企業がオフィス移転をする理由はさまざまです。オフィス移転には時間もコストもかかるため、企業にとって大きなメリットがなければ移転する意味がありません。オフィス移転の主な理由としては、社員数の変化や事業の拡大などが挙げられます。事業の拡大により社員数が増えてオフィスが狭くなり移転するケースや、テレワークの実施に伴いオフィスを縮小するために移転するケースが多いでしょう。今回は、オフィス移転の主な理由について解説します。また、オフィス移転の目的に合わせたレイアウトや家具の選定方法も紹介するので参考にしてください。
オフィス移転の理由を明確にすることの重要性
オフィス移転を検討する際には、まずその理由を明確にすることが大切です。
オフィスの移転には多くのコストや時間がかかり、曖昧な理由で移転を進めてしまうと、期待していた成果が得られず、負担が増えただけということにもなりかねません。
仮に、オフィスのスペースが足りないことを理由に移転を決定したとして、家賃や立地などの条件を優先しすぎた結果、必要な広さが確保できないのは避けたい事例です。
こういったリスクを回避するためにも、最初に移転の目的をはっきりさせ、それを達成するための手段を決めてから計画を進めることで、移転先の選定やその後のレイアウト設計が円滑に進行するのです。
目的を決める際には、優先度の高い課題に焦点を当てることで、オフィス移転の効果をより確実に得られるでしょう。
コミュニケーションの促進や業務効率の向上、テレワークへの対応など企業によって目的はさまざまですから、自社の課題を解決するソリューションとして移転に取り組むことが大切です。
オフィス移転の代表的な理由
社員数の増減や事業の状況により、現在のオフィスが合わなくなることもあるでしょう。ここでは、オフィス移転の代表的な理由について解説します。
社員数の変化
事業の拡大に伴い、社員が増えてオフィスが手狭になることもあるでしょう。今後も社員数が増える見込みであれば、オフィス移転を検討すべきです。オフィスが狭いと社員がストレスを感じやすくなります。ストレスにより仕事に対するモチベーションが低下する可能性もあります。今よりも広いオフィスに移転すれば、ひとりあたりのスペースを増やすことが可能です。また、面積によっては、集中スペースやミーティングスペースなど、業務の目的に合わせたスペースを確保することもできます。
出社する社員の変化
テレワークの実施により、出社する社員の人数に変化が生じている場合にオフィス移転を検討するケースもあります。今後も継続的にテレワークを実施する見込みがあれば、現在よりも狭いオフィスへ移転することも可能です。社員の増減に対応できるようにフリーアドレスにレイアウト変更すれば、従来のように社員全員の座席を置く必要がなくなります。フリーアドレスなら業務内容に合わせて自由に席を選べるため、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。
優秀な人材確保の必要性
優秀な人材を確保するためには、オフィスの立地や設備も重要です。たとえば、利便性の高い場所に移転すれば、社員が通勤しやすくなります。また、設備が新しくなれば社員のモチベーションアップにつながり、人材が定着しやすくなるでしょう。オフィスの立地によっては企業イメージを向上させることも可能です。企業イメージが向上すればリクルート活動もしやすくなり、優秀な人材の確保にもつながります。
ハイブリッドワークの実現
テレワークとオフィス勤務を両立させたハイブリッドワークを実現するために最適なオフィスへ移転するケースもあります。テレワークの場合、自宅で仕事をする人も多いですが、自宅の状況によっては業務に集中できない人もいるでしょう。そのため、たとえ100%テレワークが可能な業務でも、オフィスで仕事をしたほうが効率的な場合もあります。オフィス移転によりハイブリッドワークでも利用しやすい環境を整えることが大切です。
ハイブリッドワークについては、『ハイブリッドワークとは?テレワークの定着を実現させるポイントと注意点』の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
営業効率の向上
