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本店(本社)を移転するにはさまざまな準備、手続きが必要です。特に初めて移転をする場合、一般の住居移転とは異なる手続きもあるため、戸惑ってしまうことも多いでしょう。そのなかでも分かりにくいのが登記に関する手続きです。今回は本店(本社)移転の際に必要な手続きのなかでも特に分かりづらい本店移転登記のほか、必要となる準備や手続き、注意点についてお伝えします。

オフィス移転全体の流れの詳細は『これで完璧!オフィス移転の流れとすべきこと【チェックリスト付き】』をご覧ください。

本店移転とは?

近年、首都圏から地方に本店を移転する企業が増えています。ここではその背景と、混同しがちな「本社」との違いについて解説します。

本店移転が近年注目されている理由

2010年の東日本大震災、2019年末に始まったコロナ禍など、ここ十数年の間に私たちは大きな災害やパンデミックに見舞われました。一極集中のリスクが顕在化し、それにともない首都圏への集中を避け、地方への分散化を進める企業も増えてきました。また首都圏では不動産価格や人件費が高騰しており、それらを削減するため、地方への本店移転が経営コストの圧縮策として有効と考えられるようになっています。

実際にテレワークの普及やICTの進化により、場所を問わずに仕事ができる環境も整えられ、本店を地方に移転することは現実的な選択肢となっています。これらの要因が相まって、本店移転が注目されるようになったのです。

本社と本店の違いと定義

前提となる「本社」と「本店」の違いについて解説します。
本社は会社の中枢機能を担う事業所であり、経営戦略の策定や全体の管理運営を行う場所です。
また本社は法的な登記義務がなく、必要に応じて柔軟に場所を変えることが可能です。

一方、本店は法律上の会社所在地として登録される場所です。会社の登記簿に記載されるため、法的な手続きや税務関係の届出などの公式な手続きの際には本店所在地が使用されます。
そのため会社を設立する際には「本店所在地」を指定し、公的機関に届け出を行う必要があります。
さらに本店を移転する際には、法務局へ「株式会社本店移転登記申請書」を提出するなど、一定の手続きを経る必要があります。

本店を移転させるメリット

本店を移転をさせることには、以下のようなメリットがあります。

BCP(事業継続計画)対策が出来る

本社を地方に移転することは、BCP(事業継続計画)対策において有効です。
BCPとは、災害や緊急事態においても事業を継続し、迅速に復旧するために事業環境を整えることを指します。
首都圏におけるあらゆるリスクが顕在化している中で、地方に本社機能を分散させることによりリスクの分散を図ることが可能です。
仮に首都圏で災害に見舞われた場合、地方に別のオフィスがあることで、業務への影響を最小限に抑えられます。

さまざまな経費削減につながる

地方は都市部と比べて物価が低いため、オフィスの賃料や不動産取得費用を大幅に削減することも可能です。
また人件費についても、地方ではパートタイム労働者や正社員の給与水準が都市部よりも低く、人件費の削減が期待できるでしょう。
通勤費に関しても、地方では会社の近隣に居住がある場合も多く、従業員の交通費や通勤時間にかかるコストを減らすことができます。

職場環境、従業員のストレスやワークライフバランスの改善

職場環境の改善や、従業員のストレス軽減も期待できます。
都市部にオフィスがあることで、満員電車での長時間通勤や人口密集地での生活を余儀なくされ、働く人々にとって大きなストレスになっています。
本店が地方に移転することで、通勤時間の短縮や混雑を避けた生活が可能となり、従業員のストレスが軽減されます。
またワークライフバランスが改善されることで、仕事のパフォーマンスも向上します。
さらに地方のゆったりとした生活リズムや自然環境は、心身の健康にも良い影響を与えます。
健康問題を理由とした離職率の低下にもつながるでしょう。

税制優遇や、政府や地方からの補助金が受け取れる

本店を移転させることで、税制優遇や補助金が受けられるケースもあります。
政府は、首都圏への一極集中化を防ぎ、企業の地方移転を促進するためにさまざまな税制優遇策を設けています。
例えば、「地方拠点強化税制」では、オフィス減税や雇用促進税制があり、移転先で取得したオフィスにかかる税金の低減や、移転後の雇用に対する税額控除が受けられます。
また、自治体レベルでも企業の本社移転を奨励する補助金制度を設けている地域もあります
長野県や岐阜県などは本社機能移転に関わる補助金を設けていますし、工場などの生産拠点の移転を補助する自治体もあります。
さまざまな優遇措置を利用することで、大幅なコストカットが可能です。

地域振興を通した社会貢献ができる

本社移転は、地域経済の振興にも大きく貢献します。企業が地方に移転することで、雇用機会が創出され、地域の経済活動が活性化します。これは地域社会にとって大きなプラスとなり、地域住民の生活も豊かになります。また地方での事業展開により、地域の特産品やサービスを活用した新たなビジネスモデルの構築も可能となります。企業は地域社会との連携を強化し、地域の課題解決に貢献することで、CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)評価を高めることができます。これにより企業のブランドイメージが向上し、顧客やステークホルダーからの信頼を得られるでしょう。

