オフィスの床が業務に与える影響
色が与える影響
床はオフィスの中でも目に入ることが多く、色によって印象が大きく左右され、人間の意識にも影響を与えます。
働く人のメンタルにも作用するため、よく考えて配色を決める必要があります。
色 | 業務への影響 | 与える印象 |
---|---|---|
赤色 | 熱意や意欲を促進する | 情熱的、活力 |
黄色 | 明るさを演出しひらめきを生む | 元気、軽快、前向きさ |
緑色 | 精神の安定とリラックス | 安らぎ、調和 |
青色 | 感情を落ち着かせる | 知的さ、信頼 |
茶色 | 安心感を与え穏やかな気持ちにさせる | 温もり、安定感、穏やかさ |
グレー | 集中力を高める | 真面目さ、上品さ |
黒色 | 高級感があり、判断能力を高める | 重厚感、高級感、威厳 |
エリアを区別する
床の色や素材をエリアごとに変えることで、パーテーションを使わなくてもゾーニングが可能です。
例えば、執務スペースの床には落ち着いたグレーを採用し、休憩スペースにはリラックスできるブルーを採用することで、背の高い家具を使わずにそれぞれのエリアの利用目的を示すことができます。
また廊下など移動ルートの色を変えれば、地図や案内がなくても視覚的に動線がわかるという効果もあります。
床の色によって、人の移動をコントロールすることも可能です。
素材が与える影響
色だけではなく、床材も人の印象を左右します。
硬いタイル材を使用するとクールな印象を与えられ、歩いた時に音がするため誰かがいることがわかります。
タイルカーペットを使用すれば柔らかな踏み心地になり、ホテルライクで高級感のある印象になります。
そのほかにも、光の反射や歩きやすさ、掃除のしやすさなど素材によって異なります。オフィスの床材を選択する際には、目的や用途によって使い分けることが大切です。
材質はコストにも影響を与えるため、予算内におさまるものを選びましょう。
オフィスの床の主な種類
タイルカーペット
オフィスで使用されるタイルカーペットは、静電防止や防汚機能がついているものも多く、その扱いやすさから多くの企業で採用されています。
40~50㎝の正方形のタイル形状は、OAフロアやモルタル床への直接取り付けが可能で、各タイルが独立しているため部分的な交換も簡単です。
また耐久性が高く、汚損してもその部分だけを変えられるため、コストを抑えて交換が可能な点がメリットです。
オフィスエリア全体に使用される一方で、エントランスなどにはブランドカラーやデザイン性の高いタイルが選ばれることもあり、エリアの用途によって使い分けることも容易です。
一方、時間とともに色合いに違いが生じることも多く、場所によって色ムラができることがあるため、全体の統一感を保つには定期的なメンテナンスが必要です。
天然素材(フローリング・大理石など)
木質系フローリング材は、高級感と木の温かみが魅力の素材です。
オフィスのリフレッシュエリアや、リビングのような執務スペースを作るのに利用されます。
特に最近はオフィスにリラックスを求める傾向があり、自宅のような居心地の良さを演出するために選ばれることが多くなっています。
ただし配線機能を必要とするオフィス環境には適しておらず、そのためインフラへの影響が少ないエリアでの使用がおすすめです。
近年では塩ビタイルのフェイク素材も品質が向上しており、コストを抑えつつフローリングの外観を楽しめるため、こちらを選ぶケースも増えています。
また、大理石も定番の天然床材です。
オフィスに高級感と光沢を提供する素材で、独特の模様が特徴的です。その模様と光沢のおかげで小さなゴミやホコリが目立たないという利点があり、エントランスに採用することで訪問者に良い印象を与えられます。
ただし大理石は非常に高価で、設置や保守にもコストがかかるため、予算に余裕がある場合に限られます。
ビニルタイプ(フロアタイル・フロアシート)
ポリ塩化ビニル(PVC)製のビニルタイプの床材には、タイル型の「フロアタイル」とロール型の「フロアシート(長尺シート)」があります。
衝撃に強いため、歩行が多い場所での使用に適しています。
また配線が多い場所でも使用でき、クッション性もあるため足腰への負担も軽減します。
さらに耐薬品性や帯電防止機能など多機能な製品が多く、ワックスがけが不要なためメンテナンスに手間がかかりません。
木目調のデザインなど見た目も豊富で、天然素材に比べてコストを抑えられます。
ただし耐久力が低いものもあるため、多くの人が行き交うオフィスで使用すると早めに傷んでしまうこともあります。
ラグマット
ラグマットは家庭用としてのイメージが強いですが、オフィスにも採用することがあります。
無機質なオフィスに彩りを与え、温かみのある空間を演出するため、接客のための応接室やリラックススペースなどで利用されています。
ただ、人の出入りの多い場所に使うと、厚みのあるラグはつまずくリスクがあるため注意が必要です。
適切なラグマットを選び、適切な場所に配置することで、そのスペースにアクセントを加えることが可能です。
OAフロア/置き床とは?
