
柔らかな座り心地と洗練されたデザインを兼ね備えたメッシュタイプのオフィスチェア「mari(マリ)」を2026年1月1日に発売しました。

「mari」は、毬(まり)のような柔らかなフォルムと、編み物のように身体を包み込むグラデーション3Dニットメッシュを採用した、デザイン性と快適性を両立したワークチェア。
デザインは、山本麦とエリック・クロスが率いる、上海とオーストラリア・アデレードを拠点とするインダストリアルデザインスタジオ「Circ Industrial Design」が担当しました。
今回は、プロダクトデザイナー山本麦さんと、商品開発担当である上田隆平さんからお話を伺いました。

宮島(聞き手):どのようなきっかけで、プロジェクトはスタートしたのですか?
山本:
このプロジェクトは、2024年の広州展示会(3月)からスタートしました。まずは開発の軸になるコンポーネントを徹底的に調査しました。「効率」と「コスト」をしっかり押さえ、デザインについては“ユーザーが触れる部分に注力する”という方針を固めました。
近年のプレミアムタスクチェアでは、内部構造を隠しつつ軽さや上品さを出すために、半透明の素材を使ったデザインが増えています。mari でも、その“透明感のある美しさ”を取り入れながら、手に取りやすい価格を目指しました。
上田:
2024年10月には、シンプルで家庭的な美しさから発想した8つのコンセプトを山本さんから提案いただきました。そこから議論を重ね4つに絞り、最終的に「透明感」が採用されました。


宮島(聞き手):
アイデアやデザインはどのように考えられたのですか?
山本:
最初は紙やiPadで2Dスケッチを描きながら、形の方向性を自由に探っていきました。それと並行して、VRを使った3Dスケッチも行っています。検討段階でも実寸大でバランスや雰囲気を確認できるのがメリットですね。
上田:
開発メンバーでVRスケッチを体験させていただきました。使いこなすには少し練習が必要ですが、様々な形状アイデアを容易に空間の中でチェックできるので、議論が一気に深まりそうだなと感じました。

山本:
コンセプトが固まってからは、SolidWorksで細部のモデリングを行いました。リブやボス、金型のテーパーなど、最終的な成形を見据えた細かな設計要素をここで作り込みました。
上田:
PLUSのエンジニアも同じくSolidWorksを使っていたので、山本さんのディテールが初期段階から正確に共有できたのは大きかったと思います。
宮島(聞き手):こだわったポイントを教えてください。
山本:
背のランバーにかなりこだわりました。
ランバーはコストを抑えるために肉抜き構造にしています。ただ、“特別感のあるデザイン”は絶対に妥協したくなかったので、左右に伸びるバネのような構造を持たせ、身体のラインにしっかり沿ってくれる仕様にしました。
この価格帯でこれだけの可動性とサポート性を持たせるのは簡単ではありません。

上田:
私も何度も試座しましたが、本当に身体に寄り添う感じで気持ち良いですよね。低価格帯でここまでのランバーの動きが実現できたのは、大きな成果だと思います。
山本:
背もたれは非常にシンプルな見た目ですが、中空フレームによって透け感と軽量化を実現しつつ、材料費も抑える構造になっています。巻き込みの形状も、家庭的で柔らかい印象になるよう工夫しています。
上田:
背もたれは一度の成形で完結しています。また、クロスを固定するスリットも金型の貫方向に設置しているので、金型費を抑えながらデザインのアクセントとしても作用している部分です。
そして3Dニットについても、コスト面への挑戦を行いました。3Dニットはもともと高価格帯チェアで使われることが多い素材なのですが、今回は柔らかく透明感のあるグラデーションを採用したことで、温かさのある表情と、価格バランスの両方を実現することができました。

山本:
そうですね。さらに、3Dニットは一体成形なので端材が出ず、縫製工程も必要ありません。見た目の美しさと生産効率を両立できる点が魅力です。
今回採用した3Dニットは表と裏で異なる見え方となるので、プロトタイプを20回以上繰り返し、編み方・パターン・色について、ベストな見え方を追求しました。
宮島(聞き手):グラデーションニットへのこだわりはmariのデザインにとって、大変重要だったのですね。
上田:
私も中国にて実際にグラデーションのデザイン決めに参加しました。穴の位置や穴径をプログラミングで調整し、「この3つの穴をどこへ配置すべきか」など細かい部分まで徹底的に詰めていきました。お昼を食べる時間も忘れるほど集中して議論しましたね。
山本:
はい。そして最終的には、mariの特徴である支柱が背面から見えるような工夫を施しました。ただ、薄くしすぎると、保持力が落ちてしまったり、身体のラインが透けてしまう懸念もあったため、支える部分は濃く、外周に向かって徐々に薄くなるグラデーションを採用しました。どの角度から見ても美しい印象になるよう設計した点がポイントです。
上田:
カラーはPLUSのCMFチーム、デザイン部のメンバーと共に、日本市場にも合う6色を選びました。既存のRenaチェアやBenesとの相性も考え、VE案としても提案しやすいような空間に溶け込むトーンに仕上げています。

山本:
3Dニットはオフィス家具ではまだ新しい技術ですが、もっと可能性があると思っています。より大胆なパターンや色、そしてtoC向けの展開など、これから挑戦できる領域も広がりそうです。
宮島(聞き手):お二人とも貴重なお話をありがとうございました。
価格面での課題を逆手に取り、デザインの魅力へと転換していく過程は、今回のプロジェクトならではの発想があり、非常に印象的でした。
VRスケッチや3Dニットといった新たな技術の活用も、私たちの開発視点に良い刺激を与えてくれたと感じます。
mariはこうした丁寧な試行錯誤から生まれた、美しさと心地よさを持つチェアだと感じています。
多くの方にその魅力を感じていただけたら嬉しいです。
オフィスチェア「mari(マリ)」の製品紹介ページは こちら

