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オフィス退去時に必要な原状回復工事とは?工事のタイミングや流れなどを解説

オフィスや店舗の退去時には原状回復工事をする必要があります。賃貸契約を締結する際にそのことを確認していても、実際に退去するときになって原状回復の範囲や内容、工事のタイミングを把握していないケースもあるでしょう。原状回復工事は一般的に契約満了日までに完了させる必要があるため、契約内容をよく確認したうえで計画的に進めることが大切です。今回は、原状回復工事の範囲や内容、工事のタイミング・流れなどを解説します。

原状回復工事とは

原状回復工事とは、物件の借主が賃貸契約終了時に、物件を入居前の状態に戻すことです。賃貸オフィスや店舗など事業用の賃貸物件は、借主によって使い方が異なるため、次の借主が改装しやすいように、ほぼ100%原状回復の義務が課せられます。工事内容は契約内容によって異なりますが、たとえばテナント側で設置した間仕切りや設備の撤去、傷や汚れの修繕などが挙げられます。

原状回復の義務は、民法545条1項において「解除権を行使した当事者は、相手方を原状に復させる義務を負う」と定められています。さらに民法621条では、賃貸借契約終了時に、通常の使用や経年変化を除く損傷について、借主が原状に戻す義務があることが明記されています。ただし、地震や落雷など借主に責任のない損傷については対象外です。

以下は、原状回復義務の対象外とされる代表的なケースです。

  • 通常損耗:家具設置による床のへこみなど、通常の使用による損耗
  • 経年変化:日焼けや色あせなど、時間の経過による自然な劣化
  • 借主に責任のない損傷:地震・落雷などの自然災害による損傷

ただし、民法621条は「任意規定」のため、契約書に「特約」がある場合は、その内容が優先されます。通常損耗であっても、借主負担とされるケースもあるため注意が必要です。また、契約書に原状回復工事の業者が指定されている場合は、それに従う必要があります。業者の指定がない場合は、貸主や管理会社と相談し、借主が選定することも可能です。

出典元:e-GOV法令検索「賃借人の原状回復義務」

原状回復工事は、原則として契約期間が終了するまでに終える必要があります。傷や汚れについては、故意・過失によるものか経年劣化によるものかにかかわらず、基本的にすべて借主負担となる点にも注意が必要です。退去が決まったら、まずは契約書で原状回復工事の範囲や内容を確認し、費用の見積もりを行っておきましょう。

原状回復工事の範囲と内容

前述のとおり原状回復工事の範囲や内容は契約内容によりますが、事業用の賃貸物件の場合はほぼ完全な状態で元の状態に戻すことが求められます。一般的な工事の範囲・内容は次のとおりです。

  • 家具や備品の撤去(照明、パーティション、電話回線、看板など)
  • 床板やカーペットの張り替え、床板の再塗装
  • 壁紙の張り替え
  • 天井ボードの張り替え、補修、再塗装
  • その他、造作物の撤去
  • 壁や床、天井などのクリーニング

原状回復工事の範囲や内容によって、工事にかかる費用も大きく変わってきます。一般的に小規模なオフィスでは工事費用が安くなりますが、大規模なオフィスでは工事費用も高額です。また、業種によっても工事費用に大きな差が生じます。例えば、店舗や飲食店などでは入居時に水回りの工事をしていることが多いため、事務所に比べて原状回復工事が高くなる傾向にあります。また、特殊な内装工事をしている場合や空調設備を変更している場合なども費用が高くなります。原状回復工事の費用については、資材費や処分費、人件費などの変動要因も多く、工事を依頼する時期によっても費用が変わってくるでしょう。

また、原状回復工事の期間にも注意が必要です。工事の範囲が広いほど一般的に工事期間が長くなります。空調や照明などの設備を変更している場合は原状回復に1か月以上かかるケースもあります。原状回復工事の期間を把握したうえで退去時期や工事の開始時期を決めることが重要です。

原状回復工事の範囲は賃貸契約の内容によっても異なるため、契約書で確認しておきましょう。原状回復の相場や範囲についての詳細は、『オフィス移転で気を付けるべき原状回復の相場、範囲とは?』をご覧ください。

原状回復工事を行うタイミング

原状回復工事を行うタイミングは賃貸契約書に記された契約条件によります。契約満了日までに原状回復工事を完了して明け渡すのが一般的です。そのため、契約満了日の2週間から1か月程度前に着工する必要があります。前述のとおり工事期間は原状回復工事の範囲や内容によって変わってきます。また、何らかの事情で工事が遅れたり、追加で工事が必要になったりする可能性もあるため、工事期間に余裕を持たせることも大切です。

オフィス移転の場合は、新オフィスへの引っ越しを終えたタイミングで着工することが多いでしょう。そのため、移転先の準備と原状回復工事の準備を同時並行で進めていかなければなりません。原状回復工事の範囲や時期がわかったら、早めに施工業者に見積もりを依頼し、具体的なスケジュールを決めておきましょう。

