オフィスで社員が業務を遂行するために照明を工夫することは重要です。照明の色、明るさ、形状などの違いで集中力も大きく変わってきます。また、照明によって、リラックスできたりモチベーションがアップしたりなど、さまざまな心理的な効果を生み出すことも可能です。そこで今回はオフィスにとって照明が重要な理由、適切な照明選びのポイントをお伝えします。
オフィスの照明が重要と言われる理由
快適かつ集中力を持続できるオフィスを構築するポイントは、デザインやレイアウト、設備などさまざまですが、そのなかで照明が重要だと言われる理由は次のとおりです。
業務効率に影響する
業務中に照明が暗いと手元が見えにくくなり、業務スピードが落ちてしまう可能性があります。また、明るすぎると、目が疲れる、体内リズムが崩れるといったリスクを及ぼしかねません。
特に、最近はオンライン化が進み、長時間にわたりディスプレイを眺める業務が多くなりました。ただでさえ目に負担がかかるため、ちょっとした明暗の差だけでも業務効率に大きく影響します。
オフィス全体のイメージを左右する
来客が多いオフィスは特に照明が重要な意味を持ちます。訪問客にとって、薄暗いオフィスはそこで働く社員の覇気もないように感じられる可能性が大きいでしょう。
業務を行うのに適切な色味かつ明るさを保ったオフィスは、社外の人が見たときも、社員が快適に働いているイメージを持ってもらえるでしょう。
経費削減にもつながる
適切な照明を設置し、適切な明るさを保つことは光熱費の削減にもつながります。
経費削減を目的とするのであれば明るさを落とせばよいと思われるかもしれません。しかし、前述したように暗いオフィスでは視認性が落ちるため、業務効率が下がり経費は削減できても生産性が落ちてしまうリスクがあります。
それよりも省エネルギーを謳っている照明器具を設置し、適切な明るさを保ったほうが、長期的には経費削減につながるでしょう。
オフィスに適した照明の色合い、明るさとは
ひと口にオフィスといっても、執務スペース、休憩室、受付など場所により適切な色合いや明るさは異なります。ここではオフィスの主なスペース別に最適な照明の色合い、明るさ(照度)を解説します。
執務スペース
執務スペースの明るさ(机上面照度)は、一般的な書類作成の場合で750lx(ルクス)。細かい図形を見分けるような作業で1,500lxが必要とされています。
また、業務において机の書類や人の顔を見る場合(机上面の書類と顔を見比べる場合)、机上面照度が750ルクスであれば、顔を見る(表情を認識する)のに最適な照度は800~950lxとされています。そして一般的な執務スペースの照明の色合いとしては、蛍光灯もしくはLED電球の「昼白色」や「昼光色」などが適しているといわれています。
快適なオフィス環境については、『快適なワークスペースを実現するには?目的別ワークスペースの事例も紹介』をご覧ください。
休憩室
休憩室は、基本的に作業をする場所ではないため、執務スペースほどの明るさは必要ありません。一般的には150lx程度がよいでしょう。LED電球の電球色や白熱電球などを使って執務スペースよりも赤味の強い色合いにするとリラックス効果が期待できます。
休憩スペースについては、『オフィスにおける休憩スペースの役割・効果は?おすすめの設備も紹介』をご覧ください。
会議室
会議室の明るさは、基本的には500lx程度がおすすめです。執務スペースよりは若干、暗めのほうが集中力も高まります。
ただし、セミナーや勉強会にも会議室を利用する場合は、参加者の顔を見渡せたほうがよいため、会議室をそうした目的にも使用する可能性があるなら調光式の照明がよいでしょう。LED電球を使って、状況に応じて色合いを白色から電球色まで変化を付けられるタイプがおすすめです。
受付
受付の明るさは、企業のイメージやカラーによって異なります。明るいイメージの企業であれば執務室と同等の750lx程度がよいでしょう。ただし、受付にショールームを設置している、大きめのラウンジと併設するといった場合は、全体を少し落として500lx程度にします。そして、ショールーム部分や受付部分のみにスポットライトを当てて明るくするなど、メリハリを付けるのもおすすめです。
色合いはコーポレートカラーや業種により、少し落ち着いたものや、派手なものにしてもよいでしょう。
オフィスの照明を選ぶ際の注意点
オフィスの照明を選ぶ際には、主に次の点に注意が必要です。
社員の平均年齢を考慮する
社員の平均年齢が高めの場合には、照度を少し高めにしないと業務が難しくなる可能性もあります。そのため、状況に応じて調光・調色が可能な照明器具を選択することも視野に入れた検討が必要です。
オフィスレイアウトも考慮する
たとえば、日中は太陽光が入る場所であれば、それほど照度を高くする必要はありません。そのため、太陽光が入る場所を考慮したレイアウトにすれば、日中は無駄に照度を高くしなくても済み、省エネにもつながります。
業務内容によって照明の種類を変える
細かい作業をする場合、全体の照度を高めてしまうと、常に明るすぎる状態になってしまいますが、机上だけを照らす照明を使うことで全体の照度は抑えられます。業務内容により、臨機応変に照明の種類を選択するようにしましょう。
サーカディアン照明を取り入れる
サーカディアンリズム(約24時間周期の生体リズム)を整えるサーカディアン照明の導入もおすすめです。午前中から午後にかけては照明の色温度を高めに、午後から夕方にかけて少しずつ低色温度の光に変化させることでサーカディアンリズムに対応させた快適なオフィス環境がつくりだせるでしょう。
スマートオフィスについては、『スマートオフィスとは?メリット・デメリットと導入のポイントを解説』をご覧ください。
オフィス照明選択のポイントは社員の働きやすさを重視すること
オフィスの照明選択で最も重要なのは、社員が快適に働ける環境にできるかどうかです。来訪者に対するイメージアップや経費節減効果ばかりを重視すると、社員のモチベーションや作業効率を下げてしまうリスクが生じます。
また、照明を選択する際には、レイアウトを念頭に、それぞれのスペースに合わせて選択することをおすすめします。スペースと合わない照明にならないようにすることが大切です。