多くのオフィスで必須アイテムとなっているOA機器。業務の効率化には役立ちますが、床の上に広がる配線が気になるという方も多いのではないでしょうか。コードに足を引っかけて転倒する可能性もあるため、もっとすっきり収納できないものかという悩みもあるのでは? そんな悩みに対する解決策のひとつがOAフロアです。本記事では、OAフロアの種類や選び方から導入における注意点までをお伝えします。
OAフロアとは
OAフロアとは、フロアパネル(床に設置するパネル)を使用して本来の床との間に空洞を作り、その空洞に配線を通せるようにした床のことで、フリーアクセスフロアとも言います。また、このときに使用するフロアパネル自体を「OAフロア」と呼ぶこともあります。
一般に、現代のオフィスではOA機器用の配線が多く、それによって問題が引き起こされることも多々あります。たとえば、通常の床の上にそのまま配線を施すと、人がつまずいて転倒したり、その際に機器が故障したりするといったリスクが生じます。また、そこまでの状況に至らなくても、常にコードに引っかからないように注意しながら歩かなければならないとなると、社員にとって大きなストレスになるでしょう。また、注意していてもコードが抜けてパソコンでの作業が中断してしまうといったことが頻繁に起こると、仕事の効率も悪くなります。そうした状況の改善に役立つのがOAフロアなのです。
OAフロア導入のメリット
OAフロアには、後述のように複数の種類がありますが、どの種類にも共通するメリットがあります。まずはそれらを見ていきましょう。
リスク回避が可能になる
先述のように、コードが床の上に広がっていると、人が転倒する、機器が故障するといったリスクが発生します。OAフロアを設置すれば、そうしたリスクを未然に防ぐことが可能になります。
オフィスの見た目が良くなる
さまざまな種類のコードやケーブルが床の上に散乱しているように見えるオフィスでは、来客に洗練された印象を与えることができないでしょう。また、そうした環境で働く社員も気分を爽快に保つことができないかもしれません。ひいては生産性に影響してくる可能性もあります。OAフロアを導入すれば、配線を隠せるため、見た目のすっきりした美しいオフィスになり、こうした問題を解消しやすくなるでしょう。
レイアウトやレイアウトの変更がしやすくなる
床の上に配線が広がっていると、オフィス家具のレイアウトやレイアウトの変更を行う際に、その配線のことを考慮に入れなければなりません。そのため、数々の制約に縛られることになり、自由に家具の配置を決めることができなくなるでしょう。家具の配置が自由にできないと、社員が効率的に動ける動線を作ることが難しくなり、この場合も、やはり生産性に影響が出てくる可能性があります。OAフロアを導入すれば、配線を気にせずに家具の配置を決められるので、レイアウトやレイアウトの変更における自由度が高くなります。
掃除がしやすくなる
仕事中はもちろん、掃除をするときにも床上の配線はわずらわしいものとなります。オフィスの床は常に清潔にしておきたいものですが、コードやケーブルがたくさんあると、掃除が中途半端になってしまう場合もあるでしょう。また、床上にコードやケーブルの束があると、その間にホコリがたまりやすいというデメリットも生まれます。OAフロアはこのような問題を解決するためのひとつの手段になり得ます。
OAフロアの種類と選び方
上述のように、OAフロアにはさまざまなメリットがありますが、こうしたメリットを十分に生かすためには、OAフロアの種類や選び方についての知識が必要となるでしょう。OAフロアの選び方を間違えると、本来のメリットを得られないばかりか、デメリットがもたらされる可能性もありますので、まずは、OAフロアの種類別の特徴をよく知ることが大切です。ここでは、OAフロアの種類やOAフロアの選び方、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
OAフロアの種類
OAフロアには大きく分けて以下の3種類があります。
1. 置敷式簡易OAフロア
支柱とフロアパネルが一体となっていて、支柱の高さが決まっているタイプ。主にプラスチック(樹脂)製です。床の上に並べて設置します。
