PAGETOP

前回公開した「第2話:【名古屋】プラスのオフィスデザイナー・濵本氏に聞く、新しいオフィスのコンセプトの作り方「オフィスのデザインコンセプト決め」では、デザインを始める前にまず決めるべき「オフィスデザインのコンセプト決め」の工程をご紹介しました。

今回は、いよいよその後の工程となる「オフィスデザイン・家具選び」について、前回に引き続き濵本氏にお話を伺います。さまざまな企業のオフィスデザインを手がけている濵本氏。まさにデザイナーの真骨頂とも言える工程ですので、ぜひオフィス改修をご検討されている方々は参考にしてみてください。

まずは、スペースをどう配置するかを決める「ゾーニング」から。

ー「オフィスのデザイン」とは、どんなところから手がけていくのでしょうか。

濵本氏「デザインの工程に入る前に、まずはオフィス図面をいただいて担当者に社内の実態などをヒアリングしながら、空間の取り方や家具の配置、通路の導線設計など、ゾーニングを行います」

ゾーニングとは、オフィスレイアウトを考える際に、オフィスのどこにどんなスペースを配置していくかという計画をすること。

オフィスには、デスクやイスが置かれている執務スペースだけでなく、以下のようなさまざまなスペースがあります。

・エントランス
・会議スペース
・役員室
・リフレッシュスペース
・収納/倉庫 等

各機能の配置や広さが社員が動きやすくストレスなく仕事をできるかを大きく左右します。
オフィスのレイアウトで重要な要素の一つに、執務スペースへのデスクの配置方法があります。代表的なレイアウトパターンを5つご紹介します。

①あらゆる職種に対応できる基本型:対向島型レイアウト

部署ごとにまとまるためコミュニケーションが取りやすく、管理者がメンバーの姿をチェックしやすいというメリットも。

②間仕切りを設けてノイズや視線を防ぎ、集中しやすい:ブース型レイアウト

クリエイティブ職やプログラマーなどの集中力を必要とする職種や、個人作業が多い職種に適しています。

③個人作業に集中でき、隣や背後の人とのコミュニケーションも可能:背面対向式レイアウト

柔軟な配置が可能なので、プロジェクトごとにチームを形成する職種や、企画・開発などチーム作業が多い職種に適しています。

④固定席を持たず、自分の好きな席で働く:フリーアドレス

社員の在席率に時間帯で差があるオフィスや、広いスペースが必要な職種、個人で多くの書類や荷物を抱えない職種に適しています。

毎日周囲の人が変わることで新鮮な気持ちで仕事に向かえ、異なる部署や役職の社員ともコミュニケーションが生まれやすく、自由でフレキシブルなオフィス環境を実現しやすいでしょう。

⑤その日の業務内容や気分に合わせて、自由に席を選ぶ:ABW(「Activity BasedWorking(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略)

ワーカーが業務内容に合わせて、場所を自由に選べる働き方のこと。オフィス内のみならず社外のカフェや自宅など最適な環境を選ぶことができます。

オフィス内のどこででも働けることで、人の密度をコントロールすることも可能に。直近の課題である、感染対策の一環としても注目を集めています。
ABWは広い意味では、オフィス以外の場所や勤務時間をも自由に選択するスタイルを指すことも。

最近は、“働き方改革”やコロナ禍などでオフィスでの働き方が今までと変わりつつあり、より自由な働き方を取り入れる企業が増えてきました。
その影響もあり、社員のデスクのレイアウトでも最も社員が自由に動けるレイアウトである「ABW」は人気があります。

どの家具を置くかではなく、どの家具が空間にマッチするか。

ー つづいて、「オフィス家具選び」の工程に移ります。そもそも、御社が作っている「オフィス家具」と、一般家庭で使われるような「ホームユース家具」には、どのような違いがあるのでしょうか。

濵本氏 「オフィス家具とホームユース家具で、最も大きく違うのは『耐久性』です。オフィス家具には不特定多数の人が毎日使用するという用途があるため、8〜10年ぐらいの長期を使用目安に作られています」

オフィス家具とホームユース家具との違いは、「耐久性」以外にも、以下のような点があります。

転用性

一般の住宅と違い、オフィスは状況に応じて移転する機会も多いもの。
その際、一度解体して移転先で再度組み立てて使用するため、オフィス家具は頻繁にある解体や組み立てにも耐えうる転用性のある作りになっています。

一方、ホームユース家具は、1回の組み立てでビス穴が緩んでしまったり、ビス山が潰れてしまったりするような作りのものも多くあります。

価格

オフィス家具は耐久性や転用性が高いという特徴から、その分ホームユース家具よりも値段は高くなっています。ホームユース家具の場合、海外で大量生産するなど生産上の工夫をすることで、コストパフォーマンスの高い商品も多くみられます。