営業効率の向上もオフィス移転の主な理由のひとつです。都心や駅チカ、営業エリアの近くのオフィスへ移転することで、新たな顧客の確保がしやすくなります。特に、店舗型のオフィスの場合は、ターゲット層がアクセスしやすいエリアへ移転することで営業効率を高めることが可能です。同じ業種が多いエリアに移転すれば、ライバル企業の顧客を惹きつけられる可能性もあります。オフィス移転は企業の業績向上にも影響するのです。
オフィス環境の改善
企業のイメージアップや人材の確保に向けて、オフィス環境の改善を目指す企業もあります。たとえば、最新の設備が整ったオフィスへ移転すれば社員も気持ちよく仕事をすることができます。また、オフィス内の採光やオフィスから見える風景、広々とした空間づくりも重要です。オフィス環境を改善することで、社員のストレス軽減や生産性の向上などさまざまなメリットが期待できます。
コスト削減
コスト削減も、オフィス移転のよくある理由のひとつです。
移転には引越し費用やデザイン費用など一時的なコストがかかりますが、長期的には固定費削減につながる場合があります。
たとえば賃料や光熱費が高いエリアからの移転によって、オフィス維持にかかるコストを減らすことが可能です。
移転によってオフィスの規模を縮小できれば、賃料や光熱費の負担を軽減し、企業全体の運営費を抑えることも期待できます。
また限られたスペースを効率的に使用することで、これまで以上のパフォーマンスを得られるでしょう。
オフィスの集約・分散
オフィスの集約や分散も移転理由のひとつです。
集約はコスト削減や部署間のコミュニケーション向上に役立つメリットがあり、一方で分散は通勤のしやすさや災害時のリスク分散という面で利点があります。
集約するなら、複数の部署を集約してオフィスをひとつにまとめることで、部門間の交流が増えて業務の効率化が図れます。
分散するケースでは、従業員の住むエリアに合わせて各地に拠点を設けることで、通勤負担を軽減や、エリアによっては賃料の削減も期待できます。
企業イメージの向上
企業イメージの向上も、オフィス移転の理由となります。
オフィスの立地やデザインは企業のブランドイメージに影響を与えるため、ブランド戦略として移転を選択する企業も少なくありません。
たとえばIT企業が多い渋谷やデザイン系企業が多い表参道、貴重品や高級アパレルを扱う銀座といったエリアにオフィスを構えることで、顧客に対してブランディング効果が期待できます。
また周辺に関連企業が集まることで、ビジネス情報の収集や人脈構築にもプラスの影響を与えるでしょう。
オフィス移転を成功させるためのポイント
オフィス移転は企業にとって大きなプロジェクトですから、成功させるには事前にしっかりとした計画が必要です。各部署が一丸となり、計画をスムーズに進めることが求められます。ここでは、オフィス移転を円滑に進めるためのポイントをご紹介します。
- チームで進める
- 移転計画のスケジュールに余裕を持たせる
- 補助金を活用する
- 専門業者を利用する
チームで進める
オフィス移転をスムーズに進行させるためには、プロジェクトチームを編成し、各部署から代表者を集めることが大切です。
異なる部署からのメンバーが参加することで、従業員全員の意見を反映させた移転計画が立てられます。
経理担当者は予算に対する意識を持っていますし、営業担当者はアクセスの良さを重視するかもしれません。
そのほか多角的な視点を取り入れることで、各部門のニーズを満たしやすくなります。
また担当者を割り当てることで進捗状況の確認も容易になり、移転の進行が効率的に管理できるでしょう。
チームで進めることで企業全体に利益となる計画が立てられ、従業員の満足度を高めることが期待できます。
移転計画のスケジュールに余裕を持たせる
オフィス移転には、物件選定、レイアウト設計、内装工事、関係各所への書類の提出など、複雑なタスクがともないます。
またこれらが予定通りに進まない場合も多いため、余裕を持たせてスケジュールを組みましょう。
たとえば工事の遅れやオーナーとの調整が長引く場合でも、余裕を持たせておくことで柔軟に対応できます。
一般的に、オフィス移転には少なくとも半年程度の準備期間が必要とされるため、解約予告の日程から逆算して計画を組み立てることが重要です。
