クリエイティブオフィスとは社員の創造性を引き出す新しいオフィスのこと
クリエイティブオフィスとは、単におしゃれなデザインのオフィスではありません。社員一人ひとりの創造力(クリエイティビティ)が最大限に引き出されるよう、デザインやレイアウトが戦略的に工夫されたワークプレイスを指します。その目的は、偶発的な出会いや何気ない会話、活発なディスカッションを誘発し、新たなアイディアやイノベーションを生み出す「場」を提供することです。経済産業省も2007年から「クリエイティブオフィス推進運動実行委員会」を設置し、企業の持続的な成長に不可欠な取り組みとして推奨しています。
クリエイティブオフィスで実現する12の知識創造行動
クリエイティブオフィスを設計する上で重要なのが、ナレッジ・マネジメントの権威である野中郁次郎氏が提唱した「SECIモデル」です。これは、個人の「暗黙知(経験や勘にもとづく知識)」を組織の「形式知(言葉や図で表せる知識)」へと変換し、新たなイノベーションを生み出すプロセスを示したものです。
クリエイティブオフィスは、この知識創造の4つのプロセスを促進する「場」として機能します。
■4つのプロセスを促進する12の知識創造行動
刺激し合う
社員同士が対面で経験や想いを共有し、暗黙知を移転するプロセスです。例えば休憩中の雑談で、新しい企画のヒントが見つかることがあります。これを促進するのが、カフェスペースやソファ席といった、リラックスしたコミュニケーションを自然に生み出す空間です。オープンな雰囲気で、部署を超えた交流を促します。
アイディアを表に出す
個人の頭の中にある暗黙知を、言葉や図、数式など、誰もが理解できる「形式知」に変換するプロセスです。ブレインストーミングがこれにあたります。すぐに集まって議論ができるよう、壁一面のホワイトボードや大型モニターを備えたコラボレーションスペースがこのプロセスを強力に支援します。
まとめる
複数の「形式知」を組み合わせ、新たな知識体系やコンセプトを創造するプロセスです。各部署が持つデータを組み合わせて新しいマーケティング戦略を立案するような場面が想定されます。データベースへのアクセスが容易な執務席や、多様な資料を広げて多角的に分析できるプロジェクトルームなどが有効です。
自分のものにする
新たに創造された形式知を、実践を通じて個人のスキルやノウハウといった「暗黙知」として体得するプロセスです。例えば、研修で学んだことを実際の業務で試す場面がこれにあたります。一人で深く思考に没頭できる集中ブースや、シミュレーションルームなどが、この内省と実践のプロセスを支えます。
クリエイティブオフィスが求められる背景
なぜ今、多くの企業がクリエイティブオフィスに注目しているのでしょうか。その背景には、現代のビジネス環境における2つの大きな変化があります。
働き方の多様化
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、リモートワークは一気に普及しました。一方で、リモートワークだけでは解決できない課題として挙げられるのが、「偶発的なコミュニケーションの減少」や「組織としての一体感の希薄化」です。
この経験を経て、オフィスの役割は単にPC作業をする場所から、社員が集い、協力し、新たな価値を創造する場所へと再定義され始めています。働き方が多様化したからこそ、リアルなコミュニケーションを通じてイノベーションを生み出すクリエイティブオフィスの価値が高まっているのです。
人材獲得競争の激化
少子高齢化が進む日本では、優秀な人材の獲得競争がますます激しくなっています。特に知識やスキルを武器とする若手人材は、報酬といった条件だけでなく、働く環境や企業文化、自己成長の機会を企業選びの重要な軸として捉える傾向にあります。
創造性を尊重し、社員一人ひとりが生き生きと働けるオフィス環境を整備すると、企業の魅力として社外にも伝わるでしょう。クリエイティブオフィスへの投資は、他社との差別化を図り、採用力を強化する上で不可欠な戦略といえます。
クリエイティブオフィスがもたらす5つのメリット
クリエイティブオフィスを導入すると、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは代表的な5つのメリットを解説します。
<クリエイティブオフィスがもたらす5つのメリット>
- 偶発的な会話が生まれ、新たなアイディアが創出される
- 部署の垣根を越えたコミュニケーションが活性化する
- 従業員のエンゲージメントと生産性が向上する
- 企業理念が浸透し、組織の一体感が生まれる
- 採用活動における企業の魅力向上につながる
メリット1:偶発的な会話が生まれ、新たなアイディアが創出される
カフェスペースやリフレッシュエリアなど、執務エリアとは異なるリラックスした雰囲気の空間は、社員の心理的安全性を高めます。これにより、役職や部署に関係なく誰もが気軽に意見を交換できる風土が醸成されます。