2. 置敷式溝配線OAフロア
フロアパネルに溝があり、溝に沿って配線するタイプ。主にコンクリート製です。床の上に並べて設置し、配線後、溝にカバーをかぶせて使用します。
3. 床高調整式OAフロア
支柱の高さを調整できるタイプ。主にコンクリートまたはスチール製です。支柱を床にしっかり固定しながら施工します。
OAフロアの選び方
OAフロアを選ぶ際には、以下の点に留意しましょう。
配線量
フロアパネルのタイプによって配線の容量が異なるので、どのくらいの配線が必要かを事前に十分に確認する必要があります。特に、支柱の高さ調節ができないタイプのフロアパネルを選ぶ場合には、配線容量を入念にチェックしましょう。また、近い将来に配線が増える予定はないか、配線を壁の中に収納するといった別の方法はとれないかなど、さまざまな点を考慮に入れたうえで決めることが大切です。
レイアウト変更の頻度
オフィスにおいては、業務の効率化や雰囲気のリフレッシュといった目的のために、レイアウトの変更をすることがあります。その頻度が高い場合は、配線も頻繁に変えることになるかもしれないため、配線を変えやすいタイプのフロアパネルを選ぶ必要があるでしょう。
完成までに要する時間
上述の「OAフロアの種類別メリット・デメリット」でも少し触れたように、どのフロアパネルを選ぶかで施工にかかる時間が異なってきます。そのため、ほかの条件も考慮したうえで、完成までにかかる時間のことも踏まえながら、施工のスケジュールに合うフロアパネルを選ぶようにするとよいでしょう。完成までにかなりの時間がかかる場合、レンタルオフィスを借りなければならないこともありますが、そのような予算的余裕があるのか、あるいは、オフィスを一時移動する時間的なゆとりはあるのかも計算に入れたうえで判断しなければなりません。
天井の高さ
OAフロアを選ぶ際には、配線の容量のことが特に気になる場合も多いかもしれませんが、フロアパネルを設置するということは、床の高さが通常よりも高くなる(上がる)ということなので、オフィス全体がどのような空間になるかもイメージしなければなりません。オフィスの天井が低い場合、床の高さを上げるとオフィスに圧迫感が出る場合があるので注意が必要です。
床の状態
基本的に、置敷式タイプのフロアパネルは水平ではない床には使用できないので、その点に留意しなければなりません(※床に多少の凹凸があっても置敷式タイプを使用できる場合もあります。その方法については、後述の「OAフロア施工の流れ」の項目で説明します)。置敷式タイプのフロアパネルのなかには、比較的手軽に施工できるのが魅力となっている製品もありますが、そうしたタイプが自社のオフィスにマッチするかを事前によく確認することが大切です。
耐荷重
フロアパネルには、それぞれ耐荷重があります。そのため、OAフロアを導入する際には、事前にオフィス家具の合計重量を調べその重量に耐えられるフロアパネルを選ばなければなりません。将来的にオフィス家具が増える可能性も踏まえ、余裕を持った選択をするのがおすすめです。
耐震性
フロアパネルはそれぞれ耐震性が異なります。オフィスの環境に適した耐震性を持つタイプを選ぶようにしましょう。
価格
ここまで述べてきた点を踏まえつつ、フロアパネルの価格とのバランスも考える必要があります。あらかじめ決められた予算がある場合にはその予算の範囲内で最適なものを選び、予算がまだ定まっていない場合には各フロアパネルの特徴や価格を比較しながら候補を絞り、最終的な予算を決めていくとよいでしょう。施工費やその他の費用(一時的にほかのオフィスを借りる場合にはその賃料や移動費など)も含めてどのくらいの予算が必要になるのかをよく把握しておくことが大切です。
OAフロアの種類別メリット・デメリット
1. 置敷式簡易OAフロアのメリット・デメリット
<メリット>
- 軽量でオフィスへの負担が少ない
軽量素材で作られているため、床に負担がかかりにくい - 価格が安く施工も比較的短期間で行える
短期間での設置が可能なため、業務への影響が少ない - 置敷式溝配線OAフロアに比べると配線容量が多い
