政府が推しすすめる働き方改革。その柱のひとつに長時間労働是正がありますが、これを妨げる要因のひとつとして無駄の多い会議が挙げられます。参加者の目的意識の低い会議や目的がずれて脱線してしまう会議に時間を割かれていては、労働時間が長くなることは明白でしょう。そこで、そのような会議の無駄をなくすための手段として、スタンドアップミーティングがおすすめです。スタンドアップミーティングを行ううえで必要なことや、注意点について考察します。
業務を妨げる長時間会議がなくならない理由
2017年7月、アイティメディアは「会議の削減/短縮に関する読者調査」の結果を発表しました。調査結果によると、自社の会議に関して課題を感じる部分をたずねる設問で、「会議が長い(無駄な時間が多い)」「会議が多い(定例化する必要性の低い会議や無駄な会議が多い)」「会議の参加者のスケジュール調整が難しい」「会議前に資料共有ができていない」「会議をファシリテートする人間がいない」といった回答が上位を占めました。
また、パーソル総合研究所と立教大学・中原淳教授が行なった「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」(2018年12月発表)によると、「ムダだと思われている年間の会議時間」は91,900時間(企業規模:1,500人)、669,100時間(企業規模:10,000人)。「ムダ会議に費やしている年間総人件費」は約2億円(企業規模:1,500人)、約15億円(企業規模:10,000人)と推計されています。会議の無駄が増える原因としては、「会議が終わっても何も決まっていない」「終了時間が延びる」「些細な議題で会議を開く」などが上位を占めました。
これらの調査結果を見ると、長時間会議がなくならない理由として、「議題が決まっていないことや調整役がいないことで議論がまとまらない」、「議題が決まっていても、事前に共有されていないことで準備不足で会議に臨むことになり、散漫な議論になり長引いてしまう」といったことが考えられます。
会議の無駄をなくすスタンドアップミーティングとは?
長時間労働が常態化する要因のひとつにもなっている会議。今、会議の長時間化を防ぎ業務効率を上げる試みとして、スタンドアップミーティングを導入する企業が増えています。スタンドアップミーティングとは文字どおり、立ったままで行う会議です。着席して行う会議に比べ、だらだらと続かず短時間で集中して進行できることが最大のメリットです。ほかにも、通常の会議とは次のような点が異なります。
スタンドアップミーティングを行う目的
通常の会議はディスカッションを行い、解決法を探ることが目的です。一方、スタンドアップミーティングの目的は、各自の進捗報告と現在抱えている課題の特定です。そのため話がそれたり、ディスカッションに発展したりするといったことはありません。
スケジュール調整
通常の会議は、日程と時間を決め、参加者に出欠の確認を行います。そのため部署やその日の業務内容によっては、全員参加が難しくなる場合があります。しかしスタンドアップミーティングは、毎日決まった時間に行うことが1日のスケジュールにあらかじめ組み込まれているため、その都度、スケジュール調整を行う必要がありません。
参加者
通常の会議、特に定例会議では、議題に直接関係のない社員であっても参加しなくてはならない場合があります。しかしスタンドアップミーティングでは、参加するのは当事者のみであり、基本的に何も発言しないまま時間だけが過ぎていくことはありません。
スタンドアップミーティングを円滑に進める方法
一般的な会議の無駄を省けるとはいえ、スタンドアップミーティングもやりかたを間違えてしまえば、結果として非効率なものになります。スタンドアップミーティングを円滑に進め、無駄をつくらないために決めておくべきことがあります。
流れを把握する
スタンドアップミーティングで行うことは、「各自の進捗状況の共有」「今日やるべきこと」「課題の特定」の3つだけです。これ以外のことは一切、行いません。課題解決は会議のなかではなく、当事者だけが別の場で行います。スタンドアップミーティングは当事者のみが参加し、必ず全員が発言することが基本ですが、その際、短くまとめられるよう、事前に発言内容を準備しておきます。
開始時間・終了時間を決める
基本的に毎日、同じ時間帯で行うようにします。あらかじめ1日のスケジュールに組み込んでおくことで、スケジュール調整を行う手間を省きます。また開始時間の厳守を前提に、最大でも15分以内に終了させることも重要です。
形だけのスタンドアップミーティングでは大きな効果は見込めない
一般的な会議とスタンドアップミーティングの最大の違いは、スタンドアップミーティングがディスカッションの場ではないということです。この点を理解せずにスタンドアップミーティングを行うと、結局は一般的な会議と同様に無駄な時間を費やすだけとなるリスクが高まります。
事前準備をしない、無駄なディスカッションをする、終了時間を守らないといった、長時間会議の要因を排除し、業務効率化に大きな効果が期待できるスタンドアップミーティング。その効果を最大限に発揮するには参加者全員がルールを理解し、短時間で集中して行うよう意識することが重要なポイントといえるでしょう。