オフィス移転を検討するなら、事前にどのくらいの費用がかかるのかを確認することが大切です。想定以上に予算が必要になる場合もあるため、項目ごとに大まかな費用を把握しておきましょう。今回は、オフィス移転費用の内訳や項目別の相場、費用を抑える方法について解説します。ただし、オフィス移転にかかる費用は企業規模や工事内容などによって大きく変わってきます。ここでは、あくまでも目安となる相場を紹介するので、参考にしたうえで個別に見積もりを取ってみましょう。
オフィス移転費用の種類と費用概算表
オフィス移転には多くの費用がかかります。予算を決めるためにも、まずは具体的にどのような費用がかかるのかを確認しておくことが大切です。ここでは、オフィス移転費用の内訳を紹介します。
■新オフィスの契約にかかる費用
前家賃 通常、契約開始日から翌月分までの家賃を前払い 礼金 賃料の1〜3カ月分程度 仲介手数料 一般的には賃料の1カ月分 火災保険料 一般的には2年間で2〜3万円程度 保証会社費用 一般的には賃料の1カ月分程度
■新オフィスの設備にかかる費用
内装工事費 1坪あたり10~40万円 インフラ整備費 1坪あたり20~35万円 什器・備品費 1人あたり5~30万円程度
■新オフィスの移転にかかる費用
引っ越し費用 一般的に従業員1人あたり3万円程度 内装工事費 1坪あたり10~40万円程度 電話・ネットワーク工事費 社員1人あたり5~15万円程度
■旧オフィスの退去にかかる費用
原状回復工事費用 坪単価3〜5万円程度 不用品処分費用 2トン車で7~8万円、4トン車で12~15万円程度 家賃・水道光熱費 1カ月分の家賃や水道光熱費を残りの日数で割った金額
■そのほかの諸費用
税務署や法務局、社会保険事務所などでの手続きにかかる費用 専門家に依頼する場合、書類作成費用として数十万円程度 名刺やパンフレットなどの作り直しにかかる費用 1人あたり1〜2万円程度
オフィス移転の流れについて詳しく知りたい方は、『これで完璧!オフィス移転の流れとすべきこと【チェックリスト付き】』の記事もご覧ください。
新オフィスの契約にかかる費用と目安(概算)
新オフィスを契約する際には、前家賃、保証金(敷金)、礼金、仲介手数料など、さまざまな費用がかかります。新オフィスの契約にかかる費用の内訳は次のとおりです。
前家賃
新オフィスを契約する際、前家賃の支払いが必要です。前家賃とは、契約開始時に前もって支払う家賃のことです。通常、契約開始日から翌月分までの家賃を前払いします。例えば4月15日に契約開始の場合、4月15日から4月30日までの半月分と5月1日から5月31日までの1か月分の家賃を一括で支払います。入居月の家賃のほか、翌月分の賃料も支払うのが一般的です。
礼金
礼金はオフィスを契約する際にオーナーに支払う一時金で、保証金または敷金と異なり退去時に返金されることはありません。地域や物件の条件によって異なりますが、賃料の1〜3カ月分程度が相場です。
仲介手数料
仲介手数料は、物件を紹介してくれた不動産会社へ支払う報酬のことです。一般的には賃料の1カ月分が相場で、消費税が加算されます。ただし業者によっては半月分で済む場合や、キャンペーンなどで無料になることもあります。
火災保険料
火災保険料はオフィスの広さや人数・補償内容によって異なりますが、一般的な相場は2年間で2〜3万円程度です。火災保険は火災だけでなく水漏れや盗難などのリスクにも備えるためのもので、ほとんどの賃貸契約で加入が義務付けられています。
保証会社費用
保証会社費用は、賃貸契約をする際に保証会社の利用を求められる場合に発生する費用です。一般的には賃料の1カ月分程度が相場です。保証会社の利用は連帯保証人を立てられない場合に求められることがありますが、一部の賃貸管理会社では連帯保証人と保証会社の両方が必要なケースもあります。契約前にどのような保証が必要かを確認し、費用を見積もることが大切です。
新オフィスの設備にかかる費用と目安(概算)
新オフィスを設立する際には、内装工事やインフラ整備・什器や備品の購入など、さまざまな費用が発生します。これらの費用はオフィスの規模やデザイン・機能性に応じて大きく変動するため、事前にしっかりと計画を立てるようにしましょう。
内装工事費