普段は接点のない社員同士が自然にすれ違い、交わす何気ない会話から、会議室では決して生まれないような斬新なアイディアの種が芽生えるかもしれません。クリエイティブオフィスは、イノベーションの土壌となる偶発的なコミュニケーションを意図的に創出します。
メリット2:部署の垣根を越えたコミュニケーションが活性化する
業務内容に合わせて働く場所を自由に選ぶ「ABW(Activity Based Working)」を導入すると、固定席では生まれにくい部署の垣根を越えた交流が生まれます。隣り合わせた異なる部署のメンバー同士の自然な会話で相互理解が深まり、部署横断的なプロジェクトも円滑に進むでしょう。
また、大型のホワイトボードやデジタルサイネージを共有スペースに設置し、各部署の取り組みや目標を「見える化」するのも効果的です。他部署の仕事に関心を持つきっかけとなり、思わぬ連携や協力体制が生まれ、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
ABWについて詳しくは、こちらのページをご覧ください。
【事例あり】ABWとは?フリーアドレスとの違いやメリット・デメリットを解説
メリット3:従業員のエンゲージメントと生産性が向上する
クリエイティブオフィスは、一人で深く集中できる個室ブースや、ゆったりと思考を巡らせるソファ席など、社員が自分にとって最もパフォーマンスを発揮できる環境を自律的に選択できるのが特長です。
人はそれぞれ、集中できる環境が異なり、静かな場所で没頭したいときもあれば、少し周りの気配を感じながら作業したいときもあります。心身の状態に合わせて働く場所を変えられることはストレス軽減につながり、一人ひとりの生産性を最大化します。
また、企業が「働きやすさ」に投資している姿勢は社員に伝わり、会社への信頼と貢献意欲、すなわち従業員エンゲージメントを高めるでしょう。
メリット4:企業理念が浸透し、組織の一体感が生まれる
オフィスのデザインやコンセプトに、自社のミッション・ビジョン・バリューを反映させれば、空間そのものが企業理念を語るメディアとなります。
例えば、コーポレートカラーを内装のアクセントにするほか、創業から受け継がれる想いを壁面のアートで表現することが考えられます。社員は毎日過ごす空間を通じて、自社の存在意義や社会的役割を無意識のうちに再認識するでしょう。
自分の仕事が会社の大きな目標につながっていると実感しやすくなり、仕事への誇りと組織への帰属意識が育まれ、強い一体感が醸成されます。
メリット5:採用活動における企業の魅力向上につながる
創造的で働きがいのあるオフィス環境は、企業の先進性や「従業員を大切にする」という姿勢が伝わります。
オフィスは「企業の顔」であり、求職者に対する強力なメッセージとなるため、SNSや採用サイトで魅力的なオフィスの写真や動画を発信すれば、企業のポジティブなブランディングに直結し、多くの求職者の目にとまるでしょう。それは応募数の増加だけでなく、「この会社で働きたい」という志望動機を強く後押しする効果も期待できます。
クリエイティブオフィスの作り方と流れ
ここからは、プロジェクトを成功に導くための具体的な作り方と流れを4つのステップに分けて解説します。
<クリエイティブオフィスの作り方と流れ>
- 自社の課題を洗い出し、オフィスのコンセプトを定義する
- 多様な働き方を許容するゾーニングとレイアウトを計画する
- 適切な家具やITツールを選定・導入する
- 導入の目的を社員へ共有し、効果測定を行う
STEP1:課題を洗い出し、オフィスのコンセプトを定義する
クリエイティブオフィスを作るには、まず現状の課題を正しく把握することです。「部署間のコミュニケーション不足」「ウェブ会議の場所が足りない」「集中できる場所がない」など、従業員アンケートや経営層ヒアリングを通じて、具体的な問題点を収集します。
集めた課題をもとに、新しいオフィスで実現したいコンセプトを明確化しましょう。このコンセプトが、以降の設計や家具選定の判断軸になります。
STEP2:多様な働き方に対応したゾーニングとレイアウトを計画する
コンセプトを明確にしたら、オフィスをゾーニングします。基本となるのは、以下の3つのエリアです。
<オフィスの基本の3エリア>
- フォーカスゾーン:集中作業用の個室ブースや間仕切り席
- コラボレーションゾーン:会議や共同作業用のオープンスペースや会議室
- リフレッシュゾーン:休憩や雑談用のカフェスペースやソファ席
ゾーニング後は、人の流れ(動線)を意識したレイアウトを設計します。
STEP3:適切な家具やITツールを選定・導入する
レイアウトが決まったら、家具とITツールを選定します。移動が簡単なキャスター付きデスクや、人数に応じて組み合わせを変えられるテーブルは、柔軟なチーム編成に最適です。
