新しい建築の楽しさ2020 Vol.02

特別寄稿

取材・文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

内神田三丁目プロジェクト(仮称)

川添善行(空間構想一級建築士事務所)

都心において通りを豊かにする方法の一つが立体化。外階段=路地をストリート・インターフェースとして3層分を路面店と捉えた、都市回廊の新しい試み。

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2014年に「TOKYO STREET INTERFACE DESIGN」というタイトルのフォーラムを企画したことがある。東京には多くの通りがあり、多様なストリート・カルチャーがある。通りを歩く人と、ビルや店舗内の人の境界面であるファサードやプラザなどをストリート・インターフェースと位置づけ、同じ通りにあるビルや店舗などのストリート・インターフェースを連携、融合させ、ストリート・カルチャーを活性化させるデザイン手法やルールを提案することを促していきたいと思ったからだ。

空間構想の川添善行さんがJR神田駅に近い、飲食店の多い通りでテナントビルの計画に取り組んでいる。プロジェクトは12階建ての鉄骨造のビルで、上層部はオフィス、下層部は店舗の用途を想定している。

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「上層は機能的で、効率性も高くして、下層は場所ごとに作り直す。上層の普遍的なシステムと下層の個別的なシステムが共存しているのがアイコンになる。このテナントビルをシリーズ展開していくときの基本ルールにする」(川添さん)。

ビルは小さな交差点に面しており、3階まで上がっていける外階段をつくっている。

「内外の関係を豊かにしていくには都市であれば立体化のさせ方だと思う。低層部で考えたのは、人がいちばん興味を持つのは人。人がたむろしている状況は強烈におもしろい。階段でたまり場をつくりたいと考えた。階段は上っていく装置であり、かつ腰を下ろせる場所なので、キャッシュオンしてグラスをもって外に出てくれるような人がたむろしてくるとおもしろいと思っている。人の様子そのものがひとつのキャッチになる」(川添さん)。

ひとつの建物が100の努力をするよりも、5の努力を20の建物がすれば、まちはもっと魅力的になる。

「確かに2階の高さまでで都市回廊をつくる街は多い。ここの3階は目線で7~8mになるが、交差点と前の道の広さから認知しやすいのではないか。路面店を2、3階まで引っ張り込むというのが当初から持っていたアイデアだった。3階までを神田のこの通りのにぎわいが届く高さとして、3階までを立体的な都市の一部としてみなしていく。細い立体的な路地(階段)を上がっていくと大通りの上にでてくる。3階まで行ける工夫になっていると、1階~3階が路面店扱いしていけるので、ビジネス的には有利に働くと思う。当初は3階をオープンな場所にする案も考えた。その案では3階に小さなルーフトップがあって、2階建てのビルに屋上空間があるというイメージだった。」(川添さん)。

テナントビルの場合、テナントが代われば内部の人は変わる。当然、歩く人と内部の人の関係も変わる。一部のテナントが代わっても変わらないストリート・カルチャーのベースとなるストリート・インターフェースがほしい。

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「こういう試みがつながっていくと通りは変わっていくと思う。ひとつの建物が100の努力をすることもあるが、5の努力を20の建物がしたら、まちは魅力的になる。これは5の努力の方だが、現代的なデザインでどうまち全体をつくっていくかという問題意識を持っている。もっと自分の中でボキャブラリーを増やしていくと、通り全体をやるような仕事がきた時に今日的な言語で街並みをつくっていける。そういうところにいくためのひとつの道具づくりのプロジェクトだ」(川添さん)。

筆者は2020年に「よりみちデザイン」という切り口で企画展示のコーディネートをした。3両編成の電車の窓上や中吊りのポスターを利用して、沿線の寄り道したくなるような風景や資源などを展示した。「TOKYO STREET INTERFACE DESIGN」はデザインする側に立った視点であったが、「よりみちデザイン」はまちを歩く人の側に視点を置いた。

このプロジェクトの外階段が寄り道したくなるようなストリート・インターフェースになることを期待したい。

[プロジェクト概要]

名称:内神田三丁目プロジェクト(仮称)
建築面積:124㎡
延床面積:1192㎡
用途:飲食店・事務所
構造:鉄骨造、12階
設計:空間構想一級建築士事務所
協力:辻昌志建築設計事務所
構造:KAP
設備:明野設備研究所
ブランディング:GRAPH
施工:(株)藤木工務店
竣工:2020年(予定)

[プロフィール]

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川添 善行  かわぞえ よしゆき

東京大学建築学科卒業、オランダ留学後、博士号取得。現在、東京大学准教授として川添研究室を主宰。建築設計に関する研究・教育に従事していると同時に、空間構想一級建築士事務所にて設計活動を展開。「東京大学総合図書館本館改修」、「東京大学総合図書館別館」、「変なホテル」などの建築作品や、『空間にこめられた意思をたどる』(幻冬舎)『このまちに生きる』(彰国社)などの著作がある。東京建築賞最優秀賞、日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン未来づくりデザイン賞、ロヘリオ・サルモナ・南米建築賞名誉賞など国内外の賞を多数受賞し、日蘭建築文化協会会長などを務める。

中崎 隆司  なかさき たかし
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー

生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。