狭いオフィスの基準と指標
一人当たりの面積が狭い
一般的には、一人当たりのオフィス面積は約8.55㎡とされています。この基準を下回る場合、オフィスを狭いと感じる人が多くなります。
ひと昔前の基準では、一人当たり約10㎡が基準でした。しかし建築技術の発達によりオフィス内の柱の数が減少しスペースを効率的に使えるようになったため、一人当たりのオフィス面積は縮小傾向にあります。
通路幅が狭い
道幅が基準より狭い場合もオフィスを手狭に感じます。
メイン通路は1600mm、デスクとデスクの間は900mm、座席と壁の間は900mm(座席後ろがメイン動線の場合は1600mm)が現代の基準です。
この基準より狭いと移動にストレスを感じ、作業の効率を低下させる要因となります。
また予期せぬ災害が起こった時に避難が遅れることにもつながるため、従業員の安全のためにも十分に道幅を確保しなければなりません。
オフィスが狭いことによる従業員への影響
生産性が落ちる
狭いオフィスでは作業スペースが限られるため、デスク周りが散らかって見えるようになります。集中するのが難しい環境となってしまうため、生産性が低下することがあります。
ストレスが増える
狭い空間で日常的に作業することで、働く人々は心理的な圧迫感を感じやすくなります。
パーソナルスペースや作業場所の確保が難しくなると、ちょっとしたことでストレスを受けてしまいます。
健康への影響
座席周りが狭いと、長時間の同じ姿勢での作業が続くことになります。
長時間のデスクワークは健康に悪影響を与えるとされており、代謝の低下や腰痛などの原因となります。
コミュニケーションが損なわれる
コミュニケーションスペースが不足することで、チーム間の連携が取りにくくなることがあります。
またパーソナルスペースが確保されないことで、落ち着かない環境での交流が強いられます。
狭いオフィスのレイアウトを改善するメリット
業務効率アップ
オフィス環境が改善されることで、従業員は集中して作業に取り組めるようになります。
またゆとりある作業スペースや、対向者とすれ違うのに十分な動線があることで、ロスが少なくなり効率的なオフィスワークが可能となります。
快適に仕事ができることで、企業全体の業績向上にも良い影響を与えます。
福利厚生の一環に
快適で働きやすいオフィス環境は、従業員の精神的なストレスを和らげます。
パーソナルスペースが十分に確保された圧迫感や雑音の少ない環境は、リラックスした状態で仕事に取り組むことを可能にします。
また座席の可動域が保たれることで、作業の合間に姿勢を変えやすくなり、簡単なストレッチもできます。
十分なスペースを確保することは、肉体的にも精神的にも社員の働く環境を守ることにつながるため、福利厚生の一環にもなります。
コミュニケーションが生まれる
オフィス内のスペースが改善されることで、従業員同士のコミュニケーションが活発になります。
広い通路や共用スペースは日常的な交流を促し、部署の垣根を超えた情報共有やアイデア交換がスムーズに行えるようになるでしょう。
組織全体のチームワークが向上することには、イノベーションが生まれやすくなる、結束力の強化による働くモチベーションのアップ、離職率の低下といったさまざまなメリットがあります。
引越しや移転よりもローコスト
今入居しているオフィスのレイアウト変更や改善は、新しいオフィスへの引越しや移転と比べてコストが抑えられます。
オフィスの移転には、さまざまなコストがかかります。退去費用、新しいオフィスの家賃や設計費用、引っ越し費用などを考慮すると、現状のオフィスを改善する方が経済的です。
狭い事務所であっても、レイアウト変更やオフィス家具の見直しで快適な環境を実現できるため、予算の有効活用が可能です。
オフィスのレイアウト変更の流れ
予算の算出
狭い事務所のレイアウトを変更する際に、まず予算の算出を行います。
改装に必要な主な費用は以下の3点です。
・新しい家具の購入費用:新しい家具や設備を導入する際の費用
・不要なものの廃棄費用:不要な家具や機器の廃棄にかかる費用
・パーテーション工事費用:仕切りや壁の設置・移動にかかる費用
これらの費用をあらかじめ概算し、全体でどのくらいの予算が必要になるか把握しておきます。
他の業務と同様、予算を決めないと優先度やデザインに一貫性がなくなってしまい、作業が滞る可能性もあります。
