スタートアップやベンチャー企業、もしくは職種によって多くの従業員数を必要としない企業では、経費節減という意味からも小規模オフィスを構えることは珍しくありません。近年では、ハイブリッドワークを導入する企業も増え、小規模オフィスでも効率的にスペースを活用できるようになりました。そこで今回は、従業員が30名前後の企業の小規模オフィスで、快適に働くためのレイアウトについて考察していきます。ハイブリッドワークに対応しやすいレイアウトもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
30名前後の企業に必要なオフィスサイズは?
開業やオフィス移転により新しいオフィスを借りる場合は、従業員数に合わせて適切なサイズのオフィスを借りることが大切です。オフィスサイズが広すぎると無駄なスペースが生まれ、一方で狭すぎると適切な労働環境を整えられなくなります。また、ハイブリッドワークを導入している企業では日によって社員の出社率が変わってくるため、対応しやすいオフィスづくりが必要です。
ザイマックス総研が2022年に行った研究調査によると、東京23区の在籍1人あたりのオフィス面積の中央値は3.66坪で過去最少となりました。出社1人あたりのオフィス面積は4.88坪となっています。つまり、30名前後の企業に必要なオフィスサイズは109.8~146.4坪程度ということです。
同調査から在籍1人あたりのオフィス面積に比べ、出社1人あたりのオフィス面積が大きいことがわかります。テレワークやハイブリッドワークを導入する企業が増え、出社率が低下したためと考えられるでしょう。また、在籍1人あたりオフィス面積が過去最少となった原因は、フリーアドレスや分散型オフィスなどの導入によるものと考えられます。
新しいオフィスを探す場合は、在籍1人あたりのオフィス面積だけでなく、出社1人あたりのオフィス面積を基準に選ぶことが必要です。社員の出社率は企業によって異なるため、自社の出社率がどのくらいなのかを把握したうえで検討しましょう。
小規模オフィスのレイアウト検討がしやすい理由
30人前後の小規模オフィスは、レイアウトの検討がしやすいのがメリットです。また、工夫次第ではオフィスを開設する際にかかる初期費用を低く抑えることができるでしょう。ここでは、小規模オフィスのメリットについて解説します。
自由度が高い
社員が働きやすい環境を整えるためには、オフィスづくりにもできるだけ社員の意見を取り入れたいものです。大規模なオフィスでは、人数が多い分、すべての社員の意見を取り入れることは難しいでしょう。しかし、少人数のオフィスなら意見がまとまりやすく、社員の意向を反映したオフィスづくりを目指せます。デザインやレイアウトに社員の意見を取り入れることで、働きやすい環境が整い、生産性向上にもつながる可能性があります。
統一感を出しやすい
規模が小さいオフィスでは、家具のデザインやインテリアをそろえやすいこともメリットです。デザインに統一感が生まれることで、おしゃれなオフィスづくりが実現できます。統一感のあるおしゃれなオフィスは、社員のモチベーションアップや社員同士のコミュニケーション向上にもつながるでしょう。また、企業のイメージアップにもつながり、新しい人材の採用においても効果が期待できます。
こだわりやすい
オフィスデザインは企業イメージや社内の雰囲気を決める大事な要素です。そのため、コンセプトを決めたうえで、家具やインテリアを決める必要があります。カジュアル、シック、スタイリッシュなど、企業イメージに合うコンセプトを決めることが大切です。小規模なオフィスでは家具やインテリアの存在感が高まるため、コンセプトに合うオフィスづくりが実現しやすいでしょう。
コストを抑えやすい
オフィスの賃料は立地によっても変わってきますが、規模が大きいほど高くなる傾向にあります。また、オフィス家具も数が多いほど、コストがかかります。しかし、小規模なオフィスでは、賃料やオフィス家具の購入などの初期費用を低く抑えられる可能性があります。
小規模オフィスのレイアウトのポイント
小規模なオフィスでは、限られたスペースを活用して効率的に働けるレイアウトにすることが重要です。ここでは、レイアウトを決める際のポイントを解説します。
エリアごとの面積を適切に設定する
快適なオフィス環境を実現するためには、各エリアの面積を適切に設定する必要があります。まず、各エリアがオフィス面積のなかでどのくらいの割合を占めるべきかを考え、それぞれの面積を設定しましょう。小規模なオフィスでは、デスクワークスペースの目安は60~70%くらいになります。そのほか、企業や業種によっても異なりますが、受付や会議室、応接室、休憩室などのスペースも必要です。
明確な役割のあるスペースを重視する
スペースが限られるなかでも、ミーティングスペースやカフェスペースなどの重要なエリアは確保する必要があります。特に、ハイブリッドワークを導入している企業では、社員同士のコミュニケーションを促すためにもミーティングスペースやカフェスペースを設けることは重要です。リモートだけでは難しい情報交換や雑談をしやすくする工夫をしましょう。
社員の希望を取り入れる
オフィスを利用する社員の希望を聞くことで、より使いやすいオフィスレイアウトを実現できます。デザインやレイアウトに社員の意見を取り入れ、使い勝手の良いオフィスを目指しましょう。
小規模オフィスのレイアウトについては、「小規模オフィスで快適に働くためのレイアウトとは?」の記事もご覧ください。
