この記事でわかること
- 3つの柱で整理する働き方改革の全体像と、企業に求められる具体的な取り組み
- 制度を整えても成果が出ない原因と、オフィス環境が改革の成否を左右する理由
- オフィスに必要な5つの要件と改善手順、プラスが手掛けた働き方改革の事例
働き方改革とは、働く人が多様で柔軟な働き方を選べるようにする改革です。3つの柱と企業の取り組み、改革が進まない原因、オフィス環境の要件と改善手順を解説します。
働き方改革関連法の施行から7年が経ち、残業時間の上限管理やテレワーク制度の整備は多くの企業で一巡しました。一方で、制度は整えたのに現場の働き方が変わらないという声は根強く、その要因のひとつとして、働く場であるオフィスが旧来のまま取り残されている点が挙げられます。この記事では、働き方改革の3つの柱と企業の取り組み、改革が進まない原因、オフィス環境の要件と改善の進め方について解説します。働き方改革を次の段階へ進めたい担当者さまは、ぜひ参考にしてください。
働き方改革とは働き方を選べるようにする改革
働き方改革とは、働く人がそれぞれの事情に応じて、多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革です。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少と、働く人のニーズの多様化を背景に推進されてきました。全体像は、次の3つの柱で整理するとつかみやすくなるでしょう。
<働き方改革の3つの柱>
- 長時間労働の是正と時間管理
- 多様で柔軟な働き方の実現
- 雇用形態による待遇差の解消
■働き方改革関連法の主な内容と適用時期
項目 内容 大企業 中小企業 時間外労働の上限規制 原則として月45時間・年360時間を上限とする 2019年4月 2020年4月 年次有給休暇の取得義務 年10日以上付与される従業員に年5日取得させる 2019年4月 2019年4月 同一労働同一賃金 雇用形態による不合理な待遇差を禁止する 2020年4月 2021年4月
長時間労働の是正と時間管理
長時間労働の是正では、時間外労働に罰則付きの上限が設けられ、労働時間を客観的に把握することが企業に義務づけられました。
時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限となり、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間などの枠を超えることはできません。
企業側の取り組みとしては、勤怠管理システムによる労働時間の可視化や、業務量と人員配置の見直しが挙げられます。ただし、時間を管理する仕組みを整えても業務量そのものは減りません。同じ時間で高い成果を出せる状態をどうつくるかが、次の論点です。
出典: 働き方改革のあらまし(改正労働基準法編)(厚生労働省)
多様で柔軟な働き方の実現
多様で柔軟な働き方の実現に向けては、時間と場所の制約をゆるめる制度の整備が進んでいます。
コロナ禍をきっかけに広まったテレワークは、出社と組み合わせるハイブリッドワークとして定着しました。さらに2025年10月からは、3歳以上小学校就学前の子を養育する従業員に対し、柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが事業主に義務づけられています。
さらに2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を養育する従業員に対し、始業時刻等の変更やテレワーク、短時間勤務制度など5つの選択肢から2つ以上を講じることが、事業主に義務づけられています。
この義務とは別に、時間単位の年次有給休暇のように企業が任意で導入できる制度もあります。法令への対応と自社の取り組みを組み合わせ、育児や介護と両立する従業員が働き続けられる環境を整えましょう。制度の選択肢が増えるほど働く場所や時間はばらつくため、オフィスの使われ方も変わります。
出典: 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(厚生労働省)
雇用形態による待遇差の解消
同一労働同一賃金により、正規雇用と非正規雇用のあいだの不合理な待遇差が禁止されました。
対象となるのは賃金だけではありません。賞与や各種手当、福利厚生施設の利用、教育訓練の機会まで幅広く含まれ、待遇に差がある場合は、その理由を従業員に説明する義務も課されています。
この柱で中心となるのは、人事制度や賃金体系の設計です。そのため、オフィス環境が関与できる範囲は限られます。本記事ではこのあと、オフィス環境が直接効く前の2つの柱を中心に扱います。

