オフィスでは時に集中して働くために周囲の音を遮断したいケースも少なくありません。また、会議室や役員室など外に声が漏れないようにしなくてはならない部屋もあります。用途に応じた適切な防音対策ができているかどうかは重要なポイントの一つといえるでしょう。そこで今回は、オフィスに防音対策を施すメリットや優先的に防音対策すべき部屋、防音対策のポイントなどをお伝えします。オフィスのリニューアルや移転のタイミングで防音対策を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
オフィスに防音対策が必要なのはなぜ？
防音対策は、多くのオフィスに必要とされています。
ここでは、その理由について3つ解説します。
・騒音を防ぐため
・音漏れを防ぐため
・Web会議でのハウリングが防げる
騒音を防ぐため
オフィス内に発生する騒音は、社員の集中力を奪い業務の進行に支障をきたす可能性があります。
とくに近年流行しているオープンスペースのオフィスは、フレキシブルな作業環境を提供する一方で、周囲の作業音や足音、外部からの騒音が響きやすくなります。
そのため防音対策を行い、外部の騒音を効果的にシャットアウトし、静かな作業環境を構築する必要があります。
音漏れを防ぐため
オフィス内で行われる会議や電話でのやり取りには、機密情報や個人情報が含まれることもあるでしょう。
そのため、音漏れによる情報流出のリスクがあります。
万が一隣接する部屋や廊下に音が漏れ、悪意ある第三者に漏洩した場合、企業の信用を大きく損なう結果となるかもしれません。
こうしたリスクを最小限に抑えるためにも、防音対策が必要なのです。
Web会議でのハウリングが防げる
Web会議で利用するマイクやスピーカーを通常の部屋で利用した場合、ハウリングが起きてしまい、声が聞き取りにくくなるリスクがあります。しかし、防音対策が施された部屋であれば、過剰反響を低減させる効果が得られるため、ハウリングが起きにくくなり、Web会議も快適かつスムーズに進められるようになるでしょう。
音漏れの発生原因は？
音漏れは、オフィスのレイアウトや構造によって引き起こされることが多いです。
音漏れを防ぐには、その原因を理解し適切な対策を講じる必要があります。
ここでは、音漏れが発生する根本的な原因について解説します。
・通過
・伝播
・透過
・反射
通過
音がドアや窓の隙間、換気口、エアコンの配管などを通じて外部に漏れる現象です。オフィス内で発生した音が外部に通過することで、他の部屋や外の人々に聞こえてしまうことがよくあります。密閉性の低いドアや古い窓は、音の通過が起こりやすい場所です。
伝播
音が振動を伴って床や壁を伝わる現象です。床や壁の厚さが十分でないと、椅子を引く音や足音が階下や隣の部屋に伝わりやすくなります。
透過
音が壁や床を透過して隣の部屋に伝わる現象です。
とくに木材や軽量鉄骨などの素材は音を透過しやすいですが、コンクリートのような素材でも、特定の周波数の音が透過しやすい場合があります。
反射
音が壁や天井に反射し、部屋のなかで響き続ける現象です。
反射音が原因で会話が聞き取りにくくなったり、Web会議中にハウリングが発生したりします。
ガラスやコンクリートのような反射率の高い素材が使われているオフィスでは、音の反響が大きくなりやすい傾向があります。
オフィスに防音対策を施すメリット
オフィスに防音対策を施すことで得られる主なメリットは次のとおりです。
業務に集中できる環境が実現する
防音対策は、外に音が漏れないようにできるだけではなく、外部から余計なノイズが入らなくなるメリットも得られます。外部からの音を防げれば、業務に集中できるようになり、業務効率化や生産性向上が期待できます。
情報漏洩対策につながる
防音対策が施された部屋から外部に声が漏れるリスクが減少するため、情報漏洩対策につながります。
プライバシーを守ることができる
防音対策を行うことで、オフィス内で行われる会話が外部に漏れるのを防げます。
とくに機密情報を扱う部署や会議室では、音漏れが顧客の個人情報など重要な情報の流出につながり、企業のセキュリティ体制が問われる問題になりかねません。
