オフィスのコンセプトとは?
オフィスのコンセプトとは、オフィスのデザインや機能性を決める際の指針となるものです。
移転に関わる人々にわかりやすく伝えるため、キャッチーなフレーズで表現されます。
単にデザインやインテリアなどの見た目だけに焦点を当てるのではなく、オフィスがどのような目的や機能を持って設計されるべきかを明確にする役割を持っており、プロジェクトの核となります。
実際にコンセプトがあることで、オフィス環境が従業員のニーズや働き方に適したものとなり、企業全体の効率性や一体感の向上につながるでしょう。
オフィスをただの作業空間から企業の価値観や目標を反映した場所へとするために、コンセプトの設定が必要なのです。
オフィスのコンセプトを決める意味は?
コンセプトを明確にすることで、洗練されたオフィスデザインを構築できます。
実際に、設計段階やオフィス家具の選定においてコンセプトに基づいて選択することで、一体感のある空間が構築できます。
一貫性のあるデザインは、ブランドの向上や顧客に対してのホスピタリティの向上など、あらゆる面で良い効果が得られます。
さらにオフィスのコンセプトを決めることは「かっこいい」や「おしゃれ」など単なるデザインテイストを決めることにとどまりません。
大切なのは、そのコンセプトによって何を実現したいのか、従業員や顧客にどのような体験を提供したいのかが明確になることです。
オフィスデザインと、その先にある経営ビジョンを表現することで、デザインと企業イメージのギャップが埋まり、企業の価値を高めることにつながります。
一貫した指針としてコンセプトを活用することで、ただの見た目の良いオフィスではなく、ビジョン達成に貢献する空間を構築できるのです。
オフィスコンセプトを決める際の進め方
オフィスコンセプトを決める際には、一定の手順を踏む必要があります。
大きなステップとしては、移転やオフィス構築プロジェクトの目的を明確に決めるのがスタートです。その次に、レイアウトやデザインでその目的をどのように達成するのかを決めていきます。
それぞれ詳しく解説していきます。
プロジェクトの目的を設定する
オフィスコンセプトを決める前に、まず移転や改装などのオフィス構築プロジェクトの目的をはっきりと設定することが大切です。
経営ビジョンの実現や社員の働きやすさ向上、業務効率の改善、最近であれば働き方改革に対応するオフィスなどがよく見られる目的です。
これらの目的を明確にしておくことで、その後のデザインやレイアウトがどのような形で役立つかを考えやすくなります。
目的を設定せずに進めてしまうと、コンセプト自体が曖昧になり、オフィスが企業のニーズに合わないものになるリスクもあるでしょう。
見た目に統一感がなくなることはもちろん、無駄なコストや業務効率の低下にもつながります。
オフィスづくりにおけるプロジェクト目的の具体例
オフィスプロジェクトの具体的な目的には、いくつかの型があります。
近年よく見られる、移転や改装の目的は以下の通りです。
・DXによる業務効率の向上
・企業のブランディング
・社員のコミュニケーションの活性化
・感染症への対応
・働き方改革の促進
・戦略的な営業拠点の確立
・接客のための空間
・地域との交流
・多様性への対応
・QOLの向上など
DXを行うなら快適なインターネット環境は欠かせませんし、コミュニケーションを促進するならフリーアドレス制の導入も考えられます。
これらの目的はデザインやレイアウトに直接影響を与えるため、プロジェクトを進める前に十分に吟味しておきましょう。
オフィスのコンセプトを決める
プロジェクトの目的が定まったら、それを実現するためのオフィスコンセプトを決定します。
この段階では、目的を達成しながらオフィスの機能性を担保し従業員が快適に働ける環境をどのようなコンセプトで実現するかを考えます。
コンセプトが目的と異なるのは、キャッチーなフレーズであるという点です。
また目的は複数あっても構いませんが、コンセプトは基本的に一つだけです。
コンセプトは一言で表されるものが人に伝わりやすいため、短い言葉でつくりましょう。
例えば「自然と共生するオフィス」「クリエイティブを促進するオフィス」「先進性を表現するオフィス」など、企業の目指す方向性に合わせてコンセプトを決定します。
オフィスの移転に携わるチームや担当者、実際に使う社員に伝わりやすい言葉で決めることで、新たなオフィス構築の指針とします。
オフィスデザイン・レイアウトを設計する
コンセプトが決まったら、それに基づいてオフィスのデザインやレイアウトを設計しましょう。
コンセプトに合わせたデザインを採用し、効率性や機能性、使う人々の快適性も考慮して設計します。
またデザインとレイアウトがコンセプトと一致するように、プロジェクトチームやデザイナーとの連携が欠かせません。
設計段階での細かな調整や打ち合わせが、オフィス全体のクオリティを左右します。
誰がオフィスのコンセプトを決めるのか?
