オフィス移転には多くの作業や手続きが発生します。通常の業務を行いながら作業を進めていくため、担当者にとっては大きな負担となることもあるでしょう。オフィス移転をスムーズに行いたい場合は、業者選びが重要です。オフィス移転専門の業者に依頼すれば、荷物の運搬や工事だけでなく、移転計画の策定や書類申請などさまざまなサービスを任せられます。今回は、オフィス移転に使える業者の種類や特長、選定のポイントや流れを解説します。
オフィス移転全体の流れの詳細は『これで完璧!オフィス移転の流れとすべきこと【チェックリスト付き】』をご覧ください。
オフィス移転を業者に依頼するメリット・必要性
オフィス移転は多額のコストを要するケースが多く、コスト削減を目的としてできるだけ自社内で移転を進めようと考える企業も少なくありません。しかし、多くの場合、オフィス移転は自社だけですべてを行うよりも業者に依頼したほうがコスト以上のメリットを得られる可能性が高くなります。主なメリットは次のとおりです。
専門的な知見を持ったスタッフのサポートを得られる
オフィス移転は手続きも多く、契約内容も複雑なケースがほとんどで、「どのような手続きが必要になるかわからない」、「旧オフィスと新オフィスでの契約をすべて理解できていない」など、戸惑うことも少なくないでしょう。これらの対応で時間を無駄に使ってしまうと、移転が遅れるだけでなく、業務自体にも影響が出るかもしれません。
そうした場合、オフィス移転に関する専門知識と豊富な経験を持ったスタッフからのサポートを得られれば、時間的コストの大幅な削減が可能です。
スケジュール管理がしやすくなる
オフィス移転を行う際、一般的に旧オフィスへの解約予告は半年前に行わなければなりません。そのため、移転計画は半年以上前から手順を踏んで進めていく必要があります。これを通常業務をこなしながら実施していくのは困難です。
しかし、スケジュール管理に熟練しているオフィス移転業者に依頼すれば、移転作業を効果的かつスムーズに進行させられます。そのため、オフィスが稼働しない期間を最小限に抑えられるうえ、担当者の負担も大幅に軽減されるでしょう。
安全に移転ができる
一般のオフィスには、大型のOA機器やラック、大量のパソコンのほか、企業によってはサーバーシステムなどもあり、移転する際の荷物も多くなります。また、破損すれば大きな損害につながるものも多く、慎重に対応しなくてはなりません。
しかし、オフィス移転を専門に扱う業者であれば、汚破損のリスクも軽減され、安全かつ安心な移転が可能です。
オフィス移転に使える業者の種類と特長
オフィス移転サービスを行っている業者の主な種類には、「引っ越しサービス」と「オフィス移転コンサル」があります。引っ越し作業をどこまでお任せするかによって依頼する業者が変わってくるため、それぞれの特長やサービス内容を把握しておくことが大切です。
引っ越しサービス
引っ越しサービスは引っ越し専門の業者で、家庭向けの引っ越しサービスを行っている会社も多いため、個人で利用したことがある方もいるかもしれません。法人向けの引っ越しサービスでは、多くの場合、荷物の運搬だけでなく、オフィスのレイアウト設計や内線工事なども行ってくれます。特に大手では、スタッフの研修や引っ越し用の資材が充実していることが特長です。引っ越しのノウハウが豊富で、スタッフの作業スピードや質の高さに期待が持てます。
また、地域密着型の小中規模の引っ越し専門業者は、コストを抑えた引っ越しや、小規模な引っ越しなどを得意とする場合もあります。知名度は低くても大手並みのサービスを提供しているところもあるため、気になる業者があったら見積もりを取ってみるとよいでしょう。
オフィス移転コンサル
オフィス移転コンサルとは、移転前の物件探しや引っ越し作業、手続きの代行、移転後のフォローまでをトータルで行うサービスです。引っ越し業者だけでなく、不動産会社や建築会社、オフィス家具メーカー、デザイン・設計会社など、さまざまな業種が参入しています。それぞれの専門分野ごとに得意とするサービスがあるため、比較してみることが大切です。