また、書類の提出に関しても期限があるため、優先して取り組みましょう。
優先順位も考えながらスケジュールを組むことで、スムーズに移転が完了します。
補助金を活用する
オフィス移転には引越し費用や新オフィスの改装費用、旧オフィスの原状回復費用など、さまざまな出費が伴います。
これらの費用を抑えるために、国や自治体が提供する補助金や優遇制度を活用するのが有効です。
さまざまな補助金事業が行われていますが、たとえばものづくり補助金や地方拠点強化税制といった制度があり、該当する企業であれば一定のコスト削減が可能です。
そのほか、自治体が独自に行っている支援制度もあるため、事前にリサーチし、利用可能な制度を最大限に活用しましょう。
※2024年10月現在
専門業者を利用する
オフィス移転には、レイアウトの設計や物件選定といった専門的な知識が求められる場面が多くあります。
そんなときはノウハウのある専門業者を活用することで、効率的かつ的確なサポートが受けられ、移転作業全体の質が向上します。
オフィス移転に関する専門業者は、新オフィスのレイアウト設計やインフラ整備に関するアドバイスを提供し、企業のニーズに最適な環境を提案してくれます。
また物件探しから実際の引越し、新オフィスの整備に至るまで一括してアドバイスしてくれるところなら、打ち合わせの時間や費用など無駄なコスト負担を軽減可能です。
業者の選定にあたっては、依頼したい範囲を決めて、移転計画の段階から複数の業者に見積もりを依頼し、信頼性やサービス内容、価格を比較することで、満足度の高い業者と契約できるでしょう。
オフィス移転の流れ
オフィス移転は企業にとって大きなイベントです。事前にしっかりとした計画を立てることで、スムーズな移転が可能になります。ここでは、オフィス移転の流れについて詳しく解説します。
- プランを立てる
- 家具の選定やレイアウトの決定をする
- 移転を実施する
- 移転の手続きを行う
プランを立てる
オフィス移転を成功させるためには、事業と同様にプランニングが不可欠です。
最初に移転の目的を明確にし、どのような条件のオフィスに移転するかを検討します。
これは現在のオフィスの課題を見つけ、今後のビジネス展開に適した物件を選ぶことが目的です。
合わせて、移転スケジュールの策定も行います。
現オフィスの管理会社には解約予告を数カ月前に行う必要がありますから、引越し作業や原状回復工事の日程も把握しておくことが求められます。
この段階で、現オフィスの引き払い作業に関する費用や期間も見積もると良いでしょう。
計画がしっかりしていれば、移転作業が円滑に進む可能性も高くなります。
家具の選定やレイアウトの決定をする
新しいオフィスが決まったら、次はレイアウトと家具の選定です。
移転の目的に応じて、最適なレイアウトを考えましょう。
仮にフリーアドレス制を導入するなら、固定デスクの数を減らし、従業員が快適に移動できる動線を設計します。
キャスター付きの家具を選ぶことでフレキシブルにレイアウト変更ができるため、スペースの有効活用が可能です。
また現在の家具を使用するのか、もしくは新たに購入するのかも検討が必要です。
リース品を使用している場合は、契約の更新や解約についても判断しなければなりません。
新規で購入する場合は、搬入日などの打ち合わせも必要になってきます。
業務効率を最大化するために、各スペースの機能性を考慮したレイアウトを心がけることが大切です。
移転を実施する
移転の実施段階では、さまざまな業者と連携して作業を進めます。
工事や引越し・家具の搬入などについて、あらかじめ手配しておくことが必要です。
この際には、移転プロジェクトに関わる従業員にスケジュールを周知し、役割分担を設定しておくとスムーズです。
また、取引先への住所変更の連絡も忘れずに行いましょう。
電話しても出ない、オフィスに訪れたら誰もいないといった事態は避けなければなりません。
関係各所に周知を図ることで、移転後の混乱を最小限に抑えることができます。
移転作業が進行する中で、進捗状況を随時確認し、問題が発生した際には速やかに対処する姿勢が重要です。
移転の手続きを行う
