フリーアドレス導入で失敗する主な原因
フリーアドレスとは、従業員が固定の席を持たず、自由に好きな場所で仕事ができるオフィス運用スタイルのことです。さまざまなメリットが得られる施策ではありますが、失敗する企業も少なくありません。
フリーアドレスについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
フリーアドレス導入で失敗する主な原因には、次のようなものがあります。
■フリーアドレス導入が失敗する主な原因

導入目的がはっきりしない
フリーアドレスを何のために導入するのか、目的が曖昧なまま押し進めると、従業員の理解を得ることができず、制度が社内に浸透しません。例えば、他社の成功事例をそのまま導入しても、自社の課題解決や業務効率化と結びついていなければ、「なぜやるのか」が伝わらず、社内から反発が起こる可能性があります。導入の目的を明確にし、それを従業員全体に周知することが不可欠です。
従業員の居場所がわかりづらい
フリーアドレスは席が固定されないため、社内で誰がどこにいるのか把握しにくくなります。その結果、来客対応や社内連絡がスムーズにいかず、業務効率が下がってしまう一面もあります。特に対面でのコミュニケーションが多い職場では、ストレスの原因にもなりかねません。居場所検索システムの導入や、連絡手段の明確化といった工夫が必要です。
席の固定化が起こりがち
本来は自由に席を選べるはずのフリーアドレスですが、実際には従業員が毎回同じ席に座る「なんちゃってフリーアドレス」になるケースもあります。そうなると、レイアウトの柔軟性やコミュニケーションの活性化といった本来の目的が果たせません。全席が誰にとっても均等な作業環境になるよう整備し、ルールを徹底して運用することが大切です。
新人教育が難しいケースがある
フリーアドレスでは、固定席がないため、新人と教育担当者が常に近くにいる状況をつくりにくくなります。そのため、タイムリーな指導や相談がしにくくなり、新人教育の質に影響を及ぼすことがあります。対策として、定期的な1on1ミーティングの実施や、チャットツールなどを活用した相談体制の整備が求められるでしょう。
雑談が増えて生産性が鈍化する
フリーアドレスは、部署や役職を超えた交流が生まれやすくなることが大きなメリットですが、その反面、雑談が増えてしまい集中力が低下するケースもあります。こうした課題には、集中作業に特化したエリアの設置や、業務中の会話マナーに関するルールづくりによってバランスを取ることが必要です。
オフィス外での業務環境が整っていない
フリーアドレスでは、社外でも作業できることが前提となるケースが多いため、自宅や外出先での業務環境が整っていないと、そのメリットを十分に活かすことができません。業務用ノートPCの貸与や、クラウドサービスの導入など、ICT環境の整備が不可欠です。
セキュリティリスクが増加する
フリーアドレスで席が固定されないと、社内にいる人物の特定が難しくなり、情報漏洩のリスクが高まります。また、個人席がないために書類や私物を持ち歩く必要が生じ、紛失や管理ミスのリスクも増えるかもしれません。
こうした課題には、入退室管理の徹底やセキュリティ教育の強化、ペーパーレス化、パーソナルロッカーの活用などで対応することが重要です。
導入後のフォロー体制が足りない
フリーアドレスを導入しただけでは、現場での課題や不満は自然に解消されません。マネージャー層や導入担当者が現場の声に耳を傾け、柔軟に対応していく体制がなければ制度が定着せず形骸化してしまいます。導入から運用、改善まで一貫してサポートできるフォロー体制を整えることが成功のカギとなります。

