場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現できるとして、近年「テレワーク」という働き方が注目を集めています。テレワークには育児や病気療養、介護などで毎日出社できない社員でも自宅で仕事ができるなど、企業・従業員の両方に大きなメリットがあります。最近では地方活性化や災害対応などの手段として、企業の枠を超えてテレワークを推進する動きも出てきました。しかし、その一方で解決しなければいけない課題も多く、導入の踏ん切りがつかない企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、すでにテレワークを導入している企業の事例を、その取り組み内容や効果などと併せてご紹介します。ぜひ、自社で導入する際、検討する際の参考にしてみてください。
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IT機器の活用でシームレスなコミュニケーション
まずご紹介したいのは、静岡県掛川市に本社を置き、排ガス浄化触媒や活性炭などの開発・製造・販売事業を手掛ける株式会社キャタラーの事例です。同社では週2日を上限に、従業員の必要に応じて在宅勤務もしくはモバイル勤務を認める制度を実施しました。
テレワークの導入においては社外にいる従業員がどうやって業務を遂行するか、その環境整備がポイントとなります。同社では在宅勤務の社員はリモートデスクトップ接続により、自宅から社内のパソコンを操作、またモバイル勤務の社員はVPN接続により社内ウェブシステムを閲覧可能にすることでその問題を解決しました。また、チャットや音声チャット、ウェブ会議システムといったものを併用することでシームレスなコミュニケーションを実現しています。
同社では国内だけでなく海外への販促活動も行っており、国内外への移動が増加していました。テレワーク制度を導入することで、社員のライフイベントに柔軟に対応できることはもちろん、新しいツールやルールを整備するなかで、通常勤務するオフィス以外の場所でも生産性の高い働き方ができることが分かり、大きな成果になったといいます。同社の事例は、製造業でありながらテレワークを実現した珍しい例といえるのではないでしょうか。
入念な事前研修が導入成功の要因に
テレワークは自宅勤務やモバイル勤務だけでなく、サテライトオフィスも対象にしています。その好例としてご紹介したいのが神奈川県横浜市でコーヒーやお茶類の通信販売事業を手掛ける株式会社ブルックスホールディングスの事例です。
同社では、社員の通勤や移動が長時間にわたるため、時間のロスが大きいという課題を抱えていました。この課題を解決するべく、同社ではこれまで自社のサーバールームとして使用していた場所に執務スペースを設置し、サテライトオフィスを開設しました。業務においてはスケジュールやタスクの進捗管理が行えるクラウドサービスを活用、さらにWeb会議システムやチャットを活用することで、通常のオフィスにいるときと同じようにコミュニケーションが取れるよう、業務環境を整備しました。
現在は多くの社員がこのサテライトオフィスを活用しているものの、導入検討時はサテライトオフィスについて全社的な理解を得られているとは言い難い状況でした。そのため、テレワークに関する啓蒙やトライアルも兼ね、事前研修や入念な打ち合わせを実施。結果として、社内の理解を得られたことはもちろん、開設に向けた具体的なイメージの共有やサテライトオフィス利用時のルール整備につながったのだとか。この成果をもとに、ホールディングス全体で導入を進め、より幅広い業務が行える場にするための検討の段階に入っています。
社長自らテレワーク導入プロジェクトリーダーに
サービス業界においても、テレワークのニーズが高まっています。神奈川県厚木市に本社のある株式会社アンリツプロアソシエは、経理財務や給与計算など事務処理業務を行っている会社です。女性社員が多いため、仕事と家庭の両立や生産性の向上を図る目的でテレワークが導入されました。テレワークトライアルに参加している社員は管理職と一般職を含み20名で、週1回の在宅勤務が可能です。実際、テレワークの導入でどのような効果があったのでしょうか。
株式会社アンリツプロアソシエは、企業の間接部門の業務を行っているため、紙ベースの業務が多く基本的に1つの業務を1人で行う流れとなっています。そのため、テレワークの効果には懐疑的な社内風土がありました。しかし、社長自らがリーダーとなり、できるだけ現場の社員にもプロフェクト会議に参加してもらいました。その結果、社内でテレワークに対する理解が深まり、トライアル実施へとつながったようです。
テレワーク導入により、ワーク・ライフ・バランス向上の効果や業務プロセスの改善に一定の効果が見られました。また、情報共有やスケジュール管理、業務に対する目的意識も芽生えたとのことです。同社は今後もテレワーク導入活動を推進していきたいとしています。
遠隔でスムーズなコミュニケーション
テレワーク導入は国際協力活動を行うNGO団体においても検討されています。特定非営利活動法人国際協力NGOセンターは、NGO間のネットワークや共同事業の推進、人材育成や組織強化などを行う団体です。出向中の職員や出張が多いため、事務所外から必要な情報にすぐにアクセスできないことが課題でした。また、育児や介護などをする職員の支援やワーク・ライフ・バランスの向上もテレワーク導入の目的です。トライアルとして4名の職員がモバイル勤務を実施。今後は在宅勤務ができる制度の導入も予定しています。
まずは事務所外から必要な情報にアクセスできるようにするため、クラウドサービスを活用することにしました。それにより事務所外で働く職員とのコミュニケーションがしやすくなったとのこと。また、必要な情報をすぐに収集することができ、業務の効率化にもつながりました。
また、セキュリティ面への不安は、クラウドサービスを安全に利用するための留意事項を説明することで対応しました。安心してテレワークを活用できるよう環境を整えていくことが今後の課題としています。
アメリカIBMやYahoo!が禁止?
テレワークの導入で成果を上げる企業が増える一方で、以前からテレワークを行ってきたアメリカIBMやYahoo!がテレワークを禁止するという動きもあります。アメリカはテレワーク発祥の地とされ、大企業ならテレワークを導入していないところはないといっても過言ではありません。
そういった社会状況のなかで禁止となった理由は明らかにされていませんが、チームワーク不足や業務の質が低下したことが背景にあるのではないかと推測されています。
テレワークは企業と社員どちらにもメリットが多いシステムで、今後も世界的に推進されていく傾向です。しかし、アメリカIBMやYahoo!のような動きもあります。異なる場所で働く社員同士が、どのようにコミュニケーションをとるかが課題といえるでしょう。
業務の効率化や社員満足度の向上にも
テレワークは近年のIT機器の発展を背景とした新しい働き方のため、まだ手探りの部分も多く、社内のシステムや業務ルールを一から構築していくのは手間のかかる作業となるかもしれません。しかし、導入により在宅勤務や時短勤務、サテライトオフィスでの勤務などが実現すれば、社員のワーク・ライフ・バランスの実現だけでなく、業務の効率化や社員満足度の向上にもつながるでしょう。ここでご紹介した事例を参考に、ぜひ検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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