「BCP対策」「多様な働き方の実現」「働きやすさの追求」など多くのメリットを持つテレワーク。
一部の企業では導入し始めたもののうまく活用しきれていないところもあります。また、一旦導入したがやめてしまった企業も少なくありません。その理由のひとつとして考えられるのが、自宅での仕事になかなか慣れない点が挙げられます。そこでおすすめなのがフレキシブルオフィスの活用です。プライベートと仕事をしっかりと区別しながら、オフィス以外で働くことを実現できます。フレキシブルオフィスは、最近話題になっているハイブリッドワークでも活用することができます。
今回は、フレキシブルオフィスの概要やその種類、注目を集める理由、メリット・デメリットを見たうえで、有効活用するためのアイデアを紹介します。
フレキシブルオフィスとは?
「柔軟な」という意味を持つ「フレキシブル」。つまり「フレキシブルオフィス」とは柔軟な働き方を実現するためのオフィスです。ここでいう、「柔軟」とは、主に契約形態を指します。通常のオフィスは家主と賃貸契約を結び長期(2年以上)にわたって利用するのが一般的です。しかし、フレキシブルオフィスの場合、1日のみや1か月単位でも契約可能で、自分たちが使いたい時に使いたいだけ自由に使えます。
ただし、「フレキシブルオフィス」というオフィスがあるわけではありません。「シェアオフィス」「コワーキングスペース」「レンタルオフィス」などの総称がフレキシブルオフィスなのです。
近年、首都圏を始め全国各地でコワーキングスペースやレンタルオフィスが増加傾向にあり、テレワーク導入を進めたい企業と従来のオフィスで働く形態に縛られず自由に働きたいと考える社員、双方にとって最適な選択肢のひとつとして、フレキシブルオフィスは大きな注目を集めています。
ハイブリッドワークについては『ハイブリッドワークとは?テレワークの定着を実現させるポイントと注意点』の記事をご覧ください。
フレキシブルオフィスの種類
フレキシブルオフィスには、次のような種類があります。
サービスオフィス
オフィス環境を提供してくれるサービスです。業務のできる個室をベースに、受付や会議室、秘書などが用意されています。個室でセキュリティも高く、業務に集中しやすい環境です。ただし、一般的に他の種類のフレキシブルオフィスよりもコストがかかります。
コワーキングスペース
異なる企業の社員や個人が同じ場所で業務を行うスペースです。個室ではなく、スペースを共有するところがポイントです。普段と異なる人とコミュニケーションしながら業務を行うことで、新しいアイデアが湧いたり、人脈ができたりするというメリットがあります。
オンライン会議や集中したいときのために、個室スペースがあるところも多いです。
サテライトオフィス
本社とは別に支店や支社というオフィスを用意し、業務を行います。本社とは離れた場所に営業拠点として用意することもあれば、本社の近くで業務を行うスペースとして用意する場合もあります。
基本的に、同じ企業の社員しか利用できません。そのためセキュリティ性が高く、業務に集中しやすくなります。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスは、実際に業務を行う場所ではありません。仮想のオフィスとして住所や電話番号、郵便・配送物の受け取り、会議室などのサービスを利用できます。自宅で業務を行っている人でも、取引先に自宅の住所を明かさずに業務を行うことが可能です。
実際の業務は普段と同じ場所で行います。
シェアオフィス
異なる企業の社員・個人がスペースをシェアして業務を行う場所です。サービスオフィスやコワーキングスペースを含む場合もあり、さまざまな意味を含む名称なので、利用する際には確認が必要です。
企業が契約して、シェアオフィスをサテライトオフィスやレンタルオフィスとして使う場合もあります。
レンタルオフィス
個室をオフィススペースとしてレンタルできるサービスです。個室といっても利用できる人数は1人だけでなく、数人から数十人で利用できる会議室のようなタイプもあります。不要になれば解約できるので、期限のあるプロジェクトにも利用しやすいでしょう。
