従業員のワーク・ライフ・バランスを実現し、かつ企業の業績を上げるうえでは、業務の生産性を向上させることが欠かせません。政府により関連法案の整備が進められている「働き方改革実行計画」のなかでも「労働生産性向上」として検討テーマに挙がっており、近年のビジネスのトレンドとなるワードでもあります。この生産性を向上させるためにはどうすればいいのでしょうか。言葉の意味から考えてみましょう。
「生産性向上」と「業務の効率化」同じだと思っていませんか?
限られた時間の中で業務を遂行するうえでは「生産性向上」の意識を持つことが重要です。その取り組みの具体例を見る前に、まずは労働生産性を向上するためにはどのようにして業務を進めていけばいいのか、考えてみましょう。
「生産性向上」とは、文字通り従業員一人ひとりの生産力を向上させることをいいます。そのためには、売り上げや利益、また数字には表されなくても企業の将来的な成長に貢献するといった「成果」を上げることが重要です。「成果」を上げることで企業全体が成長し、長時間労働の解消やワーク・ライフ・バランスを実現するためのゆとりを持つことができます。
「生産性向上」に似た概念として「業務の効率化」という言葉もあります。この両者はよく似た概念なので、「生産性向上(業務の効率化)」といったように同じ意味を持つ言葉として使われることも少なくありません。ただ、企業を成長させるために必要な「成果」を考えたとき、両者の意味合いは少し異なることを認識しておく必要があります。
「業務の効率化」は、文字通り解釈すると業務を効率的に進めることを指します。つまり、限られた時間でより多くのタスクをこなすことに重点が置かれており、厳密には「成果」という概念は含まれていません。意地悪な見方をすると「業務の効率化」だけを重視する労働環境では、いくら多くの業務をこなしても肝心の業績は上がらず、企業を存続させるためにさらに多くのタスクをこなさなければいけない事態にも陥りかねないのです。そうなってしまえば、短時間で多くの業務を強いられるジタハラ(時短ハラスメント)を招く結果にもなり、働きやすい労働環境を実現できるはずもありません。
もちろん、一般的に「業務の効率化」という場合は「それによって成果を上げる」という意味合いが含まれていることも多いのですが、そもそも企業を成長させるために重要な「成果」が棚上げされているケースが多いことも事実です。自社で取り組みを行う際は、それによって本当に「成果」が上がるのか、まずはしっかりと検討する必要があることを覚えておきましょう。
従業員の生産性を向上させるためのポイントは?
生産性向上の明確な基準を打ち出す
従業員の生産性を向上させるうえでまず重要なのは、何をもって「生産性向上」が達成されたとするのか、その基準を明確にすることが重要です。「生産性を上げるように」と指示を出すだけでは、ただ多くのタスクをこなすだけになりかねず、また実効性もありません。
それよりも「現在10人で進めているプロジェクトを8人で進める方法を考える」といったように具体的な数値を出した方が、従業員も取り組みやすいでしょう。達成するべき目標を明確にすることで、より効果的に生産性向上に取り組むことができるのです。
モチベーションの維持
生産性向上が、ただ多くのタスクをこなすのではなく「成果」を重視する取り組みであることを考えると、従業員のモチベーションを維持することも重要なポイントのひとつです。
モチベーションを維持するためにはさまざまな方法が考えられますが、成果を挙げた社員を正当に評価し報奨したり、普段から良好な職場環境を整備したりするなどはその代表例といえるでしょう。従業員が業務に対して前向きな気持ちで取り組める環境を整え、生産性の向上を目指していきましょう。
生産性向上は「成果」を基準に考える
生産性向上は、とかく業務効率を上げるための施策ととらえられがちですが、そればかりを重視してしまうと従業員に大きな負荷がかかる事態になりかねません。企業を成長させるために必要な「成果」を基準にして考えることが、健全な労働環境を構築することにつながるのではないでしょうか。
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