ハイブリッドワークを前提とする場合は、IT環境の整備も不可欠です。高画質カメラやマイクを備えたWeb会議システム、オフィス全域で快適に利用できる安定したWi-Fiなどが必要になります。
これらの選定と並行して、内装工事の要否を判断し、具体的な設計図を完成させます。その後、設計にもとづいて工事を行い、選定した家具やITツールを搬入・設置すれば、新しいオフィスの完成です。
STEP4:導入目的を社員に共有し、効果測定を行う
オフィスが完成しても、導入はゴールではありません。まずは、オフィス刷新の背景や目的を経営層から全従業員にしっかり説明し、どのように活用してほしいかを共有します。従業員が主体的に使って初めて、クリエイティブオフィスの価値が発揮されます。
また、導入後は必ず効果測定を実施します。アンケートや利用率の確認を通じて生産性や満足度の向上につながったかを検証し、必要に応じて改善を行いましょう。このPDCAサイクルを回すと、オフィスは常に組織に最適化され、価値を高め続けます。
【事例】プラスが手掛けたクリエイティブオフィス3選
ここからは、プラスが実際に手掛けたクリエイティブオフィスの事例を3つご紹介します。それぞれの企業が抱える課題に対し、どのような未来を目指してオフィスを構築したのかをご覧ください。
【事例1】「集まる×つながる×育てる」コミュニケーションを深める株式会社新興出版社啓林館様

入居人数 | 約65名 |
延べ床面積 | 約480平方メートル |
業界・業種 | 教育・学習支援業 |
教育・学習支援サービスを展開する同社では、東京支社新社屋プロジェクトでクリエイティブオフィスを取り入れました。新しい事務所ではグループアドレスを採用。営業、編集チームそれぞれの専用エリアはありながらもフロア全体が見渡せ、部署を超えた席の選択やコミュニケーションを後押ししています。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
【事例2】フリーアドレスの導入でイノベーション創出を促す株式会社TOTOKU様

入居人数 | 約40名 |
延べ床面積 | 約1,000平方メートル |
業界・業種 | 電気・情報通信業 |
親会社・社名変更に伴い、オフィスの移転を実施した際にクリエイティブオフィスを構築しました。増員を見越してオフィスを拡張し、フリーアドレスも導入。大胆なデスクレイアウトや壁面グラフィックを採用するなど、同社のチャレンジ精神を体現するオフィスデザインを施しました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
【事例3】企業ブランディングを体現した プライフーズ株式会社 ゴーデックスカンパニー様

入居人数 | 約40名 |
延べ床面積 | 約1,300平方メートル |
業界・業種 | 製造業 |
工業団地内にある同社では、リニューアルコンセプトである3つの縁(知識の融合や継承を促す<知の縁>、ビジョンやマインドを共有する<心の縁>、協業者や消費者との関係を築く<人の縁>)を社屋全体で表現。これからの多様化する時代においても従業員と企業が成長し続けられるオフィスを目指しました。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
企業の未来をデザインし、創造性を最大限に引き出すオフィスを実現しよう
クリエイティブオフィスへの投資は、単なるコストや設備投資ではありません。それは、社員の働きがいを高め、新たなイノベーションを生み出し、企業の持続的な成長を促すための極めて重要な「経営戦略」です。
「自社の生産性と創造性を最大限に引き出すオフィスを作りたい」とお考えの担当者さまは、ぜひ一度プラスにご相談ください。現状の課題分析からコンセプト策定、具体的なレイアウトのご提案まで、数多くの実績で培ったプロの視点から、貴社に最適なオフィス創りをワンストップでサポートします。
よくある質問
クリエイティブオフィスの目的とは?
クリエイティブオフィスの目的は、社員の創造性を引き出し、新たなアイディアやイノベーションを生み出すことです。多様な働き方に対応しつつ、偶発的なコミュニケーションを促し、組織全体の成長を支える戦略的な場として機能します。
クリエイティブオフィスを導入するメリットは?
クリエイティブオフィスは、アイディア創出や部門間連携が活発になるほか、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。さらに企業理念の浸透や採用力の強化にもつながり、組織の内外に好影響をもたらす点も大きなメリットです。
クリエイティブオフィスを作る際の流れは?
クリエイティブオフィスを作る際は、まず自社の課題からコンセプトを定義し、それに沿ったゾーニングとレイアウトを計画します。次に、具体的な設計から内装工事、家具・ITツールの導入まで行ったらオフィスの完成です。完成後は、社員へ目的を共有し効果測定と改善を続けることが重要です。