本店が移転することによるデメリット

本店を移転させることには、デメリットも存在します。
不利になる点やリスクを念頭において移転計画を進めましょう。

人材確保が難しくなる

本店を地方に移転することで、人材確保が難しくなる可能性があります。
特に若年層や高度なスキルを持つ人材は、首都圏などの大都市圏に集中しがちです。
一方で移転先の地方によっては労働人口が少なく、必要とする人材が見つからないかもしれません。
また新卒採用においても、学生は就職活動の利便性から都市部を選ぶ傾向があります。
地方移転によって、採用活動が一層厳しくなることを念頭に入れておきましょう。

取引先と距離が出来てしまう

地方移転によって首都圏の取引先と物理的に距離ができてしまうため、営業活動に影響が出ることが考えられます。
これまで対面で進めていたプロジェクトを、遠隔で行うこととなります。
近年はZoomなどのリモートツールを活用する企業も増えていますが、対面でのコミュニケーションが求められるシーンではやや不便です。
また首都圏に移動するにしても、時間や交通費などのコストも増加します。
移転前には、対外的なトラブルや重要な取引先との連携方法を検討しておく必要があります。

本社の機能を分け、サテライトオフィスなどが必要になる

地方に移転することで、ビジネスの展開地域に応じてサテライトオフィスを設置する必要があります。
特に首都圏での業務が重要な企業では、本社機能の一部を都心に残しておく必要があるでしょう。
サテライトオフィスを設置することで、移転に関するデメリットを解消し、円滑な経営を維持することが求められます。
しかし設置するには追加のコストがかかり、本社機能が分散することで業務効率が低下するリスクもあります。

本店(本社)移転に必要な準備

本店(本社)移転をする際は、旧本社と新しい本社それぞれで準備が必要です。ここでは簡単に事前に行っておくべきポイントを紹介します。

旧本社でやっておくべき準備

  • 賃貸契約の解除
  • 原状回復工事の依頼
  • 引っ越し業者との契約
  • 引っ越しスケジュールの策定

これらの準備のなかでも、特に賃貸契約の解除は半年前に解約予告をしなければならないのが一般的です。また、原状回復工事も指定した業者に依頼しなければならない場合があるため、必ず早い段階で賃貸契約書を確認し、そのうえでスケジュールを立てましょう。

新しい本社でやっておくべき準備

  • 新しい本社の賃貸契約
  • レイアウト設計・必要な家具、設備の購入
  • 内装工事・ライフライン工事の確認
  • 提出書類の用意

このなかでは、提出書類の用意とライフライン工事の確認が重要です。提出書類はそれぞれ期限が定められているものが多いため、できるだけ早めの提出を心がけてください。またライフラインの工事も特に移転の多い春先は早めに依頼しないと移転時に水道やガス、電話がまだ使えないという場合もあるため、余裕をもって依頼をしておきましょう。

本店(本社)移転が決まった際の、オフィスフロアの扱い

旧オフィスは上述のとおり原状回復を行います。新しいオフィスへの移転後に旧オフィスを原状回復することになるでしょう。旧オフィスの引き渡し時にまで完了できるように段取りを整えます。

原状回復とは「入居した時の状態」に戻すことです。具体的にどのような状態にする必要があるのか、賃貸借契約書を確認しましょう。ただし書面だけでは情報が不足する可能性があるので、オーナーとも話し合ったうえで、手間と費用を見積もります。

なお、賃貸契約書のなかで原状回復工事を行う業者が指定されているケースが多いのですが、該当の業者が必ずしもスケジュールや費用面で最適とは限りません。自社で原状回復業者を選択できるかどうかも、確認しておくといいでしょう。

原状回復については、『オフィス移転に欠かせない原状回復とは?そのルールとスムーズに進めるためのポイント』をご覧ください。

本店(本社)移転に必要な手続き

本店(本社)移転の際に必要な手続きは、新しい本社を管轄する法務局が旧本社と同じか管轄外の法務局かによって異なります。ここではそれぞれで必要となる一般的な書類について見ていきましょう。

本店移転登記手続きの手順

まずは、登記手続きの手順を紹介します

1. 新しい本社を管轄する法務局が旧本社と同じか管轄外の法務局かを確認

管轄の変更があるかどうかで、手続きや必要な書類が異なるためです。

2. 定款変更の必要性を確認

定款に住所地が書かれている場合は定款変更が必要です。また、定款変更において株主総会の決議(種類株主総会の決議)が必要な際は、株主リストも必要です。(各書類については後述)

3. 取締役会で移転場所・移転日を決める

取締役会、もしくは取締役の過半数の一致をもって移転場所・移転日を決議します。本店(本社)移転日から2週間以内に本店移転登記をしなければならないため、移転日を決定することで、本店移転登記の期限日も明確になります。

