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2018年に発表した本格的な木製オフィス家具シリーズ「MARU(マル)」、2021年発表のオフィスでの雑談をコンセプトにした「5 TSUBO CAFE」リニューアルモデル、その両方にデザイン提案を頂いた小林 幹也さん、社内プロデューサーとしてMARUを立ち上げた溝口さんに、デザインが生まれたバックストーリーを伺いました。

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PLUS商品開発部 溝口さん(以下、溝口):MARUの最初の試みは、時代の変化を見据えてワークプレイスを住空間のような形で捉え、それをあえて今までのオフィス家具では使用されない素材の木で意匠設計する発想のもとに行ったコンペでした。その時のオリエンシートには、オフィス内での「フルマイ軸」、デザインテイストをベースにした「テイスト軸」の2つの軸を示し、クリエイティブなオフィスに寄ったカジュアルなテイストで、従来のオフィスファニチャーに縛られず、効率より感性を大切にするプロダクト開発を目指していました。

PLUS商品開発 水谷(以下、水谷):小林さんには、どのような出会いがきっかけでコンペにご参加いただくことになったのですか?

溝口: 当時、新規性の高い切り口の商品やビジネスを生みだす部門であるLWP(リビングワークプレイス)推進室にて商品企画に従事していました。その部隊でビジネスを考案していた同僚が是非小林さんと仕事したいと紹介。当時、我々としてレコメンドの外部クリエイターの一人とさせていただき、指名コンペティションのお声をかけたのがきっかけです。

小林幹也さん(以下、小林):独立以前は勤め先でオフィスデザインに関わることが多く、オフィス向けの家具デザインをしたいという思いはそのころからずっと持っていました。ご縁でお声がけいただき、せっかくの機会を無駄にしたくないという思いでいっぱいでした。

溝口:コンペに参加されたデザイナーの中で、圧倒的に完成度が高かったのが小林さんの提案でした。ベンチデスクやワークテーブルなど、こちらが提示した7つのプロダクトすべてのデザインをわずか2週間で提案されたのは驚かされました。

小林:過去にもオフィスデザインを手がけた経験から、オフィス空間は複数の家具によって形作られるもので、トータルにデザインすべきだと考えていました。

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当時のプレゼンテーションの一部

水谷:デザインを手掛ける上で、ベースになっている考え方やバックグラウンドはありますか?

小林:今思い返すと、子供のころ習っていた書道が、自分のバックグラウンドになっていると思います。祖母が書家だったので、気づいた時には筆を持たされていました。祖母の家には、大きな和紙や掛け軸に描かれた書が飾られていて、子供のころから書に触れる機会に恵まれていました。例えば、小学校の書道で習い始めのころは、1文字目がうまく書けないとグシャグシャにして次の紙に変えるという経験をしている方もいらっしゃると思いますが、僕にとって書道はバランスゲームで、最初の1文字目がバランス悪く入ったとしても、2文字目以降で良いバランスをとる、それで全体のバランスがうまく収まっていれば良い作品になることがとても楽しく、集中できる時間でした。

水谷:どんな時にご自身の活動と書道との繋がりを感じますか?

小林:本当にきれいな文字が、バランスよく描かれていくと、余白の白がきれいに見えてくる瞬間があります。いま主に取り組んでいる、インテリアプロダクトの仕事との繋がりを感じるのはそういった点で、美しく、機能的で、その場の用途にフィットするプロダクトが納まると、その空間そのものが良くなる。モノをデザインするときも空間をデザインする感覚でデザインに取り組んでいます。

水谷:社内のセミナー「モノづくりの考え方」で初めて書の作品を見せて頂いたときに、小林さんのおっしゃる、空間をデザインする感覚という言葉にとても説得力を感じました。

「MARU」も空間をトータルに提案することをベースにデザインのご提案を頂いていますが、〝自由に描くにはノートでもなく、PCでもなく、ただ一枚のコピーペーパーがあれば十分。〟というコンセプトはどのような考えからうまれたのですか?

