ワークスタイルの変革が進み、労働者の働き方が大きく変わろうとしています。従来、労働者の多くは決められた場所・時間で働くことが一般的でした。しかし、近年、働き方改革が進められ、より柔軟に働ける環境が整いつつあり、ワークスタイルの変革によってオフィスのあり方も変わろうとしています。今回は、直近のワークスタイルの変革について解説します。また、ワークスタイルの変革に伴うオフィスのあり方、今後の展望なども紹介します。
ワークスタイルの変革で変わったこと
日本人のワークスタイルが大きく変わりつつあります。政府主導の「働き方改革」により、一層の変革が進められているのが実状です。ワークスタイルの変革によって何が変わったのでしょうか。ここでは、ワークスタイルの直近の動きを解説します。
従来のワークスタイル
従来、日本では終身雇用の考え方が根強く、入社してからひとつの企業で定年まで働く人が多いことが特徴でした。終身雇用には、安定した雇用を確保し、長期的に人材を育成できるメリットがあります。労働者にとっても、安定した仕事と収入が保証されていることから、安心して働けることがメリットです。一方で、仕事に対するやりがいやキャリアアップの観点から、終身雇用に否定的な意見もありました。
また、多くの企業で長時間労働や転勤があり、個人が働き方を選べることは少ないことも問題となっていました。このような働き方は従業員の意欲低下につながり、健康上のリスクを高めることが指摘されています。結果として、生産性や企業イメージが低下し、企業の採用活動に支障が出たこともあるでしょう。また、長時間労働や転勤ができない従業員にとっても、働きにくい環境といえます。
直近の動き
日本では労働人口が減少し、人手不足に陥っている企業も少なくありません。人手不足の問題を解決するためには、新たな人材を採用する以外に、一人ひとりの生産性を高めることも重要です。限られた労働力で生産量を増やすことができれば、企業は安定した利益を得ることができます。また、生産性が向上することで、従業員の時間外労働の削減にもつながるでしょう。
政府主導の働き方改革により、ワークライフバランスも重要視されるようになってきました。ワークライフバランスとは、仕事とプライベートのバランスが取れた状態のことです。ワークライフバランスを重視することで、従業員個人に合った働き方ができるようになります。仕事とプライベートがうまく両立できるようになればオンとオフの切り替えをしやすくなり、結果として仕事に対するモチベーションが高まる可能性もあります。
実際に、ワークライフバランスの実現に向けて、フレックス制度やリモートワーク、在宅勤務のほか、ハイブリッドワークという働き方が取り入れられることも多くなってきました。状況に応じて働き方を選べるようにすることで、生産性の向上や社員の満足度アップ、優秀な人材の確保などが期待できるでしょう。
関連コラム:フレキシブルワークについては、『時間や場所に縛られない柔軟な働き方を実現するフレキシブルワークとは?』の記事をご覧ください。
ワークスタイルの変革に伴うオフィスのあり方
ワークスタイルの変革に伴い、オフィス環境も変化を求められています。より効率的に業務を進めるためには何が必要なのかを解説します。
効率的に業務が進められるオフィス環境
長時間労働を減らすためには、効率的に業務を進める必要があります。従来のオフィスでは、業務内容に関係なく、従業員は自席で仕事をすることが主流でした。しかし、自席だけで仕事をすることが必ずしも効率性が良いとはいえません。集中して取り組みたい業務があっても、周囲の会話や動きが気になり集中できないこともあるでしょう。
効率的に業務を進めるためには、出社時のオフィスの役割や業務特性に合わせてスペースを整備することが大切です。自席以外に集中ブースを設けて、従業員が集中しやすい環境を整えている企業もあります。また、ミーティングスペースやリフレッシュスペースなど、目的に応じたスペースを整備することで効率良く業務を進められるようになるでしょう。
関連コラム:集中ブースについて詳しく知りたい方は、『コミュニケーションと集中のメリハリを実現する集中ブースの効果的活用方法』の記事をご覧ください。
テレワークへの対応
テレワークで働く従業員のための環境づくりも必要です。たとえば、サテライトオフィスの設置やフリーアドレスまたはホテリングの導入などが挙げられます。サテライトオフィスは、本社以外に複数のオフィスを設置することで、従業員の通勤負担を軽減することが可能です。また、フリーアドレスを導入すれば、オフィスを使用する人数の増減に対応できます。そのほか、自席をあらかじめ予約して確保するホテリングも注目されています。
テレワークに対応するためには、オフィスワークとテレワークとの間で連絡や情報共有をしやすい環境を整備することも重要です。また、日によって働く場所が変わるため、誰がどこで何の業務を行っているかを把握しやすくする仕組みづくりも必要になるでしょう。
関連コラム:サテライトオフィスについて詳しく知りたい方は『企業がサテライトオフィスを設置するメリット・デメリットとは?』の記事をご覧ください。
関連コラム:ホテリングについて詳しく知りたい方は『ウィズコロナ時代に社員の健康を守る施策となるホテリングとは?』の記事をご覧ください。
コミュニケーションの活性化
従業員の働き方が多様化するにつれて、社内のコミュニケーション不足が課題となっています。そのため、社内にミーティングスペースを設置し、従業員同士のコミュニケーションを活性化させる取り組みがさまざまな企業で行われています。そのほかにも、リフレッシュスペースを設けるなど、従業員が気軽に会話できる空間づくりも必要でしょう。気分転換にもつながり、生産性の向上も期待できます。さらに、オフィスで働く人とテレワークの人がコミュニケーションを取りやすいように、コミュニケーションツールの導入も検討するとよいでしょう。
