フリーアドレスの防災対策と働きやすさを両立する工夫とは?

フリーアドレスオフィス防災の前提 フリーアドレスオフィスでの防災を考える上で、最も重要なポイントを先にお伝えします。それは、家具の転倒防止策が不可欠であるという点です。 フリーアドレスオフィスはレイアウト変更が柔軟に対応しやすいことが特徴で...
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この記事でわかること

  • フリーアドレスと防災対策を両立させるための家具やレイアウトの工夫
  • 避難を意識した動線設計、貴重品管理のアイデア、フリースペースの活用方法
  • 防災用品や備蓄品を「必要なときにすぐ使えるようにする」保管方法

フリーアドレスオフィス防災の前提

フリーアドレスオフィスでの防災を考える上で、最も重要なポイントを先にお伝えします。それは、家具の転倒防止策が不可欠であるという点です。

フリーアドレスオフィスはレイアウト変更が柔軟に対応しやすいことが特徴です。一方で、その柔軟性を重視するあまり、家具が正しく転倒防止対策されていないケースを見受けることがあります。

従業員が安心・快適に働ける環境の前提として、家具の転倒防止策は必須。特に、背の高い収納や書架などは必ず固定するようにしてください。もし、家具が転倒してしまった場合、挟まれるなどして怪我をするだけでなく、転倒した家具で避難動線がふさがれるリスクなどもあり危険です。

フリーアドレスを導入する場合でも、まずは安全性が確保された上で働きやすいオフィスづくりを目指しましょう。具体的な家具の転倒防止や安全対策については、「地震に強いオフィス」で詳細に解説しているので、ぜひ参考にしてください。

フリーアドレスがもたらす避難経路の課題

まず、防災の観点から気をつけたいのは、フリーアドレスオフィスは、毎日決まった座席に座るという運用ではないため、避難経路が瞬時にわかりにくく、地震や火災などの災害時に逃げ遅れてしまうリスクがあることです。

誰もがスムーズに避難できる動線が理想

固定席であれば、従業員が日頃から同じ動線を使い慣れているため、緊急時でもスムーズに非常口へ向かうことができます。一方で、フリーアドレスではその日によって座席やフロアが変わるため、即座に非常口へ向かうことが難しい場合があります。

このような理由から、従業員がスムーズに避難できる動線を意識したオフィスづくりが重要です。特に、新入社員や訪問者、出社頻度の低い従業員が多い場合は、非常口までの動線を意識して設計するようにしましょう。

メイン動線を明確化し避難経路を確保

フリーアドレスオフィスで従業員が初めて座る席では、最寄りの非常口や避難経路がわからないことがあります。そのため、「地震や火災が発生した際に、どの経路で避難すべきか」を瞬時に判断できるレイアウトにするのがポイントとなります。具体的には、非常口につながるメイン動線をしっかりと確保するレイアウト設計が重要です。

レイアウトの基本として、オフィス全体から非常口へ最短で到達できる経路をメイン動線として設定します。メイン動線は人が余裕をもってすれ違うことができる、幅1.6メートル以上のシンプルな通路が理想です。幅広いメイン通路があれば、災害時の混乱した中でもスムーズに避難することができます。

なお、避難経路は常にクリーンな状態が維持されていることが大切です。通路の周辺に倒れやすい家具を置かないようにする他、放置された荷物がないように運用面でのルール設定も重要です。

また、メイン動線から枝葉のように伸びるサブ動線は、すぐにメイン動線にアクセスできるようにシンプルなレイアウトにするのもポイントです。動線が複雑に入り組んだオフィスレイアウトでは避難の初動が遅れてしまうだけでなく、オフィス内でのコミュニケーションも分断されがちです。

避難経路がわかりにくい場合は、非常口までの経路を示す案内を掲示することも有効です。平時でも避難経路が意識される環境をつくることで、従業員の防災意識を高めることにもつながります。

フリーアドレスのレイアウトを決める際は、避難時の人の流れも考慮しつつ、メイン動線の設定を行うとよいでしょう。

貴重品を取りに戻らない荷物置き場の工夫

災害時に貴重品を取りに戻ることにはリスクが伴います。一方で、自席のないフリーアドレスオフィスでは、貴重品をどう管理するかも問題になります。

貴重品を持たずに避難するのは不安

フリーアドレスオフィスの場合、従業員の書類や私物の保管場所として、多くの企業はロッカーを設置します。しかし、災害発生時にロッカーに貴重品を取りに戻ることは、被災のリスクを高めます。