また改装計画中に予想しなかった費用がかかることもあるため、ある程度予算に余裕を持たせておくようにします。
現実的な予算を設定し、改装を進めていきましょう。
レイアウトを計画する
予算が決まったら、オフィスレイアウトの改善イメージを具体的に描きましょう。
なかなか思い浮かばないという時には、インターネットでさまざまなオフィス事例を調べ、自社に適したデザインやイメージと近いものを参考にするのも良いでしょう。
また単におしゃれさや印象だけでなく、効率性や利便性が実際に向上するかどうかも念頭におきましょう
従業員の動線の確保や、コミュニケーションスペースの設置など必要な機能をリストアップし、予算に応じて実現可能かどうか優先順位をつけながら改善イメージを具体的にしていきます。
会社の生産性や、従業員の満足度向上を目指したレイアウトを目指しましょう。
業者への見積もり依頼
改善案が具体化されたら、次に業者に見積もりを依頼します。
専門業者から見積もりを取ることで、予算の範囲内でどのような改善が可能か、計画したレイアウトが実現できるかを明確にします。
予期せぬ追加費用の発生を防ぐためにも、事前にある程度のレイアウトを計画しておくことが大切なのです。
業者に連絡を取る際には、自社で計画したレイアウトと必要な改善点を元に、なるべく詳しく希望を伝えましょう。
また複数の業者に見積もりを取り、比較検討することも大切です。
この際には金額だけでなく、質問に答えてくれるか、提案があるか、やりとりはスムーズかなども確認しておきましょう。
安心できる業者を選ぶことにもつながりますし、プロの意見を取り入れることでより良いオフィスに改装できます。
改装の開始
業者の選定が終わり正式に契約を結んだ後は、実際の改装作業に着手します。
業者に依頼する場合でも、ある程度の準備を自社で行う必要もあります。
改装中の仮オフィスの用意、備品の管理場所、物や人の移動などの計画を立てます。
場合によっては休業しなければならないため、取引先への告知も必要です。
施工業者とは、家具や複合機などの搬入スケジュールや経路を打ち合わせておき、計画の通りに作業を行います。
万が一、改装中に何かが破損してしまった際には、写真と時間を控えておき改装後に対応します。
作業の進行中に業務に支障が出ないよう、事前にスケジュールをしっかりと組み立て、従業員にも協力を仰ぎましょう。
狭いオフィスのレイアウト改善方法
フリーアドレス化
フリーアドレスとは、固定席をなくし、その日の気分や業務に合わせて自由に座席を選べるオフィスレイアウトです。
フリーアドレスは、オフィスの圧縮のためにも利用されています。
固定席を設けないことで、オフィスにいないことも多い営業部員やテレワーカーの席を有効活用できるようになります。
オフィスのスペース効率が向上するため、無駄な家具や備品を置かなくても済むようになり、ゆとりあるパーソナルスペースや動線の確保が可能です。
また、フリーアドレスではフレキシブルに移動できるキャスター付きの家具を導入することも多く、柔軟なレイアウト変更にも対応できます。
オフィス運用の見直し
物理的な変更だけではなく、オフィスの運用方法を見直すことでも圧迫感を解消できます。
オフィスを狭く感じさせる要因の一つに、不要な書類や荷物が放置されていることがあります。
これを解消するためには、書類や荷物の管理ルールを策定しましょう。
例えば、1年間見返さない書類は廃棄するかデジタル化する、荷物は所有者や保管期限を明確にする、指定された収納スペースに必ずしまうなどの仕組みを作ります。
また利用頻度の低いアイテムは、外部倉庫で保管することも検討しましょう。
ただし、領収書や契約書などの重要な書類は紙媒体で保管しなければいけません。
一方で、動線に荷物や書類を置くことは、消防法に違反することも考えられます。各種法律についても確認し、要不要なものを分けて管理しましょう。
運用ルールを設定することで、オフィス内のスペースを効率的に活用できます。
家具の配置変更
デスクや収納家具の配置を見直すことで、大規模な工事をしなくてもオフィススペースを最適化できます。
通常では窓際に背の高い収納家具を置くと、せっかくの外の景色が見えにくくなってしまい、オフィスに圧迫感が生まれます。しかしデスクを置くことで、自然光や外の景色を取り入れられ、狭い空間であっても開放感を得られます。
省スペース化になるだけではなく、適度に自然光を浴びることでリフレッシュ作用も期待でき業務の効率化にもつながります。
