「MOKURAL」プロジェクト第1弾として登場した「Vicenda(ヴィチェンダ)」シリーズのプロダクトデザインを手掛けていただいた清水慶太さんをお迎えし、開発担当者からデザインが生まれたバックストーリーや開発秘話を伺います。
Vicenda(ヴィチェンダ)シリーズ
「ヴィチェンダ」はイタリア語で”お互いに”という意味合いです。異素材である木材(センダン)とスチールが互いに補いながら、双方の魅力を引き出し合う、新しいコンセプトのハイブリッド・ファニチャーです。
岩本:
Vicendaシリーズの開発を通じてMOKURALプロジェクトの推進をして参りました。MOKURALプロジェクトは、オフィスから未来へ繋げる木材活用プロジェクトです。このプロジェクトは、適齢期が過ぎた国内の針葉樹を伐採して、家具の材料として利用。伐採した場所にCO2吸収能力の高い若木を植えることでCO2の低減と森林の健全化への貢献を目指しています。清水さんには、そのプロジェクトの第一弾としてお声掛けさせていただきました。
岩本:
Vicendaシリーズが生まれた経緯やデザインの起点を教えてください。
清水:
Vicendaにはイタリア語で「お互い」の意味があります。今回、木と金属を組み合わせたいという依頼を受け、構造上の弱点を補いあいながら互いの良さを引き出すことを目指しました。例えば、金属は強度があるが塊として使用すると重量が出てしまう。一方で、木は金属ほど重くなくて使いやすいが家庭的な雰囲気が強くなってしまい、オフィス空間や働くマインドとのズレが生じてしまいます。温もり感のある木とスタイリッシュな金属の組み合わせは、視覚的にも働く人の心身に与えるバランスがよいと考えました。
岩本:
テーブルの脚部の構成は特徴的なデザインだと感じました。スチールのフラットバーとD字型パイプの組み合わせで構成されていますが、どのような考えでこのデザインに至ったのでしょうか。
清水:
フラットバーを使った部分を木で作っても強度が保てません。金属でしかできない形をシンプルに考え、フラットバーを使いました。D字型パイプの脚部は金属加工技術で強固さを表現したかったので採用を決めました。
岩本: 清水さんはこれまでさまざまな樹種を扱ってこられたと思いますが、センダンはご存じでしたか。
清水: このプロジェクトで初めて知ることになりました。まっすぐの木目がなく、はげしい木目で使い方によってはいい雰囲気を感じる一方で、間違えると和風なものになってしまうという可能性と危険性を感じながらデザインに取り組んでいきました。
岩本:
センダンは古くから木魚、琵琶の胴、下駄などに使われていたようですが、量産の家具用材としては新しい取り組みになるかと思います。センダンに期待することはありますか。
清水:
センダンサイクルの活発化に期待しています。ものづくりは活動の一部分でしかありませんが、それを加速化させるためには必要不可欠です。これからもシリーズを増やし、サイクルを活発化させたいです。
岩本: 清水さんが手がけられたプロダクトには木製のものが多い印象ですが、木に対する思いやデザインフィロソフィをお聞かせいただけますか。
清水:
私が木の魅力に初めて振れたのが、チェロです。使っているうちに経年変化していきますが、劣化ではなく、価値が高まり、愛着が沸いてくることを感じました。例えば木製チェアをデザインするときに、その椅子の50年後、100年後がどうなっていくか、魅力が残っているか、それを考えるようにしています。私が持っているチェロは50~60年前のものですが、自分でメンテナンスを加えることで愛着が増しています。これからも、そんな風に長く愛され続ける家具を作っていきたいです。
岩本:
オフィスにおける木製家具の魅力についてどのようなお考えをお持ちですか。
清水:
近年、オフィスが様変わりしていることを実感しています。木は人間が文明を築いてから触り続けている素材であり、それを働く場所に持ち込もうとする流れは自然なことだと思いますし、気持ちよく仕事をすることのポイントになると思います。
Designer/Keita Shimizu
清水慶太 東京都生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科を経て、2000年同大学院美術研究科修士課程修了。2003年から2006年までイタリア・ミラノを拠点に活動。株式会社クリエイティブノルム代表取締役、東京藝術大学、女子美術大学非常勤講師。グッドデザイン賞、福岡産業デザイン賞など受賞多数。
開発担当:岩本
プラス株式会社 ファニチャーカンパニー
マーケティング本部 商品開発部 所属
「エグゼクティブ」、「受付・ロビー」を中心に開発を担当。
詳細な製品情報はこちらからご覧いただけます。
Vicenda
https://kagu.plus.co.jp/product/vicenda/