移転が完了したら、各種機関への届け出が必要です。
これには消防署、税務署、労働基準監督署、さらには郵便局からクレジットカード会社に至るまで多岐にわたる機関が含まれます。
なかには提出期限が設定されている書類もあるため、もれのないように確認しましょう。
例をあげると、消防署には「防火対象物使用開始届出書」を提出し、税務署には「異動届出書」を提出する必要があります。
また年金事務所の管轄が変わる場合は必要な書類も異なるため、事前に確認が求められます。
このように手続きをしっかりと行うことで、移転後の業務を円滑に進める準備が整います。
オフィス移転は計画から実施、手続きまでの一連の流れをしっかりと把握し、実行することが移転成功へとつながるでしょう。
オフィス移転に伴うレイアウト変更・家具の選定
オフィス移転に伴い、レイアウトの変更や新しい家具の導入を検討するケースも多いでしょう。ここでは、目的別におすすめのレイアウトやオフィス家具を紹介します。
ハイブリッドワーク実現のためのオフィス移転の場合
テレワークとオフィス勤務の両立により人数の増減が生じるため、座席数を柔軟に変更できるフリーアドレスがおすすめです。フリーアドレスでは固定席を置かないため、その代わりに複数人で使えるテーブル型のデスクを配置するケースが多くなっています。拡張できるタイプなら人数の増減にも対応可能です。また、テーブルにはノートパソコンやモバイル機器をつなげられる配線機能が付いていることも重要です。個人の座席がないため、社員が私物を置くためのパーソナルロッカーも用意しましょう。
オフィス移転に合わせてオフィス家具の見直しをするとスムーズです。『オフィス移転時に見直したいオフィス家具は? 廃棄・リサイクルの方法も紹介』の記事もご覧ください。
営業効率を高めるためのオフィス移転の場合
営業効率を高めるためにはコミュニケーションしやすいオフィスづくりをしましょう。ミーティングスペースやカフェスペース、マグネットスペース(マグネットゾーン)などの設置がおすすめです。ミーティングスペースやカフェスペースでは気軽に集まれるように、テーブルやソファを用意します。また、マグネットスペースとは、コピー機の周辺や給湯室など社員が集まりやすい場所のことです。カウンターやコーヒーサーバーなどを置くと人が集まりやすくなります。
オフィス環境改善のためのオフィス移転の場合
オフィス環境改善のためには、照明やインテリアを工夫してみることも大切です。執務スペースは集中しやすいように明るい空間に、休憩室はリラックスできるようにやや暗めの空間にするなど照明やインテリアを工夫してみましょう。また、座り心地のいい椅子や高さが調整できるデスクなどがあれば、長時間の作業でも疲れにくくなります。社員ひとりあたりのスペースも広めに確保し、ストレスがたまりにくい環境づくりをしましょう。
社員が集中できる環境を整えることは重要です。『オフィス、テレワークで集中力を高めるための効果的な施策とは?』の記事もご覧ください。
オフィス移転の目的に合わせてレイアウト・家具の選定を!
オフィス移転をする際には、移転の目的に合わせてレイアウトや家具の選定をすることが大切です。ハイブリッドワークの実現のためなら、オフィスの利用者数に応じて柔軟に対応できるフリーアドレスが適しています。また、コミュニケーション重視のオフィスづくりやオフィス環境の改善もレイアウトの工夫次第で実現できます。
オフィス移転をするなら、事前にしっかり流れを把握しておくことが大切です。『これで完璧!オフィス移転の流れとすべきこと【チェックリスト付き】』の記事では、オフィス移転の流れを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【お役立ち資料】
移転プロジェクトメンバー必見の決定版! オフィス移転のスケジュールとタスクリスト
オフィスの移転は、やるべきことが多岐にわたる複雑なプロジェクト。
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オフィス移転の責任者・メンバーのための保存版資料です。プロジェクト全体像のスムーズな把握や、作業のチェックリストとして是非ご活用下さい。