OAフロアと置き床は、似た構造を持つものの用途が異なります。
OAフロアは床を二重構造にして配線を床下に収納することを主な目的としており、商業施設やオフィスで採用されています。
オフィス内の電源ケーブルやLANケーブルなどをすっきりと収納し、見た目を整えるだけでなく、掃除やレイアウトの変更も容易になります。
一方の置き床は、建物の床スラブに設置した支持脚で床パネルを支え、その上に木材や他の化粧材を張る施工方法を指します。
主にマンションや住宅で採用される点が、OAフロアとの大きな違いです。
基本的に見た目や足音の軽減など快適性を重視した仕上げがされており、配線収納を目的としていません。
オフィスの床を選ぶのに重要な4つの要素
オフィスで演出したい雰囲気を考える
床を選ぶ際には、演出したい雰囲気を考えて、それに合わせた素材やデザインを選択しましょう。
床材や色・デザインは、オフィスの全体的な雰囲気を大きく左右します。
仮に温かみのある印象を与えたいなら、木目調のフローリングを採用するとリラックスした雰囲気を作り出し、働く人々のストレスを軽減できます。
一方、モダンでクールな印象を与えたいなら、ビニルタイルやカーペットタイルを採用するとシャープな雰囲気を演出できます。
オフィスのイメージや業種に合った床材を選ぶことが、快適で生産的な職場環境を作ります。
色を変えることでゾーニング
オフィスの床材の色を変え、視覚的に異なるエリアを作り出すことでゾーニングが可能です。
物理的な間仕切りの設置が難しい場合や、仕切りを使用したくない時に有効です。
例えば執務空間と休憩スペースの床の色を変えることで、それぞれのエリアの機能を明確に区別できます。
また通路の色を変えることで、オフィス内の動線を視覚的に示すことができます。
仕切りをなくしたゾーニングが可能になることで、オフィス内の視界が開けて各エリアが効率的に機能します。
色彩による心理効果
床の色彩はフロアの雰囲気を作り、従業員や来客の心理に影響を与えます。
例えば緑色にはリラックス効果があり、リフレッシュエリアやコミュニケーションスペースに最適です。
また黄色やピンクは活気を与える色として、アクセントとして使用することで明るく元気な雰囲気を作り出します。
ほかにも青などの寒色系は集中力を高める効果があり、デスクワークや会議室に適しています。
色彩心理学を活用することで、従業員のストレスを軽減や活力向上などのさまざまな効果が期待できます。
メンテナンス性で選ぶ
メンテナンスのしやすさにも注目しましょう。
歩行の多い廊下やエントランスには、耐久性が高く、来客に清潔感を与えられるよう清掃が容易な床材が適しています。
レイアウト変更が頻繁に行われるエリアには、部分的な交換可能なタイルカーペットが便利です。
休憩スペースなどの食事をするエリアには、防汚効果の高い素材を選ぶことで清潔な環境を保てるでしょう。
適切な床材を選択することで、日常の清掃やメンテナンスを効率的に行えます。
オフィスの床張り替え時の注意点
工事費用や床材などのコスト
大規模な床材の張り替えは、工事業者にアウトソーシングすることが一般的で、費用は床材の種類や面積によって異なります。
一般的に、高品質な素材を使用する場合は初期費用は高くなりますが、耐久性が高いなら長期的にはコストパフォーマンスが良くなります。
施工費用以外にも、既存床材の撤去費用も必要なことには注意が必要です。
大規模なオフィスでは、平方メートルあたりの単価が低くなる場合もありますが、撤去費用が高くなることもあるため、事前に詳細な見積もりをとっておきましょう。
原状回復のしやすさ
賃貸オフィスでは、退去時に原状回復義務があります。
そのため、床材の選定時には原状回復のしやすさも考慮しなければいけません。
タイルカーペットは簡単に取り外しができ、原状回復が容易であるため賃貸オフィスに適しています。
一方、ビニルシートや天然素材の床材は接着剤で固定されることが多く、撤去が難しく手間がかかるため、原状回復に時間とコストがかかることがあります。
将来的にオフィス移転の可能性があるなら、容易に撤去できる床材を選ぶと良いでしょう。