オフィス移転では、不動産会社や引っ越し業者、内装工事業者など、さまざまな業者と個別に打ち合わせをする必要があります。しかし、オフィス移転コンサルに依頼すれば、業者との交渉や手配まで行ってくれるため、オフィス移転の労力を軽減できることがメリットです。コンサルを通すことで、オフィス移転にかかるトータルのコストが安くなることもあります。
オフィス移転のコンサルに依頼するメリットについては、『オフィス移転をコンサルに依頼するメリットとコンサル選択のポイント 』をご覧ください。
内装工事業者
内装工事業者は、建物・オフィス内のインテリアや内部の仕上げに関する専門的な知識と経験を持ち、オフィス移転に欠かせない業者です。内装デザインは快適なオフィスづくりを行ううえで重要なポイントとなるため、慎重に選択する必要があります。
内装業者に依頼するメリットは、専門的な知識と技術を頼りにできる点、プロフェッショナルな仕上がりが期待できる点です。ただし、一般的な住宅とオフィスは大きく異なるため、内装工事のプロでもオフィスの内装工事実績が豊富でない業者を選択すると、思ったような成果を得られない場合もあるでしょう。また、オフィスには機密情報や重要な書類が多くあるため、信頼できる業者を選択しないと、情報漏えいといったリスクも生じやすいので注意が必要です。
オフィス家具メーカー
オフィス家具メーカーとは、デスク・椅子・キャビネット・棚・照明・カーペット・カーテン・文具などオフィスで使用するさまざまな家具や文具の製造・販売を行うメーカーのことです。また、オフィス移転や内装デザインのサポートをするオフィス家具メーカーも少なくありません。オフィス家具を一新する場合、内装デザインの会社とオフィス家具メーカーを別々に依頼すると、手間がかかるだけではなくイメージの具現化が難しくなる場合もあるため、可能であれば、すべてを一任できるオフィス家具メーカーを選択するとよいでしょう。
オフィス家具メーカーにオフィス移転を依頼するメリットは、オフィス内の家具をまとめてオーダーできるため、統一感のあるオフィスデザインを実現できる点です。もちろん、オフィス用途に特化した家具の提案をしてもらえるため、業務をスムーズに行える快適な職場環境を実現しやすくなります。
ただし、すべての家具を新調する際は、納品に時間がかかる場合もあるため、できるだけ早い段階から依頼しておくことが重要です。
オフィス移転の業者選定までの流れ
続いて、オフィス移転業者を選定するまでの流れを解説します。
1. 依頼したいサービスの範囲を決める
まずは、オフィス移転業者にどこまでお任せするのか、依頼したいサービスの範囲を決めます。オフィス移転に伴い選任の担当者を付けられるのか、通常業務に影響が出ないかなどを考慮したうえで、サービスの範囲を検討することが大切です。
2. 予算を決める
オフィス移転にかかる費用は、引っ越し費用、新オフィスの契約にかかる費用、旧オフィスの原状回復工事費用、敷金や仲介手数料などです。これらの費用がトータルでいくらになるのか検討し、予算を決めます。
3. 見積りを取る
依頼するサービスの範囲や予算が決まったら、複数の業者で見積もりを取ってみます。見積もりはインターネットの一括見積もりサービスを活用すれば大体の相場はわかりますが、実際に担当者に来社してもらって打ち合わせをしないと正確な料金が算出されません。気になる業者へ連絡を取って、見積もり依頼をしましょう。
見積もりを確認する際は、トータルの料金だけでなく料金の内訳を確認することが大切です。依頼したいサービスが含まれているか、追加料金が発生することはないのかを確認する必要があります。
オフィス移転に関わる見積もりについては、『オフィス移転時に必要な見積りとは? 依頼する業者や選択ポイントを解説』をご覧ください。
4. 実績やサービス内容などを検討する
予算に見合った業者が見つかったら、業者の実績やサービス内容などを検討します。料金が安くても実績が少ない場合やサービス内容が充実していない場合は再検討が必要でしょう。
5. オフィス移転業者へ依頼する
料金や実績、サービス内容を検討した結果、自社の要望に合った業者が見つかったら申し込みをします。引っ越し作業や配線工事、廃棄物処理など実際に依頼する業務について担当者と詳細を話し合いながら、移転業務を進めていきましょう。
オフィス移転のスケジュールについては、『オフィス移転のスケジュールを紹介!移転準備は6カ月以上前から!』をご覧ください。