デザイン性

従来のオフィス家具は耐久性や機能が重視されていたため、ホームユース家具に比べるとデザイン面でのバリエーションがそれほどありませんでした。しかし、近年ではオフィス家具もさまざまなメーカーがデザイナーと共同開発を行うことで、意匠性が高まりバリエーションも増えてきました。

家具選びをする際には「オフィスで使うから、オフィス家具」を選ぶ必要はなく、使用用途や空間に応じてホームユース家具を使う機会も増えてきています。

たとえば、社員が休憩してリラックスするようなスペースであれば、オフィス家具よりもカジュアルな雰囲気を演出しやすい、ホームユース家具を置くこともあります。

大切なのは、どの家具を置くかではなく、空間全体に統一したコンセプトを持たせることなのです。

現在のオフィスデザインのキーワードは、“ハイブリットワーク”。

ーコロナ禍によりオフィスデザインにどのような変化がありましたか?何が求められるようになりましたか?

濵本氏 「目的や用途が考え抜かれたデザインが重要だと思っています」

目的や用途が考え抜かれたデザインとは、たとえば弊社で作った事例として、以下のようなものが挙げられます。

「社員が繋がる」空間であること

人と人とのコミュニケーションを自然に生んでくれるような空間にするために、レイアウトを直線的でなく、あえてジクザクに設定します。

そうすることで、そこを通る社員同志が視線をいろいろな方向に向けることで目が合いやすくなり、自然とアイコンタクトを取れるような空間になります。

「多様な働き方を実現できる」空間であること

この2つのデザインは、冒頭に説明した「ABW:業務内容に合わせて場所を自由に選べる働き方」と大きな関わりがあります。

具体的には、集中して作業を行いたい人のために個室や半個室ブースを設けたり、複数でワイワイガヤガヤとディスカッションできるようオープンスペースを設けたりといった仕様です。

画一的なワークスタイルを押し付けるのではなく、働き方の選択肢を増やすことが重要です。

「業務効率を高められる」空間であること

「リフレッシュスペース」を充実させることも、有効な手段の一つです。業務効率を高めるためには「集中」と「リラックス」の両方が必要ですが、集中できるスペースを設けても、ずっと集中できるわけではありません。

メリハリをつけるために、リラックスできるスペース作りが重要になります。そのため、リフレッシュスペースは、仕事から離れて休息ができるものでなくてはなりません。たとえば、人工芝を敷いてアウトドア用品を置いたりと、オフィスと全く違った空間をデザインすることも。

「柔軟に変更できる」空間であること

仲間と会話やミーティング、グループワークが自由にできるようなスペースにするため、移動が容易な可動式の家具を導入してスペース作りに柔軟性を持たせます。

柔軟にさまざまな人とコミュニケーションが取れるようなオフィススタイルは、いつもの業務に刺激を与えてくれることでしょう。

濵本氏が手掛ける最新オフィスデザイン満載!の「CREATORE with PLUS 名古屋」

ー2022年1月にオープンのショールーム「CREATORE with PLUS 名古屋」では、どのようなオフィスデザインを取り入れられたのでしょうか。

濵本氏 「『街のような多様な空間』『家具の居場所、人の居場所』からイメージを膨らませ、複数の生活の場がある『大きな家のようなオフィスデザイン』にしました」

在宅ワークなど仕事と家の境界が曖昧になってきている、昨今の新しい働き方とリンクさせています。オフィスを多様な生活の場の連続としてとらえ、オフィスビルにライフを取り入れたようなデザインにしました。

たとえば、オフィスの中の壁に名古屋駅の地下鉄で使われているタイルを貼ることで、室内に居ながらにして、街にあるはずのものにも触れられます。

また、本来家の中にあるキッチンをオフィスのレセプションに置くことで、会社と家の境界の曖昧さも表現しています。あの場所にキッチンがあることで、会社にいらっしゃった方に、コーヒーを提供しつつ和んでもらいながら、PR映像などを観てもらえるような空間になりました。

濵本氏が手掛けたデザインの仕掛けは他にもまだまだあり、見所の多い新しいショールーム「CREATORE with PLUS 名古屋」。

今回は触りだけ紹介させていただきましたが、次回第4話ではたっぷりと詳細までご紹介させていただきます。最新オフィスデザインが詰まった新ショールームの全貌をお届けしますので、ぜひお楽しみに!

オフィスづくりに役立つダウンロード資料集