一方で、身の安全を優先すべきと理解していても、スマートフォンや財布などを置いて避難することに不安を感じる従業員は少なくありません。
そこで、貴重品をロッカーに取りに戻ることなく、すぐに避難できる環境づくりが重要です。

フリーアドレス席への荷物置き場の設置

具体的には、いつでも貴重品を持って避難できるように、座席から手の届く範囲に荷物を置ける場所を設置することをお勧めします。

プラスが2024年に実施した「職場の居心地WEB調査」では「デスク周りにカバンを置く場所がほしい」という要望があがっています。座席近くに荷物置き場を設けることで、働きやすさの向上にもつながります。

例えば、フリーアドレスデスクのminimo lotsは荷掛けフックが標準装備されているため、貴重品の入ったカバンを掛けて管理することができます。また、Work Harborのソファ・スツールは足元にラゲッジスペースがあり、景観に配慮しながらすっきりと荷物を収納することができます。

こうした工夫により、非常時でも「ロッカーに貴重品を取りに戻る」という判断が不要になり、従業員が素早く避難できる環境が実現します。

長時間滞在も意識した柔軟なフリースペース活用

フリーアドレスオフィスに求められるほかの課題として、災害時に従業員がオフィスに長時間滞在する場合への対応があります。
フリーアドレスオフィスでは、従業員数に対して少ない座席数が設定されていることがあります。自席や居場所がない従業員は、オフィスでの長時間滞在が困難になるケースも想定されます。

居場所の確保は心のケアに

例えば「東京都帰宅困難者対策条例」では、首都直下地震などの大規模災害時に、企業に対して従業員の3日間の施設内待機を求めています。帰宅が制限されたり、交通機関が停止したりする場合、従業員はオフィスで長期間を過ごす可能性があります。
固定席型のオフィスであれば、自席で過ごすことができますが、フリーアドレスでは自分の居場所を確保しづらいという課題があります。

被災時に、従業員の居場所を確保することは、心のケアの観点からも重要です。さらに、休息や仮眠ができるスペースを用意することができれば、被災時に心身の健康を守ることができます。

フリースペースを柔軟に活用して

非常時に従業員の居場所を確保するためには、フリースペースを設けることがポイントです。
フリースペースにスタッキング(積み重ね)できる可動式のデスクやチェアを配置することで、柔軟な空間づくりが可能になります。平時にセミナーやミーティングで活用できるのはもちろんのこと、非常時にも対応できるのがフリースペースのメリットです。

例えば、席数が足りない場合は椅子を並べて従業員分の座席を確保できます。また、オフィスに宿泊が必要になった場合は、デスクや椅子を片づけて就寝するための床面を確保することができます。
非常用の寝袋を備蓄していても、それを広げて寝転ぶスペースの確保までは考慮されていないケースもあります。オフィスの中で複数人が就寝するだけの床面が確保できるか、一度確認してみることをお勧めします。
フリーアドレスオフィスを設計する際は、平時にも非常時にも活用できるフリースペースを積極的に取り入れることがポイントです。

防災用品の保管方法と分散備蓄

固定席型のオフィスでは、ヘルメットや備蓄食などの防災用品を自席に保管できます。しかし、フリーアドレス型のオフィスでは各個人ごとの備えが難しくなります。

ヘルメットをどこに保管するか

特に、ヘルメットは災害発生の直後からの着用が望ましいですが、フリーアドレス席だと「近くにヘルメットがない」「どこにヘルメットがあるかわからない」という問題も発生します。とは言え、フリーアドレス席にヘルメットを常設するのは難しいと感じる企業も多いかと思います。

一方で、倉庫などにまとめて保管してしまうと、「すぐに取りに行けない」「倉庫の扉が塞がって取り出すことができない」といったトラブルの発生が考えられます。

そこで、お勧めするのは分散備蓄です。分散備蓄とは、オフィス内の様々な場所に防災用品などを分散して備蓄することです。

特に、ヘルメットはオフィス内にバランスよく分散して備蓄をすることで、どの席に座っていても、近くにヘルメットがある状態を作ることができます。

最近はA4サイズの書類サイズで収納できる折り畳み式のコンパクトなヘルメットもあり、システム収納への保管も容易です。各座席近くの収納庫にヘルメットを備えるとともに、防災用品が入っていることがわかるラベルを貼ることで、緊急時でもスムーズに取り出すことができます。

