1990年代半ばから2000年代初めに生まれた世代の総称である、「Z世代」。2020年には労働人口全体の20%をこのZ世代が占めるといわれています。つまり、今後の採用活動においてZ世代を無視すれば、企業活動を継続することは困難であるということになるでしょう。そこで重要になるのは、Z世代がどういった世代であるのか、その考え方や価値観をしっかりと理解して準備することです。今回はZ世代を迎え入れる企業にとって、何が必要なのかについて考えていきます。
テクノロジー・ファーストの考え方を持つZ世代とは?
Z世代とは、アメリカのマーケターが提唱している消費者の世代区分のひとつで、「ジェネレーションZ」とも呼ばれます。区分については諸説あるようですが、だいたいは1960年から1970年代半ば生まれを「X世代」、1970年代半ばから1995年前後に生まれた世代が「Y世代」と名付けられ、その後に続いたのがZ世代です。Y世代とZ世代をまとめて「ミレニアル世代」と呼ぶこともありますが、ミレニアム世代のなかでも傾向があることがわかり、最近ではY世代とZ世代を分けて考えるようになっているようです。
2018年11月、パソコンメーカーのDellは、Z世代に関する意識調査を発表しました。この調査は世界各国の高校生・大学生12,000人を対象にテクノロジーや将来のキャリアについての意識を調査したものです。これによるとZ世代には主に次のような特徴がみられることがわかりました(()内は日本の学生の回答結果です)。
- 正規教育の一部としてテクノロジーを利用した経験を持っている(92%)
- 類似した条件の就職機会を選択する際に職場が提供するテクノロジーを重視(78%)
- 最先端テクノロジーを活用できる業務への就職を希望(60%)
そして全体の89%は、人間とマシンによるパートナーシップの時代を迎えていると答えています。さらにそのうち51%(日本33%)は、今後、人間とマシンがチームとして統合、連携することもあるとしています。
Z世代が仕事に対して持つ不安とは?
就職をする以前に、すでにある程度のテクノロジースキルを持っているZ世代ですが、それでも就職や仕事に対して不安がないわけではありません。それは、これまで受けてきた「教育を通じて就職の準備が良好、または極めて良好に整った」と回答した学生がわずか26%しかいないことからも明らかでしょう。
この設問に関しては、全体では57%が「良好に整っていた」と回答していて、26%という低い数値は日本だけの結果です。このことから、日本の学生は「これまでの教育が就職に直接役立たないのでは」という大きな不安を抱いていることがわかります。
なぜそうした不安を抱えているのか、その答えは1つではありません。ただし、今回の調査によると、全体の52%が「職場で求められるテクノロジースキルには自信を持っているが、それ以外のスキルについてはその限りではない」と回答しています。この回答からは、社会に出て働くということ自体に対する不安を持っていることがうかがえます。そしてこれに関しては、Z世代特有の不安ということではありません。どの世代であっても抱える共通の不安であり、そうした意味では受け入れる企業側でもZ世代だからといって構える必要はありません。
コミュニケーションを重視するZ世代
若い世代はSNSの普及もあり、他者との直接的なコミュニケーションを苦手としているといったイメージをお持ちかもしれません。実際、Z世代の前世代となるY世代は、個人主義で自我が強く、協調性はあまり高くないのが特徴とされています。
これに対し、Z世代は子どものころから当たり前のようにSNSを使っています。そのため逆に警戒心が強くなり、大勢との情報共有よりも、仲間内同士での直接的な情報共有を好むといった傾向が見られるようです。実際、同調査では同僚とのコミュニケーションの方法として望ましいのは、電話やメッセージアプリ、ショートメッセージよりも直接的な対話と回答しています。また、仕事を学ぶ際もオンラインよりも同僚から直接学べる環境が望ましいと考えているようです。
そのため、Z世代を世代の違いで理解できないと避けるのではなく、しっかりと向き合ってコミュニケーションを取ることが重要となるでしょう。具体的にはフリーアドレス制を取り入れる、マグネットスペース(マグネットゾーン)をつくるなど、気軽にコミュニケーションを取ることができるオフィス設計が求められます。
Z世代の仕事に対する不安を取り除く最大のポイントは対話
デジタルネイティブであるZ世代。それを迎え入れる側の企業は、「アナログなコミュニケーションは避けられてしまうのでは」と考えてしまいがちです。もちろん、Z世代は職場においてもテクノロジーを活用することに積極的であることは確かです。
しかし、今回ご紹介したようにZ世代は電話やメッセージアプリなどよりも、直接的な対話を重視しているようです。そして就職に対して不安があることに対しては、Z世代以前の学生となんら変わりはありません。重要なのは、デジタルネイティブとしてZ世代に学べることは学ぶ姿勢を持ちつつ、社会人として必要な研修やサポートはしっかりと対話をしながら行うことです。世代間のギャップを埋めることはできないと最初から諦めるのではなく、理解しようと向き合うことで、Z世代が活躍できる環境をつくり出していけるでしょう。