役員室というと、重厚で高級感のあるオフィスデザインや家具をイメージする人も多いでしょう。オフィスにおける役員室は、ほかの執務スペースとは異なる機能を持つ場所です。そのため、新たに役員室を設置する場合、役員室の位置づけを明確にし、機能をそろえておく必要があります。役員室に必要な機能とは、応接機能、執務機能、ミーティング機能などです。機密情報を扱う場合は、防音性も必要となります。自社にとってふさわしい役員室のあり方を検討しましょう。
役員室とは
役員室は、企業の意思決定を担う役員が使用するための専用スペースです。
一般的には、社長や取締役などの重役が業務を行う場所として設けられますが、部長クラス
から役員室を設けている企業もあります。
一般社員が業務を行う執務室とは区切られたスペースに設置され、重厚感のある内装や高い機密性が保たれていることが特徴です。
オフィスにおける役員室の役割
役員室は、執務室と比較して重厚感があり格式高い家具が置かれています。
不必要に高級志向にすることはありませんが、役員室は重要な来客を迎える場でもあるため、内装にこだわっておもてなしの心を表現し企業の信頼性を高めましょう。
また役員室では、企業の目標や業績についての重要な会議が行われることもあり、社内の書類やデータの多くが集まります。
セキュリティの観点からも、機密情報の扱いに考慮して設計しなければなりません。
役員室のレイアウトに求められる機能
役員室では執務や応接、ミーティングなどを行うための機能が必要です。また、重要な会議の場として使う場合は、防音性も重要となります。役員室としての機能を果たすためには、家具やレイアウトに配慮する必要があるでしょう。ここでは、役員室に必要な機能を紹介します。
来客を迎える応接機能
応接機能を備えるには、センターテーブルやソファ、チェアを基本とした応接セットが必要です。4人用や6人用など対応人数で選ぶことができます。ソファの素材は本革や合皮、布張りなど、役員室にふさわしいタイプを選びましょう。ミーティングスペースで応接する場合は、ミーティングテーブルに応接タイプのチェアを合わせるという方法もあります。
静かに集中できる執務機能
役員は忙しいスケジュールの合間に執務をこなさなければなりません。そのため、機能性に優れた役員用デスクやチェア、書庫スペースなどが必要です。A4ファイルが取り出しやすい引き出しや、長時間座っても疲れにくいチェアなど、使いやすいオフィス家具を選びましょう。執務の合間に食事や着替えなどを行うこともあるので、パーティションでプライベートなスペースを設けることもあります。
快適に行えるミーティング機能
ミーティング機能を備えるには、4~6人程度で使えるミーティングテーブルやチェアの設置が必要です。ミーティングテーブルは、大きな資料を広げられる大型サイズがよいでしょう。チェアも役員室にふさわしい高級感のあるデザインや素材を選ぶのが理想的です。ノートパソコンを使用することも考慮し、LANケーブルやOAタップを収納できるタイプもあります。
機密情報を守る遮蔽や防音機能
機密情報を扱う場合は、高い防音性が必要になることもあります。また、複数の役員室が隣接した構造になっている場合は、各部屋の音が騒音にならないようにしなければなりません。防音性を高めるには、専門の業者に防音工事を依頼する必要があります。防音扉や仕切り壁の設置、換気システムの変更などで防音性を高めることが可能です。
役員室のレイアウトのポイント
執務スペースの確保
役員室の執務スペースは、役員の業務を効率的に遂行するために十分な広さを確保しましょう。
役員室は経営の中枢を担う場所なので、多くの機密情報を取り扱います。
そのため、基本的には個別の執務スペースを確保することが求められます。
また執務スペースを設計する際には、役員が集中しやすい環境を整えることが大切です。
快適な温度管理を可能にする空調設備、機能的で座り心地の良い椅子、収納しやすい書類棚などを配置しましょう。
また多くの書類が集まるため、大きめのデスクを配置して作業を妨げない工夫も取り入れます。
部署によって役員の業務内容も変わりますが、業務に応じて必要なスペースを確保し、ストレスの少ない環境を整えることが基本です。
機密の管理
役員室では機密情報の取り扱いが行われるため、必要に応じたセキュリティ対策を行います。
役員室は、外部の人間の出入りが頻繁なエントランスから遠ざけ、一般社員の往来が少ない場所に配置しましょう。
また万全を期すなら、施錠の強化や監視カメラの設置などの物理的なセキュリティ対策も行います。
さらに役員室で会議を行う機会が多いなら、情報漏洩を防ぐために防音対策も検討しましょう。
防音壁や吸音パネルを導入し、会議中の会話が外部に漏れないようにすることで情報の機密性を保てます。
