オフィス増床の定義と目的
オフィス増床とは、現在のオフィスに追加のスペースを確保し、業務拡大や人員増加に対応する施策です。例えば、同じビル内の空き区画を追加で借りるケースや、近隣に分室を設けるケースが該当します。
オフィスのスペース不足は業務効率や従業員満足度の低下を招くため、増床はその解決策となります。最近では、働き方改革やハイブリッドワーク対応の一環として、戦略的に実施されることも少なくありません。単なる面積拡張にとどまらず、企業の成長や人材戦略を支える重要な施策といえるでしょう。
オフィス増床の主な種類
オフィス増床には、事業の成長や人員増加に応じて選べる複数の方法があります。ここでは代表的な4つの増床パターンについて、それぞれの特徴と注意点を解説します。
<代表的な増床パターン>
- 内部増床:同一ビル内での拡張
- 分室増床:別拠点での拡張
- 移転による増床:新オフィスへの引っ越し
- 建て替えによる増床:自社物件の建て替え
内部増床:同一ビル内での拡張
内部増床は、同じビル内にある空きフロアや隣接する区画を借りて拡張する方法です。既存の契約に追加する形でスペースを増やせるため、手続きや工事のスケジュールも比較的スムーズといえます。
最大のメリットは住所変更が不要という点です。登記変更や取引先への通知などの手間がなく、従業員の通勤経路も変わらないため、業務への影響を最小限に抑えることができます。
ただし、同じビル内に空きがない場合は、増床のタイミングを逃す可能性もあるため、早めの情報収集と管理会社との連携が重要です。
分室増床:別拠点での拡張
分室増床とは、現在のオフィスとは異なる場所に、サテライトオフィスや分室などの新たな拠点を設ける方法です。希望の広さや設備を備えた物件を柔軟に選べるという利点があります。特に、業務内容や部署ごとに空間を分けたい場合に有効です。
一方で、拠点が分かれることで物理的な距離が生じるため、拠点間のコミュニケーションやマネジメントが課題となることもあります。また、各拠点の運用コストも個別に発生する点にも注意が必要です。
部門ごとの自立性が高い企業には向いていますが、組織全体での一体感を重視する場合は慎重に検討しましょう。
移転による増床:新オフィスへの引っ越し
現状のオフィスでは対応しきれない場合や、将来的な拡張を見越して大幅なスペース確保が必要な場合は、オフィス移転による増床が選択肢になります。
この方法では、広さや設備を理想的な形で計画できるため、最新のオフィス環境や一体感のあるレイアウトを実現しやすくなります。また、リブランディングやイメージ刷新の機会として活用されることもあるでしょう。
ただし、引っ越し作業や内装工事、住所変更手続きなどに多大なコストと労力がかかるため、綿密なスケジュール管理と予算確保が不可欠です。
建て替えによる増床:自社物件の建て替え
自社ビルや所有不動産を保有している企業では、建て替えによってスペースを拡張するという選択肢もあります。自由度の高い設計が可能で、将来的なニーズを踏まえた空間構築ができるのが大きな魅力です。
しかし、建て替えには多額の投資が必要となり、工事期間中の一時移転や業務調整も求められます。また、行政への申請や近隣対応など、長期にわたる準備が必要です。
長期的な視点での企業運営や、不動産戦略の一環として位置付ける場合に適しています。
オフィス増床のメリット
ここでは、増床によって得られる主なメリットを3つの観点からご紹介します。
■オフィス増床のメリット
適切なスペースを確保できる
オフィス増床の最大のメリットは、組織の成長や人員の拡大に合わせて、業務に必要なスペースを柔軟に確保できることです。
内部増床や隣接区画の確保はもちろん、移転や建て替えといった大規模な手段をとると、将来の事業展開に対応した空間設計や設備の導入も可能になります。
例えば、部署間の連携を高めるレイアウト変更や、フリーアドレス導入のためのワークスペースの拡張など、働き方改革に対応したオフィスづくりにもつながります。将来を見据えた柔軟な対応力は、あらゆる増床パターンにおいて共通の魅力といえるでしょう。
取引先や従業員への影響を最小限に抑えられる
オフィスの所在地や周辺環境が大きく変わらない内部増床、分室増床などの増床手段であれば、住所変更や登記修正の必要がなく、取引先への影響を最小限に抑えられます。これは、企業の信用維持や事務手続きの簡略化という点で大きなメリットです。
一方、移転や建て替えを伴う場合でも、戦略的なタイミングで実施すれば、従業員の通勤利便性や業務効率を向上させる可能性があります。増床の方法によって影響範囲は異なりますが、計画的に進めれば、ステークホルダーへの配慮を最大限に行うことが可能です。