原状回復工事の流れ

ここでは、原状回復工事の流れを解説します。各手順の時期と必要な手続きについて解説するので、スケジュールを立てる際の参考にしてください。

賃貸契約書で原状回復義務の範囲を確認する

まずは賃貸契約書で原状回復義務の範囲がどこまでなのかを確認しましょう。原状回復工事は賃貸契約書に記載された範囲で行わなければなりません。原状回復の範囲を確認したら、工事のスケジュールを立てていきます。

施工業者へ連絡する(契約満了日の6か月前が目安)

原状回復工事をスムーズに進めるためには、契約満了日の6か月前を目安に施工業者へ連絡しておきましょう。賃貸契約書に指定業者の記載がある場合は、その業者に連絡して現地調査の日程を調整します。指定がない場合は、自社で施工業者を探して連絡を取ります。早めに動くことで、スケジュールや費用面での余裕を持つことができます。

現地調査・見積もりを依頼する(契約満了日の3か月前が目安)

施工業者が決まったら、契約満了日の3か月前を目安に現地調査を実施しましょう。現地調査では、自社の担当者が立ち合いながら施工業者にオフィスの状態を確認してもらい、工事内容をすり合わせていきます。そのうえで、施工業者から見積書を作成してもらいます。正確な見積もりと工事スケジュールを把握するためにも、丁寧な打ち合わせが重要です。

原状回復工事の発注(契約満了日の2か月前が目安)

見積書が届いたら内訳や費用を確認し、問題がなければ発注しましょう。もし見積内容に不明な点がある場合は、必ず確認して、納得できるまでやり取りする必要があります。特に、オーナーや管理会社指定の業者に依頼する場合には、工事費用が相場よりも高くなりがちです。不要な工事が含まれていないか、原状よりもグレードアップされていないか、廃棄物の数量は適切かなどをチェックし、必要に応じて交渉することも大切です。

原状回復工事の着工(契約満了日の1か月前が目安)

工事内容や費用に合意できたら、施工業者と契約を締結し、原状回復工事を発注します。工事中は施工業者に工事の進捗状況などを報告してもらい、契約どおりに工事が行われているかを確認しましょう。施工が完了した後では確認できない箇所もあるため、担当者が中間検査を行うケースもあります。

原状回復工事の費用を抑える方法

原状回復の工事にかかる費用が意外と高いと感じている人も多いでしょう。工事費にはおおよその相場がありますが、できるだけ安く抑えたいものです。ここでは、費用を抑える方法を3つ紹介します。

相場を調べたうえで施工会社と交渉する

オフィスの原状回復工事は、貸主が指定する施工会社が行うのが一般的です。そのため、借主側が業者を選ぶことができないケースもあります。それでも、ほかの業者から見積りを取ることが大事です。複数の業者からの見積りを比較すれば、相場がわかるからです。相場よりも高い金額だった場合、他社の見積書を提示して価格交渉を行うことも可能です。交渉により工事費用を抑えられる可能性があります。

工事費の内訳を確認する

原状回復工事の見積書は、必ず内訳を確認しましょう。必要のない工事が含まれている可能性もあるからです。内訳が記載されていない場合は、詳細を確認する必要があります。貸主が指定する施工会社に依頼する場合でも、工事費の内訳で不要な工事が含まれていないか、妥当な金額なのかを確認することが大事です。不要な工事を省いてもらえば、費用が安くなるかもしれません。

居抜き物件として次の借主に引き継ぐ

居抜き物件とは、原状回復しないまま次の借主に引き継ぐことです。居抜き物件なら、内装や設備をもとに戻す必要がなく、壊れた部分の修理やクリーニングにかかる費用だけですみます。そのため、費用を大幅に抑えられることがメリットです。ただし、事前に貸主に相談し、承諾を得る必要があります。また、内装が特殊な場合や使いにくい場合は、居抜き物件として貸し出すことが難しいのが実情です。まずは次の借主との話し合いが必要となります。

原状回復工事を行う際の注意点

実際に原状回復工事を行う際に注意すべき点について説明します。

原状回復のルールを理解しておく

2020年4月に行われた民法改正により、オフィスの原状回復基準は以前とは変わっています。しかし、現在移転を検討している企業の多くは、2020年4月1日以前に契約をしているのではないでしょうか。そのため、原状回復は改正前の民法が適用されることを前提に話を進めていく必要があるでしょう。

原状回復にかかるコストを把握しておく

一般的に原状回復工事にかかるコストは、100坪未満で坪単価2~5万円。100坪以上で坪単価5~10万円と言われています。ただし、回復内容によっても大きく異なるため、自社で業者を選択できる場合は必ず複数業者に相見積もりを依頼するようにしましょう。

原状回復工事のスケジュールは早めに立てることが重要

原状回復工事は借主側にほぼすべての原状回復義務が課せられるため、工事の範囲や内容、タイミングなどを確認し早めにスケジュールを立てておくことが大切です。万一、契約満了日までに工事が間に合わなかった場合、追加の賃料など余計な費用が発生する可能性もあります。そのため、オフィスの退去が決まったら、新オフィスの契約や引っ越し業者の選定とともに、原状回復工事の計画も立てていかなければなりません。事前に契約内容を確認し、スムーズに進められるようにしましょう。

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