防音設備を整えることで、大切な情報を守り企業の信頼性を担保することにつながるのです。
また、社員には安心して業務を進められる環境を提供できます。
優先的に防音対策すべき部屋
防音対策が必要だといってもすべての部屋に施す必要はありません。特に対策が必要なのは次の部屋です。
社長室
社長室は、自社にとって人事や経営など重要なやり取りを行うことが多いため、外に音が漏れないような対策が欠かせません。
会議・ミーティングスペース
会議の内容によっては情報漏洩を防ぐ必要がありますが、防音対策をすることで漏洩リスクの軽減につながります。また、Web会議時のハウリング防止にも防音対策が必須です。
応接室・商談室
顧客や取引先とやり取りする場所での会話も、内容によっては外部にもれないようにする必要があるため、防音対策が必要です。
休憩室
休憩中の会話は仕事には関係のないプライベートなものが多くなるため、執務スペースに聞こえないよう配慮が必要になります。
【関連コラム】 休憩スペースについて詳しくは、「オフィスにおける休憩スペースの役割・効果は？おすすめの設備も紹介」をご覧ください。
集中スペース
近年、集中して働きたいときに使うスペース（集中スペース）を設置する企業が増加しています。集中スペースでノイズが入れば集中しにくくなってしまうため、防音対策が欠かせません。
【関連コラム】 集中スペースについて詳しくは、「コミュニケーションと集中のメリハリを実現する集中ブースの効果的活用方法」をご覧ください。
仮眠室
シエスタ（昼寝）制度の導入により仮眠室を設置する企業では、社員がリラックスして眠れるようにするため、仮眠室に防音対策を施す必要があります。また、防音対策は、いびきが周囲に漏れるリスクの軽減にも効果的です。
【関連コラム】 仮眠室について詳しくは、「仮眠室をオフィスに設置するメリット・デメリット、活用のポイントを解説 」をご覧ください。
防音対策で押さえるべき要素
防音対策を行う際には、先ほど紹介した音が外部に漏れる原因への対策が必要です。
ここでは、そのための4つの要素から防音について考えてみましょう。
・遮音
・吸音
・制振
・防振
①遮音
遮音とは、音が壁や扉などを通り抜ける、通過を防ぐための対策です。
主に遮音材を使用して、音の振動が別の空間に通り抜けることを防ぎます。
また壁材や窓ガラスに遮音性の高いコンクリートや石膏ボード、特殊ガラスなどを使用することも遮音になります。
②吸音
吸音は、音が壁や天井、床などに反射するのを防ぐための対策です。
吸音材は、音を吸収することで室内の音の反響を抑えるためのもので、設置することで会話や音がクリアに聞こえるようになります。
吸音材単体でも販売されていますが、カーペットにも吸音効果があります。
③制振
制振は、音の振動を抑制する技術です。
音は振動として伝わりますが、制振材を使うことでその振動を効果的に抑えることができます。
主に壁や天井に振動が伝わるのを防ぐために使用され、オフィス内で起こる振動による音が外部に漏れることを防ぎます。
④防振
防振は、床や壁、天井を通じて伝わる振動音を抑えるための対策です。
外部からの振動が直接オフィス内に伝わらないようにするために、床下に防振材を設置することが有効です。
また、オフィス内の足音や複合機の振動音への対策にもなります。
オフィスにおける防音対策の方法
ひと口にオフィスの防音対策といってもその方法は多様です。ここでは主な方法について解説します。
防音効果のあるパーテーションの設置
パーテーションの設置は、音漏れを防ぐための有効な手段です。
オープンスペースが広がる現代のオフィス環境では、周囲の雑音や会話が仕事の効率に影響を与えることがあります。
そのため、音漏れを防ぎ集中できる環境をつくるために、パーテーションの必要性が高まっているのです。
またパーテーションには、遮音材や吸音材が組み込まれているものもあります。
集中作業を必要とするスペースや機密性の高い打ち合わせエリアなどに設置することで、音の干渉を抑え、それぞれのエリアで適した音環境となるでしょう。
可動式のものを採用すれば、フレキシブルにレイアウト変更も可能です。
サウンドマスキングの実施