コストパフォーマンスに優れている
内部増床は、設備や家具、インフラを一部既存のものと併用できるため、全面移転や建て替えと比べて初期コストを抑えやすいのが特徴です。工事も短期間で完了できるため、業務への影響も軽微で済みます。
一方、移転や建て替えを選択する場合も、長期的な事業戦略や働き方改革にマッチした設計を取り入れれば、将来的な費用対効果が高まるケースもあります。単なる費用の安さではなく、費用対効果という観点で見れば、すべての増床パターンにおいて高いコストパフォーマンスが期待できるでしょう。
オフィス増床のデメリット
オフィス増床はメリットが多いものの、知っておきたい課題もあります。ここでは、オフィス増床の主なリスクや課題について解説します。
希望通りのスペースが確保できないリスク
増床を検討しても、希望するタイミングや場所で空き区画が見つからないケースがあります。特に同一ビル内での内部増床を希望する場合、すでにほかのテナントが入居していると拡張が難しくなります。
また、増床できたとしてもレイアウトが分断されると、部門間の連携や動線の効率に支障をきたすおそれがあります。こうした物理的制約により、最適なオフィス運用ができない可能性がある点には留意が必要です。
コストの増加と長期的な負担
増床によって、賃料や光熱費、設備費用などの固定費が増加します。初期費用だけでなく、維持・管理にかかるランニングコストも、長期的に見れば企業経営に影響を与える可能性があります。
さらに、区画が分かれた場合には、設備の重複やセキュリティ対応の煩雑化により、コストが膨らむだけでなく、管理業務の負担も大きくなりかねません。見積もり段階でコスト全体を正確に把握し、無理のない予算計画を立てることが重要です。
組織運営やコミュニケーションの課題
分室増床などでオフィスが分散すると、チーム間のコミュニケーションや情報共有に課題が生じやすくなります。特に、業務上の連携が多い部門が物理的に離れることで、意思疎通に時間がかかる、判断が遅れるといった問題が発生するかもしれません。
また、IT環境やセキュリティの整備も複雑化するため、増床に伴ってマネジメント面の仕組みの見直しが必要です。コミュニケーションの質を維持するためには、オンラインツールの活用や業務フローの見直しが欠かせません。
オフィスを増床する際の流れ
増床を成功させるための一般的な進め方を5つのステップで紹介します。
<オフィスを増床する際の流れ>
- Step1:増床の目的の明確化とプロジェクトチームの結成
- Step2:増床方法と物件の選定・交渉
- Step3:レイアウト設計と内装工事の計画
- Step4:各種業者の手配とスケジュール管理
- Step5:従業員への周知と負担軽減策
Step1:増床の目的の明確化とプロジェクトチームの結成
まずは「なぜ増床するのか」という目的を明確にし、社内で共有することが重要です。目的が曖昧なまま進めると、後の段階で方針がぶれてしまうかもしれません。
次に、総務・人事・情報システム・各事業部門など、関係部署から担当者を選出し、プロジェクトチームを結成します。併せて、スケジュール、予算、役割分担などの基本計画を策定し、全体像を把握した上で進行体制を整えましょう。
Step2:増床方法と物件の選定・交渉
目的に応じて、内部増床・分室増床・移転・建て替えのどれを採用するかを検討します。その後、物件の選定や管理会社・オーナーとの交渉に進みます。
この段階では、広さや立地、賃料、設備状況、通勤利便性、将来的な拡張性など、さまざまな条件を総合的に評価することがポイントです。現地視察や複数物件の比較を行い、より最適な選択肢を導き出しましょう。
Step3:レイアウト設計と内装工事の計画
物件が決定したら、次はレイアウト設計と内装工事の計画に入ります。業務効率や従業員の動線、コミュニケーションのしやすさを考慮しながら、使いやすく快適な空間を設計することが求められます。
また、ITインフラや電源・空調などの設備計画も早めに調整し、工事に反映させることが大切です。レイアウトは業務内容に応じて柔軟に変えられるよう、可変性のある設計にすると将来的にも安心でしょう。
オフィスの内装工事について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
【事例あり】オフィスの内装工事の種類や流れ、失敗しないコツを解説
Step4:各種業者の手配とスケジュール管理
レイアウトや内装工事の計画がまとまったら、工事や引っ越し、IT設備、オフィス家具など、多くの業者との調整が必要です。関係各所と密に連携しながら、工程表を作成し、進捗状況を継続的に管理します。