ハイブリッドワークにおいてはコミュニケーションが不足するケースも少なくありません。社内コミュニケーションを活性化させるには、社内イベントやサークルなどを通じて交流する場を設けるという方法もあります。
関連コラム:社内コミュニケーションについて詳しく知りたい方は、『社内コミュニケーション活性化のために試したい、9つのアイデア』の記事をご覧ください。
ワークスタイル変革への取り組み方
ワークスタイル変革への取り組み方について具体的に解説します。
社内制度や評価基準の見直し
ワークスタイルの変革に伴い、社内制度や評価基準も見直す必要があります。テレワークやハイブリッドワークの導入により、従来の社内制度や評価基準では対応できないケースが増えてきました。テレワークやハイブリッドワークでは、上司が直接部下の働きぶりを確認できないという問題があります。そのため、新しいワークスタイルに合った制度に変える必要が出てくるでしょう。その場合、まずは今の制度を見直すことが重要です。
また、年功序列を採用している場合、業務の成果に対する評価が低くなりやすく、仕事に対するモチベーション低下の原因にもなります。ワークスタイルの変革に伴い、年功序列ではなく社員一人ひとりが能力を発揮できる制度が求められています。
設備やツールの刷新・追加
テレワークやハイブリッドワーク下でも、社内コミュニケーションを活性化させるには設備やツールを刷新、追加する必要があります。オフィス以外でもコミュニケーションが取りやすいように、たとえばバーチャルオフィスの開設や勤怠管理ツール、情報共有システムなどの導入を検討しましょう。
オフィス環境の整備
新しいワークスタイルに合わせて、オフィス環境の整備も必要になります。生産性向上のためには、フリーアドレスの導入やオフィスレイアウトの見直しも効果的です。
また、ペーパーレス化することで、業務の効率化や生産性アップにつながる可能性もあります。承認作業や文書管理、帳票書類の送付などがオンライン上で行えるようになり、オフィス以外の場所でも業務を進めることが可能です。働き方が多様化するなか、ペーパーレス化への取り組みは重要といえます。
ワークスタイル変革にあたっての注意点
ここでは、ワークスタイル変革にあたっての注意点を解説します。
コミュニケーションしやすい環境を整える
前述のとおり、働き方の多様化により社内コミュニケーションが不足する可能性があります。社内コミュニケーションが不足すると情報共有や業務の進捗管理がしづらくなり、業務効率の低下につながるかもしれません。また、お互いに意見を出し合う機会が減り、新しいアイデアが生まれにくくなることも懸念されます。そのため、ワークスタイルの変革にあたっては、コミュニケーションしやすい環境を整えることが重要です。
人材育成や人事評価の方法を検討する
ワークスタイルの変革により、人材育成や人事評価の方法も変える必要があります。たとえば、ITツールを活用することもひとつの方法です。ITツールを導入することで、テレワークやハイブリッドワークでも業務の進捗状況を確認することができます。また、状況に応じてコミュニケーションツールを使い、情報共有をしたりアドバイスをしたりすることも可能です。勤怠管理や業務配分もオンライン上で行えるようになります。
セキュリティ対策をする
働く場所が多様化することで、情報漏えいやウィルス感染などのリスクが高まります。そのため、セキュリティレベルの強化に取り組むことが重要です。まずは情報セキュリティに対するルールを策定し、従業員に遵守してもらいましょう。また、技術的なセキュリティ対策も欠かせません。データの暗号化やウィルス対策ソフトの導入など、必要なセキュリティ対策を進めましょう。
今後、ワークスタイルはどう変わるのか?
2023年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、オフィスで勤務する人が多くなっている傾向です。一方で、ハイブリッドワークを導入している企業も多くなり、働き方の多様化が進んでいます。
今後は、ワークスタイルの変革に伴い、ハイブリッドワークが定着すると考えられます。オフィス以外の場所で働けるようになることで、人材の多様化が進むでしょう。地方や海外など、遠方にいる人でもインターネットを通じて働くことが可能になります。
また、正社員で働いている人が会社以外の場で副業を始めたり、フリーランスとして独立したりするケースも増えています。正社員の副業はこれまで就業規則で認められていないこともありました。しかし、徐々に副業を認める企業も増えています。労働者は、自社以外の仕事をすることで、スキルアップや収入アップにつなげることも可能です。
このように、ワークスタイルの変革により、従来よりも自由度の高い働き方ができるようになります。キャリアだけでなく、育児や介護など、人生のライフステージに合わせて働けることも魅力です。加えて、これまで都市に集中していた労働者が地方に移住することも可能になります。これまで引越しや家族の都合で退職せざるを得なかった人も、同じ会社で働き続けられるようになるでしょう。
ワークスタイルの変革により誰でも働きやすい環境を実現
日本では、個人の働き方が重要視されることは少ない傾向にありました。しかし、現在ではワークスタイルの変革が進められ、一人ひとりの事情に合った働き方が可能になりつつあります。より効率的に働けるオフィス環境の整備も進められてきました。また、新型コロナウイルスへの対応が緩和されるなか、テレワーク中心からオフィスワークやハイブリッドワークへ移行する企業も多くなっています。ハイブリッドワークの導入にあたっては、社内制度の見直しやオフィス環境の整備が必要です。今後は、ワークスタイルの変革がさらに進み、オフィスのあり方も変わっていくでしょう。
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