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オフィスのゾーニング計画を立てるために欠かせない間仕切り(ーティション)。特に、設置に工事が必要となる大掛かりな間仕切りは、空間を機能的に使ううえでも重要になります。また、コロナ禍では間仕切りにより感染対策を行うことも可能です。間仕切り工事を行う際に注意しておくべきポイント、コロナ禍における間仕切りの重要性についてもまとめました。

間仕切りには2つの種類がある

間仕切りといわれるものには、デスクに取り付ける高さ30㎝程度のものから、脚が付いていて移動できるスクリーンやパネル、折りたためる衝立、天井まで届く壁(設置工事が必要)など、さまざまな種類があります。
一般的には建物そのものにあるものを「壁」、後から増設したもの・取り外せるものが「間仕切り」と分けられるようです。そのなかで、今回は工事を必要とする間仕切りについて見ていきましょう。

工事が必要な間仕切りは大きく分けて、「欄間(らんま)が空いているタイプ」「欄間が空いていないタイプ」の大きく2種類があります。LGS(軽量鉄骨)壁や木材、ガラス、スチール、アルミなど、種類はさまざま。オフィスのレイアウト変更はもちろん、設置した場所に防音性やデザイン性を持たせることも可能です。

コロナ禍における感染対策を目的として間仕切り工事を行うなら、換気のよい欄間が開いているタイプがおすすめです。
欄間が空いていないタイプを設置する場合は、空調設備の設置も検討したほうがよいでしょう。

それぞれ特徴があるので、どのような部屋をつくりたいかによって使い分けましょう。

欄間が空いているタイプ

間仕切りの上部1/4~1/5程度の空間(欄間部分)が抜けているタイプ。部屋を区切ってもある程度空気の通りがあるため、新たにエアコンを増設しなくてもいい場合があることや、結果的に工事費用が抑えられるなどのメリットがあります。

ただ、どの程度空気が通るかは隣の部屋に設置されたエアコンの位置や欄間の高さによっても変わります。また、隣の部屋と完全にエアコンを共有できるほどの効果はなかったり、遮音性がないため室内で話している内容が漏れてしまったりというデメリットがあることに留意しなければなりません。次に説明する「欄間が空いていないタイプ」とどちらを選ぶかは、現状のエアコン位置や、どういった部屋をつくりたいかによって決めることが重要です。

欄間が空いていないタイプ

天井までパネルで区切られており、欄間がないタイプの間仕切り。遮音性が高く空間にセキュリティ性を持たせられるため、会議室などの間仕切りとして適しています。
ただし、密閉された空間になるため、感染対策のために換気をしっかり行うことが大切です。特に、窓がない場合は空気が通りにくいため、換気設備を設置するようにしましょう。

デメリットとしては、空間が完全に区切られてしまうため、室内にエアコンや照明がない場合は増設工事が必要となる点が挙げられます。結果的に工事費用がかさんでしまうということも。また、消防法によってパーティションの設置位置が制限されたり、消防設備の増設が必要になったりといった場合があることを覚えておきましょう。詳細は次項以降で説明します。

オフィス移転スケジュールとタスクリスト

間仕切りの設置工事前に消防法の確認

欄間が空いていないタイプの間仕切りを立てる場合、区切られた空間は消防法上の「部屋」と見なされます。そのため、以下のような点に注意する必要があります。

消防署への届け出が必要

オフィスに新しく入居するときはもちろんですが、現在入居中のオフィスに間仕切りを立てる場合も、消防署への届け出が必要になります。工事に着手する7日前までに、必ず「防火対象物工事等計画届出書」の提出を済ませるようにしましょう。

各間仕切り内に火災報知器を設置する必要

消防法では、オフィスの各部屋に火災報知器を設置することが義務付けられています。そのため、間仕切りで区切った空間内にない場合は、新たに増設する必要があります。工事費用を抑えるのであれば、火災報知器の位置を考慮しながらパーティションを設置したほうがいいでしょう。

排煙設備を設置する必要

万一の場合に備えて、室内に排煙設備を設置する必要があることも覚えておきましょう。排煙設備には建築基準法と消防法がかかわってきます。また、これらの法律が改正された場合には、設備にも変更が必要になることがあります。
つまり、建築基準法と消防法を遵守しつつ排煙設備を設置しなければならないのです。排煙設備の設置の際は、専門家におまかせすることをおすすめします。