オフィスのコンセプトは、企業全体の方向性やビジョンを反映させるものが好ましいです。
では、誰がその決定を行うべきなのでしょうか?
一般的には以下の3つの選択肢があります。
・オフィス移転・デザイン改装のプロジェクトメンバー
・オフィス移転・デザイン改装の担当者
・社外の業者に依頼する
それぞれの特性を踏まえ、最適な人選を行いましょう。
オフィス移転・デザイン改装のプロジェクトメンバー
オフィス移転やデザイン改装の際には、社内でプロジェクトチームを編成し、そのメンバーが中心となってコンセプトを決めるのが一般的です。
プロジェクトメンバーは通常、総務部門や人事部門、場合によっては経営陣も含まれることがあります。
ここでのポイントは、さまざまな部署からの意見を取り入れられるよう、幅広い部署や職位の人々が参加するチームをつくることです。
プロジェクトメンバーが幅広い視点を持つことで、オフィスの機能性や快適さが向上し、従業員全体のニーズに対応できる公平なオフィスコンセプトが生まれるでしょう。
オフィス移転・デザイン改装の担当者
プロジェクトメンバーとは別に、専任担当者が選ばれることもあります。
主に総務部や人事部のスタッフが務めるのが一般的で、彼らは日々の業務でオフィス環境や網羅的な部署への理解が深く、具体的な改善点や新しいアイデアを反映しやすい立場にあります。
プロジェクト全体の進行管理や外部業者との連携を担いながら、コンセプトを具現化していくことが担当者の主なタスクとなります。
社外の業者に依頼する
オフィスコンセプトを決める際、外部の専門業者に依頼するのも一つの選択肢です。
設計やデザインのプロフェッショナルに委託することで、より高度なアイデアや他社事例を取り入れたコンセプトが得られます。
プロジェクトのアウトソーシングということになるため、コストの有効活用にもつながります。
とくにオフィスのリノベーションや移転が大規模な場合、専門業者の知見や経験は必須でしょう。
外部業者を利用する際は、依頼する範囲や目的を明確にして相性の良い業者を選択しましょう。
オフィスのコンセプトを決めるメリット
オフィスのコンセプトは、単なるデザイン要素ではなく企業の成長や働く環境に大きく影響を与えます。
ここでは、オフィスコンセプトを明確にすることで得られる主なメリットについて解説します。
来訪者へのイメージアップとブランディング効果が期待できる
オフィスのコンセプトを設定することで、企業の理念やビジョンを訪問者に伝えることができます。
たとえばデザインに企業のコーポレートカラーやロゴを取り入れることで、来訪者に強い印象を与えられます。
なかには、企業理念をデザインに落とし込んでいる事例もあります。
取引先やパートナー企業に対して信頼感を与え、新たなビジネスチャンスの拡大も期待できるでしょう。
また、オフィスデザインを通じてオフィス内で働く従業員の帰属意識を高めることにつながるため、インナーブランディング効果も期待できます。
社員のモチベーション向上につながる
コンセプトによって魅力的なオフィス環境が構築されると、社員のモチベーション向上にもつながります。
オフィスコンセプトに基づいた設計が行われると、快適な作業空間が提供されて業務に対する満足感や働く意欲が高まります。
また社員がオフィスのコンセプトに共感して一つのイメージを共有することで、チーム全体の一体感が強まるでしょう。
リーダーシップが必要な管理職社員にとっては部下をまとめやすくなり、モチベーションアップが業務効率の向上につながります。
業務を効率化できる
オフィスのコンセプトを基にレイアウトや機能を設計することで、業務効率の向上が期待できます。
コンセプトが「コミュニケーションの促進」なら、チーム間のコラボレーションを促進するための共有スペースやコミュニケーションエリアを設けることで情報の共有がスムーズに行えるようになります。
また動線を考慮して設計することで、無駄な移動を減らして業務の無駄を排除できます。
コンセプトによって統一感のあるオフィスレイアウトを設計可能で、効率的な業務環境が実現します。
多様なワークスタイルの実現
オフィスのコンセプト次第で、多様なワークスタイルに対応した環境を整えることが可能です。
たとえば自由に座席を選べるフリーアドレスの導入により、社員は業務内容や気分に合わせた場所で作業できるようになります。
居心地よく仕事ができる環境をつくることで、クリエイティブなアイデアの創出を促し、社員の自己管理能力も向上できます。
とくに近年ではリモートワークとオフィスワークを両立させるデザインを取り入れる企業が多く、多様な働き方ができるオフィス環境が求められています。
オフィスのコンセプトを使用するシーンとは?
