OAフロアとは床下に配線を納めて働きやすい環境を実現する手法
OAフロアとは、オフィスの床と建物の下地床の間に一定の空間を設け、その空間に電源ケーブルやLANケーブル、電話線などの配線を収納する仕組みです。この二重床構造により、オフィスの配線を床下に集約し、すっきりとした美観と柔軟なレイアウト変更を実現できます。似た言葉にフリーアクセスフロアがありますが、フリーアクセスフロアは主にデータセンターなどで使用される床高300mm以上の高床仕様の総称であり、空調ダクトや重量機器の収容も想定した設計を指します。一方、OAフロアはその中でも一般オフィス向けに適した比較的低床のシステムで、床高はおおよそ40〜150mm程度です。OAフロアの導入では、設計段階での性能証明書の取得など、業者との仕様のすり合わせが求められます。配線計画・耐荷重要件・床材の選定などを事前に検討すれば、導入後のトラブルを未然に防げます。
OAフロアの3つの種類
OAフロアは、その構造と施工方法によって大きく以下の3つのタイプに分類されます。以下の比較表で、主要な項目ごとに3タイプの特徴を見ていきましょう。
■OAフロアのタイプ別比較
項目 置敷敷(簡易タイプ) 置敷敷(溝配線タイプ) 床高調整(支柱)式 床高 40~50mm 50~70mm 100~300mm 耐荷重 2,000~3,000N 2,000~3,000N 3,000~5,000N 特徴 樹脂製モジュールで
短工期。軽量で
原状回復しやすい後施工配線が容易。配線変更の自由度が高い 高床で空調ダクトや
大量配線も収容可能適したシーン スタートアップ、短期入居、一般執務フロア バックオフィス、BPOセンター、部署頻繁変更のある環境 コールセンター、サーバー室併設オフィス、大規模オフィス 配線容量の目安 小〜中規模
(LAN・電源少なめの構成)中規模
(頻繁な配線変更に
対応)大容量
(光・電源・センサー類なども同時収容可)耐震性 △
固定は不可。
耐震対応には不向き△
基本は簡易設置。使用環境により補強が必要◎
支柱アンカー固定で
高耐震対応が可能コスト目安(m²単価) 8,000〜1万2,000円 1万〜1万5,000円 1万5,000〜2万5,000円 原状回復のしやすさ ◎
パネル回収しやすく
復旧が簡単◯
パネル再利用可。
復旧費用は中程度△
解体に手間がかかり、復旧費用が高い傾向
OAフロアのメリット
OAフロアの導入には、業務環境の快適性向上やオフィス運用の効率化といった多くのメリットがあります。代表的なメリットを詳しく解説します。
<OAフロアのメリット>
- 配線の集約と美観向上
- レイアウト変更および拡張性の確保
- 足元リスクの軽減と安全性向上
配線の集約と美観向上
OAフロアの最大のメリットは、床下に配線を収容できる点です。これにより、視界に入るケーブルが一掃され、オフィス全体の見た目がすっきりと整います。
視覚的ノイズが少ない空間は、来訪者への印象や社員の集中力にも良い影響を与えます。重要な配線を目視できない状態で管理すれば、物理的セキュリティの向上にもつながるでしょう。
レイアウト変更および拡張性の確保
OAフロアは、オフィスのレイアウト変更や設備の追加にも柔軟な対応が可能です。床下に配線スペースが確保されているため、デスクの位置を変えたり、会議室を新設したりする際も、床パネルを部分的に開けて、配線の位置を変えられます。
フリーアドレスなどオフィス環境へのアップデートも、容易に実施可能です。人員の増減や部署再編といった組織変更にも、柔軟に対応できる点は大きなメリットといえるでしょう。
足元リスクの軽減と安全性向上
OAフロアは、従業員や来訪者の歩行空間が平坦になり、段差によるつまずきや転倒事故のリスクを軽減し、安全性を高められます。
また、床面に露出したケーブルが摩耗すると、漏電や発火のリスクを伴います。OAフロアによって配線を保護すれば、こうしたトラブルのリスクも低減され、より安心して働ける職場環境が整うでしょう。
OAフロア導入前に知っておきたい注意点
OAフロアは多くのメリットを提供する一方で、導入に際しては事前に知っておきたい注意点もあります。以下では、導入前に押さえておきたい5つの注意点を詳しく解説します。
<OAフロア導入前に知っておきたい注意点>
- 初期費用と床高との兼ね合いを把握する
- 耐荷重の確認と補強の可能性を認識する
- 施工不備を防ぐために信頼できる施工業者を選ぶ
- 導入後の変更・撤去が容易ではない点を知っておく
- 将来の運用も見据えてフロアパネルの種類を選ぶ
初期費用と床高との兼ね合いを把握する
OAフロアの導入には、通常の床仕上げに比べて高い初期投資が必要です。施工費に加えて、パネル・支柱・配線部材などの資材費も発生します。床をかさ上げすれば天井までの高さが減り、圧迫感を感じやすくなることにも注意が必要です。