以上はあくまで最低限の基準であり、これをクリアしていれば必ずしも問題がないというわけではありません。実際にはその都度、所轄の消防署が指導を行うことになっています。

間仕切り工事前に確認しておきたいこと

オフィス内で間仕切り工事を行うには、消防法以外にも確認すべきポイントがあります。見積もり依頼や発注を行う前に、確認しておいたほうがいいポイントをまとめました。

天井設備の確認

オフィスの天井には3つのタイプがあり、天井のタイプにより間仕切り工事ができないことがあります。事前に必ず確認しておきましょう。

・グリッドシステム天井

グリッドシステム天井とは、天井パネルが格子状にはめ込まれたタイプです。パネルや照明器具を部分的に交換できるので、間仕切り工事が可能です。

・従来工法天井

鉄骨鉄筋天井下地工法と呼ばれる工法で、ボードを組み合わせてつくられます。オフィスの天井として最も普及しているタイプですが、間仕切り工事がしにくい天井設備です。

・ライン型システム天井

照明器具やスピーカー、火災感知器などの天井設備機器を天井仕上げ材と一体化させて組み立てたタイプです。設備機器の移転が可能なタイプなので、間仕切り工事にも適しています。

ビル会社の事前承認

オフィス内の工事には、ビル会社によってA工事、B工事、C工事と工事区分が決められています。

・A工事

ビル会社指定の業者により、ビル会社が費用を負担するビルの建物全体にかかわる工事です。

・B工事

ビル会社指定の業者で、テナントが費用負担します。テナントの要望で行われますが、ビル全体の施設や安全性に影響するためビル会社が工事を発注します。分電盤や給排水工事、空調設備の工事がB工事です。

・C工事

テナントが業者を指定し、費用負担します。ただし、ビル会社の承認が必要です。オフィスの内装や照明器具の工事がC工事に含まれます。

間仕切り工事はB工事、またはC工事になりますが、区分はビル会社によって異なります。間仕切り工事をする際に、事前にビル会社に確認して承認を得る必要があるのはこのためです。

室内の照明・エアコン・換気設備の確認

間仕切り工事をすることにより、新たに照明やエアコンの増設が必要になることがあります。特に、欄間が空いていない間仕切りの場合は、間仕切り内に設備が入っていることが条件です。
また、コロナ禍では感染対策のためにも換気設備の導入が欠かせません。ほとんどのエアコンでは換気ができないため、注意が必要です。
もし増設が必要となった場合には、その分の工事や費用負担も考えておく必要があります。

原状回復費用の確認

賃貸オフィスは退去時に原状回復することが前提となっています。間仕切り工事を行った場合、退去時に壁や天井の修復や廃材処理など原状回復のためのコストがかかります。そのため、工事前に原状回復費用も確認しておきましょう。

オフィスデザイン構築マニュアル

コロナ禍においてオフィスの間仕切りをする意義

オフィスの間仕切りは、コロナ禍における感染対策やテレワークへの対応、ソーシャルディスタンスの確保にも有効活用できます。

感染対策

多くの人が利用するオフィスでは、飛沫による感染リスクが高いため、間仕切りで感染予防をすることも有効です。工事が不要な簡単な間仕切りで対策することもできます。たとえば、パーティションは仕切りたい空間に設置するだけで簡単に間仕切りが可能なうえ、レイアウトの変更に伴う移動や撤去も簡単です。感染対策のために設置する場合は、高さ120~180cmくらいが理想だといえます。デスクを囲むように設置すれば、半個室のような空間をつくることもできます。

テレワークへの対応

コロナ禍になり、テレワークで働く人も増えました。出社する社員とテレワークで働く社員がいるため、日によってオフィスの人数に増減があります。間仕切りで座席数を調整すれば、オフィスの利用人数が変動しても柔軟に対応することが可能です。オフィスの人数が多い日は間仕切りでスペースを区切ることができます。また、オフィスの利用人数が減ることで余剰スペースができた場合は、間仕切りでミーティングスペースや集中スペースを設置することも可能です。

社内コミュニケーションとソーシャルディスタンスの両立

業務をスムーズに進めるためには、人とのコミュニケーションが欠かせません。オフィスは社員同士のコミュニケーションの場としての役割も重要です。しかし、感染予防のためには、ソーシャルディスタンスを保つ必要があります。そのため、間仕切りを活用して直接対面になることを避けながら、コミュニケーションを図る方法も検討するとよいでしょう。たとえば、間仕切りでオンライン会議用のブースをつくり、社員同士でコミュニケーションを取る方法があります。会議室に大人数で集まる必要がないため、ソーシャルディスタンスを保ちながらのコミュニケーションが可能です。

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コロナ禍に適した間仕切りを実現するには?