内装工事費用は、一般的なオフィスで1坪あたり10~40万円が目安です。内訳には壁や床の仕上げ、照明、天井の設置などが含まれます。デザインや素材にこだわりたい場合や、特別なレイアウトを希望する場合には、追加費用が発生することもあります。またレイアウトやデザインのプランニング費用として、1坪あたり1〜3万円が別途発生することもあります。
インフラ整備費
電気、空調、防災設備などインフラ整備には、1坪あたり20~35万円が必要です。この費用にはハードウェアの設置費は含まれておらず、ネットワーク機器や電話機、複合機などの移設・設置する場合、追加で1坪あたり5~15万円程度がかかります。
什器・備品費
デスクや椅子、パーティション、収納ワゴン、応接セット、カウンターなど、備品の購入費や運送費もかかります。これらを新調する場合、1人あたり5~30万円程度が目安です。品質やデザイン・機能によって費用が変わるため、必要なものをリストアップし優先順位をつけて購入しましょう。
新オフィスへの移転にかかる費用と目安(概算)
新オフィスへ移転する際には、引っ越し費用、内装工事費用、什器・備品の購入費などがかかります。新オフィスへの移転にかかる費用は、会社の規模や作業条件によって大きく変わってきます。
引っ越し費用
引っ越し費用は、旧オフィスから新オフィスへ荷物を移動させる際にかかる費用です。距離や荷物の量、ビルの条件などによって変動するものの、一般的な相場として従業員1人あたり3万円程度が目安とされています。
内装工事費
内装工事費は、新オフィスのリフォームやパーテーションの設置、什器・備品の購入費用などが含まれます。内装工事費の相場は、1坪あたり10~40万円程度です。希望やデザインによってさらに大きく変動します。
電話・ネットワーク工事費
電話・ネットワーク工事費には、電話回線や光ケーブルの開設、ネットワーク機器の設置などが含まれています。専門業者に依頼する必要があり、費用の相場は社員1人あたり5~15万円程度です。
オフィス移転の際の家具購入、廃棄・リサイクルについて詳しく知りたい方は、『オフィス移転時に見直したいオフィス家具は? 廃棄・リサイクルの方法も紹介』の記事もご覧ください。
旧オフィスの退去にかかる費用と目安(概算)
旧オフィスを退去する際には、原状回復工事費用・不用品処分費用などがかかります。内訳は次のとおりです。
原状回復工事費用
原状回復工事費用は、オフィスを入居前の状態に戻すための工事にかかる費用のことです。ビルのオーナーや、管理会社から指定される業者によって実施されるケースもあります。回復箇所やビルのグレード・立地によって異なりますが、一般的な相場としては坪単価3〜5万円程度です。
不用品処分費用
不用品処分費用は、新オフィスで使用しない家具や備品などを処分するための費用です。一般的な相場としては、2トン車で7~8万円、4トン車で12~15万円程度です。リサイクル業者を利用することで、費用を安く抑えることも可能です。
家賃・水道光熱費
旧オフィスの契約解除までの間には、これまでと同様に家賃や水道光熱費が発生します。基本的には、1カ月分の家賃や水道光熱費を残りの日数で割った金額で計算されます。ただし、契約内容によっては日割り計算でないこともあるため注意しましょう。
そのほかの諸費用と目安(概算)
そのほかにも、税務署や法務局、社会保険事務所などでの手続きにかかる費用、名刺やパンフレットなどの作り直しにかかる費用なども発生します。手続きにかかる費用は、自社で手続きをすれば費用を抑えることが可能です。
税務署や法務局、社会保険事務所などでの手続きにかかる費用
オフィス移転に伴う手続きでは、税務署や法務局、社会保険事務所など官公庁への住所変更が必要です。これらの手続きを専門家に依頼する場合、書類作成費用として数十万円程度かかる場合があります。ただし自社で手続きが可能なら、手数料や印紙代などの費用以外はかかりません。
名刺やパンフレットなどの作り直しにかかる費用
オフィス移転により住所が変更になる場合、名刺やパンフレット、会社案内、封筒などの印刷物を作り直す必要があります。1人あたり1〜2万円程度が目安です。
オフィス移転の手続きについて詳しく知りたい方は、『オフィス移転に欠かせない手続き、その内容と手続きの方法をすべて解説』の記事もご覧ください。
オフィス移転にかかる費用を抑える方法
オフィス移転には多額の費用がかかるのが一般的です。しかし、工夫をすれば移転費用を抑えることもできます。ここでは、オフィス移転にかかる費用を抑える方法を紹介します。
