職場環境についての考え方は時代とともに変化してきました。職場では安全に働けることが大前提です。しかし、労働安全衛生法の改正以来、安全であることだけでなく職場環境の快適性も重要視されてきました。作業環境や社員の健康管理にも配慮が求められています。さらに、近年では働き方改革の推進により、ワークライフバランスも重要視されるようになってきました。業務効率化や多様な働き方に対応できる職場環境の整備が重要視されています。今回は、今求められている職場環境について解説します。
時代とともに変わる「職場環境」の考え方
職場環境には、オフィスの照明や空調、騒音などのハード面のほか、職場の人間関係や働きやすさなどのソフト面も含まれると考えられています。1990年代までは主にハード面が職場環境の基準を示すものでした。しかし、近年では、「コミュニケーションがとりやすいか」、「リラックスできる場所があるか」など、ソフト面が重視される傾向があります。
このような時代の変化に合わせて、法律面の対応も進められてきました。2014年には職場環境についての基準を示す労働安全衛生法が改正され、より働きやすい職場環境の整備が求められるようになっています。法律の改正により、ストレスチェックの義務化や受動喫煙防止措置の努力義務などの施策が盛り込まれました。
さらに、政府が主導する働き方改革の推進により、業務の効率化や多様な働き方への対応、社内コミュニケーションの活性化なども進められています。社員の働き方に合わせたオフィスづくりやハイブリッドワークの導入などを行う企業も多くなってきました。従来は固定化された自席で業務を進めるのが基本でしたが、フリーアドレスを導入すれば業務内容によって働く場所を選ぶことが可能です。また、ハイブリッドワークの導入により、プライベートな事情に合わせて働く場所を選ぶこともできるようになります。
職場環境の改善は社員だけでなく、企業にとってもメリットがあります。業務が効率的に進むようになれば、生産性が向上し売上アップにつながる可能性もあるでしょう。これまでプライベートとの両立が難しく、離職せざるを得なかった人も継続的に働けるようになります。さらに、企業イメージが高まれば、新たな人材の獲得につながることも少なくありません。そのため、企業はなるべく早期に職場環境の改善に取り組む必要があります。
社員が働きやすい環境については『社員が働きやすい環境を整えるために!企業が取り組むべきことは?』もご覧ください。
職場の「働きやすさ」が社員のモチベーションを左右する
職場の働きやすさは社員のモチベーションにも影響します。ここでは、職場の働きやすさと社員のモチベーションの関係について解説します。
職場環境に求められること
時代の流れとともに、よい「職場環境」の定義も変わってきており、明るさや温度・音などのハード面が快適なだけでなく、人間関係や健康などのソフト面へも良い影響がある「職場環境」が求められています。
実際、過去に厚生労働省が中小企業の従業員を対象にとったアンケートでは、作業環境の改善がなされている職場のほうが、それが実施されていない場合と比べ「働きがいがある」または「どちらかと言えば働きがいがある」と回答した人は、20%ポイント以上高いという結果が出ていました。また、メンタルヘルス相談などの心の健康に関する支援がなされている職場のほうが、それらが実施されていない場合と比べ「働きがいがある」または「どちらかと言えば働きがいがある」と回答した人は約15%ポイント高い結果となっていました。
また、同調査で同僚の離職理由として1位に挙げられていたのは「賃金が不満」でしたが、その他の理由を見ると、「仕事上のストレスが大きい」が2位に、「職場での人間関係がつらい」4位に挙げられており、心にとっていい「職場環境」が求められていることがわかります。
職場の「働きやすさ」とは
働きやすい職場の条件として、主に以下のことが挙げられます。
- オフィス環境が整っていること
- 職場の人間関係が良好であること
- 個人の事情に応じて働き方が選べること
- 福利厚生制度が充実していること
これらの条件が整っていることで、社員は心身ともに健康な状態で働くことができるでしょう。また、業務においても最大限のパフォーマンスを発揮することが期待できます。人間関係が良好であれば、社員のストレスもたまりにくく、離職率の低下にもつながります。さらに、個人の事情に応じた働き方が可能になれば、社員のワークライフバランスが充実し、継続して働けるようになるでしょう。
また、福利厚生制度の充実は、学生や転職希望者が会社を選ぶ際の判断材料にもなることから見逃せないポイントです。
「働きやすい」職場のつくり方
実際に、働きやすい職場を整えるには、どのようにすればよいのでしょうか。ここでは、働きやすい職場のつくり方を解説していきます。
風通しの良い職場づくり
先のアンケートによれば、ストレスや人間関係の問題が離職の理由となっています。これらを解決する一つの考え方として、「コミュニケーション」が活発で「風通しの良い」職場づくりが挙げられます。
WHO(世界保健機関)の「職場環境とストレス」によれば、「仕事のストレスは、仕事に関して周囲からの支援が多ければ多いほど、感じることが少なくなる」といいます。そのためには社員同士が「コミュニケーションしやすい場」をつくる、というのがひとつの手法でしょう。
オフィスの同じフロア内に、ちょっと雑談できるスペースがあるだけでも、新たな会話の機会をつくりやすくなります。もちろん、そのスペースを活用するには職場の意識改革も大切です。雑談の場を「サボり」と見るのか、新たな発想や人間関係づくりに役立つ場として重要と考えるのかの意識改革がポイントになってくるでしょう。
オフィス環境の整備
働きやすい職場づくりを進めるには、ハード面の整備も欠かせません。社内コミュニケーションの活性化や社員のストレス軽減のためには、フリーアドレスや集中スペース、ミーティングスペース、休憩スペースなどを設置するのがおすすめです。フリーアドレスを導入すれば、同じ部署の人だけでなく他部署の人ともコミュニケーションがとりやすくなります。また、集中スペースやミーティングスペースなど目的別に利用できるスペースがあると、業務が進めやすくなり効率化にもつながるでしょう。
さらに、休憩スペースの整備に力を入れる企業も少なくありません。社員がリフレッシュできるように、ドリンクやお菓子などを常備したり、ソファや仮眠スペースを用意したりするケースも見られます。執務室とは異なる雰囲気にすることでオンとオフの切り替えがしやすくなり、リフレッシュ効果も高まるでしょう。
快適なオフィスの実現については『快適なワークスペースを実現するには?目的別ワークスペースの事例も紹介』もご覧ください。
「働き方改革」のスタート地点として
このように「職場環境」を整えて、心身ともに働きやすい職場をつくることは、今後ますます重要になってくるでしょう。それに伴い、これまでは効率重視であまり重要視されていなかった、ゆとりある職場づくりが注目されています。 今の時代、職場で働く人たちが前向きで積極的に働けるために、ハード面・ソフト面ともにゆとりある職場が良い「職場環境」と言えるのではないでしょうか。「働き方改革」のスタート地点として、まずは職場の環境から見直すことをおすすめします。
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