コロナ禍に適した間仕切りの方法について目的ごとに紹介します。

感染対策

感染対策のための間仕切りには、次のような方法があります。

デスクごとに仕切りを設置する

業務内容によってはテレワークが実施できず、オフィスの人数が減らない場合もあります。一人あたりのスペースを十分確保できない場合は、デスクごとに仕切りを設置して感染対策をしましょう。デスクの正面や両サイドにパネルを設置することで、感染対策をすることができます。

ブース型の座席を設置する

間仕切りでひとつの座席をブース型にすることも可能です。ブース型なら人との接触を減らせるため、感染対策にも適しています。また、テレワーク中の社員や外部の人とオンライン会議を行う場合は、間仕切りで防音性のあるブースを設置すると便利です。

テレワークへの対応

テレワークでオフィスの利用人数に増減がある場合、出社する社員の人数に合わせて座席を調整する必要があります。出社率が高い日は、間仕切りを多くすれば座席数を増やすことができます。逆に、出社率が低い日は間仕切りを少なくして一人あたりのスペースを広くすれば、オフィススペースを無駄なく使うことが可能です。

社内コミュニケーションとソーシャルディスタンスの両立

会議室や打ち合わせスペースを間仕切りすることで、感染対策をしながらのコミュニケーションが可能になります。間仕切りを欄間オープンにすれば換気しやすくなるため、コロナ対策としても有効です。ただし、機密性の高い会議を行う場合は、周囲への音漏れに注意が必要です。

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コロナ禍では会議室の換気のしやすさにも注意

会議室はオフィスに欠かせない場所ですが、コロナ禍では感染対策をしながら利用する必要があります。密集・密接になりやすいため、換気のしやすさには特に注意が必要です。

会議室における換気の重要性

会議室はそもそも会話をする場所なので、定期的に換気することが重要です。会議の内容によっては密室で行うこともあるため、換気システムによる感染対策も欠かせません。換気は1時間に2回程度行う必要があります。会議中はできるだけ窓やドアを2カ所以上開けて、空気の通りをつくるようにしましょう。

会議室の広さ

会議室の三密を防ぐためには、人数に合わせてスペースを広くする必要があります。ソーシャルディスタンスを保つため、社員一人あたりの面積が広くなります。十分なスペースを確保できない場合は、オンライン会議を組み合わせるなどの対策が必要です。また、対面で話し合う場合は、2メートル以上の距離を空けるか、仕切りを設置して感染対策を行うことも大切です。

ルームインルーム(置き型会議室)の設置

間仕切りで新たに会議室を設置する場合、ルームインルームと呼ばれる置き型会議室がおすすめです。天井部分が抜けたデザインとなっているため、密室にならず換気しやすいことがメリット。設置場所の自由度も高いため、オフィスの中央に設置することも可能です。ガラス製のパーティションなら、オフィスの真ん中に設置してもあまり圧迫感がありません。必要なときに、気軽に集まれる場所として重宝するでしょう。

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実現したい空間に合わせた間仕切りを

「欄間が空いているタイプ」「欄間が空いていないタイプ」いずれの間仕切りにもメリット、デメリットがあり、設置にかかる費用も異なります。ビル会社との確認作業や消防法との兼ね合いなど、注意しなくてはならないこともたくさんあります。
また、コロナ禍では、感染予防のために間仕切りを活用することも多いでしょう。
間仕切りを立てることを決めたら、どんな空間をつくりたいのか、感染対策に有効なのかを考え、施工会社としっかり打ち合わせしながら進めることが必要です。

弊社では、間仕切り、パーティションによるオフィス改善についてご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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