個室なので、レンタル中は荷物を置いたままにすることも可能です。また、高いセキュリティを確保できます。
フレキシブルオフィスを導入するメリットとデメリット
フレキシブルオフィスを導入した場合、企業や社員にとってどういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。
フレキシブルオフィスを導入するメリット
空きがあればすぐにでも入居が可能
新たにオフィスを契約する場合、最低でも半年前から動き始める必要があります。しかし、シェアオフィスやコワーキングスペースは、空きさえあれば即日契約して入居することも可能です。導入の決定からスタートまでの時間がかからないのは大きなメリットと言えるでしょう。
社員1名での契約も可能
シェアオフィスやコワーキングスペースでは、社員1名からの契約も可能です。また状況に応じた増減も簡単なため、業務内容やプロジェクトにより、都度、最適な仕事スペースを確保できます。
通信環境やデスク・椅子など快適に働ける環境が整っている
自宅でテレワークを行う場合、それに備えてデスクや椅子を購入する、通信環境を整備するといった準備が必要な場合があります。
しかし、シェアオフィスやコワーキングスペースであれば、テレワークに最適な環境が整っているため、契約さえすれば即日から業務開始可能です。
オフィスの環境については、『快適な在宅勤務を実現するうえで欠かせないオフィス家具の重要性』の記事をご覧ください。
社員の離職対策・採用時のアピールポイントにつながる
フレキシブルオフィスを導入し、多様な働き方を実現できれば、それが既存社員の離職対策となり、離職率低減も期待できます。
また、多様な働き方ができることは新規採用時にも大きなアピールポイントとなり、優秀な社員を獲得できる可能性も高まるでしょう。
フレキシブルオフィスを導入するデメリット
在宅勤務以上に社員の管理が難しくなる
テレワークのデメリットとして、オフィスに社員が出社しないことにより勤怠管理が困難になる点が挙げられます。
従来のテレワークは基本的に自宅での勤務となるため、まだ、どこにいるかの把握はそれほど難しくありませんでした。
しかし、フレキシブルオフィスはテレワークを行っている社員が自宅にいる場合もあれば、自宅以外にいる場合もあり、勤怠管理がより困難になりがちです。
そのため、フレキシブルオフィスを導入する際は予定管理の方法を決めたり、勤怠管理システムを導入したりすることが重要なポイントとなります。
セキュリティリスクが高まる
働く場所がオフィス、自宅以外にシェアオフィスやコワーキングスペースなどと増えるため、その分、セキュリティリスクも増加します。これを避けるには、業務で使用するデバイスはセキュリティ管理を徹底したものを貸与し、社員に対するセキュリティ教育を強化することが求められるでしょう。
フレキシブルオフィスを有効活用するためのアイデア
フレキシブルオフィスの導入は、テレワークの実現に大きな効果を発揮しますが、それ以外にもアイデア次第でさまざまな活用が可能です。例えば、次のような活用方法があります。
地方の顧客開拓のための拠点
業種にもよりますが、新規顧客開拓を目指している場合は、出張ではなく該当地域に一時的なオフィスを設けて拠点とすることが多いでしょう。しかし、本社以外の地域に一時的な営業所を持つのはなかなか大変です。
フレキシブルオフィスを活用すれば、オフィスの設置や移動にかかるコストを削減しながら、オフィスを用意できます。それによって業務効率の向上が見込めます。
新規出店を見据えた市場調査用
飲食店や小売店など店舗を運営している企業では、新規出店を検討する際の市場調査を目的に、該当地域で業務を行います。
この場合、オフィスが必要なのは検討する間の短い期間に限られているので、その間だけフレキシブルオフィスを活用すると合理的です。
全国の優秀な人材の獲得
これまでは、優秀な人材に出会えたとしても、オフィスに出社することが難しい、遠隔地に住んでいる、などの理由で雇用できない場合がありました。
