オフィスのゾーニングを計画する上で欠かせないパーティション。高さや材質、オプションパーツなど数多くの選択肢があるため、選びにくいと感じている人も多いのではないでしょうか。ここでは、パーティションを選ぶうえで知っておきたい基準をご説明します。
オフィスレイアウトの基本についておさらいしたい方は下記の関連記事を参考にしてください。
【関連記事】 業務効率化を目的とした、オフィスレイアウトのポイント
オフィスにパーテーションを設置するメリットとは?
オフィスでは、パーテーションは不可欠ともいえるアイテムで、設置することで以下のようなメリットを得られます。
- 個室のような空間でプライバシーを守る
- 防音効果が期待できる
- インテリアとして使えておしゃれ
個室のような空間でプライバシーを守る
オフィスにパーテーションを設置することで、周囲から見えにくいスペースを構築できます。
外から独立していることでプライバシーが守られ、周囲の目を気にせず集中できる環境となるでしょう。
またパソコンなどの覗き見リスクが減り、情報漏洩を防止できるためセキュリティ対策にもつながります。
防音効果が期待できる
オフィスでは、集中して業務に取り組む時や商談や会議など重要なコミュニケーションを行う際に、周囲の音が気になることもあります。
パーテーションには防音素材を使用したものも多く、設置することで静かな空間をつくり出せます。
騒音を軽減することで、さまざまな業務において生産性の向上が期待できるでしょう。
インテリアとしても使えておしゃれ
パーテーションは、オフィス内のインテリアとしても活用できます。
シンプルなものからデザイン性の高いものまでさまざまな種類があり、オフィスの雰囲気に合わせたものを選択可能です。
企業のもつ雰囲気やブランドに合わせて、よりオフィスの魅力を引き立てられるでしょう。
パーテーション設置時の注意点
パーテーションを設置する際には、いくつかの注意点があります。
- 性能を確認する
- 天井の設備も確認
- 工事の際は大きな音が出る
これらを理解しておくことで、スムーズに設置を進められるでしょう。
性能を確認する
パーテーションには、遮音性能がとくに求められます。
音の発生源との間にパーテーションがあることで、ある程度の音をカットできます。
素材によって遮音性能は異なります。例えばスチールパーテーションは約33dB、ガラスパーテーションは約31dBの遮音性能を持っており、オフィス内での音漏れや不要な反響音を防ぐことが可能です。
それぞれのパーテーションの性能については、後ほど詳しく解説します。
天井の設備も確認
オフィスの天井には、エアコンや煙感知器などの設備があらかじめ設置されています。
パーテーションを設置したい場所にこれらの設備がある場合、設置場所の見直しや設備の移設が必要になることがあります。
事前に確認しておくことが重要です。
工事の際は大きな音が出る
間仕切りやパーテーションの設置作業には、大きな音がともなうことがあります。
そのため工事の際は周囲に配慮し、工事時間などを設定しましょう。
またビルによっては施工日時が制限される場合もあるため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
パーテーションの種類は5つ
オフィスでよく利用されるパーテーションの種類には、さまざまなデザインや機能があります。ここでは5つの代表的なパーテーションについて、それぞれの特徴や利用シーンを紹介します。
種類 | 利用シーン | デザイン性 | 価格目安 | 工賃目安 | 遮音性能 |
造作壁(LGS壁) | 固定の個室をつくりたい時 | オーダーメイド | 高 | 中 | 約30dB |
スチールパーテーション | 事務スペースの区切りに | シンプル | 中 | 中 | 約33dB |
ガラスパーテーション | オープンで明るい印象を与えたい時 | 透明でスタイリッシュ | 中〜高 | 高 | 約31dB |
アルミパーテーション | コストを抑えたい時 | シンプルで軽量 | 低 | 低 | 約21dB |
スライディングウォール | フレキシブルな空間を構築したい時 | 機能的で多様な素材 | 中 | 中〜高 | 使用方法次第 |
造作壁
造作壁は、主にLGS(軽量形鋼)などを使用した間仕切りです。
完全な自由設計が可能で、デザインやサイズを自由に決められるのが魅力で、特定の空間にぴったりの間仕切りをつくることが可能です。
ただし移転時には取り外すことができないため、設置するオフィスを長期的に利用することが前提となります。