働き方改革が進まない3つの原因
制度の整備が進む一方で、現場の働き方が変わらないという相談は少なくありません。残業時間は減ったのに成果が伸びない、テレワーク制度はあるのに出社日の生産性が上がらないといった状態です。ここでは、停滞する原因を3つに分けて見ていきましょう。
制度と現場の運用が乖離している
時間の上限だけを定めても、業務量が変わらなければ現場の負荷はかえって高まります。
同じ仕事をより短い時間で終えるよう求められる状態が続けば、持ち帰り残業という形で労働時間が見えなくなるおそれがあります。業務の属人化が解消されないまま時間だけを制限すれば、特定の人に負担が集中しやすくなる点も見逃せません。
制度を機能させるには、業務量の配分や進め方そのものを見直す必要があります。そのうえで、短い時間でも集中して成果を出せる働く場を整えることが、ずれを埋める土台になります。
業務内容と働く場が合っていない
集中を要する業務と対話を要する業務では、必要とされる環境が根本的に異なります。
企画書の作成や数値の分析のように思考を深める業務には、視線と音が遮られた静かな環境が向いています。一方、アイディアを出し合う打ち合わせには、声を出しやすく資料を広げられる環境が欠かせません。
固定席が並ぶだけのレイアウトでは、性質の異なる業務をすべて同じ場所で行うことになり、集中も対話も中途半端になりがちです。業務内容に応じて働く場を選べるようにすることが、限られた時間で成果を出す前提条件といえるでしょう。
出社する目的が共有されていない
ハイブリッドワークが定着した今、出社日の過ごし方を定義できていない企業は少なくありません。
出社したものの一日中Web会議をしていた、対面で話したい相手がその日は在宅勤務だったという状況が続けば、オフィスは単なる作業場所にとどまり、通勤の負担だけが残ります。
対面でしかできないことを整理し、その活動を支える空間を用意することが、出社の価値を取り戻す出発点です。部署ごとに出社日をそろえる運用面の工夫も、あわせて検討しましょう。

オフィス環境が改革の成否を分ける理由
働き方改革の3つの柱のうち、オフィス環境が直接関与できるのは「長時間労働の是正」と「多様で柔軟な働き方の実現」の2つです。制度が働き方の枠組みを決めるのに対し、オフィスは日々の働き方そのものを規定します。オフィス環境への不満を、一部の従業員が抱いているだけだと片付けるのは早計です。プラスが実施した「働き方に関するWEB調査2023」をもとに、働く場が改革の成否を左右する理由を見ていきます。

集中環境が生産性を左右する
労働時間を短縮しても、割り込みや騒音で作業が中断されれば、実質的に使える時間は目減りします。
電話の応対や近くの打ち合わせの声が絶えない執務エリアでは、思考を要する業務ほど生産性が下がりやすくなります。中断のたびに集中し直す時間が必要となり、終わらなかった作業が持ち帰り残業を誘発しかねません。
改善の方向性としては、集中する場と会話する場を空間で切り分けることが挙げられます。
偶発的な対話が意思決定を速める
部門をまたぐ確認が会議の設定を待たなければ進まない状態では、意思決定に時間がかかります。
「働き方に関するWEB調査2023」によると、35%の人が現在のオフィスにカフェやラウンジなどのコミュニケーションスペースがない・足りないと回答しています。立ち寄って短く相談できる場がなければ、些細な確認まで会議として設定することになります。
動線上に立ち寄る理由のある場をつくり、日常の中で短い相談が成立すれば、手戻りも会議の件数も減らせます。
働く場の選択肢が定着率を高める
働き方の選択肢が多いオフィスは、事情を抱える従業員にとって働き続けやすい環境となります。
同調査では、リアルコミュニケーションや雑談の頻度が高い人ほど自社の働き方を他者に勧めたいという意向が高く、約90%が「とても勧めたいと思う」「勧めたいと思う」と回答していました。
多様な人材が活躍できる環境づくりは働き方改革の目的そのものであり、定着率や採用力にも波及します。

