
オフィス移転は、物件探しや内装工事、各種手続きなど、非常に多くのタスクが発生する複雑なプロジェクトです。これらを社内だけで管理・推進するのは困難なことも多く、そこで重要になるのがプロジェクトマネジメント(以下、PM)の存在です。
PMが全体を俯瞰して管理すれば、オフィスを移転する際のトラブルの防止やスムーズな進行が可能になります。特に規模が大きい場合や専門知識が必要な場面では、PM業務を外部に委託する企業も少なくありません。
この記事では、オフィス移転におけるPMの役割のほか、自社でPMを行う場合の流れ、PM業務を外部委託するメリットと注意点について詳しく解説します。
オフィス移転のPMとは移転業務を管理すること
オフィス移転におけるPMとは、移転の計画から実行、進捗管理、関係者との調整まで、プロジェクト全体を円滑に進めるためのマネジメント業務を指します。これらの業務を担う責任者はプロジェクトマネージャーと呼ばれます。
オフィス移転は単なる引っ越しではなく、物件の選定、レイアウト設計、内装工事、ITインフラ整備、原状回復、各種手続きなど、多くの工程を含みます。そのため、タスクが多岐にわたり、調整すべき相手も社内外にわたります。
こうした膨大な業務をスムーズに進行させるには、全体を俯瞰しながら指揮を執るPMの存在が不可欠です。企業規模や移転の内容によって、プロジェクトマネージャーを「社内スタッフ」で担うか、「外部に委託」するかを判断するのが一般的です。
小規模なオフィス移転は社内スタッフでの対応も可能ですが、中規模から大規模までのオフィス移転であれば、外部のプロフェッショナルに委託するケースも少なくありません。外部プロジェクトマネージャーを活用すれば、専門知識にもとづいた対応ができ、移転プロジェクトの成功率が高まります。
オフィス移転でのPMの役割
プロジェクトマネージャーは、オフィス移転を成功に導くためのキーパーソンです。社内外の関係者と連携しながら、目的の明確化から実施、完了後の評価まで一貫してプロジェクトを管理します。プロジェクトマネージャーの主な役割は下記のとおりです。
移転目的の決定
オフィス移転を実施する前に、まずは「なぜ移転するのか」という目的や目標を、プロジェクトマネージャーを中心に明確に定義します。現状のオフィスが抱える課題を洗い出し、新オフィスで解決すべき内容を整理することが第一歩です。オフィス移転の主な目的を見てみましょう。
<オフィス移転の主な目的>
- 業員満足度の向上
- 生産性の向上
- コスト削減
- オフィスの老朽化対策
このプロセスでは、従業員へのアンケートやヒアリング、オフィス内の動線や混雑状況の観察などが有効です。
不動産の選定と契約
移転先となるオフィスを選定します。立地や広さ、設備、賃料などの条件を総合的に判断し、最適な物件を選ぶことが必要です。その後、管理会社との契約交渉や手続きをし、入居に向けた準備を進めます。
オフィス設計
新しいオフィスの設計では、従業員の働きやすさを重視した機能的なレイアウトが求められます。プロジェクトマネージャーは、業務内容やチーム構成、コミュニケーションの取り方などを考慮しながら、設計担当者と連携してプランを策定します。
内装工事の管理
選定した設計にもとづき、内装工事が始まります。このときのプロジェクトマネージャーの主な業務は、工事業者と連携し、工期や品質を管理することです。工事中に問題が発生した場合には、関係各所と連絡を取り合いながらすみやかに対応策を検討・実施します。
マニュアルやガイドラインの作成
新オフィスの運用をスムーズに行うためには、ルールや使い方を明確にするマニュアルの整備が必要です。プロジェクトマネージャーは、入退室ルールや会議室予約の方法など、業務に必要なガイドラインを作成し、社内に周知します。
オフィス移転を自社で行う際の流れ