価格は比較的高めですが、耐久性があり遮音性にも優れています。
スチールパーテーション
スチールパーテーションは、金属製のフレームに強化ガラスやパネルを組み合わせたタイプで、非常に耐久性が高いのが特徴です。
遮音性にも優れているため、オフィス内の騒音を軽減する効果があります。
また上部にクロスやシートを貼ることで、オフィスのデザイン性を高めることができます。
色や素材のバリエーションも豊富で、さまざまなインテリアスタイルにマッチするため、企業のイメージを大切にしたい場合にも適しています。
ガラスパーテーション
ガラスパーテーションは、オフィス空間を開放的に保ちながら一定のプライバシーを確保できるアイテムです。
強化ガラスを使用しているため、安全性が高くデザイン的にも洗練された印象を与えます。
また透明度の高いガラス素材は自然光を取り入れることができ、明るい空間づくりが可能で、色のついたものならアクセントにもなります。
さらに遮音性の高い二重構造になっているものもあり、会議室や商談スペースにも使用可能です。
ただし、設置費用は他のパーテーションよりも高めになることがあります。
アルミパーテーション
アルミパーテーションは、コストパフォーマンスを求めるなら最適な選択肢となるでしょう。
軽量で施工も簡単で、比較的短期間で設置できるのが特徴です。
また組み合わせできるモジュール式ですから、オフィスのレイアウト変更にも柔軟に対応可能です。
一方で遮音性は他のタイプに比べて劣るため、音漏れ対策として用いる場合には注意が必要です。
色やデザインも豊富で、比較的安価にオフィスの雰囲気を変えられます。
スライディングウォール
スライディングウォールは天井レールに沿って動かすことができるため、空間を柔軟に利用できるのが特徴です。
必要に応じて間仕切りを作ったり、開放的な空間を作ったりできます。
そのため、多目的に利用される会議室やセミナールームでの使用に適しています。
また素材やデザインのバリエーションが豊富なため、オフィスの雰囲気に合わせたものを選ぶことが可能です。
設置や移動も簡単なため、時間や手間をかけずにスペースを調整できます。
パーティションの高さは大きくわけて3種類
パーティションを選ぶうえで、まず決めておきたいのがその高さです。それぞれ設置場所や用途に応じて適切なものが異なるため、どのようなシーンで使いたいかを考えて選んでみましょう。
高さ900~1320mmのタイプ
およそ座った時の目線と同じ高さで、チェアに座っている人を前提とした間仕切りに使われます。デスク周りの空間を区切ったり、休憩スペースを確保したりする用途に最適です。
高さ1400~1720mmのタイプ
およそ立った時の目線と同じ高さのため、空間を完全に区切る必要のない、簡易的な間仕切りとして最適です。打ち合わせスペースやコピー機まわりの囲いとして使うといいでしょう。
高さ1825~2150mmのタイプ
立った状態でも顔まで隠れる高さで、しっかりと空間を区切ることができます。応接室や商談スペース、ロッカールームなど、プライバシーを確保したい場所に使用するといいでしょう。
材質はどんなものがある?
パーティションを選ぶうえで、次に注目したいのが素材です。こちらも区切る目的や設置場所に応じて使い分けるようにするといいでしょう。主なパーティションの材質には以下のようなものがあります。
ガラス・ポリカーボネートタイプ
ガラスやポリカーボネートなどで形成されたパーティション。透明もしくは半透明のものが多く光を透過するので、オフィスを明るく保ち、パーティションで区切っても空間を狭く感じにくいというメリットがあります。その反面、透明・半透明タイプは人の動きが見えてしまうのでプライバシーを確保したい場合や、ブースレイアウトのように集中できる空間を確保したい場合には不向きです。
クロス張りタイプ
パネル状の芯材にクロスを張ったタイプのパーティション。視線をしっかりと遮ることができるため、エントランスやミーティングスペース、執務室など、幅広い用途に使用することができます。高さや幅のバリエーションも多く、連結するためのオプションパーツも豊富にラインアップされているため、どのような空間や用途にも、フレキシブルに対応できるというメリットがあります。
スチールタイプ
スチール素材のパーティションは汚れてもさっと拭き取ることができるため、特に病院や塾など多くの人が集まる場所に最適です。また、マグネットで資料を貼り付けることができるため、簡易的な掲示板としても使用することもできます。
オプションはどうやって選ぶ?
