労働人口が減少し続けるなか、社員が働きやすい環境を整えることで、離職率を抑えられる可能性があります。社員のストレス軽減にもつながり、生産性の向上も期待できるでしょう。また、企業のダイバーシティが進むなか、さまざまな社員の事情に合わせて柔軟に対応する方法を考えることも大切です。今回は、働きやすい職場とはどのような環境なのかを紹介し、そのために企業が取り組むべきことを解説します。職場の環境改善に、ぜひ役立ててください。
社員が働きやすい職場環境とは?
働きやすい職場環境を実現するには、社員が仕事にやりがいを感じられる仕組みが必要となります。また、仕事や生活をするうえで、満足感を得られることも重要です。では、具体的にどのような環境が求められているのでしょうか。
企業に求められる2つの環境
・能力が発揮できる環境
まず、社員が仕事にやりがいを感じるためには、評価制度が整備されていることが条件です。自分の仕事が正当に評価される環境であれば、仕事に対するモチベーションも高まります。そのためには、現在の評価制度の見直しも視野に入れる必要があるでしょう。
また、社員が能力を発揮するためには、人材育成の環境が整っていることも重要です。十分な研修や教育を受けることで、新しい業務や職位にも柔軟に対応できるようになります。そのうえで、社員の業績をしっかり給与に反映することが求められます。
・心身の健康が維持できる環境
社員が日々快適に働ける環境を整えることも重要です。毎日の業務を遂行するには、社内設備の充実も欠かせません。使い勝手のよい執務室、休憩スペースやカフェテリアを整備している企業もあります。
誰にとっても働きやすい快適な空間を構築するには、清掃が行き届いている、ユニバーサルデザインであることなどが求められます。また、集中ブースの設置、フリーアドレスの導入、Web会議専用ルームの設置など、その時々の状況に応じた働き方の選択ができるようにすることも重要です。
社員の健康維持のためには、サービス残業を減らしたり、福利厚生を充実させたりすることも必要です。しっかりと休める環境があれば、心身ともに健全な状態で業務に従事できるでしょう。
また、仕事をするうえで欠かせないのが、職場における良好な人間関係です。同僚や上司、経営陣とのコミュニケーションが取りやすいことも働きやすい職場の条件といえます。具体的には、定期的な部内ミーティングの実施、1対1の面談の実施、社内イベントの実施、休憩スペースの設置などが必要でしょう。
働きやすい職場環境については、『職場環境とは?従業員にとって働きやすい環境をつくるためのポイントを解説』をご覧ください。
働きやすい職場にするメリット
働きやすい職場にすることは、企業にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、そのなかでも主なメリットについて見てみましょう。
・離職率の低下
職場環境が整うことで、社内全体の雰囲気が改善されるため、離職率の低下が期待できます。
・生産性の向上
快適なオフィスで働けるようになれば、業務に集中できるようになり、生産性向上の可能性が高まるでしょう。
・優秀な人材の雇用
快適な環境で働けることは企業にとって大きなアピール材料のひとつとなります。採用活動においても他社との差別化要因になり、優秀な人材の雇用にもつながるでしょう。
オフィスと生産性の関係は、『生産性向上を可能にするオフィス環境改善のポイント』をご覧ください。
社員の事情に合わせて柔軟に対応できる環境を整えることも大切
企業のダイバーシティが進むにつれ、社員の抱えている事情も幅広くなるため、柔軟な対応が求められています。以下の点に配慮することで働きやすさが向上し、離職防止にもつながります。
・生休暇がとりやすい
家庭の事情や体調不良で休まなければならないときに、休暇がとりやすいことが挙げられます。有給休暇の付与はもちろんのこと、女性特有の事情に対応できる特別休暇の整備も必要です。
・生残業が少ない
社員のなかには、家庭の事情で残業ができない人も多くいます。そのため、業務の効率化を進めたうえで、なるべく残業しなくてもいい環境を整える必要があります。
・生産休や育休がとりやすい
子どもを育てながら働きたい人にとっては、安心して産休や育休がとれる環境が望ましいでしょう。育休は待機児童の問題にも対応できるよう、延長可能にすることも重要です。また、育休明けは仕事に復帰しやすいように、企業や周囲のサポートが必要となります。
・生育児や介護に対する理解がある