業務をできる限り止めずに進めるには、作業時間帯や工事日程を工夫し、夜間・休日対応などの選択肢も検討する必要があります。突発的なトラブルにも備え、柔軟な対応力が求められるでしょう。
Step5:従業員への周知と負担軽減策
増床の計画が固まった段階で、従業員への情報共有を開始します。変更点やスケジュールを丁寧に説明し、不安や疑問の声に耳を傾けることが、社内の協力体制を築くカギとなります。
また、リモートワークの活用や段階的な移行、コミュニケーション施策などを取り入れ、負担を最小限に抑える工夫が重要です。働く人にとってオフィスの変化がストレスとならないよう、計画段階から配慮する姿勢が求められます。
プラスが手掛けた増床によるリニューアル事例
ここでは、実際にプラスが手掛けたオフィス増床の事例を3つご紹介します。いずれの事例も、単なる面積拡張にとどまらず、働き方や企業文化に合わせた空間設計によって、業務効率や従業員満足度の向上を実現しています。
増床でエントランス、歴史ギャラリーなどの空間をつくった森村商事株式会社 様

入居人数 | 約215名 |
延べ床面積 | 約1,700平方メートル |
業界・業種 | 商社 |
本社オフィスの増床に伴い、エントランス、歴史ギャラリー、ウェイティングスペース、VIP会議室をつくった同社。歴史ギャラリーは動きや変化を感じさせるよう、沿革グラフィックとプロジェクションマッピングを導入しました。エントランスは、歴史ある企業として落ち着きと品格を感じさせるデザインです。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
増床リニューアルで執務エリアと会議室エリアを広げたセゾン投信株式会社 様

入居人数 | 約150名 |
延べ床面積 | 約900平方メートル |
業界・業種 | 金融業 |
社員増員に伴うオフィスリニューアルで増床し、執務エリアと会議室エリアを新しく広げた同社。執務エリアはさまざまなスタイルの席を配置し、多様なワークスタイルに対応できるゾーニングを意識しました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
増床前のしつらえを活かして、より働きやすいオフィス環境を目指したサムティ株式会社 様

入居人数 | 約50名 |
延べ床面積 | 約942平方メートル |
業界・業種 | 不動産業 |
東京本社と東京支店を併設している同社オフィスでは、オフィスリニューアルの際に増床を計画。増床前のしつらえを活かしながら、木目を基調とした内装で明るく心地の良い空間をつくりました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
プラスはオフィス増床のご相談から施工まで柔軟に対応します
オフィス増床は、実績のあるプロフェッショナルに相談することが重要です。オフィスの快適な空間づくりをお手伝いするプラスでは、これまで数多くのオフィスづくりに携わってきたノウハウを活かし、ヒアリングから設計・施工・納品・アフターサポートまでワンストップでご支援いたします。
オフィスのスペース不足にお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
オフィス増床に関するよくある質問
オフィス増床の種類は?
オフィス増床には、主に「内部増床(同一ビル内の拡張)」「分室増床(別拠点の設置)」「移転による増床」「建て替えによる増床」の4つの種類があります。企業の課題や将来計画によって最適な選択肢は異なります。現状のオフィス状況や成長戦略に合わせて、柔軟に検討することが大切です。
オフィス増床のメリットは?
オフィス増床には内部増床、移転、建て替えなどさまざまな手段があり、選択する方法によって得られるメリットは異なります。ただし、いずれのケースでも、事業成長に合わせて適切なスペースを確保できる点がメリットです。内部増床であれば、現在のオフィス環境を活かしながら、短期間かつ最小限の変更でスペースを拡張できます。一方、移転や建て替えでは、より大規模な組織再編やブランディング強化を図ることも可能です。
オフィス増床の際の流れは?
オフィス増床を進める際は、まず増床の目的を明確にし、関係部署でプロジェクトチームを結成します。次に、増床方法の検討や物件選定、レイアウト設計、工事・業者調整、従業員対応といったステップを段階的に進めます。社内外の関係者と連携しながら、計画的に進めることが成功のポイントです。