またカウンターテーブルを採用することで、動線もすっきり見せられます。
ただし窓の方角やデスクの向きによっては、日光によって業務が妨げられたり、日焼けしたりするため注意して配置しましょう。
多目的スペースの設置
オフィス内に多目的スペースを設置し、用途によって使用方法を変えることでスペースの効率化を図ります。
一つのフロアを会議室や応接室としても使用したり、昼食スペースをミーティングスペースとして活用したりするなど、時間帯や用途に応じてフレキシブルに使い分けます。
用途に応じて複数のスペースを設けなくて良いため、大幅な省スペース化が実現できます。
多目的スペースには、キャスター付きデスクやチェアを採用し、シーンに応じて気軽にレイアウトを変更できるようにしましょう。
一つのスペースに複数の機能を持たせることで、限られたオフィス空間を最大限に活用できます。
家具の高さに注意
オフィス家具の背の高さを工夫することで、空間の圧迫感を軽減できます。
背の高いシェルフやパーテーションは視界を遮り、オフィスを狭く感じさせます。
一方で、背の低い家具を選ぶことで視界が広がり、狭い事務所であっても空間に余裕が生まれます。
なるべく低い家具を中心にレイアウトし、見渡せるオフィスを構築することで開放感を演出できます。
特に、オフィスの中央には低い家具を配置することで、広々とした印象を与えることができます。
また収納家具をパーテーション代わりに使用することで、収納力をカバーしながらオープンな空間を実現します。
色彩効果を利用する
色彩効果によって、開放感を演出できます。
壁紙や家具を暗い色でまとめるよりも、明るい色を取り入れることで空間を広く見せることが可能です。
白やベージュ、淡いブルーなどの明るい色は、視覚的に空間を広げる効果があります。
特に狭いオフィスでは、無地の壁紙を使用することで奥行き感を与えられます。
また天井の低さが気になるなら、縦のラインを強調した壁紙を選ぶことで、天井が高く見える効果も期待できるでしょう。
色や柄の選び方一つで、オフィス全体の雰囲気を大きく変えることができます。
什器のサイズ変更
現在使用しているオフィス家具や什器のサイズを見直すことで、事務所のスペースを最大限に活用できます。
特に長年オフィスを利用しているなら、現在の基準と比べて大きな家具が設置されていることもあります。
デスクやオフィスチェアをコンパクトなものに変えることで、作業スペースを広げることが可能です。
ただし、職種によってはデスクサイズを小さくすることで作業効率が低下する恐れがあるため、デスクワークの多い技術職などでは十分な広さを確保しましょう。
職種や業務内容に応じた適切なサイズを選ぶことで、多くの人にとって快適で効率的な作業環境を提供できます。
コンパクトな防災用品を選ぶ
企業での防災用品の設置は、自治体によっては「努力義務」とされており、必ずしも設置が義務付けられているわけではありません。
しかし企業は社員の安全を守る義務があり、昨今の大規模な災害の頻発を背景として、設置への意識が高まっています。
ただしスペースを取るアイテムは余計な場所をとってしまうため、できるだけコンパクトに収納できるものを選び、オフィススペースを圧迫しないようにしましょう。
火災や地震など直ちに必要なものはオフィス内のすぐ手の届く場所で保管し、避難後に使用するものは倉庫に保管するなど、状況に応じて保管場所を決めましょう。
普段使用しない防災用品と直ちに必要なものを分けて保管することで、オフィススペースを確保できます。
オフィスレイアウトの際のポイント
優先順位をつける
限られたオフィススペースを有効に使うには、優先順位をつけて各エリアや家具を設置することが大切です。
各エリアや備品、家具の使用頻度が高いものから優先的に設置します。
来客が多いなら応接室の設置が必要ですし、外での仕事が多いなら固定席は最低限でいいでしょう。
何が必要で何が不要かを取捨選択することで、洗練された空間を構築できます。
圧迫感を軽減する工夫
狭いオフィスでは、圧迫感を避けるために背の高い家具やパーテーションを避けるようにします。
背の低い収納家具を選び、目線を遮らない高さのパーテーションを使用することで、空間に広がりを感じさせられます。
特に窓際には家具を置かず、外光を取り入れることで開放感を演出します。