また、天井高が標準より低いオフィスでは、OAフロアの床高設定に工夫が求められます。小規模オフィスやコワーキングスペースなど、空間バランスが重視される環境では、置敷式の低床タイプを検討すると良いでしょう。
耐荷重の確認と補強の可能性を認識する
OAフロアには種類ごとに耐荷重の違いがあり、使用目的によっては補強が必要なケースがあります。例えば金庫や大型コピー機など重量物を設置する場合は、標準仕様のOAフロアでは荷重に耐えられないケースもあります。
このため、導入前には設置予定機器の重量を洗い出し、必要に応じて支柱の増設やベースプレートの使用といった補強計画の立案が重要です。
施工不備を防ぐために信頼できる施工業者を選ぶ
OAフロアの性能を最大限に発揮するには、施工精度が非常に重要です。そのため、実績豊富で信頼できる施工業者の選択が欠かせません。
不適切な施工によっては、床のガタつきやパネル間の段差、床鳴りなどのトラブルが発生する可能性もあります。事前に施工範囲、使用する部材、工期、見積もり内容を明確にしてから契約を進めましょう。
導入後の変更・撤去が容易ではないことを知っておく
OAフロアは一度設置すると、後から撤去・変更するには大きな手間と費用がかかります。施工時には配線の固定や床材のカットが多く、撤去時には廃材処理費や原状回復費が発生するためです。
賃貸オフィスは退去時に原状回復義務があるケースも多いため、OAフロアの設置前に退去時の対応を見据えた判断が求められます。
将来の運用も見据えてフロアパネルの種類を選ぶ
OAフロアは一度設置すると長期間にわたって使用するため、導入時点で将来の使い方まで視野に入れてフロアパネルの種類を選ぶ必要があります。
部署の再編やデスク配置の変更が頻繁にある場合は、配線変更が容易な置敷式(簡易タイプ)が向いているでしょう。一方、サーバー室や機器密度の高いエリアでは、床高調整(支柱)式のような高耐荷重かつ配線容量の大きい仕様が合うかもしれません。施工前には、業者との丁寧なヒアリングとすり合わせを重ね、後悔のない選定を心掛けてください。
OAフロア施工の流れ
OAフロアの施工は、現地調査から引き渡しまで複数の工程に分かれて進行します。ここでは、一般的なOAフロア施工の流れを3ステップに分けて解説します。
<OAフロア施工の流れ>
- 導入前の現地調査とレイアウト確認
- 工程計画と資材手配に関する調整
- 施工〜検査〜引き渡し
1.導入前の現地調査とレイアウト確認
はじめに施工業者が導入前の現地を訪問し、床の状態、既存の配線、設備の配置、障害物の有無などを確認します。
この調査結果をもとに、どのタイプのOAフロアが適しているか、床高はどれくらい必要か、配線容量や耐荷重はどの程度かなどを明確にしていきます。施工業者はクライアントの要望をヒアリングしながら、レイアウト案と設計図面を作成するのが一般的な流れです。
2.工程計画と資材手配に関する調整
設計内容が確定したら、次に施工スケジュールの計画に入ります。業者と施主が連携し、導入時期、工期、作業時間帯、ビル管理会社との調整内容などを詰めていきます。
OAフロアのパネルや支柱などの資材を手配するのもこのタイミングです。既存オフィスでOAフロアを導入する場合はオフィス家具の一時移動が必要で段階的な施工も多いため、柔軟な工程管理が求められます。
3.施工〜検査〜引き渡し
施工当日は、床の養生や基準点の設置から作業がスタートします。その後、支柱やモジュールの設置、配線の敷設、フロアパネルの施工、床仕上げの順に進行します。
施工完了後は、水平精度や床鳴りの有無、パネルの固定状況、耐荷重性能、配線の通電状況などを業者とともに検査しましょう。問題がなければ引き渡しが行われ、併せて保証内容やメンテナンス方法の説明を受けてください。
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OAフロアに関するよくあるご質問
天井が低いオフィスでOAフロアを導入する際のポイントは?
天井高が標準より低いオフィスでは、床高を40〜50mm程度に抑えた置敷タイプのOAフロアを選ぶと圧迫感が抑えられるでしょう。照明や空調の影響も踏まえ、床高と天井高のバランスについて施工業者と事前と調整することが大切です。
OAフロアの下に空調や配管は通せる?
床高調整式(支柱式)のOAフロアであれば、床下に空調ダクトや給排水管を通すことも可能です。ただし、一般的に150mm以上の床高が必要であり、配管スペースがほかの設備と干渉しないよう構造設計する必要があります。設計段階から空調・配管設備の担当者との連携が不可欠です。
退去時にOAフロアはそのまま残しておける?
賃貸契約では基本的に原状回復義務があるため、退去時にOAフロアを撤去する必要があります。撤去作業には時間と費用がかかる点に注意が必要です。導入前に、契約書や管理規約を確認し、原状回復の条件を明確にしておきましょう。