットサービスを使い、メールよりも気軽にやり取りできる環境をつくる
チャットサービスはメールよりも気軽なコミュニケーションが取れるため、オフィスと自宅をつなぐのに最適なツールです。ただし、チャットを使う際にはルールの策定も欠かせません。「お疲れ様です」「お忙しいところ恐れ入りますが」といった断りは使わない。できるだけ1対1ではなく、全員が見える場所でやり取りするなど、より気軽に使えるルールを策定し、全員が遵守することが重要です。 - プロジェクト管理・労務管理ツールとチャットサービスを連携させる
テレワークをする社員の業務進捗状況を把握しにくいといった課題を解消するには、プロジェクト管理ツールが欠かせません。また、出退勤時間の管理もテレワークの課題のひとつです。
これらの管理はツールの活用が必須ではありますが、ツールを使いこなせない社員がいると、そうした社員の管理が難しくなります。そこで、チャットサービスと連携が可能な管理ツールの導入がおすすめです。
できるだけ簡単な操作で管理できるようにすることで、テレワークの課題解消につながります。
テレワーク継続で成果を上げるにはハイブリッドワークの導入がおすすめ
現在、多くの求職者が企業を選ぶ際、テレワークを実施しているかどうかを条件のひとつとしています。しかし、これからは単純にテレワークを実施しているかどうかではなく、その中身が問われるようになるのは間違いないでしょう。
そうした意味でテレワークの継続は、優秀な人材の確保に大きく貢献する可能性が高いといえます。ただし課題を残したままでは、既存従業員の離職にもつながってしまうでしょう。そのため、テレワーク継続を決断するのであれば、まずは現状の課題を洗い出して解決する必要がありますが、その方法のひとつになり得るのがハイブリッドワークです。
オフィスワークとテレワーク、それぞれのメリットを活かしつつ、より柔軟性のある働き方が、これからの企業にとって理想的な業務形態のひとつとなっていくでしょう。
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