「時短」だけが働き方改革?
2017年は声高に「ワークスタイル変革(働き方改革)」が叫ばれた年でした。以前から日本人は働きすぎといわれていましたが、近年とくに長時間勤務による働く人のストレスが社会的に問題になっています。
ただ、その取り組みの多くは残業を減らすことや、プレミアムフライデーの活用など、勤務時間の短縮にフォーカスしたものが多いことが特徴です。もちろん、労働時間は少ないに越したことはありません。しかし、多くの時短策は「仕事の量や負荷を減らさず」に会社の出勤時間を短くすることに終始しているようにも見受けられます。残業規制をかけた企業では、勤務時間内に仕事が終わらずに、仕事を社外でやっていた、などという話も聞きます。これでは、単に会社の監督外で残業していることになるだけでなく、情報漏えいのリスクなど、会社のコンプライアンスにも関わります。
仕事のやり方や量から見直し、変えていかないと本当の「ワークスタイル変革」とは言えないでしょう。
本当の変革は、今までとは違う視点が必要
では「ワークスタイル変革」とは、どのようなことをすべきなのでしょうか。実はコレといった特効薬があるわけではありません。業種や業態、そして事業環境によってやるべきことは異なるでしょう。ただ言えるのは、働く人の負荷を減らして、無理なく勤務時間内に仕事が終わることを目指す環境づくりをする、ということでしょう。
それにはいくつかのアプローチ方法があります。 例えば、業務時間中にリフレッシュタイムを取り入れて、適宜休憩することで業務効率を上げるという手法があります。(関連記事:マメに休むが「勝ち」? 業務効率を向上させる休憩術)また、手間がかかる単純作業や、複雑ゆえに大変な業務などは、システムを導入したりAIやロボットなどを導入したりして、生産性を上げるという考え方もあります。
また、在宅勤務やコワーキングスペースでの勤務を認め、働く場所の制約を取り払うことも一つの方法です。限られた時間や場所でも、能力ある人が力を発揮できる環境をつくることがポイント。生活を大切にしながら仕事をし、最適なワークライフバランスを実現しつつ、業務効率を上げるという方法もあります。
もちろん、これらの取り組みには投資が必要なものもあります。個別の取り組みでは、効果が低いものもあるでしょう。しかし、会社全体で取り組み、最適化を図れば業務のムリ・ムダがなくなり、投資以上に得られるものがあるかもしれません。そのためには、経営層と現場が一体化して、知恵を出し合い、ワークスタイル変革を進めていくことが大切ではないでしょうか。
すべての社員が働きやすい環境づくりを
実はこれらの取り組みのヒントの一つに「健康経営」があります。(関連記事:今話題の「健康経営」ご存知ですか?)
経済産業省が発行している健康経営ハンドブックには、さまざまな企業の事例が取り上げられており、ヒントになる情報がたくさんあります。 また、プラスをはじめとするオフィス家具メーカーやIT企業なども、働き方を変えるための様々な機器やサービスなどを積極的に提供するようになってきています。これら最新の情報をしっかり集めて、自社に合うものを活用するということも大切です。
社員が自分にあった働き方ができれば、会社全体の生産性を高めることにつながる、これがワークスタイル変革の本質と言えるでしょう。会社が働く人それぞれの能力を最大限に発揮できる環境を用意し、ひとりひとりの生産性を高めることが変革実現の第一歩となります。「ワークライフバランス」「ダイバーシティ」などをすべて取り込み消化した向こう側に、本当の「ワークスタイル変革」があるのではないでしょうか。