自社に合った業者を選ぶための準備
オフィス移転で自社に合った業者を選択するには、いくつかの準備が必要です。ここではそのなかでも主な準備について解説します。
オフィス移転の目的、移転先の諸条件を整理する
社員増員のためにオフィスを拡張する、取引先へのアクセスの良い場所に移転するなど、オフィス移転の目的はさまざまです。目的により移転先に求めるもの、必要な条件が変わる場合もあり、それによって業者の選定基準も異なります。そのため、なぜオフィス移転を行うのか、まずはその目的を明確にしましょう。
予算と期間、スケジュールを整理する
予算と期間、スケジュールがある程度決まっていないと業者に依頼することはできません。詳細については、業者との相談によって決めていきますが、その前段階でのおおまかな予算と期間、スケジュールを事前に整理しておけば、スムーズに話し合いを進めていけます。
必要な設備、不要な設備を洗い出す
オフィス移転は、多忙のためにこれまで処分したくてもできなかった不要な設備を処分するチャンスです。ただし、今使っていないからといって闇雲に処分してしまうと、後になってから必要になり、改めて購入し直すといったことも起こり得ます。
そこで、既存オフィスで利用している家具・機器・設備などをすべて書き出したうえで、新しいオフィスでも必要なものと不要なものを区分けしましょう。適切に区分けするポイントは、新しいオフィスのレイアウトを作成してから区分けを行うことです。レイアウトが決まる前に区分けすると、新しいオフィスに設備が入りきらなくなるといったリスクも生じるので注意してください。
必要なサービス内容の目星をつける
オフィス移転業者が提示しているサービス内容を確認し、自社に必要なサービスがあるかを見極めましょう。不要なサービスが多いと、そのサービスを利用しないにもかかわらずコストが上がってしまう場合もあるため、注意が必要です。
具体的には、移転手続きの書類申請代行、旧オフィスの原状回復工事、不用品の買取・廃棄、レイアウト設計などが挙げられます。例えば、旧オフィスとの契約で原状回復工事を行う業者を指定できない場合や、社内にレイアウト部門があって内製が可能な場合などは、業者に依頼する必要はありません。
これらのサービスがオプションであれば問題ありませんが、セットで割引になるといった場合は、必ず複数業者から見積もりを取って費用を確認することをおすすめします。
提案内容の良し悪しを判断する基準をすり合わせる
あらかじめ、移転を依頼するうえで最も重視することは何かを考え、提案内容の良し悪しを判断する基準を決めておきましょう。基準が社内で統一されていないと、何が必要かを決める際の判断にズレが生じてしまい、スムーズに準備を進められません。そのため、事前に社内で十分に話し合い、基準をすり合わせておくことが重要です。
オフィス移転の業者を選ぶ際のポイント
オフィス移転業者は数多く存在するため、どの業者を選べばいいのか悩む方も多いでしょう。ここでは、オフィス移転業者を選ぶ際のポイントを紹介します。
オフィス移転の実績
実績豊富な業者であればオフィス移転のノウハウがあるため、安心して任せられます。オフィス移転業者の多くは、自社のホームページで実績や事例を紹介しているのでチェックしてみましょう。オフィスの内装やデザイン、レイアウトなども依頼したい場合は、それぞれの会社の施工事例を確認することがおすすめです。写真や顧客の声などを参考にするとイメージがわきやすくなります。
プラスのオフィス移転実績はこちら『事例紹介』
サービスの範囲
サービスの範囲はオフィス移転業者によって異なります。引っ越し専門の業者であれば、引っ越し作業のほか、原状回復、内装工事、電気・電信工事、レイアウト、書類申請なども行っていることが一般的です。また、オフィス移転コンサルへ依頼する場合は、オフィス移転をトータルで任せることが多いでしょう。それぞれの会社に得意分野があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
アフターフォロー
移転後のレイアウト変更、地震対策、備品の交換など、移転後のアフターフォローが充実している会社もあります。たとえば、移転後にオフィス家具を追加したり、レイアウトを変更したりしたい場合に活用できます。実際に移転先で業務を開始したあとに改めて気付くこともあるため、アフターフォローのサービスが充実している会社もおすすめです。