動線の設計(通路幅の確保)
役員室のレイアウトを考える際には、役員や来訪者の動線をしっかりと確保しましょう。
役員室には社員や来客が訪れることも多く、業務の妨げにならないよう動線を意識した配置が求められます。
エントランスから役員室までの距離を確保すると同時に、通路幅も確保します。2人がすれ違うためには150cm前後の通路幅が必要です。
また、室内の動線も確保します。
収納家具やドアの開閉スペースを考慮し、十分な余裕を持った設計を心がけましょう。
メインで使う動線と引き戸の収納棚の前は余裕を持たせ100cm前後、そのほかの動線は70cm前後を確保します。
動線の設計が適切であれば、役員や来訪者がストレスなく移動できる空間となるでしょう。
コミュニケーションのしやすさ
役員室は重要な意思決定が行われる場でもあるため、コミュニケーションのしやすさを重視したレイアウトが求められます。
役員間の意見交換や会議が円滑に進むように、想定される利用人数に合わせて座席の配置や会議スペースのデザインを工夫しましょう。
また、役員室と関連するスタッフや部署の位置関係や動線を考え、スムーズなコミュニケーションが取れる位置に設置することが大切です。
秘書がいる場合は、お互いのデスクを近くに配置することで迅速なサポートが行えます。
居心地の良さ
役員室は、長時間にわたって業務を行う場です。
そのため家具やインテリアにこだわり、居心地の良い空間を構築しましょう。
座り心地の良いチェアを配置し、十分な速度のあるインターネット環境と空調設備も整えます。
さらにソファやローテーブルなど、質の良い応接セットを配置して来客の居心地の良さを考慮しましょう。
また内装には会社のイメージに合わせたテーマカラーを採用することで、他のフロアと統一感のある空間をつくり出せます。
他室とのバランス
役員室のレイアウトを決める際には、他のオフィススペースとのバランスを考慮しましょう。
役員室が広すぎると他のスペースが圧迫され、業務全体の効率が低下する可能性があります。
狭すぎると役員の業務に支障が出る恐れがあるため、適切なバランスを保つことが求められます。
一般的には、役員室の面積はオフィス全体の8%前後が目安とされています。
ただし、企業の業態や役員の業務内容によっても変化します。
他のワークスペースや共有スペースとのバランスを取りながら役員室を配置し、オフィス全体の調和を考え、最適なレイアウトを設計しましょう。
役員室の種類と事例
個室タイプの役員室
プライバシーが確保される個室タイプの役員室は、高いセキュリティや集中力が求められる業務、会議や来客対応が多い場合に適しています。
医薬・医療業界に特化した株式会社EPファーマラインの役員室は、業務の特性上、個別の打ち合わせが行われるため、個室タイプの役員室が設けられています。
また本社から離れた場所に設置されており、あえて移動することで業務の区切りを自然に促しています。
役員室の通路面には、ガラスパーテーション(パーティション※)が採用されていますが、樹木のシルエットのシールが貼られ、室内の様子が分からなくなっています。
オフィス全体でコーポレートカラーのブルーを取り入れており、一体感を感じさせる空間になっています。
半個室タイプの役員室
半個室タイプの役員室は、一定のプライバシーを確保しながらコミュニケーションが取りやすい環境を構築します。
社員や来客とのシームレスなつながりを保ちつつ、集中して業務を行いたい場合に適しています。
株式会社武蔵野化学研究所が構築した役員室は、半個室タイプの好例です。
同社ではコミュニケーションが取りやすいオフィスを目指して設計され、役員室においてもセミオープンな空間に設置されています。
またプライバシーを確保したミーティングブースが背面に設けられ、役員間や社員とのスムーズなコミュニケーションを可能にしています。
個人の業務と、適切な情報共有がバランスよく行える仕事環境です。
オープンタイプの役員室
オープンタイプの役員室は、コミュニケーションと事業の透明性を重視する企業で採用されており、比較的新しいタイプの役員室です。
役員が社員との距離を縮めることで、組織全体の一体感を高める効果が期待できます。
Y社では、リニューアルをきっかけに役員室をオープンタイプに変更しました。
以前は個室タイプでしたが、新しいオフィスでは社員とのコミュニケーションの促進を目指しています。
この大胆な変更によって、役員と社員がより近くで業務を行うことができ、日常的なやり取りが活発になりました。
役員室がオープンになることで企業全体の情報共有が効率的になり、多くの社員にとって働きやすいオフィス構築が可能です。
役員室のカラーコーディネート
カラーコーディネートのポイント
色にはさまざまな効果があります。目的や企業イメージを考慮したカラーコーディネートを採用しましょう。