しかしフレキシブルオフィスを利用すれば、そのような優秀な人材を逃がさず雇用できます。相手の居住地に合わせてオフィスを用意するなど、社員の事情に合わせることで働きやすくなるため、雇用の幅も広がり、優秀な社員を獲得しやすくなるのです。
オフィス縮小・分散化中の仮スペース
テレワークやハイブリッドワークを組み合わせたり、フリーアドレスやABWを導入したりしてオフィスを分散化することで、出社して業務を行う人数が減ります。そのため、オフィスのスペースを縮小することが可能です。
しかしスペースを縮小したことにより、オフィスで業務できない社員が出ることもあります。その場合はフレキシブルオフィスを活用することであふれた人数を吸収し、適切な業務スペースを確保できます。
オフィスが使えない場合の避難場所
トラブルや自然災害、感染症対策などで、状況が落ち着くまでは通常のオフィスが利用できないときもあります。その場合はテレワークを導入することが多いでしょう。
テレワークだけでなくハイブリッドワークを組み合わせたい場合は、フレキシブルオフィスを導入することで、業務しやすいオフィスをスピーディーに確保できます。
ワーケーションでの活用
ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた言葉です。単なるテレワークやハイブリッドワークではなく、観光地やリゾート地で休暇を過ごしながら、テレワークを活用して働くという方法です。
ワーケーションを行うのはホテルの部屋ということが多いでしょう。それでは同行者の目が気になる、集中できないという場合には、旅行先のフレキシブルオフィスを利用するという方法があります。セキュリティも十分に確保でき、集中して業務を行えます。
ハイブリッドワークでもフレキシブルオフィスは活用できる
フレキシブルオフィスはテレワークやハイブリッドワークを導入するときに活用されることが多いようです。しかし、それだけではありません。フレキシブルオフィスはフリーアドレスやABWなどのワークスタイルとも相性がよいため、これから活用される場面が広がるでしょう。
フリーアドレスは、社内に決まった席がなく、社員が自由に自分の席を決められる方式です。その場合、業務を行う場所は社内にとどまりません。社外、つまりフレキシブルオフィスで業務を行うことも多いです。
フリーアドレスについては、『オフィスでフリーアドレスが求められる背景とは?マッチする企業と期待できる効果』の記事をご覧ください。
ABWは、自分の事情や業務内容に合わせて、その日に働く場所を決めるワークスタイルです。その日のスケジュールに合わせれば、オフィスワークや自宅でのテレワークだけでなく、他の場所で業務を行うことも考えられます。第三の仕事場(サードプレイス)としてフレキシブルオフィスが使われることは多いでしょう。
ABWについては、『より自由な働き方ができるABWとは?フリーアドレスとの違い』の記事をご覧ください。
これからはテレワークやハイブリッドワーク、フリーアドレス、ABWなど「柔軟で自由な働き方」が増え、オフィス分散化の動きが進むと考えられます。そのため、オフィスや自宅以外の作業場所としてフレキシブルオフィスが活用されることが増えるでしょう。
ハイブリッドワークについては、『ハイブリッドワークとは?テレワークとオフィスワークでより柔軟な働き方に』の記事をご覧ください。
コストを抑えつつ最大限の効果を期待できるフレキシブルオフィス
これまで、地方もしくは首都圏進出を考えた場合、コストと時間をかけてその地域にオフィスを構える必要がありました。しかし、フレキシブルオフィスを活用すれば、低コストかつすぐにでも入居でき、スピーディーに業務を進めていけます。これにより、リスクを抑えつつ、新たな事業や顧客獲得の可能性を高めることができます。
また、自宅では仕事が難しい社員にも集中して働く場を確保できるため、テレワークやハイブリッドワークの導入もしやすくなるうえ、全国の優秀な人材獲得のチャンスも広がるでしょう。「テレワークを定着させたい」「首都圏(地方)進出を果たしたい」といったことを検討しているのであれば、フレキシブルオフィスの活用を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。