工事期間の目安
床の張り替えは時間のかかる作業なため、工事期間に注意しないと日々の業務に影響を与えることがあります。
また、選択する素材によって必要な期間が変わります。
タイルカーペットは施工が比較的簡単であり、200㎡未満であれば週末を利用しての工事も可能です。
しかし支柱式OAフロアのように支柱を固定する作業が必要な場合は、工事期間が長くなるため、その間工事中のフロアは使用できません。
また施工前にはオフィス家具やOA機器の整理が必要となるため、その準備期間も考慮してスケジュールを立てる必要があります。
張り替えやメンテナンス性
将来的にオフィスレイアウトの変更や床材の張り替えを予定している場合、メンテナンス性の高い床材を選ぶことをおすすめします。
タイルカーペットは部分的な張り替えが容易であり、配線変更が頻繁に行われるオフィスに適しています。
またビニル系床材は汚れにくく、清掃が容易です。
一方で天然の床材は素材に合わせたメンテナンスが必要で、張り替えにも手間がかかります。
それぞれの素材の特性と、今後の展望に注意して選択しましょう。
配線に注意
オフィスの床張り替え時には、配線の取り扱いにも十分な注意が必要です。
フロアに露出している配線が乱雑になると、踏みつけることでの断線やホコリの蓄積による火災リスクが高まるため、適切な配線整理が求められます。
床材を選ぶ際には、配線の管理がしやすい素材を選ぶことが、オフィスの安全性を高めるポイントです。配線整理については次の章で詳しく解説します。
オフィスの配線整理のポイント
コードを減らす
可能な限りコードの数を減らすことで、オフィスがすっきりします。
可能なものはワイヤレス機器に切り替えることで、多くのケーブルを省略できます。
ワイヤレスマウスやキーボード、Bluetoothスピーカーなどは比較的簡単に導入可能です。
また有線の場合は機器との距離を短く調整することで、配線が見えにくくなりオフィスの美観を保てます。
配線整理グッズを使う
配線整理のためのグッズを活用することも有効です。
スパイラルチューブやケーブルタイ、ケーブルボックスなどを使用することで、複数のコードを一つにまとめ、見た目をすっきりさせられます。
これらのアイテムを使うことで配線が絡まることを防ぎ、清掃も容易になり、断線などのトラブルも起こりにくくなります。
OAフロアに変える
工事は必要ですが、OAフロア(オフィスオートメーションフロア)を導入することで、オフィスの配線問題を根本的に解決できます。
OAフロアは床下に配線スペースを設けることで、電話回線やネットワークケーブル、電源ケーブルなどをすっきりと収納します。
配線が床に露出しなくなるため、レイアウトの選択肢も増えます。
置敷式OAフロア
置敷式OAフロアは、タイル状のパネルを床に敷き詰めるタイプのフロアシステムです。
比較的コストも控えめで、軽量のため既存の床に負担をかけにくいというメリットがあります。
ただし、床に凹凸がある場合には調整が難しいこともあります。しかし簡単に取り外しや再配置ができるため、今後もレイアウト変更を頻繁に行うなら検討する価値があります。
支柱式OAフロア
支柱式OAフロアは、床下に支柱を設置して床を二重構造にするタイプのフロアシステムです。
この方式は既存の床に段差がある場合でも調整が可能で、安定した歩行感を実現できます。
また耐荷重性が高いため、大型のオフィス機器にも対応できます。
導入コストは高いものの、長期的に使用するなら有効な選択肢です。
オフィスの床をきれいに保つ掃除方法
黄ばみ汚れの対処法
黄ばみ汚れは、ビニル床に水滴を放置することで発生します。黄ばみを防ぐには、床に水滴を残さないように注意しましょう。
黄ばみが発生した場合は、中性洗剤を使用して掃除します。
掃除機やモップでホコリをとってから、雑巾に中性洗剤を数滴垂らして泡立て、黄ばみ部分を丁寧に拭きます。
黒ずみ汚れの対処法
黒ずみ汚れは、カビやワックスの劣化によって発生します。
カビが原因の場合、アレルギーの原因にもなるため早めに対処しましょう。
アルコールスプレーを黒ずみ部分に吹き付け、カビの繁殖を防ぎます。