オフィス移転は外部のプロジェクトマネージャーに委託せず、自社で進めることも可能です。特に小規模な移転であれば、社内の総務担当者などが中心となって計画から実行まで対応できます。ただし、全体を効率的に進めるためには、あらかじめ流れをしっかり把握することが重要です。
オフィス移転を自社で行う際の流れは下記のとおりです。
■オフィス移転を自社で行う際の流れ

1.オフィス移転の目的を決める
最初に移転の目的を明確にすることが、プロジェクト成功のカギです。目的が定まれば、物件選びやレイアウト設計、必要な設備・家具の選定など、すべての判断基準がブレずに進行できます。
2.現状の課題調査と分析
現オフィスでの課題を洗い出し、それを解決するために新しいオフィスで求められる機能をリストアップします。経営陣や従業員の意見を取り入れることで、実際のニーズに沿った移転が可能になります。
3.移転計画を立てる
オフィスのイメージを明確にした上で、具体的なスケジュールと作業内容を整理します。内装工事やインフラ整備には時間がかかるため、早期の着手が必須です。現オフィスの退去連絡は、少なくとも半年前までに行いましょう。
4.工事・引越し業者を選定する
必要な作業を社内で実施できない場合は、外部業者を選定します。インフラ工事業者、内装業者、引越し業者など、それぞれの専門業者に相見積もりを取り、比較検討することが重要です。
5.各種手続きを行う
オフィス移転には、官公庁への届け出や契約変更、住所変更など、数多くの手続きが必要です。水道・電気・ガス・ネット回線・金融機関などの手続き内容をリスト化し、抜け漏れなく進めてください。
オフィス移転の流れについてチェックリストはこちらのページをご覧ください。
【エクセル版チェックリスト付き】オフィス移転の流れと必要な事前準備
6.移転後、旧オフィスの原状回復工事を行う
新オフィスが完成したら移転し、旧オフィスの原状回復も進めます。多くの場合、オーナーや管理会社の指定業者に依頼する必要があります。工事には時間がかかるため、移転計画の初期段階で確認・相談しておきましょう。
7.ルールや使い方を社内に周知する
新しいオフィスを効果的に活用するためには、運用ルールや設備の使い方を明確にし、社内で共有することが大切です。社内研修を実施し、社員の理解を促しましょう。
8.新オフィスを評価する
移転後もプロジェクトは終わりません。定期的にオフィスの利用状況や社員満足度を評価し、必要に応じて改善を図ります。
これにより、より働きやすい職場づくりへとつながります。
オフィス移転の流れについて詳しくは以下の記事をご確認ください。
【チェックリスト付き】オフィス移転・事務所移転の流れや費用感、成功事例まで解説
オフィス移転をPMに委託するメリット
オフィス移転のPM業務を外部に委託することで、社内の負担を軽減しながら、スムーズかつ効率的な移転が実現できます。オフィス移転をPMに委託する主なメリットを紹介します。
社内の業務負担を軽減できる
PMには、業者とのやりとり、スケジュール管理、レイアウト調整、工事の進捗管理など、多くの作業が伴います。
これらを外部に委託すれば、社内担当者の負担が大幅に減り、通常業務に専念できるようになります。特に人手が限られている企業にとっては、大きなメリットです。
スムーズにオフィス移転できる
外部のプロフェッショナルは、豊富な経験と専門知識を持っており、想定されるトラブルや課題に事前対応が可能です。知識がないまま進めると、内装工事のやり直しやレイアウトの失敗などが発生するリスクもありますが、専門業者に任せることでスムーズかつ確実な移転が実現できます。
コストを削減できる可能性がある
一見コストがかかるように見えるPMの外部委託ですが、結果的に費用を抑えられるケースも多くあります。
例えば、業者間の価格交渉や工事内容の最適化により、不要なコストを削減できます。経験豊富な企業ならではのネットワークと交渉力が、全体のコスト圧縮につながるでしょう。
PMを委託してオフィス移転を成功させるポイント
