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緊急事態宣言の解除後、業種によってはオフィスに出社しないと業務がスムーズに進まないとして、テレワークを全面的に廃止する企業も登場しています。しかし一律にテレワークを廃止すれば、従業員からの反発があるのではと二の足を踏んでいる企業も多いのではないでしょうか。そこで今回はテレワークの存続について結論を決めかねている企業に向けて、テレワークを廃止する前に知っておくべきことや廃止を検討する際のポイントをお伝えします。

新型コロナウイルス感染拡大前に戻りつつあるテレワーク導入率

2021年11月11日、東京都が発表した、「2021年10月のテレワーク実施率」を見ると、9月の63.9%から8.5ポイント減の55.4%となっています。

また、東京都の新型コロナ感染症対策サイトで公開されている、「都営地下鉄4路線の利用者数の相対値(減少率)」を見ても、平日朝のピーク時間(7:30~9:30)の減少率が11月以降は-10~-20%台で推移しています(2020年1月20日~24日の利用者数を基準に算出)。これらの結果から、少しずつではありますがオフィスへの出社率は新型コロナウイルス感染拡大前の状態に戻りつつあるといえます。

テレワークを廃止・縮小することのメリットとデメリット

テレワーク廃止の動きが少しずつ見えてきているなか、まだ方向性を決めかねている企業も多いのではないでしょうか。そこで、廃止の結論を出す前に知っておくべきテレワークを廃止した際のメリットとデメリットを説明します。

テレワークを廃止・縮小するメリット

従業員間・取引先とのコミュニケーションが取りやすくなる

テレワークを廃止・縮小してオフィスワークに戻せば、従業員はもちろん取引先への営業活動も以前のように行えるため、対面でのコミュニケーションが基本となります。その結果、コミュニケーション不足は解消に向かうでしょう。

労務管理がしやすくなる

テレワークでは難しかった在籍や労務管理がしやすくなります。今、誰がどこにいて何をしているのかがわかりやすくなるため、労務全体の管理にかかる手間は大幅に軽減されるでしょう。

セキュリティ管理がしやすくなる

多くの従業員がオフィス内でパソコンやスマートフォンを扱うようになるため、自宅やレンタルオフィスなどに比べセキュリティ管理がしやすくなります。

テレワークを廃止・縮小するデメリット

柔軟な働き方を求める従業員が離職するリスクが生まれる

テレワークを導入する企業が増加したことにより、育児や介護などによりオフィスへの出社が難しい従業員でも従来のように働くことが当たり前となりました。しかし、また以前のようなオフィスワークのみになれば、柔軟な働き方が難しくなり、さまざまな事情を抱えた従業員の離職リスクが高まるうえ、求職者の減少リスクも発生する可能性があります。

従業員のワークライフバランスが崩れてしまう可能性がある

テレワークの導入により、通勤時間がなくなり従業員のワークライフバランスは大幅に向上しました。しかしテレワークが廃止・縮小されればまたワークライフバランスが崩れてしまうリスクが生まれます。

BCP対策が弱くなる

台風や地震といった自然災害以外にも電車の遅延や停止などの際、オフィスワークのみだと業務が滞ってしまう場合があります。テレワークの廃止・縮小はBCP対策が弱くなるリスクがあるといえるでしょう。

テレワークとオフィスのあり方については、『テレワークは継続すべき?改めて考えるテレワーク時のオフィスのあり方』の記事もご覧ください。

テレワークを廃止・縮小する際のポイント

前項で挙げたようにテレワーク廃止・縮小にはメリット、デメリットの両面があり、出社と在宅どちらか一方だけを選択するのは簡単ではありません。そこで、テレワークを廃止・縮小するにしても以前とまったく同じ業務形態にするのではなく、柔軟性は残したままオフィスワークに切り替えていくことが重要です。具体的には次のような方法が考えられます。

就業時間に柔軟性を持たせる

オフィスワークに戻す場合でも、さまざまな事情を抱えた従業員でも就業できるよう、時短勤務やフレックスタイムなど就業時間に柔軟性を持たせるようにします。

必要に応じてテレワークを認める

子育てや介護など特定の理由がある従業員にはテレワークを継続できるようにします。

ハイブリッドワークの導入

テレワークとオフィスワークの両方を適切に活用できる「ハイブリッドワーク」を導入します。この際、対象を決めてしまうと対象外の従業員から不満が出る可能性もあるため、注意が必要です。

ハイブリッドワークについては、『ハイブリッドワークとは?テレワークの定着を実現させるポイントと注意点』の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

テレワークの廃止・縮小は柔軟性を残したまま進めていくことが重要

テレワークは、コミュニケーションや労務管理の困難さなどデメリットを生む一方で、うまく活用すれば生産性向上や従業員満足度向上といったメリットをもたらします。緊急事態宣言が解除されたからといって安易に廃止してしまうのではなく、継続の要否について十分に検討を重ねる必要があるでしょう。

重要なポイントは廃止か継続かといった二元論で考えるのではなく、オフィスワークを基本としながらも状況に応じてテレワークのメリットを生かしていくことです。時短勤務やフレックスタイム制の活用、ハイブリッドワークの導入などをオフィスワークにうまく組み合わせれば、双方のメリットを享受することも可能になります。テレワーク廃止を決める前に改めて柔軟性のあるオフィスワークを検討してみてはいかがでしょうか。

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