鉄道会社や消防署のように24時間勤務が基本となる業種では、仮眠室が用意されているのが一般的です。一方、一部の一般企業においては、近年、シエスタ(昼寝)制度を設けて仮眠を取り入れるようにしています。生産性向上や社員のストレス緩和など仮眠の導入にはさまざまなメリットがあるといわれていますが、デメリットはないのでしょうか? 今回はオフィスに仮眠を導入するメリットとデメリットのほか、効果的な活用のポイントと注意点についてお伝えします。
仮眠室を設置するメリット・デメリット
シエスタ制度を導入するうえでオフィスに仮眠室を設置するメリットとデメリットについて解説します。
オフィスに仮眠室を設置するメリット
昼寝に集中できる
シエスタ制度があったとしても、周囲が仕事をしている執務スペースで寝るのは気が引けます。休憩室も企業によっては昼食を取る社員の出入りがあり、お互いに気を使ってしまうでしょう。そのため、シエスタ制度があっても誰もその制度を利用しなくなる可能性があります。仮眠室があれば、会社として制度の活用を促す意図が伝わるでしょう。
生産性が向上する
1995年、NASAが行った仮眠に関する実験では、26分間の昼寝により、作業効率が34%、注意力が54%向上したとされています。また、厚生労働省が2003年に発表した「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」では、午後3時前に20~30分の昼寝がリフレッシュになると推奨しています。これらのことから、昼寝が生産性向上につながる可能性が高いといえるでしょう。オフィスに仮眠室が設けられていれば、20~30分の昼寝をしっかりと取りやすくなるため、生産性向上がより期待できます。
社員のストレス緩和につながる
仮眠室であれば周囲を気にすることなくゆっくりと眠れるため、社員がストレスを感じずに昼寝ができるようになります。
オフィスに仮眠室を設置するデメリット
熟睡してしまうとすぐに仕事に戻れなくなるリスクがある
前出の厚生労働省の報告書には、「夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響」「長い昼寝はかえってぼんやりのもと」といった情報もあります。
適度な時間の昼寝を取ればリフレッシュできますが、眠りが深すぎると昼寝のメリットは得られません。脳が改めて稼働するのに時間がかかり、業務に戻ってもすぐに仕事に取りかかれなくなる可能性も高まるでしょう。
人によっては体調を崩す場合がある
昼寝の効果は人によって異なります。たとえば一般的に夜の睡眠時間は8時間がよいといわれていますが、これも人によっては寝すぎ、もしくは足りないといったケースも珍しくありません。そのため、昼寝も人によっては体内時計が乱れて気分が悪くなったり、頭痛を起こしてしまったりする場合もあります。
オフィスの仮眠室を効果的に活用するポイント
オフィスの仮眠室を効果的に活用する主なポイントは次の点です。
制度のルールを決める
ルールがないと、いつどのように仮眠室を使えばよいかがわからず、かえって使いにくくなってしまうケースも少なくありません。そこで「仮眠は30分以内」、「〇時から〇時まで利用できる」、「スケジュール管理ソフトを活用する」など、仮眠室を利用するルールを決め、周知を徹底しましょう。
気軽に使える雰囲気づくりを意識する
社員が利用できる制度とはいえ、導入後しばらくは勤務中に昼寝をすることに抵抗感を持つ社員がいる可能性があります。そこで上司が積極的に利用し、誰もが気軽に使える雰囲気をつくることも重要です。
オフィスの仮眠室設置にあたって注意すべき点
オフィスの仮眠室を設置する際には次の点に注意が必要です。
執務スペースとは離れた場所に設置する
仮眠室が執務スペースに近いと、利用するのに気を使ううえ、周囲の声が気になって眠れなくなる可能性もあります。そのため、仮眠室と執務スペースは離れた場所に設置するのがおすすめです。ただし、レイアウトの都合でそれが難しい場合は、「吸音パネル」や「遮音テープ」などを活用して、防音性を高めるようにしましょう。
【関連コラム】 防音対策について詳しくは、「オフィスに防音対策が重要な理由は?優先的に対策すべき部屋や方法、ポイントを解説」をご覧ください。
眠りにつきやすい内装や設備になるよう工夫する
仮眠室にベッドやフルフラットのソファーを設置すると、リラックス効果は高まりますが、熟睡してしまうリスクがあります。そのため、ゆったりと横たわれる程度のリクライニングソファーにするのがおすすめです。また、照明も明るさを細かく設定できるものにすれば、社員それぞれの好みに合わせられるようになります。
シエスタ制度の効果を高めるには仮眠室の設置とゾーニングが重要
生産性向上やストレスの緩和などのメリットを持つシエスタ制度ですが、適切に活用しないとかえって生産性が低下してしまうリスクがあります。ポイントは、仮眠室の設置とゾーニングです。
仮眠室の設置により快適に眠れる空間を提供すること、執務スペースとは離れた場所に設置し、集中して眠れるようにすることで制度の効果を高められます。
昼寝が多くのメリットを生むといった意識改革も重要ですが、本当にメリットを生むための環境づくりこそが、シエスタ制度の効果を高めるポイントといえるでしょう。