海外メーカーの日本進出や製造拠点の海外移転など、大きな転換期を迎えている製造業。生産性向上はものづくりを行う企業にとって、喫緊の課題といえるのではないでしょうか。この記事では製造業における生産性向上の実現方法と、その指標についてご紹介します。
製造業の生産性が向上するとはどういうことか
ひと口に生産性向上といってもその指標にはさまざまなものがあり、何をもって生産性が向上したとするかは業種や業務内容によっても大きく異なります。ただ。製造業に限っていえば、生産量がひとつの目安となるでしょう。
一般的に、生産性は以下のような式で表されます。
生産性=生産出来高/生産資源
このなかで、「生産出来高」とは従業員の労働により得られた成果を指します。製造業の場合であれば、どれだけ製品を生産できたかを示す数字と考えると分かりやすいでしょう。
「生産資源」は、成果を生むためにどれだけの資源を投入したかを指します。これには製品を生産するための原料といったものも考えられますが、労働生産性の話をする場合は「製造に関わった従業員数」や「かかった時間」など人的リソースと考えるといいでしょう。
この生産性を考えるうえで大切なのは、ただ製品の生産量が多ければいいわけではないということです。例えば、1000個の製品を製造できるラインと800個の製品を製造できるラインでは、前者の方が生産性が高いと考えられがちですが、その分多くの従業員が必要であったり、時間がかかってしまったりするようでは意味がありません。また、生産量が増えても製造の難易度が上がる場合は上級の作業員が必要となるため、これも生産性が高いとはいえません。
製造業における生産性向上とは、ただたくさんの製品を生産するのではなく、労働時間や労力などの人的リソースを増やすことなく、また製造難易度も上げることなく高い成果を挙げることが重要なのです。
製造業の生産性を上げるポイントとは?
それでは、製造業における生産性向上を実現するためにはどのような取り組みが重要なのでしょうか。3つのポイントから考えてみましょう。
業務プロセスの「見える化」
生産性を向上させるためにはさまざまなアプローチが考えられますが、まず押さえておきたいのが無駄を省き作業効率をアップさせることです。製造現場においては作業ミスによるやり直しや、作業手順が突き詰められていないことが原因の無駄が必ず潜んでいるもの。まずは現在どのようなプロセスで業務が行われているのかを「見える化」し、無駄をつぶしていくことが生産性向上につながります。
「見える化」を実現するためには、どのように作業を行っているかをヒアリングしたり、作業者の様子を目視で確認したりすることはもちろんですが、作業工程を細分化してそれぞれにかかる時間を計測したり、生産出来高を数値化したりするなどのデータを集めることが重要です。製造現場にカメラを配置して、普段の作業の様子をモニタリングし、無駄を探していくのも有効な手段となるでしょう。
具体的な目標数値を設定する
現状の業務プロセスを「見える化」し、どうやって無駄をつぶしていくかの方針が固まったら、次はそれをもとに具体的な目標数値を設定しましょう。このとき重要なのは、あくまで無駄の削減により実現可能な数値を設定すること。「このくらい生産したい」といった希望観測的な数値では、ただ人的リソースを酷使するだけの結果になり、生産性向上は望めません。
また、実際に作業する作業員にその数値を設定した根拠を説明し、理解を求めることも重要なポイントのひとつ。目標数値を告げるだけでは、単に労働負荷を増やそうとしているととらえられ、モチベーションの低下にもつながりかねません。
少ないリソースで最大の成果を
労働生産性向上は「働き方改革」の重要テーマでもあるため、すでにさまざまな企業で取り組みが進められていますが、製造業においては生産量を左右するだけに、その重要度はとりわけ高いといえるでしょう。今回ご紹介したポイントをもとに、少ないリソースで最大の成果をもたらすようなプロセスを構築していくことが重要です。
生産性向上について詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。
効率はどうして良くならない?生産性向上のためにできることを考える