出社タイプごとのレイアウト
ハイブリッドワークを導入している企業では、出社タイプに対応したレイアウトを考えることが大切です。ここでは、出社タイプごとのレイアウトの考え方を解説します。
ハイブリッドワーク
全社員を対象にハイブリッドワークを実施している企業では、日によって出社率に変動があります。そのため、その日の状況に合わせて席を選べるフリーアドレスがおすすめです。フリーアドレスなら、在籍する社員全員分の席を用意する必要がないため、オフィススペースを有効活用できます。例えば、リモートワークをする社員とオフィスに出社している社員がオンラインミーティングをしやすいように、防音性の高いミーティングスペースを設置するのもよいでしょう。
一部固定出社で一部はハイブリッドワーク、または基本的に出社
基本的に全社員が出社するスタイルの場合は、出社率やオフィススペースに応じて、固定席またはフリーアドレスを選ぶことがおすすめです。固定席の場合は、原則として全社員の席を確保する必要があります。フリーアドレスの場合は、出社率に応じて座席数を決めましょう。オフィスが狭い場合は、ミーティングスペースとカフェスペースを兼用するなどの工夫も必要です。
小規模オフィスのレイアウトを失敗してしまう理由
従業員30名前後の企業が快適に働くためのオフィスサイズの目安はお分かりいただけたと思います。次はオフィスサイズを確保しているにもかかわらず、窮屈さを感じさせる、使い勝手の悪いレイアウトになってしまう理由について考えていきます。
1. プライバシーを意識するあまりパーティションだらけになってしまう
最近ではフリーアドレスを導入する企業も増えていますが、逆に従業員のプライバシーや業務効率アップを目的としてパーティションでデスク周りを囲むレイアウトも少なくありません。しかし、小規模オフィスの場合、あまりパーティションを使いすぎると、圧迫感が増し窮屈になります。
2. 商談スペースが従業員の動線に入ってしまう
小規模オフィスは狭い空間だからこそ、それぞれのスペースを明確に分けないと煩雑になってしまいます。特に執務スペースと商談スペースを近付け過ぎると、業務効率が落ちるうえ、落ち着いて商談をすることもできなくなります。
3. 収納を確保するため、高さのある書棚を入れてしまい圧迫感が生まれる
小規模オフィスで最も気をつけなければならないのは、縦の空間です。収納場所を確保することはオフィスをすっきりさせる点においては重要ですが、だからといって高さのあるラックや書棚を入れると圧迫感が生まれ、実際以上に狭く感じてしまいます。
小規模オフィスで快適に働くためのアイデア
小規模オフィスであっても窮屈さを感じさせず快適に働くためには、さまざまな工夫が必要です。ここでは具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
1. クリアなパーティションを使い、開放感を演出する
パーティションを使う場合、クリアなものやすりガラス風のものにすることで、開放感が出て窮屈さを感じにくくなります。
2. 背の低いオフィス家具で圧迫感を減らす
小規模オフィスで快適に働くには、天井までの空間の使い方が重要なポイントになります。例えば背の低い収納庫、ラック、書棚を使えば圧迫感が減り、快適性がアップします。
3. 外出が多い営業社員のデスクは、不在が多い時間帯は商談、打ち合わせスペースにするといったように未使用時間によって効率的に使い分ける
誰も使っていないデスクをそのままにしておくことは無駄になってしまいます。時間によってうまく使い分けることで手狭なオフィスも効率よく活用できます。
4. 外からの明かりを反射しやすい色の家具や床色にすることで、空間を広く感じさせる
壁の色はもちろん、オフィス家具や床などを外からの明かりを反射しやすい色(ホワイトやベージュ)にすることで、オフィス全体が明るくなり空間が広く感じられるようになります。
5. ペーパーレス化を実行し、収納庫、ラック、書棚をできる限り減らす
開放感を出すために背の低い収納庫、ラック、書棚を使うとしましたが、それで入りきらない書類が散乱しては意味がありません。そこでペーパーレス化を実行し、書類を減らせば収納家具も減らすことが可能になります。
広く見せるための工夫をすることが小規模オフィスで快適に働くためのポイント
小規模オフィスというと、どうしても狭くて窮屈といったイメージがあるかもしれません。しかし、今回ご紹介したように間仕切りをガラスやクリアなものにする、オフィスインテリアの配色を光が反射しやすい色にするといった工夫をするだけでも、広く感じることができるオフィスになります。
また、物理的にスペースを広げることはできないものの、ペーパーレス化を進める、時間帯によってスペースを有効に活用するなどの工夫をすることで、小規模オフィスであっても窮屈さを感じずに快適に働くことは不可能ではありません。ハイブリッドワークの導入により、狭いスペースを効率的に使える工夫もしやすくなります。
小規模オフィスのレイアウトで悩まれているのであれば、ぜひ、ここでご紹介したアイデアを参考に快適なオフィスレイアウトを検討されてみてはいかがでしょう。
企業規模の大小にかかわらず、オフィスレイアウトを考えるうえでのポイントがあります。より詳細なレイアウトの方法について知りたい方は、『オフィスレイアウトを工夫して業務効率化を目指そう』の記事をご覧ください。
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