小林:クリエイティブな仕事をする時、何か最適なものが入った時点で、その枠組みの中でしか発想できなくなってしまう。例えば、自由に絵をかいていいと言われた時、いろんな仕組みを盛り込んだお絵かきセットを渡されるより、シンプルなA3の画用紙と鉛筆を渡されるほうが、実は自由な線がかけたりしますよね。オフィスも、紙1枚だけのようなプレーンな空間がいいのではないかと考えました。

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当時のプレゼンテーションの一部

水谷:当時のプレゼンテーションにも、〝ただ一枚のコピーペーパーがあれば十分。十分ではなく最適であるとも言えます。〟と書かれていますね。デザインをスタートする時、意識していらっしゃることはありますか?

小林: すぐにスケッチから入ってしまうと、描いた線に影響されてしまうので、視野を広くもつために、ある程度頭の中でデザインが定まるまでは、極力線を描かないようにしています。それまでは、デザインするポイントやコンセプトを考えながら、頭の中で立体物を回して、コンセプトとモノを並行して考えています。

水谷:「MARU」で実際のデザインを進めていく中で、最初に着手したのはデスクだったということですが。

小林:デスクは空間の中で最も大切な設えの一つです。デスクのデザインが決まれば、そこに大切な要素はすべて詰まっているはずだと思いました。他のプロダクトにもデスクの要素を入れつつ、単体としても魅力のあるデザインを目指しました。

水谷:「MARU」というシリーズ名にもなっているように、丸棒を使った意匠はデザインのポイントですね。

小林:デスクの天板を際立たせたいというデザイン的観点から必然的に生まれてきたフォルムです。角が立っていると、二面のコントラストが強くなってしまうけれど、丸棒にすることで、陰影が柔らかくなる。丸棒の脚に角度をつけているのも、天板を際立たせるためです。

水谷:2021年発売の、〝いい仕事は、いい雑談から〟をコンセプトにした5 TSUBO CAFEのリニューアルにもデザインのご提案を頂きました。デザインの準備段階でしていることとして、事務所の皆さんとのランチタイムを大切にされていると伺いました。

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小林:店舗の担当や、プロジェクトの担当など、スタッフそれぞれに違う役割を持っていて、僕も出張で出ているとコミュニケーションをする時間が限られるので、みんなでお昼を食べるのは自然としていることです。そこでの他愛もない話も含めて、みんなが普段考えていることを共有する。いざ仕事がはじまったときに初めてスタートするのではなく、そこでのコミュニケーションが、互いの経験を共有することに繋がったりします。

水谷: 5 TSUBO CAFEのコンセプトと重なりますね。テレワークが急速に定着していく中で、オフィスでのコミュニケーションの重要性を多くのワーカーが感じていると思います。ご自身やスタッフの皆さんの働き方や働く場所について、最近変化を感じたこと、または変化させていきたいことはありますか?

小林:以前より顔を合わせてのコミュニケーションの質を高めたいという思いはあります。テレワークが増えたことや、コロナの状況がさらに良くなれば以前のように出張も増えてくると思います。そのような時に限られた時間でもスタッフ同士のコミュニケーションが図れ、リラックスするための専用のスペースを会社に作れたらと考えているところです。

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小林さんのオフィスのランチタイムの様子

Designer/Mikiya Kobayashi

小林幹也 1981年東京都生まれ。2005年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。インテリアデザイン会社勤務後、株式会社小林幹也スタジオ設立。家具、プロダクト、モビリティからインテリアデザインまで幅広く携わり、国内外のクライアントとともにデザインを提案している。2010年ドイツのiF product design awardにて金賞、ドイツred dot award、グッドデザイン賞、adc賞など受賞歴多数。自社のオリジナルライフスタイルブランド「IMPLEMENTS」を運営する。

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株式会社小林幹也スタジオ オフィスツアー動画
https://www.youtube.com/watch?v=fTZVNwvTEaI

詳細な製品情報はこちらからご覧いただけます。

MARU
https://kagu.plus.co.jp/product/pl-maru/

5 TSUBO CAFE
https://kagu.plus.co.jp/5tbcafe/

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