複数の業者から見積もりを取る
工事や引っ越しの業者を決める際は、同じ条件でも業者によって費用が異なる場合があるため、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。原状回復工事はビルのオーナーから業者を指定されることがありますが、その場合でも相場から大きく離れていないかを、ほかの業者から見積もりを取って確認することが大切です。
引越しの見積もりについて詳しく知りたい方は、『オフィス移転で気を付けたいことは?引っ越し見積もりのチェックポイント』の記事もご覧ください。
ワンストップサービスを利用する
ワンストップサービスとは、オフィス移転にかかる作業を一括で請け負ってくれるサービスです。コストの無駄を抑えられるため、コストパフォーマンスのよいオフィス移転が実現できます。
フリーレントの交渉を行う
フリーレントとは、オフィスを契約する際に一定期間家賃の支払いが免除されることです。「駅から遠い」「築年数が古い」など、入居が決まりにくい物件は交渉次第で一定期間フリーレントにしてもらえる可能性があります。
ただし、フリーレントの期間中でも基本的に共益費や管理費、光熱費などの維持費は発生するため注意が必要です。また、特約により解約禁止期間が設定されている場合は、契約期間内に解約すると違約金が発生します。このような注意点を踏まえたうえで、フリーレントを利用するか判断しましょう。
什器や備品の購入費を抑える
什器や備品の買い替えは必須ではありません。現在使っているものを転用することもできます。新品を購入する場合でもグレードを下げることでコストを抑えることができるでしょう。さらに、不要になった備品や家具はリサイクルすれば処分費用がかかりません。
居抜きオフィスやセットアップオフィスを選ぶ
居抜きオフィスとは、内装やオフィス家具などがそのまま残された状態で貸し出されているオフィスのことです。居抜きオフィスを自社のオフィスとして活用できる場合は、内装工事やオフィス家具の購入にかかる費用を抑えられるメリットがあります。ただし、退去時には原則として原状回復義務を負う点に注意が必要です。
セットアップオフィスとは、内装やオフィス家具があらかじめ備えられた状態で貸し出されるオフィスです。居抜きオフィスと同様、内装工事やオフィス家具の購入が不要になるため費用を抑えられます。また、セットアップオフィスの場合は、退去時の原状回復工事も不要になるため、退去時の費用を抑えられる点がメリットです。ただし、通常の賃貸オフィスより賃料は高めに設定されています。
ハイブリッドワークによる縮小移転を行う
ハイブリッドワークを導入すれば出社率を抑えられるため、現在よりも小規模なオフィスで営業活動を継続できます。オフィスの規模が小さいほど初期費用や賃料を抑えられる可能性が高くなるため、オフィス移転にかかる費用を軽減できるでしょう。ハイブリッドワークを導入する際は、社内体制を整えておくことが重要です。
リノベーションを前提に賃料を抑える
築年数が古い物件を借りて賃料を抑え、リノベーションによりデザインや機能を向上させる方法もあります。築古の物件なら、駅チカやスペースの広いオフィスでも割安の賃料で借りられます。リノベーションを専門に行っている業者もあるため、事前に相談してみるとよいでしょう。
レンタルオフィス・シェアオフィス
レンタルオフィスや、シェアオフィスを利用する企業も増えてきました。工事や設備の設置費用が必要ないため、初期費用を大きく削減できます。ただし月額費用は賃貸よりも割高な傾向があるため、長期間入居する場合はランニングコストがかさみます。移転中に仮オフィスとして利用するか、短期間の入居がおすすめです。
オフィス移転に使える補助金を使って費用を抑えよう
ここまで紹介した通り、オフィスを移転する際には多くの費用がかかり、いろいろと工面を行っても負担が大きくなることもあります。
費用がネックとなり、移転計画を進められないようなら、オフィス移転に関わる補助金について確認してみましょう。
国や自治体が提供する補助金や助成金を利用することで、その負担を軽減できます。
ここでは、オフィス移転の際に活用できる補助金制度をいくつかご紹介します。
移転を検討中の企業はぜひ参考にして、費用を抑える方法を探ってみましょう。
