生産性が低く毎日残業続き……そんな職場になっていませんか? 働き方改革でも注目され、あちこちで「生産性」という言葉を聞くようになりました。しかし、日本の生産性は諸外国と比べてかなり低いというのが実情のようです。生産性が上がらない原因はどこにあるのでしょうか。今回は、そもそも「生産性」とは何か、そして生産性向上を妨げる要因を見つつ、業務の能率アップと効率化を図ることで改善に導く方法を考えていきます。
生産性と効率と能率の違いは?
生産性と似たような意味で使われている言葉に、「効率」や「能率」があります。まずはこれらの言葉の違いを確認しましょう。
生産性とは?
生産性とは、労働時間に対し、どれだけの成果を上げられたのかということを示すものです。仕事における生産性は労働生産性とも呼ばれ、労働で上げた成果を労働投入量(従業員数もしくは時間あたりの労働量)で割ったものです。
効率とは?
効率とは使った労力に対して、どの程度の成果を得られたのか、その割合を示すものです。そのため単純に成果が上がれば効率が良いということにはなりません。例えば、100万円のコストをかけて150万円の売上を上げた場合と、10万円のコストで100万円の売上を上げた場合。金額だけを見れば150万円のほうが多いですが、効率が良いのは後者のほうです。
能率とは?
能率とは、一定の時間、期間内でどれだけの仕事ができたのかを見るものです。例えばこれまで5つの業務をこなすのに1時間かかっていたものが40分でできるようになれば、能率が上がったといえます。
生産性が高い状態とは?
それでは生産性が高いとはどういった状態を示すものなのでしょう。前項でご説明したように、生産性とは成果を従業員数や時間あたりの労働量で割ったものですから、単純に能率が上がれば、生産性も高まることになります。
しかし、実は単純に能率が上がっただけでは生産性が大きく高まることはありません。そこで重要になるのが「業務効率化」です。仕事の能率を上げ、業務スピードを速め、そのなかで効率化をし、成果をきちんと上げる仕組みをつくって初めて、生産性が高い状態といえるようになるのです。
生産性が向上しない理由はどこにある?
業務の生産性が向上しないと、いつまでたっても仕事が終わらないばかりか、利益の確保もままならず、さらにひとりあたりの業務負荷が増し、長時間労働から抜け出せない……という負のスパイラルにも陥りかねません。当然ながらこうした状況をよしと考える人は誰もいないでしょう。
このように、本来なら業務の生産性向上は誰しも共通した願いのはず。しかし、それでも状況が改善しない原因はどこにあるのでしょうか。それぞれの業界の仕組みや企業風土、社員個人の働き方にもよりますが、よくあるものとして以下のような原因が考えられます。
業務が複雑化していて生産性を向上させるのが難しい
業務内容が複雑化することにより、似たような業務でも同じやり方が通じなくなり、その結果として一律で生産性を向上するのが難しくなる場合があります。このような状況下では一つひとつの業務プロセスを検証していくのも難しく、そもそも生産性向上のための手がかりを探るのに多大な労力が必要になるという場面も少なくありません。
業務プロセスやメンバーが固定化しすぎている
業務プロセスの確立やそれを担うスタッフのベテラン化は、業務の安定化という意味では大切ですが、一方で新しいやり方を受け入れにくくなるというデメリットが生じる場合があります。より生産性の向上を図れる方法があっても、業務プロセスを一から学び直したり、これまで蓄積した知識が部分的でも使えなくなったりすることに、反発が生まれてしまうのです。
生産性が向上しない理由を、管理職が把握できていない
本来なら業務管理を行うべき立場である管理職が現場の状況に詳しくなく、生産性が向上しない理由を把握できていない場合もあります。このような状態では生産性を向上させるための具体的な方法を考えるのはそもそも不可能で、現場で働く社員と管理職層の摩擦を生むだけになってしまいます。
生産性を向上させる3つのアイデア
では、生産性を向上させるために、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。3つのアイデアをご紹介します。