オプションもパーティション選びの重要な基準のひとつ。設置場所や用途に応じて使い分けましょう。オプションには主に以下のようなものがあります。
カウンター天板
パーティションの上部に簡易的なカウンターを作るための天板。高さ900~1320mmのタイプなど、低めのパネルに適したオプションです。
パネルフック
パネルの上部に、時計や絵をかけるためのフックを追加するためのオプション。会議スペースのためのパーティションなどに便利です。
ブックシェルフ
パーティションのパネル面に書棚を設置するためのオプション。ファイルや書類などの一時的な置き場所として便利に使うことができます。
おすすめのパーテーションと設置事例
多くの企業が、業務効率を向上させるためにパーテーションを導入しています。
今回は、パーテーションを導入した企業事例を紹介します。
それぞれの企業が独自のニーズに合わせてパーテーションを活用しており、オフィス環境の改善を行いました。
株式会社 山陰中央新報社
山陰中央新報社は、30年ぶりに編集局と編成局のフロアの改修を行いました。
改修にあたっては、オフィス内のスペースを効果的に区分するためにさまざまなパーテーションが導入されています。
オフィスエリアには、リン酸塩皮膜処理が施された独自のデザインのパーテーションが設置されています。
このパーテーションは、空間を区切ることだけが目的ではなく、磁石を利用して掲示板としても活用できることが特徴です。
またデスクには背の低いパーテーションが設置され、集中して作業ができるようになっています。
他にも完全個室になったボックス席、ハイバックソファーの設置されたファミレス席など、音や視線をカットするための工夫が各所に見られます。
株式会社セゾンファンデックス 大阪支店
株式会社セゾンファンデックスの大阪支店では、来訪者と社員の双方にとって快適な空間を提供するためにパーテーションが導入されました。
エントランスや応接室、オフィスの各スペースには視線を適度に遮る工夫が取り入れられています。
リフレッシュスペースには植物を用いた簡易パーテーションを採用しており、適度にプライバシーを確保しつつ開放感を損なわないデザインになっています。
応接室のガラスパーテーションには樹木のデザインがあしらわれており、外から中の様子が見られなくなっているため、落ち着いて商談や接客が可能です。
その他にも執務室に置かれたパーテーション付きのデスク、エントランスのパネルソファなど、さまざまな形で快適に過ごせる空間が追求されています。
株式会社AIT
株式会社AITのオフィスでは、パーテーションを単なる遮蔽としてではなく、オフィス空間を象徴的に彩るアイテムとして活用しています。
メイン通路にあるスチールパーテーションにはコーポレートカラーであるブルーのシートが貼られており、ブランディングの向上を目指しています。
また一部にはガラスパーテーションも取り入れられ、開放的な空間がオフィス全体に統一感をもたらしています。
パーテーションの内側は応接室や会議室のため、通路を使用する訪問客にも強い印象を与えるものとなっています。
株式会社セゾンファンデックス
株式会社セゾンファンデックスは、増員にともなう増床計画の一環で、オープンミーティングスペースやリフレッシュスペースにパーテーションを導入しました。
キャスター付きのパーテーションは自由に移動でき、ミーティングスペースを必要に応じて拡張・縮小できます。
またホワイトボード付きのパーテーションを導入することで、視線を遮りながらミーティングが行いやすい設計となっています。
会議室にはすりガラスのパーテーションが採用されているため、クローズドな会議にも対応しています。
あらゆる社員のニーズに応える仕事空間となっており、コミュニケーションの向上や業務の効率化が実現しました。
株式会社タダノ
株式会社タダノは、自社ビルから新しいオフィスへの移転と同時にフリーアドレス制を導入しました。
オフィススペースにはガラス素材のパーテーションを多用し、自然光を効果的に取り入れることで開放感のある空間を演出しています。
エントランスにはデザイン性の高いパーテーションが設置されており、訪問客に社内の雰囲気を伝える役割も持っています。
一方、役職席にはあえてパーテーションを用いないことで、従業員とのコミュニケーション向上やマネジメントをしやすくする工夫も見られます。
パーティションは用途や場面に合わせて選ぶ
一口にパーティションといってもさまざまな種類のものがあり、使用する用途や場面によって適しているものは異なります。この記事を参考に、ぜひオフィスに合ったものを選んでみてくださいね。