※助成金の情報は2024年9月のものです。助成金の最新の情報については、各助成金の所轄にご確認ください。
テレワーク促進助成金
テレワーク促進助成金は、東京都がテレワークの導入を促進するために提供している制度です。
企業がテレワーク環境を整えるための、必要な機器の購入や設置に対して助成を受けることができます。
新オフィスでテレワークの拡充を考えている企業には、この助成金の活用が推奨されます。
助成金の上限は、従業員30名未満の企業には150万円、30名以上999名以下の企業には250万円が支給されます。令和6年4月の改正により、仮想オフィスやペーパーレスツールなどのクラウドサービス利用料が助成対象に加わり、機器導入助成の助成率も30%から50%に引き上げられました。
またPCやタブレットのリース料も令和5年から助成対象となり、最大77万円まで補助されます。
IT導入補助金
IT導入補助金は、企業がITツールを導入する際にその費用の一部を支援してくれる制度です。
オフィス移転にともなう新しいソフトウェアやITインフラ導入にかかる費用を、この補助金を利用することで大幅に削減できます。
2024年のIT導入補助金では「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引型)」「セキュリティ対策推進枠」の4つの枠が設けられています。
それぞれ要項が異なり、例えば通常枠では生産性向上を目的としたソフトウェアやクラウドサービスが対象で、補助率は1/2以内です。
補助額や補助率は枠によって異なり、最大450万円まで補助を受けられます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、全国の商工会議所が提供する補助金制度で、販路開拓や業務効率化を目的とする小規模事業者に対して支援を行っています。
機械設備の購入や店舗改装、広告費など幅広い用途に対応しており、オフィス移転の際にもその費用を補助対象に含めることができます。
通常枠の補助上限は50万円ですが、特定条件を満たす場合はさらに増額されることがあります。2024年は最大250万円が上限額となっています。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上を支援するために設けられた制度で、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
業種を問わず、生産性向上に寄与する設備投資やサービス開発が対象となり、移転にともなう設備導入に利用できることもあります。
補助上限額は一般型で1,000万円、グローバル展開型では3,000万円が設定されています。
補助率は原則1/2ですが、従業員5名以下の事業者や特定の計画を認定された事業者には補助率が2/3に引き上げられる場合があります。
「ものづくり」と聞くと生産系の業種を思い浮かべますが、サービス業や小売業など幅広い業種が対象です。
事業継承補助金
事業承継補助金は、M&Aや事業承継に伴う費用を支援する制度です。
事業承継をきっかけに設備投資や販路開拓に取り組む場合、補助金の対象となり、オフィス移転にかかる費用も含まれます。
対象経費には設備費や人件費・外注費などが含まれ、補助上限額は600万円で、賃上げを行った場合にはさらに800万円に増額されることもあります。
またM&Aの際にかかるデューデリジェンス費用や手数料も補助対象に含まれ、補助率は1/2から最大で2/3まで引き上げられることがあります。
中小企業や小規模事業者が対象で、後継者への引き継ぎやM&Aなどで移転を行う場合に利用を検討しましょう。
オフィス移転費用の見積もりはお早めに!
オフィス移転には、新オフィスの契約にかかる費用や引っ越し費用以外にもさまざまな費用がかかります。オフィスの規模が大きいほど費用も大きくなるため、早めに見積もりを取って予算を算出しておく必要があるでしょう。企業によってはオフィス移転のノウハウがないこともあるため、オフィス移転で悩みがある場合はプロに相談するのも一つの方法です。より具体的な費用が知りたい場合は、自社の条件に合わせて予算をシミュレーションしてみましょう。
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