またワンフロアにさまざまな機能を持たせた多目的スペースを設けることで、仕切りの数を減らせます。さらに、外の景色を取り入れるのもおすすめです。
明るい色を採用する
狭いオフィスでは、床や壁紙・家具に明るい色を取り入れることで空間を広く見せられます。
白やベージュ、淡いブルーなどは「膨張色」と呼ばれ空間を大きく見せる効果があります。
ただし明るい色であっても、赤色やオレンジ・黄色は「進出色」と呼ばれ、前に出てくるように見えるカラーです。圧迫感を与えることがあるため、広い場所には使用しないようにします。
膨張色を基調として2~3色でまとめると、シンプルで洗練された印象を与えます。
整理整頓を心がける
オフィス内の整理整頓は、常に心がけるべきポイントです。
デスクやテーブルの上に書類が散らかっていると、オフィス全体が雑然とした印象になります。
同じく、床に物を無造作に置くことも避けましょう。
物の定位置を決めることで、オフィス内をスッキリと保つことができます。
また業態によりますが、可能なら書類のデジタル化を進めることで、場所をとる紙を減らし、物を少なくする工夫を行いましょう。
日常的に整理整頓することで、作業効率も向上します。
狭いオフィスのレイアウトの際の注意点
将来的な増員に備える
狭いオフィスを改装する際には、従業員数の増減に対応できる柔軟なレイアウトにしましょう。
フリーアドレスを導入すれば固定席を設けなくても良いため、人員の変動があっても対応できます。
また手軽に移動できるモジュール式の家具を導入することで、セミナーや外部の人たちを招いての会議も行えます。
インフラを考慮する
電源や電話回線、インターネット接続など、インフラに配慮したレイアウトを考えましょう。
どのデスクでも必要な機能が過不足なく使えることで、多くの人にとって作業効率を高められるオフィスになります。
また休憩スペースやキッチンエリアなど共用スペースは、どの部署からもアクセスしやすいポイントに設置することで公平性を保てます。
災害時の安全性を確保する
狭いオフィスでは、災害時に家具が倒れることで被害が大きくなる可能性があります。
なるべく背の低い家具を選定し、背の高いものは転倒防止策を講じて安全性を高める必要があります。
避難経路もしっかり確保できるよう、動線を整理して十分な広さを保つようにしましょう。
狭いオフィスのレイアウト事例
20坪のレイアウト
20坪ほどあれば、狭い事務所でもゆとりある作業スペースを確保できます。
また音漏れに配慮した会議室や役員室、集中ブースなど個別のスペースを複数設置できるため、さまざまなニーズに対応できます。
しかし背の高い家具や仕切りが増えすぎると狭い印象になるため、ワンフロアに複数の機能を持たせ、オープンで明るい雰囲気を意識してレイアウトしましょう。効率的でミニマルなオフィス環境を目指します。
10坪のレイアウト
2〜5名程度の利用が想定されるオフィス事例です。
スペースをうまく活用することで、2つのスペースを設置可能です。
例えば執務室と接客スペースを分けて配置することで、見せたくない部分はしっかり隠せます。
ちょっとしたスペースにオフィスグリーンなどを設置して、リフレッシュできる工夫も取り入れましょう。
天井から吊るセルハンギングプランツを活用すれば、床のスペースを広く保てます。
10坪未満のレイアウト
10坪未満であっても工夫次第で広々と利用できます。
優先度の高いスペースに限定し、ワンフロアに多様な機能を持たせます。
また膨張色を利用して、開放的な雰囲気を演出しましょう。
デスクの向きを窓に向けることで、視界が開け開放感も得られます。メインの動線を一つに絞り、スムーズに移動できるようにしましょう。
オフィスづくりなら「プラス」へ
狭い事務所をレイアウトする際には、パーソナルスペースと動線の確保を優先しましょう。
他者と接触が多い環境だと、業務に集中できずストレスが溜まったり安全性が損なわれたりします。
取捨選択をして、優先度の低いものは基本的に置かないようにしましょう。圧迫感を感じないように、背の低い家具を選択することもポイントです。
また膨張色や外の景色を取り入れることで、開放感を演出できます。
「限られたスペースを有効に活用したい」「オフィスを移転したい」とお考えであれば「プラス」にご相談ください。
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