コーポレートカラーを設定しているなら、役員室にも取り入れることで他のスペースと一体感を持たせられます。
特定のカラーがない場合、目的に合わせてカラーを取り入れましょう。
それぞれの色の効果については後述します。
ただし色の選定には注意が必要です。派手すぎる色や暗すぎる色は、かえって役員室の雰囲気を損なう可能性があります。
色のバランスを考慮しながら、企業のイメージに合ったカラーを選びましょう。
茶色系
茶色系の色は自然にある色のため、飽きがこず癒しの効果も期待できます。ラウンジのような落ち着いた雰囲気になり、素材によって色味も違うためさまざまなコーディネートが可能です。配色を誤ると圧迫感にもつながるため注意が必要です。
赤色系
エネルギーを感じさせる赤色には、革新的なアイディアや活発な意見交換を促す力があります。一方で注意して扱わないと、やや粗雑なイメージを与えてしまうこともあります。
黄色系
黄色は活発さを表すビタミンカラーの一つです。オフィスにおいても、発想力や創造性を刺激する効果があります。刺激の強いカラーのため、面積を控えめにすることがポイントです。
緑色系
安らぎを感じさせる緑色には、リフレッシュ効果や疲労軽減などの効果が期待できます。一方、面積が多いと意欲の減退にもつながるため注意が必要です。
青色系
知的な印象のある青色は、リラクゼーションと適度な緊張が調和しておりクールダウンに効果的です。やや冷たい印象を与えることもあるため、適度に使用するのがポイントです。
黒色系
スタイリッシュで引き締まった印象を与える黒色は、高級感を演出するのにぴったりのカラーです。ただし引き締め効果が強いため、広い範囲に使うと圧迫感が生まれ、役員室が暗い印象になります。
白色系
誠実な印象のある白色は、役員室の圧迫感を軽減させる効果があります。ただし光を反射するため、目が疲れにくくなることや汚れが目立つことは難点です。
役員室のスタイルは企業方針によって異なる!
役員室は企業の方針によってスタイルが異なり、重厚感のある個室タイプの役員室から、オープンな役員スペースまでさまざまなタイプがあります。ここでは、役員室のさまざまなスタイルを紹介しましょう。
個室タイプの役員室
役員室というと、真っ先に高級感のある個室タイプの部屋をイメージする人が多いでしょう。機密性の高い個室タイプの役員室は、重要な情報も扱いやすいのが特徴です。そのため、個室タイプの役員室では、応接機能やミーティング機能も兼ね備えていることが多くなります。外部からのアクセスも制限されるので、セキュリティにも優れていることがメリットです。一方で、一般の社員がアクセスしにくいため、場合によっては来室の受け付けを行う応接対応スタッフの配置が必要となります。
ドアやパーティションで区切られた役員スペース
一般の社員が働く場所と同じフロアに、ドアやパーティションで区切られた役員スペースを設置する企業もあります。ドアやパーティションで区切られただけの役員室は、社員がアクセスしやすいことが特徴です。応接対応スタッフを配置しないケースも多く、社員が直接役員に相談することができます。また、ドアにセキュリティシステムが設置できるタイプならセキュリティ面でも安心です。木目調やダークブラウンなどのパーティションを選び、オフィス家具を高級感のあるものにすれば、適度な重厚感を保つこともできます。完全個室タイプの役員室に比べ、コストは安く抑えられるでしょう。
オープンな役員スペース
従来のような個室タイプの役員室やパーティションで区切られた役員スペースを廃止し、完全にオープンな役員スペースに変える動きも広まっています。役員がオフィス内の様子を把握しやすいことや、社員が気軽にアクセスできることがメリットです。役員が把握しておく必要がある情報が効率的に入ってくるため、迅速な対応が可能となります。ただし、オープンタイプの役員スペースでは機密情報の扱いには注意しなければなりません。機密情報を扱う際は、個室会議室へ移動する必要があります。
役員室のスタイルは企業の方針によって異なる!
オフィスにおける役員室の機能をそろえるには、パーティションやオフィス家具などの設置が必要になります。ただし、企業によって役員室のスタイルも異なるので、自社の方針に合った役員室の設置を目指しましょう。従来のような個室タイプの役員室以外にも、パーティションを設置しただけの役員スペースやオープンスペースにしている企業もあります。それぞれの特徴や注意点を把握したうえで、最適な役員室のスタイルを決めることが大切です。
※プラスではパーテーションをパーティションとしてカタログに掲載しております。
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