新しい建築の楽しさ2020 Vol.01

特別寄稿

取材・文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

芹ヶ谷公園“芸術の杜” 公園・美術館一体整備

オンデザイン + stgk + YADOKARI

独特の谷戸地形が特徴の町田市・芹ヶ谷公園に進行中の公園と美術館の一体整備計画。「パークミュージアム」をテーマに、アートだけでなく様々な文化芸術活動を介してコミュニティを育む拠点を目指す。

芹ヶ谷公園プロジェクト

美術館エリアパース

緑豊かな公園のなかに確かに美術館はあった。インターネットで検索し、写真を見て約30年前の記憶が蘇った。美術館の小さなガイドブックをつくるために訪れたことがあったのだ。またこの原稿を書くにあたり、これまで3つの公園の近くで暮らしてきたことも振り返った。各公園にはかならず文化施設があった。文豪の記念館、図書館、平和館。ただ公園と文化施設の関係は緩やかだった。その関係を変えようという試みだ。

オンデザインは町田市の芹ヶ谷公園“芸術の杜”公園・美術館一体整備におけるデザイン監修(総合企画)、および設計業務を設計JV(共同企業体)で取り組んでいる。

芹ヶ谷公園プロジェクト

一体整備のテーマは「パークミュージアム」だ。アートだけにとどまらず、町田市の多様なカルチャーや市民の活動などを公園全体で展開させ、それらの活動がミュージアムの展示、コンテンツになっていくという体験型ミュージアムを目指す。2019年に閉館した町田市立博物館で収蔵していたガラスと陶磁器を核とした(仮称)国際工芸美術館を芹ヶ谷公園に整備する計画に合わせて、芹ヶ谷公園、(仮称)国際工芸美術館、国際版画美術館の3つが一体となり、美術を介してコミュニティを育むための拠点を整備するという計画である。

芹ヶ谷公園の開園は1982年であり、現在に近い形になったのは2001年である。国際版画美術館の開館は1987年だ。

計画地は町田市の中心市街地から徒歩15分の距離にある。谷戸であり、谷底に公園がある。

公園中央を横切る通路を「パークミュージアム」のエントランスと位置付けて、両側に「谷のロビー」と「谷の回廊」に分けて配置する。国際版画美術館がある「谷のロビー」側を活動の中心ゾーンと位置づけ、活動を表現するための場所として様々な「ステージ」を公園のなかに点在させていく。

「ステージ」は多様なカルチャーや市民の活動の場所というイメージだ。それらを公園のなかにどうつくるか。同時に美術館をどう開くか。

ワークショプで市民と一緒に考え、実証実験を行い、ボトムアップでコンテンツをつくりあげていく。

公園利用者とコミュニケーションをとり、開かれた参加のプラットフォーム「Made in Serigaya(メイドイン芹ヶ谷)」をつくっている。アイデア・ブレスト・ミーティングなどのワークショップを行い、市民と一緒に考え、実証実験を行い、ボトムアップでコンテンツをつくりあげていく。コミュニティも活動から育てる。それらを設計にフィードバックする。

新たに建設する工芸美術館、そして版画美術館の持つ機能を公園と一体に考える中でその最適解を目指し、美術館と「ステージ」のつなぎ方や関わり方を考える。また、新たな工芸美術館は園路動線と絡めて谷斜面に計画することで、公園を歩きながらいつのまにか美術館に出入りするような体験を生み出す。

芹ヶ谷公園空間構成

このような空間構成で公園と美術館とのインターフェースを構築するとともに、展示機能を公園にはみ出させることによって美術館をゆるやかに開いていくことを試みる。

「これらの操作によって工芸美術館をつくることによるインパクトを最大化し、一体的な整備で展示の機能強化もする。市民的な目線でのクリエイティビティと、美術館でオーセンティックな作品に触れるという教育的な意味が段階を持ちながら共存できる状態をつくる。作家とそこを体験するユーザーが同期している感覚が生まれ、その先にある市民活動として子供と一緒に作品をつくる。公園が実験フィールドになっていく」とオンデザイン代表の西田司さんは話す。

日本は人口減少が続いている。都市公園など整備状況の統計を見ると面積は増加し、一人当たりの公園面積も増えている。また日本には世界有数の美術館・博物館、類似施設があるが、老朽化も進む。それらを維持・管理、活用していくための新たな視点や仕組みが求められている。

[プロジェクト概要]
所在地:東京都町田市
用途:公園+美術館
企画・設計:オンデザイン + stgk + YADOKARI
設計期間:2019年5月~2024年度「パークミュージアム」オープン(予定)

[プロフィール]

オンデザイン

使い手の創造力を対話型手法で引き上げ、様々なビルディングタイプにおいてオープンでフラットな設計を実践する設計事務所。建築分野におけるコミュニケーションの可能性を探る実践をおこなっている。 主な仕事として、「ヨコハマアパートメント」(JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ日本館招待作品・審査員特別表彰)、「湘南港江ノ島ヨットハウス」(日本建築学会作品選奨)、復興まちづくり「ISHINOMAKI 2.0」(地域再生大賞特別賞)、「THE BAYSとコミュニティボールパーク化構想」、「大分県立芸術文化短期大学キャンパス」「神奈川大学国際学生寮」など。著書に「建築を、ひらく」「おうちのハナシ、しませんか?」「オンデザインの実験」。

中崎 隆司 なかさき たかし
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー

生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。