価格
オフィス移転には多額の費用がかかります。そのため、できるだけコストを抑えた移転を考えている企業も多いでしょう。実際に複数の引っ越し業者から見積もりを取って、予算の範囲内で依頼できるところを選ぶことも大切です。ただし、価格は依頼するサービスの範囲にもよります。価格を安く抑えても、自社で行う作業が増えてしまうと、従業員の負担が大きくなるため注意が必要です。
オフィス移転に必要な費用については、『オフィス移転でかかる費用の項目は?見積もりが必要な項目を紹介』をご覧ください。
レイアウト図の作成
オフィスのレイアウトは、社員の動線や働き方を踏まえ、効率的に仕事ができるよう計画する必要があります。また、最近では企業のブランディングにつながるような見た目のよさも重視されるポイントです。
そのため、業者を選択する際は、レイアウト図を作成してもらい、最も見た目が良く快適に働けるレイアウトを提案してくれる業者を選ぶとよいでしょう。
価格とサービスの内容やクオリティのバランス
価格とサービス内容、クオリティのバランスも重要な見極めのポイントです。価格が安いこと自体は悪いことではないものの、その分サービスの内容やクオリティに問題があっては意味がありません。もちろん、価格が高すぎても、予算との兼ね合いで移転計画を実施するのが難しくなる場合もあるでしょう。
また、サービス内容が良い割に価格が安い場合も注意が必要です。どこかで価格を抑える必要があるため、クオリティが低いものになってしまうリスクがあるからです。オフィスを移転する際は、複数の業者の提案を比較し、価格とサービス内容、クオリティのバランスが最もよく取れている業者を選ぶとよいでしょう。
自社のニーズに対する理解、対応力
自社の要望をすぐに理解し、具体的な提案をしてくるかどうかも重要なポイントになります。こちら側が伝えたことを正しく汲み取ってもらえず、意に沿わない提案をする業者では、意思疎通が図れず、話し合いに時間がかかるうえ、希望を満たしてもらうこともできません。しっかりとコミュニケーションが取れるかどうかも必ず確認するようにしましょう。
オフィス移転を業者に依頼する際の注意点
オフィス移転業者への依頼は、自社だけで移転を進めるのに比べてさまざまなメリットを得られますが、いくつか注意しなくてはならない点もあります。ここでは、依頼時の注意点について見ていきましょう。
繁閑があるためスケジュールどおりに進むとは限らない
オフィス移転の繁忙期(1~3月、5月、9~12月)になると、必ずしもスケジュールどおりに進むとは限りません。そのため、可能であれば閑散期を選ぶのがよいでしょう。ただ、業務の都合上、どうしても繁忙期が避けられない場合は、できるだけ早い段階で依頼することが重要です。
対応範囲を丁寧にすり合わせないと想定外の対応や費用が発生する可能性がある
どこまでを依頼するかを業者との話し合いによってすり合わせておかないと、後になって追加で費用が発生する場合があります。また、やってもらえると思っていた手続きをやってもらえないといったトラブルにつながる可能性も少なくありません。そのため、事前に十分なすり合わせを行ったうえで、決定した内容を必ず書面にして残しておくことが重要です。
オフィス移転は引っ越し作業をトータルでお任せ!
オフィス移転の業者を決める際は、実績やサービス内容などを比較したうえで検討することが大切です。移転後のオフィスで快適に仕事をするためには、移転サービスをトータルで行っている業者を選ぶことがおすすめです。新しいオフィスづくりの提案や移転計画書の策定、引っ越しに伴う各種手続きの代行、工事の手配など、さまざまな作業をお任せできます。自社だけでは解決できないオフィスの課題も実績やノウハウのある業者に依頼すれば、適切な提案をしてくれるでしょう。
【お役立ち資料】
移転プロジェクトメンバー必見の決定版! オフィス移転のスケジュールとタスクリスト
オフィスの移転は、やるべきことが多岐にわたる複雑なプロジェクト。
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