世界的に蔓延している新型コロナウイルス。日本でもさまざまな対策が実施されていますが、そのなかでも多くの企業で導入を進めているのがリモートワークです。満員電車や社内での密を防ぐためには、欠かせない施策のひとつであり、特に東京や大阪など大都市圏においては、緊急事態宣言前より実施している企業も少なくありません。しかし、リモートワークにはいくつかのデメリットがあり、そのために導入に踏み切れない企業もまた多く存在します。そこで今回は、そもそもリモートワークとはどういったものか、その概要から導入するうえで障壁となるデメリット、そしてデメリットの解決策までをお伝えします。
※この記事は2020年6月1日公開した内容です。新型コロナウイルス等の時事的な問題を扱っていますが、執筆時の状況となります。
そもそもリモートワークとはどういった働き方なのか?
東京都が2020年5月11日に発表した「テレワーク導入率緊急調査結果」によると、社員30人以上でテレワーク(リモートワーク)を導入している企業は、62.7%。これは3月時点の24.0%から実に2.6倍の増加となっています。
ここにきて、急激にリモートワークを行う企業や社員が増加しました。今回の場合、リモートワーク増加の最大の要因は新型コロナウイルスなので、リモートワーク = 在宅勤務で行われているケースがほとんどです。しかし、本来リモートワークとは、会社から離れた場所で働くこと全般を意味するものです。したがって、在宅勤務だけではなく、外出先でスマートフォンやタブレットを使って作業をするモバイルワークや、会社や自宅以外のサテライトオフィスやシェアオフィスで働く事もリモートワークと呼びます。
今回のように新型コロナウイルスの影響で自由に外出することが難しい状況下において、しばしばメディアなどでリモートワーク = 在宅勤務かのように扱われていました。
リモートワーク導入を妨げるデメリットとは?
新型コロナウイルスなどの感染症防止対策になること以外にも、通勤時間がなくなることでの効率化や在宅ならではのこれまでにない新たな働き方の実現など多くのメリットがあります。ただし、2020年4月30日に発表された厚生労働省とLINE株式会社による「新型コロナ対策のための全国調査」を見ると、全国でのテレワーク導入率は26.83%(4月12~13日)と東京都の51.88%という割合に比べかなり低い結果です。
東京で感染者数が増加していたことや、”三密”にあたる電車通勤の人が大多数を占めることも背景にありそうですが、他にも理由がありそうです。リモートワークを導入できない企業は次のようなデメリットを恐れていることが考えられます。
社員同士のコミュニケーションが不足してしまう
リモートワーク導入の最大の障壁ともいえるのが、社員同士のコミュニケーションが不足してしまう点です。もちろん、在宅であっても電話やメール、チャットなどコミュニケーション手段がないわけではありません。しかし、近くにいて、何かあった際にすぐ話しかけられる状況に比べるとどうしても、コミュニケーションは不足しがちになります。
リモートワークを想定した就業規則がない
特に今回の新型コロナ対策としてのリモートワーク導入に関しては、導入までに十分な準備期間を取れないこともあり、リモートワーク用の就業規則が作成できていない企業がほとんどでしょう。そのため、後々になってさまざまなトラブルが起きるのではといった不安からなかなか導入に踏み切れないケースも少なくありません。
セキュリティリスクがある
上述したように準備期間が十分に取れていないため、社員に対するセキュリティ教育も徹底できず、セキュリティリスクが大きいのも、導入に踏み切れない理由となるデメリットのひとつです。
リモートワーク導入時のデメリット解決方法
新型コロナウイルスから社員を守り、ひいては企業の事業継続を実現するうえで、リモートワークは欠かせない施策のひとつです。そこで、前項で挙げたデメリットを解決するための方法を紹介します。
コミュニケーションツールの導入
在宅勤務でオフィスにいるときと同じように面と向かって話せる環境をつくることはできません。しかし、できる限りそれに近づけることは可能です。そのためには、グループウエア、社内SNSなどのオンラインコミュニケーションツールの導入がポイントです。また、リモートワークの導入を前提とするならば、オフィスでは従来以上に対面のコミュニケーションの仕方を意識した職場環境が望ましいでしょう。もともとコミュニケーションが希薄だったオフィスでは、レイアウトを変更するのもおすすめです。
リモートワークに即した就業規則の制定
完璧な就業規則を制定してからリモートワークを導入すると、どうしても時間がかかってしまいます。そこで、おすすめしたいのは、制度制定前のトライアルの導入です。まずは最低限のルールを決め、一部の部署やチームで導入し、様子を見ながら修正、改善を行っていくようにします。その際出た問題点や課題は記録しておき、就業規則に反映させるとスムーズでしょう。
セキュリティ対策の強化、セキュリティ教育の徹底
リモートワークの導入検討と平行して、セキュリティリスクに関しても対策強化を検討しましょう。ウイルス対策はもちろんのこと、「会社以外の場所でも仕事ができる」という前提に立って、パスワードの強化や共有設定、VPN設定などについて見直しを行いましょう。例えば、OSやアプリケーションは常に最新の状態にしておくなど、社内ルールを明文化すると運用が始まった際にスムーズです。また、ウイルスやハッキング以外でも、ノートPCやスマホの置き忘れなど、オフラインでも情報漏えいする可能性があります。社内勉強会を開くなどで会社全体としてセキュリティレベルを上げる必要があります。
オフィスでのコミュニケーション活性化が鍵
リモートワークを導入する際にはさまざまな障壁があります。しかし、育児や介護があっても退職する必要がなくなることでの離職率低下、オフィスの所在地にこだわらない人材採用、社員の通勤時間削減などメリットもあります。また、新型コロナウイルスのようなパンデミック時はさることながら、地震、台風といった自然災害時でも出社せずに業務を遂行できることは、企業、社員双方にとって大きなメリットといえるでしょう。
これらのリモートワークのメリットを享受するためには、セキュリティ教育の徹底、リモートワーク用の就業規則の設定などを迅速に行うことが求められます。
そして特に、重要なポイントとして挙げられるのが、コミュニケーションロスの軽減です。社員同士のコミュニケーションを円滑にするには、グループウエアや社内SNSなどのオンラインツールの活用も効果的ですが、オフィス内でのコミュニケーション活性化がとても重要になってきます。
オフィスで互いにコミュニケーションが取れていなければ、リモートワークを導入した後は、オフィスにいる時以上にコミュニケーションを取ることが困難になります。リモートワークを積極的に導入していくのであれば、是非オフィスの在り方や役割、そもそものレイアウトについても同時に見直してみましょう。部署内やチーム内のメンバーはもちろん、それ以外の社員ともコミュニケーションを取れる環境をつくること、そのうえで、まずは週2~3日など無理のないペースでリモートワークを導入していくことが失敗しないためのポイントといえるでしょう。
※この記事は2020年6月1日公開した内容です。新型コロナウイルス等の時事的な問題を扱っていますが、執筆時の状況となります。