フリーアドレスに向いている職種と向いていない職種
フリーアドレスはすべての業種・職種に適しているわけではありません。職務内容や働き方によって、向き・不向きがはっきりと分かれます。ここでは、それぞれの特徴や導入時のリスクと対策について解説します。
フリーアドレスに向いている職種の特徴
営業職など外回りが多く、社内に常時いる必要のない職種はフリーアドレスに適しています。出社頻度が低いため、固定席を設けることが無駄になりやすく、座席の共有化でスペース効率を高めることが可能です。
また、エンジニアやマーケターなど、PC一台で完結する業務が多く、作業場所にこだわらない職種もフリーアドレスと相性が良いといえます。
フリーアドレスに向いていない職種の特徴
一方で、社内での問い合わせ対応が多い総務・人事・経理などの管理部門は、常に居場所が把握できる環境のほうが業務を進めやすいため、フリーアドレスにはあまり向いていません。
また、個人情報や機密データを扱う職種では、情報漏洩リスクの観点からも慎重な判断が必要です。高いセキュリティレベルが求められる業務には、フリーアドレスよりも専用席の確保が適しています。
職種別のリスクと対策
フリーアドレスに向いていない職種であっても、業務フローを見直し、適切な対策を講じることでフリーアドレスにできる可能性はあります。例えば、常に席の所在を明確にするために座席管理システムを導入したり、セキュリティ対策としてペーパーレス化を徹底したりすれば、リスクを最小限に抑えられます。
また、部署ごとのニーズに応じて、グループアドレス制などの柔軟な運用を取り入れると、フリーアドレスのメリットを活かしつつ、職種ごとの課題に対応できるでしょう。

フリーアドレス導入時に必要なオフィス環境の整備ポイント
フリーアドレスを成功させるためには、運用面だけでなく物理的なオフィス環境の整備も重要です。働きやすい空間をつくるために、事前に検討すべきポイントを見ていきましょう。
ICT環境の整備とモバイル端末の導入
フリーアドレスでは、どこでも業務を行える環境が求められます。そのためには、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットといったモバイル端末の整備が欠かせません。加えて、ファイル共有やチャット、ビデオ会議などを円滑に行えるクラウドサービスの導入も必要です。セキュリティ対策を施した上で、業務効率が高まるICT環境を構築しましょう。
導入時に考慮すべきレイアウトとゾーニング設計
業務内容に応じて適切なレイアウトやゾーニングを行うことが、生産性の高いオフィスづくりにつながります。集中スペース、ミーティングスペース、リラックススペースなどをあらかじめ明確に分けて設計すると、従業員が目的に応じて最適なエリアを選べるようになるでしょう。フリーアドレスの柔軟性を最大限に活かすには、ゾーニングの工夫がカギとなります。
パーソナルロッカーや収納スペースの確保
固定席を持たないフリーアドレスでは、個人の荷物や書類を安全に保管する場所が必要です。パーソナルロッカーや共有の収納スペースを用意すれば、デスク上に私物が置いたままになるのを防ぎ、クリアデスクの状態を保てます。これはセキュリティや衛生面の向上にもつながるでしょう。
入退室管理やセキュリティ設備の導入
セキュリティを確保するためには、誰がいつどこに入退室したかを把握できる管理体制が求められます。顔認証やIDカードによる入退室管理を導入することで、不審者の侵入や情報漏洩のリスクを減らすことができます。また、監視カメラやデータの暗号化といった追加対策も併せて検討すると安心です。
座席管理システムの導入と基本設定
従業員の居場所を可視化するためには、座席管理システムの活用が有効です。座席の予約や使用履歴の確認、利用状況の分析が可能になり、混雑の回避や稼働率の向上につながります。
特に、プラスが提供する「Suwary」のような座席管理ツールを活用すれば、フリーアドレス導入の混乱を最小限に抑えることができます。導入時には、座席利用ルールも併せて明確に設定することが重要です。