会議室でのミーティングを減らす
ビジネスの意思決定の場として重要な会議ですが、複数の社員が仕事の手を止めて集まる必要があるうえ、参加する社員が増えればそれだけコストも増大するという面もあります。そのため、業務の生産性を妨げないよう、ちょっとした打ち合わせであればデスク周りのスペースで簡易的な報告にとどめるという方法があります。いちいち会議室を予約したり資料を作成したりする手間を省くことで能率を上げ、生産性向上に結び付きます。
生産性を向上させるのは「スキル」と考える
仕事量が多くてどんなにがんばっても終わらない。そんなふうに感じている人は、そもそも効率のいい働き方ができているかどうかを見直してみてはいかがでしょうか。生産性を向上させるためには、ただやみくもに急ぐだけでなく、自分で最小の労力で最大の効率が得られるやり方を生み出したり、パソコンスキルを身につけたりするのが有効な場合もあります。まずは自分の働き方が効率的かどうか、見直してみましょう。
すぐにやらなくていいことは「後回し」に
「業務を後回しにする」というと聞こえはよくないかもしれません。しかし、現在抱えている仕事の全てが緊急ではないはず。急ぎでない仕事は後に回してより優先度の高い仕事に集中することで、業務の生産性の向上につながります。急に依頼される割り込みタスクやクライアントからの電話、メールでの依頼など、それぞれの緊急度をもう一度、確認してみてはいかがでしょうか。
生産性向上のための取り組みの注意点について詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。
【関連コラム】 その取り組みは本当に生産性向上につながっていますか?
生産性を高めたいなら製造業に学べ!
日本のホワイトカラーの生産性が低いことが問題視されますが、生産性改善に長年取り組んできた製造業から学べることは少なくありません。製造業においては生産性が、生産量を直接左右するため、以前から重要度が高いと考えられてきました。では、具体的にどんな手法を取り入れているのでしょうか。ポイントは大きく2つあります。
業務プロセスの「見える化」
生産性を向上させるためにはさまざまなアプローチが考えられますが、まず押さえておきたいのが無駄を省き作業効率をアップさせることです。製造現場においては作業ミスによるやり直しや、作業手順が突き詰められていないことが原因の無駄が必ず潜んでいるもの。まずは現在どのようなプロセスで業務が行われているのかを「見える化」し、無駄をつぶしていくことで生産性向上につなげているようです。
「見える化」を実現するためには、どのように作業を行っているかをヒアリングしたり、作業者の様子を目視で確認したりすることはもちろんですが、作業工程を細分化してそれぞれにかかる時間を計測したり、生産出来高を数値化したりするなどのデータを集めることが重要です。製造現場にカメラを配置して、普段の作業の様子をモニタリングし、無駄を探していくのも有効な手段となるでしょう。
具体的な目標数値を設定する
現状の業務プロセスを「見える化」し、どうやって無駄をつぶしていくかの方針が固まったら、次はそれをもとに具体的な目標数値を設定します。このとき重要なのは、あくまで無駄の削減により実現可能な数値を設定すること。「このくらい生産したい」といった希望観測的な数値では、ただ人的リソースを酷使するだけの結果になり、生産性向上は望めません。
また、実際に作業する作業員にその数値を設定した根拠を説明し、理解を求めることも重要なポイントのひとつ。目標数値を告げるだけでは、単に労働負荷を増やそうとしているととらえられ、モチベーションの低下にもつながりかねません。
企業が率先して能率アップ、業務効率化につながる環境をつくり出す
業務の生産性向上は、業務プロセスや社内の体制などさまざまな問題が絡んでいるため、単純に社員の努力だけで解決するのは簡単ではありません。企業側はこのことを十分に認識した上で、業務のプロセスや職場の労働環境を見直すとともに、社員一人ひとりが必要なスキルを身につけられるような教育制度を整えていくことが重要です。それが結果として能率を上げること、業務を効率化することにつながり、生産性向上の足がかりとなるのではないでしょうか。