サウンドマスキングとは、スピーカーから騒音とほとんど同じ周波数の音を流して雑音を紛らわす方法です。商談室や休憩室などの防音対策として効果を発揮します。
防音パネルの設置
壁に防音パネルを貼り付ける方法は会議室や社長室などの防音対策、Web会議時のハウリング対策として効果的です。
防音ブースの導入
防音対策を施した1～3人用のブースを導入する方法は、集中ルームや仮眠室などを設置する企業におすすめです。
防音テープの活用
防音を行いたい部屋のドアの隙間を埋めるために防音テープを貼る方法は、簡易的ではありますが、古く隙間が多いオフィスでの防音対策としては高い効果が期待できます。
オフィスにおける防音対策のポイント
オフィスで適切な防音対策を行うための主なポイントは次のとおりです。
隙間をつくらない
古いオフィスだけではなく新しいオフィスでも、デザインの都合上、隙間があるケースも少なくありません。そのため、防音テープやコーキング、天井まで届く吸音材を使った間仕切りなどを使うなど、隙間をつくらない工夫が必要です。
オフィスレイアウトを工夫する
たとえば、休憩室は、サーバールームや倉庫など普段は人が入らない場所の隣に設置するようにすれば、多少は周囲に声が漏れても業務に差し支えありません。防音材や間仕切りを使わなくてもレイアウトを工夫することで防音対策のコスト削減にもつながります。
Web会議対策を徹底する
新型コロナウイルス感染症拡大の影響からWeb会議を実施する企業が増加しています。場合によっては自席でWeb会議を行うこともあり、周囲に迷惑をかけてしまうケースも少なくありません。こうした際の対策としては、自席に吸音効果のあるパーテーションを設置する方法があります。
また、オフィススペースに余裕がある場合は、集中ブースの設置がおすすめです。集中ブースには一定の防音対策が施されているため、Web会議で利用しても周囲に迷惑がかかりません。
オフィスの防音対策事例
ここでは、オフィスの防音対策を成功させた事例について紹介します。
青山特殊鋼株式会
青山特殊鋼株式会社では、本社の建て替えと移転計画の際に、2つのフロアに分かれた執務エリアの運用効率の最適化を目指し、防音対策を含むさまざまな工夫を取り入れています。
ビル建設段階からの防音対策は大掛かりで、下の階との床スラブと上の階との床スラブに壁をつくり防音性強化を行っています。
上階と下階の間での音の伝わりが最小限に抑えられたことで、集中作業を妨げない環境を実現しました。
また営業部門や管理部門の執務スペースにおいては、パーテーション付きのL型デスクを採用しており、開けた空間ながらも社員一人ひとりの集中力を高めるレイアウトが採用されています。
音の干渉を防ぎつつ、効率的な作業が可能な快適なオフィスづくりに成功しています。
株式会社マーケティング研究協会
株式会社マーケティング研究協会では、オフィスの移転を機にセミナーや研修に理想的な環境を整備しました。
中心にあるラウンジは、参加者同士の交流に重点を置いて設計されていますが、同時に防音にも配慮がされています。
セミナー受講者との打ち合わせや研修を行う会議室には、完全防音仕様が採用されており、機密性の高い会話が外部に漏れず安心して打ち合わせができる環境が整っています。
また必要に応じて開閉できるブラインドも設置され、視覚的なプライバシーにも配慮しています。
活発なコミュニケーションを行えるラウンジと、重要な情報を扱う会議室とでメリハリのある音環境を実現しています。
防音ブースの導入も視野に適切な防音対策の実施を
IT化が進んだこともあり、多くの企業がサイバー攻撃による情報漏洩対策を徹底しています。しかし、情報漏洩はITツールのみから起こるわけではありません。オフィス内での防音対策を怠ることが情報漏洩につながるリスクも高まっています。そのため、オフィスの適切な防音対策も欠かすことはできません。
また、オフィス内の防音対策を徹底すれば、情報漏洩リスクの低減だけではなく、集中して業務を行えることによる生産性向上も期待できます。そのため、レイアウトの工夫や防音ブースの導入も含め、自社にとって適切な防音対策を実施するのがおすすめです。
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