フリーアドレス導入に失敗しないための成功ポイントとコツ
ここでは、フリーアドレスを定着させ、効果を最大化するための具体的なコツをご紹介します。
導入目的の明確化と従業員への周知徹底
フリーアドレス導入に失敗しないために最も重要なのは、なぜフリーアドレスを導入するのかという目的を明確にすることです。例えば、「コミュニケーションの活性化」や「スペース効率の向上」など、導入によって期待する成果を具体的に設定しましょう。
その上で、全従業員に対して目的や効果、運用方法などを丁寧に説明し、理解と納得を得ることが成功への第一歩となります。
段階的な試験導入の実施
フリーアドレスを最初から全社的に導入するのではなく、一部の部署やフロアで試験導入を行えば、実際の運用課題を洗い出すことが可能です。トライアルを通じて得られたフィードバックを基に改善策を講じれば、本格導入時の混乱を防ぎ、よりスムーズに浸透させることができます。
グループアドレスやABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の活用
完全なフリーアドレスにこだわらず、チーム単位でエリアを共有する「グループアドレス」や、業務内容に応じて働く場所を自由に選べるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を取り入れることで、柔軟性と業務効率のバランスが取れます。組織や職種の特性に合わせた設計がカギとなります。
座席管理システムを効果的に活用する
フリーアドレス導入の際は、座席予約やリアルタイムでの空席状況の把握が可能な座席管理システムもいっしょに運用すると、無駄な移動や座席争いを防止できます。また、使用状況のデータを分析することで、より効率的なオフィス運用にもつながるでしょう。運用ルールを明確にし、全社員が使いやすい仕組みを構築することがポイントです。
ゾーニング改善とルールの最適化を繰り返す
フリーアドレスの運用を開始したあとも、働き方や業務内容の変化に応じて、オフィスのゾーニングや運用ルールを柔軟に見直すことが大切です。従業員の声を定期的にヒアリングし、フィードバックを反映することで、より快適で機能的なフリーアドレス環境が実現します。継続的な改善を前提とした体制づくりを心掛けましょう。
オフィスのリニューアル時にフリーアドレスを導入した事例
ここからは、プラスが手掛けたオフィスリニューアルにおいて、フリーアドレスを導入して業務改善に成功した企業の事例をご紹介します。
オフィス移転時にフリーアドレスを導入し、デスクレイアウトにも工夫を凝らした株式会社TOTOKU 様

| 入居人数 | 約40名 |
| 延べ床面積 | 約1,000平方メートル |
| 業界・業種 | 電機・情報通信業 |
同社は、親会社・社名変更に伴い、増員を見越したオフィス移転を実施。新たにフリーアドレスを導入しました。オープンなオフィスでは大胆なデスクレイアウトや壁面グラフィックを採用し、新たな出会いや共創にもつながりそうです。
ABWでフリーアドレスを導入し、働き方改革につなげた株式会社ジムブレーン 様

| 入居人数 | 約50名 |
| 延べ床面積 | 1F:約420平方メートル 2F:約400平方メートル |
| 業界・業種 | 電機・情報通信業 |
本社移転・新社屋のオフィスづくりをプラスがお手伝いしました。ABWを取り入れたオフィスは、働き方に合わせられるようさまざまな什器を配置し、カラーリングをそろえることで統一感をもたせました。
フリーアドレスで多様な働き方に対応した、株式会社セゾン情報システムズ 様

| 入居人数 | 1,100名 |
| 延べ床面積 | 約5,173平方メートル |
| 業界・業種 | IT業界 |
フリーアドレスの導入はポイントに沿えば成功につながる
フリーアドレスの導入は、目的の明確化、業務に合った環境整備、そして現場の声を取り入れた運用ルールの策定が重要です。
フリーアドレスの導入に不安がある場合は、専門ツールの導入や、オフィス設計・運用に詳しいコンサルタントの力を借りるのがおすすめです。オフィスづくりのプロ・プラスでは、多くの事業者でフリーアドレスの導入をお手伝いし、各社の課題解決に実績があります。まずは貴社の課題について、ご相談ください。
フリーアドレスの導入に関するよくある質問
フリーアドレスの導入で失敗する主な原因は何ですか?
フリーアドレスの導入目的が曖昧なまま制度だけを先行させると、従業員の理解や協力が得られず形骸化します。また、ICT環境や座席管理システム、セキュリティ対策など物理的・技術的な整備が不十分な場合、業務効率が低下し、逆効果になることがあります。
どのような職種にフリーアドレスが向いていますか?
フリーアドレスが向いている職種は、営業職や外出の多い職種、リモートワーク中心でPC一台でも業務が完結する職種に向いています。一方で、来客対応や社内連携が多く、常に席にいることが求められる職種には不向きといえるでしょう。フリーアドレス導入を予定している職種が、フリーアドレス制に本当に合っているかどうかを見極めることが、フリーアドレス導入のカギといえます。
フリーアドレスの導入を成功させるコツはありますか?
フリーアドレスを導入する際は、その目的を明確にし、全社的に共有することが重要です。次に、段階的な試験導入で課題を洗い出し、必要に応じてゾーニングやルールを調整しましょう。ICT環境や座席管理システムの整備も、スムーズな運用に欠かせません。
