
サステナビリティの観点から再注目されるビオトープとは?
近年、サステナビリティの観点から「ビオトープ」が再注目されています。
ビオトープとはドイツ生まれの概念でbio(生命)+topos(場所)で「生き物の生息場」を指す言葉です。
原生的な自然以外にも、人が関わって創出した二次的な自然環境である『里山里地』や『雑木林』に加え、都市の緑である『公園』なども広義ではビオトープと言えます。地域の生き物である昆虫や鳥、魚が集まれる環境を創出することで地域環境の保全に貢献します。
今回、プラスの前橋工場でビオトープ整備のプロジェクトが開始したのでご紹介します。
ビオトープ整備の舞台となる前橋工場のご紹介
プラス株式会社ファニチャーカンパニーの家具製造拠点である前橋工場は、群馬県前橋市に立地しています。
14万坪(東京ドーム約10個分に相当)もの前橋工場は「プラスランド」という名称で親しまれており、自然と産業がバランスよく共生する複合施設です。2007年には「緑化推進運動功労者内閣総理大臣賞」を受賞しています。

今回は、この広大な前橋工場の敷地内で実施した、ビオトープ整備の記録をご紹介します。
前橋工場敷地内の自然を調査
調査の開始
プラスの前橋工場は1991年に稼働を開始しました。
以来、私たちは敷地内の豊かな自然を守りながら、家具づくりをおこなっています。一方で、前橋工場の敷地内にどれ程の自然が存在しているかを定量的に把握する機会はありませんでした。
そこで2024年4月、前橋工場の自然環境をより深く理解するため、自然環境を調査するプロジェクトを開始しました。
プロジェクトを進行するにあたり、生物・植物に知見のある株式会社山梅様にご協力いただき、前橋工場敷地内の環境調査を実施しました。
調査を通じてわかったこと
2024年の4月~8月までの前橋工場の環境調査を通じて、今まで私たちが知ることができなかった多くの事が少しずつ見えてきました。
- ビオトープ周辺の昆虫類・草本類の調査を実施したところ、調査期間中に225種の動植物が確認された事
- 周辺地域から見て広大な緑地面積で、猛禽類の食痕やカエル類の産卵を確認できたことから、地域の生態系ネットワークにとってコアエリアのとしての機能を有している事
- 工場敷地内に川・草原・森・山など自然のグラデーションがあり、異なる自然の間を移動する生き物たちの利用できる環境が維持されている事
- 工場緑地内では絶滅危惧種も確認され、地域の生き物にとって重要な生息環境になっていることから周辺の自然環境にも好影響を与えており、生き物の視点に立った維持管理を行うことでより地域の自然環境にとって貢献できる場となる事

この豊かな自然を利用する生き物たちの状況を確認することで、地域の生態系ネットワークのコアエリアとしての機能を有していることが見えてきました。
前橋工場敷地内のビオトープ整備開始
今回の調査で、前橋工場の緑地が生き物の生息環境となり、地域の生態系に良い影響を与えることがわかりました。同時に、動植物の視点に立った維持管理・環境改善の必要性もわかってきました。
この調査結果が社内でも共有化され、社員の興味関心の高まりが出てきました。そこで、環境保全の一歩としてビオトープの整備プロジェクトを開始しました。

前橋工場のビオトープは、以前より社内外の方に親しまれているエリアです。そして、豊かな自然と共生する前橋工場の象徴でもあります。今回はこのビオトープ整備を推進することで、更に多様な環境をつくる狙いがあります。
敷地内の湿地にあるビオトープは植生遷移が進行し、全体的にヨシで覆われ陸地化しつつある状況でした。陸地化が進んでいるヨシ原の一部分を水辺に戻すことを目標に草刈り等を行い、水が染み出すまで掘り起こし、浅い水辺を創出しました。なお、ヨシ原はヨシ原で利用する生き物がいるため、ゾーニングを行って管理を進めていきたいと考えています。
総勢8名で作業を行い、2時間程度かけて整備を行いました。ビオトープは表面からは見えない草の根が深く張っており、想像以上の重労働となりました。

草を掘り起こしたタイミングで、「アオサギ」や「ノスリ」という鳥が寄ってきました。普段間近で目にすることのない、大型の猛禽類などがすぐによってきたことからも、前橋工場内に豊かな自然が息づいていたことを感じさせます。
特に、自然界の頂点とも言える猛禽類の「ノスリ」が自生していることは、この地に豊かな自然環境が存在している指標の一つとなります。

その後、湿地を掘りすすめると、水が出てきました。これで、湿地のビオトープを再生させるための骨格作りが完了となります。今回は初回であったため、小規模に実施しましたが、新たにできた水辺環境でどんな変化が生じるのかを確認しながら、この環境の環境整備を続けていきます。
ビオトープ整備を通じて実現したいこと
今回は、前橋工場の調査からビオトープの整備までをご紹介しました。
ビオトープ整備を皮切りに、今後は前橋工場内の生態系がどのように変化していくかを観測していく予定です。また、侵略性の高い外来種の駆除なども課題となってきます。
ビオトープ整備を通じて、前橋工場の豊かな自然や魅力をより多くの方に知っていただきたいと考えております。社内だけの取り組みだけにとどまらず、地域や社会を巻き込んだ環境教育活動にもつなげていきたいと考えています。
プラスはこれからも、前橋工場を中心とした自然環境保全の取り組みを通じ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをおこなって参ります。