オフィス移転においてPM業務を外部に委託する場合、単に「任せる」だけでなく、プロジェクトを成功に導くための準備や姿勢が重要です。PMを委託してオフィス移転を成功させるポイントは、次のとおりです。
スケジュールに余裕を持って依頼する
オフィス移転は、物件の選定や契約、内装工事、ITインフラ整備、原状回復など、多岐にわたる工程があるため、長期にわたる計画が必要です。
特に、大規模な移転や特注設備を伴う場合は、1年以上前からの準備が望ましいとされています。また、予期せぬ工事の遅延や設備トラブル、契約上の不備などが起こる可能性もあるため、スケジュールには十分な余裕を持って委託することが成功のカギです。
オフィス移転の目的を明確にする
移転の目的が明確でないと、PMにとっても的確な判断が難しくなります。「コスト削減を図りたい」「社員の働きやすさを向上させたい」「ブランディングを強化したい」など、自社の移転目的をしっかり言語化しておきましょう。
これにより、PMは企業の方針に沿った最適な計画立案・進行管理が可能になります。目的が曖昧なまま進行すると、課題が解決できなかったり、不要な支出が発生したりするリスクもあります。
PMを委託する際の選定ポイント
オフィス移転のPMを外部に委託する際は、「PM業務をどこに依頼するか」が成功の可否を左右します。複数の業者を比較検討し、自社に最適なパートナーを選ぶためには、以下のポイントを押さえてください。
委託可能な業務範囲
PM業務と一口に言っても、対応範囲は業者によって異なります。物件選定から内装設計、各種手続き、引っ越し作業、原状回復、ITインフラ整備、さらにはアフターフォローまで、どの範囲まで対応してもらえるのかを事前に確認しましょう。
一部の業務しか対応していない業者に依頼してしまうと、社内対応が必要になる範囲が増え、結果的に業務負担が重くなることもあります。
委託費用
PMを委託する際は、その費用も重要な比較ポイントです。予算内に収めるためには、複数社から相見積もりを取り、サービス内容と価格のバランスを比較することが大切です。
単に金額の安さだけで選ぶのではなく、見積もりに含まれるサービスの範囲や品質を見極める必要があります。また、追加費用が発生しないかも確認してください。
口コミ・評判
実際にその業者に依頼した企業の口コミや評判は、判断材料として非常に有効です。サービスの質や担当者の対応力、納期遵守、柔軟性などをチェックできるため、できれば第三者評価サイトや事例インタビューも参考にすると良いでしょう。
特にBtoBの場合、信頼できる実績のある業者を選ぶことが安心につながります。
これまでの移転実績
過去にどれだけのオフィス移転を手掛けてきたのかも、業者選定の重要なポイントです。業界・業種・規模感が自社と似た案件の経験が豊富であれば、より的確な提案や対応が期待できます。
実績の一部が公開されていれば、施工事例やプロジェクト概要を確認して、具体的なイメージを持って選ぶとよいでしょう。
プラスが手掛けたオフィス移転のPMサービス事例
オフィス空間づくりの専門企業プラス株式会社では、企業の規模や業種を問わず、さまざまなオフィス移転のPMを担ってきました。その中から2つ、事例をご紹介します。
■プラスが手掛けるPMサービス

事例1:公益社団法人日本将棋連盟様 新将棋会館

入居人数 | 約40名 |
延床面積 | 約2,060平方メートル |
業界・業種 | 公益社団法人 |
2024年9月8日に創立100年を迎えた日本将棋連盟様の将棋会館リニューアルを、プラスがプロジェクトマネジメントから手掛けました。将棋だけでなく事務局もこの先の働き方の変化を見据えてフリーアドレスを導入し、次の時代へ将棋文化をつなげ、発展させていく本拠地をまとめあげました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
オフィスデザイン・レイアウト事例紹介:公益社団法人日本将棋連盟様 新将棋会館
事例2:株式会社セゾン情報システムズ様