働き方改革を支えるオフィスの5つの要件
働き方改革を支えるオフィスに共通するのは、業務の性質に応じて働く場を選べることです。新しい家具の導入よりも、目的ごとに機能を分けて配置することが要件になります。自社のオフィスが下記の5つを満たしているか点検してみましょう。
<働き方改革を支えるオフィスの5つの要件>
- 集中できる執務環境
- 協働と雑談を生む共有スペース
- Web会議に対応した音環境
- 働き方に合わせた可変レイアウト
- 回復を促すリフレッシュ空間
■業務シーン別に必要となる空間の目安
業務シーン 必要な環境条件 対応する設備の例 集中を要する作業 視線と音の遮断 集中ブース、ハイパネル席 2〜3名の短い相談 立ち寄りやすさ オープンスペース、カウンター席 Web会議 音漏れの抑制 1〜2名用ブース、小規模会議室 全社・部門会議 人数への可変対応 可動間仕切りのある会議室 休息・気分転換 執務空間からの距離 ラウンジ、リフレッシュスペース
集中できる執務環境
思考を要する業務のための集中環境は、労働時間の短縮を成果につなげる基盤です。
集中ブース やハイパネルで囲った席、会話を控えるルールを定めたゾーンなど、遮音と視線の遮断を組み合わせた設計が有効です。ブースを設ける余地がない場合でも、書架やグリーンで視線を区切るだけで体感は変わります。
執務エリア全体を静かにするのではなく、集中エリアと会話可能なエリアを分けて示し、従業員が業務に応じて移動できる状態にしましょう。
協働と雑談を生む共有スペース
部門を越えた接点は、偶然に任せるのではなく動線の設計でつくります。
コピーコーナーやカフェスペースのように立ち寄る理由のある機能を主動線の上に置くと、自然と人が集まるマグネットスペース(自然と人が集まる場所)として働きます。ただし執務席に近すぎると業務の妨げになるため、少し距離を取る配置が現実的です。
オープンスペース は短時間の打ち合わせから立ち話まで幅広く使えるため、会議室の予約待ちを減らす効果も期待できるでしょう。
Web会議に対応した音環境
ハイブリッドワークが前提となった今、Web会議の音環境はオフィスの必須要件です。
執務席からWeb会議に参加すると周囲への音漏れが問題になり、逆に会議室をすべて塞いでしまうと対面の打ち合わせができなくなります。会議室を増やす前に、何名で何分の会議が多いのかを確かめましょう。
1〜2名用のブースを複数配置し、長時間の会議は会議室、短時間の打ち合わせはブースと使い分ければ、限られた面積でも需要を吸収しやすくなります。
働き方に合わせた可変レイアウト
出社率が変動する前提では、レイアウトを固定しないことがリスク管理になります。
フリーアドレス や ABW(Activity Based Working) は、席を固定しないことで面積効率を高め、業務に応じた場所の選択を可能にします。ただし、席を自由にするだけでは定着しません。個人の荷物を収める場所の確保と、資料を減らす取り組みをあわせて進めましょう。
キャスター付きの什器や可動式のパーテーションを組み合わせておけば、組織変更のたびに工事を発生させずに済みます。
回復を促すリフレッシュ空間
短い休息を挟める場は、限られた労働時間の中で集中力を維持するための仕組みです。
窓際のラウンジ席や植栽を取り入れたエリアは、緊張を緩め、気分を切り替える役割を果たします。席を離れる行為そのものに意味があるため、執務エリアから視線が抜けにくい位置に設けるのがおすすめです。
休憩専用にせず、一人作業やカジュアルな打ち合わせにも使えるようにしておくと、稼働率が上がり、投資に対する効果も得やすくなります。

オフィス環境改善の進め方4ステップ
オフィス環境の改善は、話題の施策の導入から始めるものではありません。現状を数値で把握し、優先順位を決めてから設計に入れば、投資の根拠と効果検証の基準が同時に手に入ります。ここからは、オフィスを改善する手順を4つのステップで紹介します。
<オフィス環境を改善する4つのステップ>
- 現状の働き方をデータで把握する
- 改善の優先順位を決める
- 目的に沿って空間を設計する
- 改善後の効果を測定する
1.現状の働き方をデータで把握する
オフィス改善で最初に取り組むべきは、思い込みではなくデータで現状を把握することです。
座席の利用率や在席率、会議室の予約と実利用のギャップを測ると、「会議室が足りない」という声の正体が部屋数ではなく予約の偏りにあった、といった実態が見えてきます。従業員アンケートと組み合わせれば、数値に表れない不満も把握でき、設計要件の根拠になるでしょう。
プラスの イゴコチの見える化ソリューション では、AIカメラや設置型の計測機器、Webアンケートを用いて、こうしたデータを改修の前後で取得できます。大規模な工事を伴わずエリアを限定した導入も可能なため、課題が疑われる場所から着手できます。

2.改善の優先順位を決める
すべての課題に同時に着手するのではなく、経営課題への影響が大きいものから順に取り組みます。
解決までの期間、必要な費用、想定される効果という3つの軸で整理すると、レイアウト変更や運用ルールの見直しで対応できるものと、移転やリニューアルを伴うものを切り分けられます。前者から着手すれば、短期間で成果を示しながら次の投資判断につなげやすくなります。
ここで注意したいのが、他社の事例をそのまま取り入れてしまうケースです。書類管理が多い業務で全面的なフリーアドレスに踏み切ると、資料の持ち運びや保管の手間が増え、かえって業務効率が落ちることがあります。
3.目的に沿って空間を設計する
空間の設計では、面積の配分を目的から逆算することが重要です。
執務・集中・協働・休憩という4つの機能にどの程度の面積を割くかを先に決め、そのうえで家具やゾーニングを具体化します。従業員へのヒアリングを設計に組み込むと、運用開始後の定着度も高まります。
席数を減らす場合は、ステップ1で実測した在席率をもとに判断してください。テレワークを前提に大きく削減したものの、繁忙期に座席が不足する状況は珍しくありません。ピーク時に対応できる可変席を確保しておきましょう。
4.改善後の効果を測定する
オフィスの改善は実施して終わりではなく、効果を測定して次の改善につなげます。
ステップ1と同じ指標で再度計測すれば、座席利用率の平準化や会議室の空き状況の改善を数値で示せます。経営層への報告や次の投資判断の材料にもなるため、改修前の計測結果は残しておきましょう。
空間をつくっても、使い方のルールがなければ定着しません。荷物の保管方法や集中ブースの利用時間の目安といった運用ルールを定め、計測結果をもとに定期的に見直していくことが大切です。
働き方改革を進めたオフィス事例
ここからは、オフィスづくりのプロ・プラスが手掛けた、働き方改革につながるオフィスリニューアルや移転の事例を紹介します。多様な働き方への対応、フリーアドレス化、会議環境の整備という観点から、規模も業種も異なる3社をご覧ください。
【約900平方メートル】多様なワークスタイルに対応できるゾーニングを実現したセゾン投信株式会社 様