オフィスのコンセプトは、新オフィスの働きやすさやイメージに直結します。
さまざまな場面でコンセプトを意識し、オフィス空間を計画することが効果的なビジネス環境の実現につながるのです。
ここではコンセプトがどのように使用されるのか、具体的な場面について解説します。
レイアウトを設計する時
座席配置やスペースの使い方を決定する際に、コンセプトが指針となります。
たとえばチームワークを重視したコンセプトの場合、社員同士が自然にコミュニケーションを取れるような開放的なスペース設計が求められます。
一方で集中作業が求められる業種では、集中ブースなどの個人のスペースを確保することが必要でしょう。
接客を重要視するなら、快適に使える椅子やテーブルの設置も考えられます。
多様な選択肢があるなかで、コンセプトからレイアウト設計を行うことで、無駄のない効率的な空間が構築できます。
実施設計を行う時
実施設計に移ると、具体的なレイアウトや設備の選定が始まります。
この段階では、コンセプトに基づいた設計を行っていきます。
コンセプトに合わせたインテリアデザインの採用や社員の働き方を考慮した設備の導入、各フロアの配置や動線設計などが該当します。
オフィスデザインを決める時
オフィスデザインを決定する段階では、インテリアのテイストやカラーリングなど、外見的な要素にもこだわりながらコンセプトを可視化していきます。
具体的な例をあげると、ベンチャー企業やデザイン事務所がクリエイティブなオフィスを構築するなら、色彩豊かなデザインや柔軟な家具の配置が考えられます。
一方、法律事務所や金融業界などの堅実なイメージが求められる業界では、落ち着いたトーンのデザインが一般的です。
完成したオフィスを実際に利用する時
完成したオフィスを評価するのは、実際に使う社員です。
コンセプト通りの空間が構築されたかどうか、ヒアリングやアンケートを通して確認し、必要なら改善も行います。
またコンセプトがしっかりと浸透しているオフィスは、来訪者に対しても企業のブランドイメージを強く印象付けることができ、ブランディングにも影響します。
こういった側面からも、一過性のものではなく長期間に渡って使用できるコンセプトを決める必要があるのです。
【最新トレンド】オフィスコンセプトを活かしたデザイン・レイアウト事例5選
ここでは、オフィスコンセプトをしっかりと決定したことで移転や改装を成功させた企業の事例を紹介します。
タマダ株式会社 東京支店
タマダ株式会社の東京支店は「One Team」をコンセプトに、社員同士の結びつきを強化しながら個人の快適さにも配慮したオフィスを実現しました。
リニューアルプロジェクトでは、ペーパーレスやフリーアドレスといった現代の働き方に対応した要素が取り入れられ、生活リズムによって明るさの変化するサーカディアン照明も導入されています。
エントランスはシンプルでモダンなデザインとなっており、企業の持つ誠実さと芯の強さを表現しています。
また執務スペースは木目とブラックを基調にし、ブルーやイエローをアクセントとしてコントラストの際立ったスポーティーな雰囲気が特徴です。
社員が自由に使えるバリエーション豊かなデスクが配置され、業務スタイルに合わせて柔軟に働ける環境が整えられています。
さらに集中スペースやリフレッシュスペースも設置されており、リラックスしながら仕事になれる空間が提供されました。
株式会社 山陰中央新報社
山中央陰新報社の編集局・編成局フロアの改修プロジェクトは「ATELIER-PARK」をコンセプトに、社員がクリエイティブに仕事を進められる空間をつくりました。
オフィス全体が、社員がアーティストのように自身の作品となる記事を創造する「工房」としてデザインされています。
中央には編集局と編成局が交差するエリアが設けられ、その上に宍道湖をモチーフにした天井のデザインが配置されています。
また照明ラインやデスク、カーペットによってジグザグの動線をつくることで、ランダムなコミュニケーションを促しています。