入居人数 | 1,100名 |
延床面積 | 約5,173平方メートル |
業界・業種 | 情報通信業 |
株式会社セゾン情報システムズ様の本社移転の際、プラスがPM内装デザインを担当しました。「社内の風通しを良くする」というコンセプトから、多様な働き方を支援するデザインを採用。ナチュラルで落ち着ける色使いと、スタッフの動線を考慮したオフィスは効率性が高く、働きやすいと好評です。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
オフィスデザイン・レイアウト事例紹介:株式会社セゾン情報システムズ様
事例3:一般財団法人日本気象協会様

入居人数 | 約300名 |
延床面積 | 約1,940平方メートル |
業界・業種 | 一般社団法人 |
日本の気象コンサルティングサービスのパイオニア、一般社団法人日本気象協会様のオフィスリニューアルをプラスがPMから受託。長期スパンの工程管理で、フロア内の仮移転や工期を分けた段階的な移転も、スムーズに実現しました。デザインは高層階の眺望を生かした明るく開放的な空間が特長です。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
オフィスデザイン・レイアウト事例紹介:一般財団法人 日本気象協会 様
プラスのオフィス移転PMサービスの特長
プラスでは、オフィス移転の計画から実行、アフターフォローまでを一括でサポートするPMサービスを提供しています。その特長をご紹介します。
ワンストップ対応
物件探し、レイアウト設計、内装工事、家具選定、引っ越し、原状回復、ITインフラ整備まで一貫して対応。各工程の調整・進行を一手に担います。
専任チームによるプロジェクト推進
営業、デザイナー、施工管理など各分野のプロフェッショナルがチームを組み、企業ごとの課題や要望に応じた最適な移転計画を立案・実行します。
企業の成長や働き方にフィットした空間設計
働きやすさ、コミュニケーション、ブランディングなど多角的な観点から、理想のオフィス空間をプランニングします。
移転後の運用も支援
レイアウト変更や運用に関するアドバイスなど、移転後の課題にも継続的に対応が可能です。
プラスのPMサービスなら、移転に伴うすべての工程を安心して任せることができ、限られた社内リソースでも効率的にプロジェクトを進行できます。
PMをプラスに委託してスムーズなオフィス移転を実現しよう
オフィス移転は、業務への影響を最小限に抑えながら、計画的かつ効率的に進める必要があります。そのためには、全体を俯瞰してマネジメントできるオフィス移転のプロの存在が不可欠です。
プラスではPMサービスも展開しており、オフィス移転に関するあらゆる業務をワンストップで対応可能です。計画の立案から竣工、そして移転後のアフターケアまで、専任チームがプロジェクト全体を一貫してサポートします。各工程の調整や業者とのやりとりも一括対応し、お客さまの業務負担の軽減とコスト最適化を実現。目的達成につながる空間づくりを支援いたします。オフィス移転・リニューアルをご検討中の方は、ぜひプラスへご相談ください。
プラスのプロジェクトマネジメントについて詳しくは、こちらをご確認ください。
よくある質問
・オフィス移転でのPMの役割は?
オフィス移転時のPMはプロジェクト全体の計画立案、進捗管理、業者調整、社内調整、リスク管理などを担います。移転の成功を左右する重要なポジションです。
・オフィス移転でPMを委託するメリットは?
オフィス移転をPMに委託するメリットは、社内の負担軽減、スムーズな進行、コスト最適化、専門的な対応などが挙げられます。特に大規模な移転やノウハウ不足の企業には有効です。
・オフィス移転の際にPMを委託する際の選定ポイントは?
オフィス移転時にPMを選定する際は、業務範囲、費用、口コミ・評判、実績などを比較することが重要です。複数の業者から見積もりを取り、信頼できるパートナーを選びましょう。