分散備蓄を活用した収納

上記でご紹介した分散備蓄の考え方は、ヘルメットの保管以外にも有効です。

例えば、システム収納の最下段はしゃがまないと出し入れできないので、一般的に使いづらいとされています。そこで、収納の最下段には使用頻度の低い、非常用ライトや毛布などの防災用品や、水・食料などの備蓄食を収納するのも有効です。特に、保存水やポータブル電源のような重量がある防災用品は、最下段に収納することで家具全体の重心が下がるため、転倒しにくくなる点もポイントです。

一方で、分散備蓄は倉庫での一括管理と比較すると在庫管理がしづらいデメリットがあります。特に、賞味期限などのある水や食料は定期的な入れ替えがあるため、どこに何が収納されているかの把握が必要です。分散備蓄をする際は、備品リストの作成、収納棚へのラベル表示、定期的なチェックなどをあわせて実施するようにしましょう。

誰がどこにいるかをすばやく把握する

フリーアドレスオフィスでは、固定席型のオフィスと比較して「どこに誰がいるのか」という情報が把握しにくいという課題もあります。

在籍状況の把握の難しさ

固定席であれば、従業員の座席を見れば出社・退社・離席の状況が一目瞭然です。しかし、フリーアドレスでは、従業員がどのエリアにいるのか、あるいは在宅勤務や外出中なのかを、即座に把握することが困難になります。

災害時には、在籍者の人数や位置情報が、正確な避難誘導や安否確認に直結します。従業員全員がどこにいるかが不明確だと、安否確認が後手に回る可能性があります。

座席管理ツールの活用

こうした課題を解決するのが、座席管理ツールです。Suwaryをはじめとする座席管理システムを導入することで、リアルタイムに従業員の在籍状況や座席位置を把握できます。

これらのツールは、平時の業務効率化だけでなく、災害時の応急対応においても重要な役割を果たします。緊急事態が発生した際、システム上で従業員の座席情報をすぐに確認できれば、より的確な避難指示が可能になります。

このように、フリーアドレスを取り入れる際はレイアウトの工夫だけでなく、ソフト面での防災対策も有効となります。オフィスづくりでは空間設計でなく、運用ルールの設定やシステム導入もあわせることで、より働きやすい環境を実現することができます。

フリーアドレスの設計は防災的視点も取り入れて

フリーアドレスオフィスの普及により、働き方の自由度は大きく高まりました。一方で、防災的な視点と働きやすさの両立という点では、フリーアドレスオフィスの設計で考慮すべき要素も複雑になっています。

働きやすさと安全性が両立するオフィス

フリーアドレスの導入時には、コミュニケーション活性化やコスト効率を重視します。しかし、実はそれと同じくらいの重要度で、災害時の対応も検討する必要があります。

働きやすいオフィスと安全なオフィスは、対立する概念ではありません。働きやすさと安全性を両立したオフィスも設計次第で実現可能です。

一方で、前述の通りフリーアドレスオフィスの設計には、様々な配慮が必要となります。こうした複合的な課題を解決するには、オフィスづくりの経験が豊富な企業にレイアウトを依頼するのが効果的です。

経験の豊富な企業であれば、防災と働きやすさの両面から総合的な視点でのレイアウトが可能です。従業員のニーズ、経営課題、安全対策など様々な角度から検討したオフィスづくりが、結果として企業の競争力向上にもつながります。

フリーアドレスは防災対策と働きやすさとの両立を

フリーアドレスオフィスは、現代の働き方の多様化に対応する有効なソリューションです。一方で、固定席型オフィスとは異なる課題も生じます。特に、防災対策の視点からは、避難経路の明確化、在籍管理、貴重品置き場、長時間滞在への対応など、様々な工夫や対策が必要です。

こうした課題は、きちんと認識して設計段階で対応すれば十分に解決できます。働きやすさと安全性の両立は、決して難しいことではありません。むしろ、この二つの視点をバランスよく統合したオフィスこそが、本当に優れた職場環境だといえるでしょう。従業員が安心して働けるオフィス環境の実現が、企業の生産性向上にもつながります。

プラスではフリーアドレスオフィスのデザイン・レイアウトに関しての無料相談を受け付けています。
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記事執筆・監修

もしもにスタジオ
防災士・インテリアコーディネーター・整理収納アドバイザー。
「防災をデザインする。」をコンセプトに、暮らしに寄り添う防災ノウハウを提供しています。

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