置敷式溝配線OAフロアに比べると多くのコードやケーブルを収納できる
<デメリット>
- 耐久性や耐燃焼性に課題がある
耐久性や耐燃焼性にはやや不安が残る - 支柱(固定脚)の高さ調節ができない
支柱(固定脚)の高さは一定になっているため、調節できない - オフィス床の形状によっては設置できない
床が平らではないオフィスでは、支柱(固定脚)を固定できず設置できない場合もある - 配線のやり直しが困難
収納するコードやケーブルをあらかじめ整理しておかないと、途中で配線のやり直しをするのに手間を要する
2. 置敷式溝配線OAフロアのメリット・デメリット
<メリット>
- 耐久性が高め
置敷式簡易OAフロアに比べると、耐久性がある - 歩行時に違和感があまりない
支柱(固定脚)がないため、施工後の床の上を歩いても、違和感を覚えにくい - 配線のやり直しが容易
溝にコードやケーブルをはわせるため、配線のやり直しがしやすい
<デメリット>
- 比較的高価
置敷式簡易OAフロアに比べると高コストとなる - 床の高さは調節不能
床の高さを変えられないタイプのフロアパネルである - 配線容量が少ない
溝の数があらかじめ決まっているため、配線容量が多い場合は不向きである
3. 床高調整式OAフロアのメリット・デメリット
<メリット>
- 支柱の高さ調節が可能
一定の間隔で支柱の高さ調節ができる - 耐久性、耐荷重、耐燃焼性が高い
耐久性、耐荷重、耐燃焼性に優れた素材が使われている - 3種類のなかで最も配線容量が多い
オフィスの床とフロアパネルの間に空洞ができ、高さ調節も可能なので、3種類のなかで最も多くの配線を収納できる
<デメリット>
- 3種類のなかで最も価格が高い
一般に、ほかのタイプに比べ高額である - 設置できないフロア(床)もある
支柱をビスで固定するタイプなので、フロア(床)によっては設置できない - 3種類のなかで施工期間が最も長くかかる
施工期間が長いので、別のオフィスを借りなくてはならなくなる場合もある
OAフロア施工の流れ
OAフロア施工方法はタイプによってそれぞれ異なります。OAフロア施工の大まかな流れは次のとおりです。
置敷タイプの工事の流れ
- 床に凹凸や傾斜がないかを確認
置敷タイプは床高調整式とは異なり床からの高さを調整できないため、基本的に、下地処理や清掃を行って凹凸や傾斜がない状態にする必要があります。 - クッションシートを敷き詰める
床面を安定させるためにクッションシートを敷き詰めていきます。※置敷式簡易OAフロアの場合は、水平な床で、支柱(固定脚)の先にゴム製キャップがあるパネルであれば、シートを敷かずにパネルを置いていくこともあります。多少の凸凹であればキャップで吸収可能です。また、支柱(固定脚)の先にゴム製キャップがあるパネルでも、さらに凸凹を調整したい場合はシートを敷きます。ゴム製キャップのないパネルなら、必ずシートを敷きます。 - フロアパネルを設置
敷き詰めたクッションシートの上にフロアパネルを設置していきます。 - タイルカーペットを敷く
フロアパネルを設置したら、その上にタイルカーペットを敷いて、施工完了となります。
床高調整式タイプの工事の流れ
- 支柱をセット
床に凹凸や傾斜がないかを確認、調整したうえで支柱をセットします。 - フロアパネルを設置
セットされた支柱の上にフロアパネルを設置していきます。 - タイルカーペットを敷く
フロアパネルを設置したら、その上にタイルカーペットを敷いて、施工完了となります。
OAフロアの施工については、『OAフロアの施工にかかる期間、費用目安は?施工の流れや自社に合ったOAフロアを選択するポイント』の記事で詳細をご覧ください。施工費や施工期間についても触れています。
OAフロア導入における注意点
OAフロアを導入する際には、いくつかの点に注意する必要があります。一度導入した後にさまざまな問題点が見つかったとしても、すべて別のフロアパネルに変えたり、フロアパネルを取り除いて元の状態に戻したりするのは、予算的にも時間的にもロスが大きいものとなります。あるいは、もともと予算や時間の制約があれば、そもそもフロアパネルを後から変更したり、床を元の状態に戻したりすることが不可能な場合もあるでしょう。