| 入居人数 | 約150名 |
|---|---|
| 延べ床面積 | 約900平方メートル |
| 業界・業種 | 金融業 |
従業員の増員に伴い、執務エリアと会議室エリアを増床したリニューアル計画です。さまざまなスタイルの席を配置し、多様なワークスタイルに対応できるゾーニングを実現しました。社内コミュニケーションの活性化と、リモートワークや集中作業といった柔軟な働き方の両立を目的としています。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
信頼と安心、その先のパフォーマンスへ|セゾン投信株式会社 様
【約425平方メートル】オフィス移転時に収納効率向上とフリーアドレス化を叶えた株式会社ICUS 様

| 入居人数 | 約40名 |
|---|---|
| 延べ床面積 | 約425平方メートル |
| 業界・業種 | 産業用設備洗浄業 |
テナントビルへの入居、研究部門・機材倉庫の新拠点設立という、大きく環境が変化する移転を実施した同社。フリーアドレスの導入と収納量の削減という課題を同時に解決し、横のつながりを強化したオフィスづくりを目指しました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
「ONE TEAM」で、新たなステージへ。|株式会社ICUS 様
【約540平方メートル】会議室不足を解消する共用カンファレンスエリアを開設したサムティホールディングス株式会社 様

| 延べ床面積 | 約540平方メートル |
|---|---|
| 業界・業種 | 不動産業 |
従来の課題として会議室不足を抱えていた同社は、オフィス増床時にグループ全体で利用できる共用カンファレンスエリアを開設しました。日常的な打ち合わせから重役会議、来客対応のための応接室、研修に使えるセミナールームまでを用途別に整備しています。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
サムティグループ全体のホスピタリティが生きる、上質なカンファレンスエリア|サムティホールディングス株式会社 様
そのほかにも事例がたくさんございます。事例ページはこちらをご覧ください。
働き方改革に向けたオフィスづくりはプラスへご相談ください
働き方改革を実効性のあるものにするには、制度の整備だけでなく、業務の性質に応じて働く場を選べるオフィス環境を整えることが欠かせません。現状の把握から設計・施工、改善後の効果測定までを一貫して進めるには、専門的な知見が求められます。
プラスは、オフィスリニューアル や コミュニケーションの活性化 をはじめ、業種や規模を問わない実績をもとに、課題のヒアリングから設計・施工・アフターフォローまでワンストップで対応しています。実際に社員が働くオフィスを体感できる PLUS DESIGN CROSS の見学も受け付けています。貴社の働き方に合ったオフィスづくりを検討される際は、ぜひプラスにご相談ください。
働き方改革に関するよくある質問
働き方改革は中小企業も対象ですか?
働き方改革は中小企業も対象です。時間外労働の上限規制は中小企業に2020年4月から、同一労働同一賃金は2021年4月から適用されています。企業規模にかかわらず、自社の現状に合わせて優先順位をつけて取り組むことが大切です。
働き方改革が進まないときは何から見直せばよいですか?
制度の不足ではなく、制度と現場の運用にずれがないかを先に確認しましょう。残業時間は減ったのに成果が伸びないという状態であれば、働く場が業務内容に合っていない可能性があります。詳細は「働き方改革が進まない3つの原因」をご確認ください。
オフィス改善の効果はどのように測ればよいですか?
改修の前後で同じ指標を計測することが基本です。座席利用率や在席率、会議室の予約と実利用のギャップは数値で比較でき、従業員アンケートと組み合わせると変化の背景まで把握できます。改修前に計測しておけば、設計要件の根拠と効果検証の基準を同時に得られます。