柱やパーテーションには空間コンセプトを表現するレンガ調のディスプレイや人工樹木が配され、アート的な要素がオフィス全体に散りばめられています。
カフェエリアも設置され、仕事の合間にリフレッシュしながらリラックスできる空間が用意されています。
30年ぶりの大規模リニューアルとなったことから、新聞社としての伝統と新たな発想を取り入れたクリエイティブで魅力的なオフィスとなっています。
フマキラー株式会社 フマキラーブレーンズパーク
フマキラー株式会社の研究開発拠点「フマキラーブレーンズパーク広島」は、宮島を望む海沿いに位置する、革新的なオフィス空間です。
2021年に新たにオープンしたこの開発研究棟は「GREEN PARK(緑化空間)」をコンセプトに、自然の要素を取り入れてデザインされました。
オフィススペースは、幾何学的な台形のデスクを配置して柔軟にレイアウトを変更できる設計となっています。
プロジェクトごとに異なるニーズに対応可能で、フレキシブルな働き方を実現しています。
また室内にはふんだんに植栽が取り入れられ、自然との調和をイメージしつつ研究者たちにリラックスできる環境を提供しています。
さらに人工樹木や下からのスポットライト照明などの空間演出にもこだわっており、研究に集中できる心地よい環境が整えられています。
ライブラリースペースやリフレッシュスペース、カフェスペースも設けられ、幅広い働き方に対応するクリエイティビティを最大限に引き出す環境を実現しました。
明治安田生命保険相互会社 23階図書室改修
明治安田生命保険相互会社の23階に位置する図書室の一部が、サッカースタジアムをテーマにした会議室へとリニューアルされました。
今回の改装に当たって採用されたコンセプトは「フィールド」です。
社員や訪問者がフィールド上のプレイヤーとしてアイデアを発揮し、自由に意見交換できる場として設計されています。
カーペットには芝生を模したデザインが施され、壁には6メートルもの内照式パネルが設置されています。
このパネルは簡単に図柄を取り替えられる仕組みになっており、屋内にいながら季節による変化を楽しめるようになっています。
サッカースタジアムのような壁や天井が用いられ、会議室の上質な雰囲気を保ちながらアクティブさを感じさせる空間となっています。
さらに最大50名の参加者に対応できる拡張性もあり、テーブルやチェアの配置はフレキシブルに変更可能です。
研修やセミナーからフォーマルな会議まで、さまざまな用途に対応できる多機能な会議室です。
株式会社 プレミアアシスト 埼玉SC
株式会社プレミアアシストの埼玉サービスセンターは、上尾SCに続く埼玉県内の2つ目の拠点としてオープンしました。
オフィスのデザインコンセプトは「働きやすさと居心地の良さ」。
社員が快適に働ける環境を整えることを最優先に考え、個性的でカジュアルな空間が構築されています。
エントランスには業務内容を反映したグラフィックデザインが施されており、社員のモチベーションを高める効果が期待されています。
オフィス内にはビッグテーブルが設置されており、チームメンバーが自由に集まれるようになっています。
またオフィス全体のカラーリングは自然を感じさせるデザインが取り入れられ、リラックスできるのも働きやすさのポイントです。
会議室には国産木材を使用したササナブルなテーブルが採用されており、エコへの配慮も感じられます。
広々とした休憩スペースには多用途に使えるダイニングソファが配置され、社員がリフレッシュしたりちょっとした会議を行ったりするのに最適な環境が整っています。
まとめ
オフィスのコンセプトは、単に見た目のデザインをつくるだけではなく、プロジェクトの目的や、ひいては企業のビジョンを実現するための大切な要素です。
中期的にもブランディングや社員のモチベーション向上、業務効率化など、さまざまなメリットを得られるでしょう。
オフィス設計のあらゆるシーンで、伝わりやすく適切なコンセプトが一貫した指針となり、より良い仕事空間の実現が可能になります。