4. 本店移転登記申請書の提出

期日までに、本店移転登記申請書を作成し必要な添付書類とともに、旧所在地の法務局へまとめて提出します。

新しい本社と旧本社が異なる法務局の管轄内にある場合の必要書類

本店移転登記申請書(2通)

新法務局提出分と旧法務局提出分に分かれるため2通用意します。印紙税は3万円で、各々に収入印紙を貼付(3万円×2)します。

株主総会議事録

本店(本社)移転に伴い定款に書かれた住所を変更する場合に必要です。本店(本社)移転が株主総会で適切に議決された記録となります。株主総会が開催された日時・場所、議事の経過の概要と結果、株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名(または名称)、議事録を作成した取締役の氏名などが必要です。

株主リスト

登記事項の変更時において、株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合に法務局に対して対象の株主を提示するためのリストです。「株主総会議事録」の記録の妥当性を補完するために必要です。

なお、株主リストは単なる株主の住所氏名ではありません。株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)・議決権数・議決権数割合まで記載します。

取締役会議事録もしくは取締役決定書

取締役会の決議で本店の場所や移転の日時を定めたことを証するもので、議決の経緯や結果を提示します。取締役会を設置していない企業の場合は、取締役の過半数の一致を証する書類として「取締役決定書」が必要です。

印鑑届書と印鑑カード交付申請書

新たな本社の法務局に会社の実印を届け出る必要があるため、印鑑届出書を提出します。また、管轄外への移転に伴い、従来の印鑑カードが使用できなくなります。そのため、新法務局に印鑑カード交付申請書を提出し、印鑑カードの交付を請求します。これまでと同じ印鑑を使用することも可能ですし、新たなものを登録することもできます。

新しい本社と旧本社が同じ法務局の管轄内にある場合の必要書類

管轄が同じであると、必要な書類は少し減ります。例えば、「印鑑届出書」や「印鑑カード交付申請書」は不要です。

本店移転登記申請書

提出する法務局がひとつだけなので、1通用意すれば問題ありません。

株主総会議事録

必ずしも必要になるとは限りません。というのも、株主総会議事録が必要となるのは定款変更があるときのみだからです。定款には住所地を記載しますが、番地まで記載しないこともできます。同じ管轄の地域へ移転する場合で番地まで記載していない場合は、定款変更が生じないことも多いでしょう。

株主リスト

株主総会議事録を添付する場合に必要です。

  • 取締役会議事録、もしくは取締役決定書

取締役会の決議、もしくは取締役の過半数で本店の場所や日時を定めたことを証します。

本店(本社)移転の手続きに関する注意点

本店(本社)移転の手続きにおいて注意すべき点は次のとおりです。

本店(本社)移転の手続きをしなかった場合は罰則あり

会社法第976条1号により、本店(本社)移転の手続きを怠ると100万円以下の過料になる場合もあります。

本店移転手続きはオンラインでも可能

移転時は雑事も増えるため、どうしても法務局へ出向く時間がない場合もあるでしょう。そうした際はオンラインでの申請も可能です。

具体的なオンライン申請の手順は、「申請情報の登録」と「申請用総合ソフトのインストール」(初めての場合のみ)を行った後、申請用総合ソフトにログインし、そのソフトを使用して申請書情報を作成します。作成が終わったら申請書情報へ電子署名の付与・送信を行い、登録免許税の納付、添付書類の提出で終了です。

また印鑑証明書の交付もオンラインで行えます。

まとめ:本店(本社)移転は事前スケジュールを立て計画的に行うことが重要

本店(本社)移転時でなければあまり聞くことのない「本店移転」ですが、登記上の言葉であり、支店や支社がなくても会社を移転する際は本店移転登記をすると理解すれば間違いはありません。

また、移転先が現在の本社がある地域を管轄する法務局内か外かで必要な手続きが異なります。特に管轄外に移転する際は手続きに必要な書類が増えるので、予め確認と準備を怠らないようにしましょう。

さらに定款変更が必要な場合は、株主総会議事録や取締役会議事録(もしくは取締役決定書)が必要になります。これらを準備するには株主総会や取締役会の日時を設定し出席を要請するといった手間も生じるので、余裕をもって進めておきましょう。

本店(本社)移転は、書類による手続き以外にもいろいろとやるべきことがあります。そのためミスや漏れを防ぐうえでも必ず事前にやるべきことと工数を把握します。そのうえで移転スケジュールを立て、計画的に行うことが重要です。


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この記事を書いた人

マーケティング部 コラム編集部 プラス株式会社ファニチャーカンパニー

プラス株式会社ファニチャーカンパニー マーケティング部 コラム編集部

プラス株式会社ファニチャーカンパニーのマーケティング部門です。オフィスに関する最新のトレンド情報や、オフィス移転・リニューアル・オフィスデザインに関する情報を発信しています。 オフィスの最新情報はInstagram「plus_kagu」で検索してフォロー!昨日よりもオフィスが好きになるような、「家具・働く空間にまつわる工夫・デザイン事例」などの情報をお届けしています。

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