フロアパネルを取り除くだけでも、そのための作業費やフロアパネルの処分費などがかかるため、ひとたび施工が終わった後に、元の状態に戻す、あるいはフロアパネルを変更するのは容易ではありません。そうした無駄を防ぐためにも、どのタイプのOAフロアにするかを事前によく考慮して決める必要があるでしょう。ここでは、これまで見てきた点も踏まえながら、OAフロア導入における注意点をまとめてみました。
施工業者の選定
OAフロアの施工を依頼する際には、確かな実績のある業者を選定することが大切です。良い業者を選べなかった場合、オフィスに適したフロアパネルを選ぶことができない、施工後に床のガタつきが出るなど、さまざまな問題が発生する可能性があります。また、施工の見積もりを依頼する場合には、既存のオフィス家具・什器などの移動・設置費用や仕上げ材(タイルカーペット)の価格が施工費に含まれているかを確認することが欠かせません。そうした内訳をきちんと説明してくれる業者を選びしょう。
床上げ工事の可否
床に大きめの傾斜がある、天井高の制約があるなど、オフィスの条件によっては床上げ工事ができない場合もあるので、注意が必要です。そもそも床を二重構造にしてフロアパネルを設置することが可能なオフィスなのかを業者に確認しましょう。事前に床の傾斜や凸凹のチェックが十分にできていないと、施工する段階になってからフロアパネルの設置が不可能であることが判明したり、施工後にガタつきが見つかったりなど、望まない結果になってしまうこともあります。
オフィス空間のバランス
上記で少し触れたように、天井高によっては、フロアパネルの設置に制約が出てくる場合があります。たとえばフロアパネルの支柱が長いと、床上げ面が高くなり、オフィスの天井高によっては圧迫感が出てしまいますが、そういった状態になるのは避けなければなりません。そのため、床上げ工事を行う際には、オフィス空間のバランスを考慮し、業者と相談して支柱の高さを決めましょう。具体的には、天井の高さによって次のような違いが出てきます。
- 天井の高さが平均以上のオフィスの場合
一般的なオフィスにOAフロアを導入する場合、床上げ高の標準的な高さは50mmです。また、一般的なオフィスの天井の高さは、2,500~2,600mmほどで、これよりも天井が高い場合は、支柱が50mmより少し高めのフロアパネルを使っても圧迫感が出ない可能性もあります。 - 天井の高さが平均くらいのオフィスの場合
天井の高さが平均くらいの場合、床上げ高があまり高くないOAフロアにするのがおすすめです。床上げ高を高くして圧迫感が出ると、「社員が業務に集中できない」、「ゆとりのあるオフィスという印象を来客に与えられない」といったデメリットが出てくる可能性が大きくなります。 - 天井の高さが平均以下のオフィスの場合
天井の高さが平均以下の場合、支柱が付いているフロアパネルを選択すると、オフィスが窮屈に感じられるというリスクがあります。窮屈さを出さないためには置敷タイプ(溝配線)がおすすめですが、オフィスの配線量が多いために支柱(固定脚)が付いているタイプを選択しなければならない場合には、支柱の高さが30mmの低いものがよいでしょう。
OAフロアの高さについては、『OAフロアを設置する際に確認すべき高さとは?自社に合った高さを選ぶ方法』の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
オフィスの状況に合ったフロアパネルの選択を
今回見てきたように、OAフロアにはさまざまな種類があり、それぞれにメリットやデメリット、注意点があります。オフィスへの導入を検討される際には、オフィスの状況とフロアパネルの特徴をよく確認し、予算の許す範囲内でベストのものを選べるようにしましょう。「結果的に予算を大幅にオーバーしてしまった」、「施工後にガタつきが見つかった」といったことで後悔することのないよう、信頼性の高い施工業者を選ぶことも大切です。
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