たとえ制度が整っていても、周囲の理解がなければ仕事との両立が難しくなります。育児中や介護中の人が短時間労働や休暇を申請しやすいように、職場内で理解を深めることが重要です。
・生プライバシーが配慮されている
ロッカーや更衣室、休憩ルームなどがあると、プライバシーが確保しやすくなります。また、社内で緊急連絡先を共有する場合でも、プライベートな情報がもれないように配慮が必要です。
・生コミュニケーションツールの導入
直接的なコミュニケーションを増やすと同時に、チャットやグループウェアなどのツール導入により、日常的なコミュニケーションも積極的にとれるようにしましょう。また、ツールの導入はテレワーク社員とのコミュニケーション不足解消にもつながります。
働きやすい環境を実現するために企業が取り組むべきこと
社員が働きやすい職場を実現するためには、具体的にどのような環境づくりが必要なのでしょうか。ここでは、企業が取り組むべき課題を紹介します。
・人事評価制度の整備
社員の仕事に対するモチベーションを維持するには、公平な人事評価制度の整備が重要です。そのためには、まず評価基準を明確にする必要があります。その際、結果だけでなく、行動プロセスも評価基準に入れるなど、社員の取り組みを適切に評価することも大切です。昇進や昇給、ボーナスの評価基準を明確にし、社員が納得できる制度にしましょう。
誰もが納得度の高い評価制度にするには、公平性、客観性、透明性、納得性のある評価制度の構築を行う必要があります。好き嫌いで評価が変わることのないよう、評価者に対する教育も必要です。また、評価者1人の評価に頼るのではなく、上司・同僚・部下・顧客など複数の人から評価を受ける360度評価の導入も検討しましょう。
・福利厚生の充実
福利厚生は社員の企業に対する満足度を高めるのに有効です。たとえば、転勤が多い職場では、住宅手当や家賃補助など、移動による社員の負担を軽減できる制度が求められます。また、社員食堂を導入する企業もあります。格安で昼食がとれるため、どの企業でも社員に喜ばれる制度です。さらに、スポーツクラブや娯楽施設などの各種割引制度を充実させることもあります。社員にリフレッシュしてもらい、ストレスの軽減や健康増進につなげていくことがねらいです。
社員のニーズを把握することも欠かせません。社員が求めない福利厚生を充実させてもモチベーションアップにはつながらないでしょう。年齢、性別、ライフステージなどの違いよってニーズが異なるかもしれません。それぞれの社員が持つニーズの調査を行いましょう。また、社会情勢や社員のニーズは変化するため、定期的に効果検証を実施し、福利厚生を継続的に改善することも重要です。
さらに社員に対するアピールも忘れずに行いましょう。どれだけ充実した福利厚生があったとしても、それが社員に伝わっていなければ意味がありません。福利厚生の種類やメリット、選択のポイントなどをわかりやすく伝えることで、社員が福利厚生を活用しやすくすることも必要です。
・オフィス環境の見直し
快適な環境を整えるためには、オフィスの雰囲気も重要です。社員が心地よいと感じるオフィスデザインを導入することで、仕事に対するモチベーションも上がりやすくなります。オフィスの使い勝手が悪い場合は、思いきってレイアウト変更やリフォームも検討しましょう。社員の増員によりオフィスが手狭になってきたら、移転を検討することも必要です。
オフィス環境の見直しをする際は、まず、現在のオフィスが抱える課題点を洗い出しましょう。そのうえで、課題解決をゴールとして明確に可視化させることが重要です。
レイアウト変更やリフォームなど大掛かりな変化を実施する際は専門家に協力を仰ぎましょう。自社だけで検討した場合、専門的知識がないために望んだ結果を得られないことも少なくありません。専門家のアドバイスを受けながらたたき台を作れば、希望どおりのオフィス環境をスムーズに実現しやすくなるでしょう。
快適なワークスペースについては、『快適なワークスペースを実現するには?目的別ワークスペースの事例も紹介』をご覧ください。
働きやすい職場環境を実現するためには社内制度と設備が重要!
社員が働きやすいと感じる職場環境を整えるには、人事評価や福利厚生、職場内のコミュニケーションが重要といえます。人事評価や福利厚生については、社内制度の整備や見直しが必要です。また、働きやすい職場環境を実現するには、オフィスの設備やレイアウトの変更なども検討する必要があります。オフィスが変われば、社員同士のコミュニケーションも取りやすくなることが期待できます。社内制度と設備の両面から、働きやすい環境を実現しましょう。