ワックスの劣化が原因の場合、完全に落とすには一度ワックスをとり、新しいワックスを塗布する必要があります。
油汚れの対処法
オフィスでの油汚れは食事中に発生することが多く、最初は透明なためほとんど気がつきません。
しかし油汚れを放置すると黒ずみ汚れに変化し、落とすのが難しくなります。
油汚れに気がついたら、早めに中性洗剤で拭き取りましょう。
雑巾や布巾に中性洗剤を染み込ませて、油汚れを優しく拭き取ります。
デスク周りでの食事を避けるルールを設けると、油汚れの発生を未然に防ぐことができます。
企業オフィスで使用されている床の実例
株式会社メディカル・コンシェルジュ 町田支社
株式会社メディカル・コンシェルジュ 町田支社では、ニューヨークカフェのようなオフィスを構築しています。
エントランスや応接室、その他オフィスの大部分の床にエイジング加工したフローリングを採用しており、アンティーク調の小物や家具と調和させています。
使用頻度の高い執務エリアには、ダークなデザインのタイルカーペットを使用しており、耐久性を確保しつつも落ち着いて作業できる空間を作り出しています。
株式会社アソビズム秋葉原本社
株式会社アソビズム秋葉原本社のオフィスは、従来の概念にとらわれない自由な発想でデザインされました。
フロアごとに異なる床材を使用することで、空間にそれぞれの雰囲気を与えています。
まずエントランスではブリックタイルの床と芝生が敷かれており、どこか冒険の始まりを思わせるような印象です。
社員が集まるオープンスペースでは、カラフルな床材を採用して気兼ねなく会話ができるエリアや、畳を採用することでリラックスしながら集中できるエリアなど、床を変えることでそれぞれの用途を明確にしています。
執務室や会議室など、フォーマルな空間には落ち着いた色合いのカーペットを用いることでメリハリをつけています。
YKKスナップファスナー株式会社
YKKスナップファスナー株式会社のオフィスは、安心感や丁寧さを表すホワイトを基調にデザインされています。
自社の製品に焦点が当たるよう、シンプルな家具が配置され、壁や家具と調和するようにナチュラルな木目の床材が採用されています。
さらに応接室ではデニムの床材を採用しており、スナップやボタンを製造する同社のブランドを表現。会議室にはタイルカーペットを採用して、落ち着いた空間を演出しています。
YKK株式会社 ファスニング事業本部 ジャパンカンパニー
床材によって視覚的にゾーニングを行った事例です。
エントランスには、木目調の床で灰色の床を挟むことで、企業の名前に自然と視線が誘導されるように工夫。来客の多いラウンジエリアはカジュアルな雰囲気で、周囲のスペースと床材を張り分けることで、視界を妨げないゾーニングをしています。
社員が日々の業務を行う会議室や執務エリアでは灰色の床が採用され、落ち着いて仕事ができるような空間を構築しています。
株式会社廣済堂
株式会社廣済堂では、各スペースの床を変えることでそれぞれの役割を明確にしています。
エントランスや商談スペースなど外部からの来客が多い場所では、木目調の床が採用され、一貫した印象を与えています。さらに多くの人が集まるコミュニケーションスペースにはサークル形状のステージが用意され、さまざまな用途が想定されています。
執務空間では落ち着いた印象のカーペットが採用されていますが、同社の事業と深く関わるCMYKをアクセントに使用することで、独自の空間を構築しています。
新しいオフィスを作るなら「プラス」へ
普段は気がつきにくいポイントですが、床の色や素材はオフィス全体の印象を決める重要なポイントです。
色や素材にこだわることで企業のブランドを表現したり、仕事の効率を上げたり、動線をコントロールしたりと、空間にさまざまな意図を持たせられます。
床を選ぶ際には、配線やメンテナンス性に注意して、その空間に適したものを選択しましょう。
床やオフィスのレイアウトに困ったら「プラス」に相談してみましょう。今回紹介した事例は、すべてプラスが関わっています。そのほかにも豊富な事例やオフィス構築に役立つ情報を公開していますから、ぜひ参考にしてみてください。